財務省の奇習その3 プライマリーバランス黒字論
自民党には二つの派閥があります。表向きのなんとか会という派閥とは違って派閥横断的なもので、財政金融政策をめぐるものです。
積極的に財政支出を政府が増やすことで総需要を増やしいき、景気を良くしていく中で税収を増やし、PB(プライマリーバランス)を健全化していく、という積極財政派がひとつ。
いわゆるリフレ派とも呼ばれています。
そしてもう一方には、景気もなにも真っ先にPB健全化を命懸けで達成し、そのために財政支出を押さえ込み、税収を増やすために国民にはさらなる税を課していく、という財務省の別動隊の財政再建派でした。
こちらはいわゆる緊縮派です。別名は財務省のZ。まるでロシア軍みたいです。
この両派は、野党との対立以上に激しいつばぜり合いを自民党内で演じており、予算編成では常にコノコノクヌクヌの関係でした。
数的には財政緊縮派のほうが圧倒的に多いようです。
安倍氏はもちろんリフレ派の旗頭で、元来リベラルの経済政策であったリフレ経済学の考え方を、自民党に持ち込んだのが安倍氏でした。
首相を辞めた後も、安倍氏は積極財政派の議連で最高顧問を務めてい、その指導者的立場でした。
安倍氏は自身の政治的影響力をフルに行使して、ともすれば財務省寄りに流れる岸田政権をくい止めていたようです。
ところで安倍氏がやった大きな業績で歴史に残るアベノミクスについて、簡単に振り返っておきましょう。
※参考文献 松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』飯田泰之『マクロ経済学の核心』
ちなみに松尾氏は、実は思想的にはマルクス主義経済学者なのですが、真面目に分析するとアベノミクスは間違っていないというのが氏の結論です。
飯田氏はリフレ派の論客で、私がいちばん影響を受けた経済学者です。
このふたりがアベノミクスについて、結論づけていることを列記していきます。
●アベノミクスの成果の政権発足時と5年後
①日経平均株価:1万230円(2012年12月25日現在) → 2万118円(2017年7月14日現在)
日経株価平均推移
②経常利益 48.5兆(2012年度) → 68.2兆(2015年度)
③有効求人倍率:0.8倍(2012/12)→ 1.49倍(2017/5)
有効求人倍率推移
③失業率:4.5%(2012/1) → 3.0%(2017)
失業率推移
④自殺者と完全失業率の相関
自殺者と完全失業率の相関
⑤大卒就職率 65%(2012/4) → 70%(2015/4)
⑥25歳〜64歳正社員比率 40%(2013/2) → 42%(2015/7)
⑦名目雇用者報酬総額 245兆円(2012/10-12) → 255兆円(2015/4-6)
⑧企業倒産件数 950件/(2013/1) → 742件/(2015/10)
企業倒産年次推移
⑨設備投資額 66兆円(2012/4-6) → 70兆円(2015/4-6)
⑩対ドル為替レート 79円(2012年平均) → 119円(2017年平均)
これらの指標、特に失業率の劇的改善と大学就職率の改善などが、若年層に強く支持され、いまや自民党の強力な支持層になっています。
この成果は、アベノミクスのもう一方のエンジンである金融政策を、黒田氏を日銀総裁に大抜擢したことによる大胆な人事によるものです。
もし白川氏のような総裁を、財務省に押し込まれていたなら、このような成果は望めないどころか永久デフレのトンネルにいたはずです。
しかし、安倍氏をしても財政エンジンを吹かしきることができずに、民主党が置き土産で残していった消費増税の地雷を受けていったんは失速の憂き目を見ています。
2013年スタートした日銀の黒田総裁、岩田規久男副総裁体制の目標は2015年に2%のインフレターゲット達成でしたが、それはいまだ未達成のままの課題となっています。
そして今回、安倍氏がやり残したデフレからの完全脱却を目指して高市首相は戦いを挑んでいます。
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僕もリフレが正しいと考えているのですが、困ったことに「庶民にとってはデフレのほうがいいのだ」と思っているクチが意外と多いようです。
第二次安倍政権発足のころ親戚の法事で県外の従兄弟(公務員を退職して年金暮らし)に会ったのですが、アベノミクスで株高の話をすると「吾々にとってはインフレになると生活が厳しくなるので良くない」と言われました。「ずーっとデフレが続くと年金だって持ちませんよ」と言うと黙っていましたが。
物価は上昇するのが正常な資本主義経済でインフレのほうが雇用も良くなるのですが、なかなか分かってもらえないですね。
投稿: 泰山木 | 2025年11月21日 (金) 23時30分