財務省謎の奇習その2 国債60年償還ルール
昨日の続きになりますが、二つ目の財務省の奇習は、国債「60年償還ルール」です。
この償還のためだけに「債務償還費」として一般会計のなんと17.5%も使っています。
財務省の広報紙である日経はこんなことを書いています。
「財務省が2023年度予算案をもとに歳出や歳入の見通しを推計する「後年度影響試算」が17日分かった。国債の元利払いに充てる国債費は26年度に29.8兆円と、23年度予算案から4.5兆円ほど膨らむ。足元の長期金利を加味し利払い費の見積もりに使う10年債の想定金利を1.6%と前回試算から引き上げた」
(日経2023年1月17日)
国債費、26年度に4.5兆円増 財務省が想定金利1.6%に: 日本経済新聞 (nikkei.com)「防衛費増額の財源を巡る自民党の特命委員会が16日に始まった。歳出改革や税外収入など増税以外の財源を模索する。国債の「60年償還ルール」見直しで財源を捻出すべきだとの案も浮上する。償還期間を延長・廃止しても、浮いた国債費を防衛費に使えば借金は膨らむ。借金返済の担保が消えれば、市場の信認を失う恐れもある」
(日経2023年1月16日)
防衛財源確保、「国債60年償還」延長論も 自民が本格議論: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ふーん、「国債の償還ルールを守らねば、借金は膨らむ」ですかー。
想定金利も1.6% だそうで、なにが根拠かしりませんが、目一杯上振れしています。
ここで日経が「4.5兆円膨らむ」と書いているのは、財務省が債務償還費まで含んで計算しているからです。
この債務償還費は、ただ積んでおくだけの予算で、なににも使い道がありません。
もちろん例によって、これも法律の定めでもなければ、論理的根拠も怪しいもので、勝手に財務省が前例踏襲しているだけの因習にすぎません。
この国債の「60年償還ルール」ができたのは戦前も戦前、はるか日露戦争の頃のことで、当時戦費が枯渇していた日本が、国債市場で国債の信任をとりつけるために作った苦肉の策だったのが始まりです。
そんなものを1世紀も後生大事に持っている財務省はなんと物持ちがいいんでしょうか。
「国債は10年などの満期が来ると、返済する必要があるが、一度に現金で償還することは難しい。このため、大部分は借換債と呼ばれる国債を出して借り換えた上で、毎年の現金償還を国債残高の約60分の1(1・6%)とするのが「60年償還ルール」だ。1966年度に建設国債の発行開始と同時に始まった日本の減債制度で、道路などの平均的な耐用年数から60年とした。戦後の日本の財政制度の根幹をなすルールだ」
(朝日2023年1月11日
国債の返済ルール見直し検討へ 防衛費の財源確保狙い、財務省は警戒 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
この60年償還ルールという奇習に、日本で最初に気がついたのはエコノミストの会田卓司氏でした。
会田氏は高市政権の経済司令塔である日本成長戦略本部に、元日銀審議委員の片岡剛士氏と共にメンバー入りしています。
次期日銀審議委員には会田氏がなるかもしれません。
ちなみにこの日本成長戦略本部を仕切るのは 城内実経済財政相で、城内氏は自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の主要メンバーです。
石破政権では考えられもしなかった経済成長の司令塔です。
21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換
【第120回】ワニハンターが徹底解説! 緊縮論者の倒し方(会田卓司×森永康平)
この提言の中で会田氏は、1990年以降、一般会計の歳入と歳出のギャップが拡大しているという財政危機を煽るメディアが必ず使う図を引き合いにだして説明しています。
上のグラフだけ見ていると、財務省 の言うように収入と支出の差がどんどん開いているように見えてしまいます。
この開いた口が歳入と歳出のギャップで、俗に「ワニの口」と呼ばれているものです。
なんだか日本がワニに呑み込まれそうでコワイですね。
さて、ここで会田氏が指摘しているのは、こんな「ワニの口」ができる原因についてです。
会田氏はこれが日本の財政運営における「60年償還ルール」にあると喝破しました。
実は、日本の予算(一般会計歳出)には国債の償還費が含まれているのです。
なんと財務省は、現在の負債を60年後までに完済することができるようにせっせと毎年国債の元本を積み立てています。
ヘンな話です。60年というのは減価償却の発想から生まれています。
償却客する年数を定めで、積み立てていくわけです。
まるでサラリーマンの住宅ローンみたいな発想です。
しかしよく考えて見てください、庶民は60年後には死んだりリタイアするかもしれませんが、国家はなくなりません(あたりまえだ)。
だから国家が発行する国債は、60年たったら借り換えして先延ばしていけばいいのです。
世界中の国はそうやっています。
いまや世界でこんなヘンなルールで国債償還を運用しているのはわが国だけ。まさに奇習です。
すると日本の予算には「債務償還費」という世界でも稀な(というか日本にしかない)項目が堂々と記されることになります。
「日本政府は国債残高の数%を毎年償還(形式上は返済)してほぼ同額を国債発行(形式上は借入)によって賄う--つまりは債務の借り換えを行っています.どうせ借り換えをしている,さらに別に満期がきたわけではないのだなら借換をする必要もないのに,償還の部分は歳出(=出費)扱いをして,一方の借り換えの部分は歳入(=収入)として取り扱わない.この不可思議な慣習が生んだのが「ワニの口」なのです.
ちなみに米国の予算ではこのような不思議な取り扱いは行われません.景気過熱を防ぐために積極的に債務償還が必要……といった場合以外では歳出として扱われるのは利払い部分のみです.つまりは下図の赤色部分だけ日本の一般会計歳出は「盛られ」ている」
(飯田泰之2022年6月3日 )
ですから、このおかしな積み立てを止めれば、歳入と歳出のバランスは至って健全なものに変わります。
あら、不思議。ワニの口などどこかに消えてしまいましたね。
あるていどの経済成長がされれば、歳入と歳出の差は縮まっていくもので、コロナで大盤振る舞いした米国ですら景気がよいので財政環境は持ち直しています。
だからこの不思議な「60年償還ルール」をやめれば、1兆円など簡単にでてきます。
飯田氏はいみじくもこう述べています。
「ここからも,そもそもこれらのルールは「何か論理的な意味があって存在する」わけではなく,「なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」というのがわかります.
財政関連ってこの手の「無駄な作法」がやたら多いんです.例えば,徳川幕府では会計を米方(米の収支)と金方(金銀の収支)にわけていましたが,両者の間には謎の繰り入れルールが入り乱れ・・・。
この手の「お作法」って何のためにあるのか.正直,ルールを複雑化して政治家(江戸期なら将軍・老中)が官僚の仕事に口出しできないようにするために存在するんじゃないかしら.いわば実務官僚の「お仕事の知恵」「処世術」と言ってよいのかもしれない」
(飯田前掲)
まったくそのとおりです。
岸田氏の防衛増税議論は不毛そのものでしたが、こういう財務省の因習が分かったのだけは、よかったかもしれません。
財務省はたかだか1兆円を騒ぎ立てたために、とんだ藪蛇でした。
このような奇習を止めれば、なにか必要な財政出動が登場するごとに「財源を示せ」と財務省から言われる筋合いがなくなります。
財務省が変われば日本が変わるのです。
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なるほど
日本の組織をある意味凝縮したような話ですね
いや組織はどこでもこうなるのかな
いや自分も奇習あるかもw
投稿: 通りすがりの関西人 | 2025年11月20日 (木) 07時58分
先々月あたりにNHKで海外で日本国債を売り込むドキュメント番組やってましたが、財務省の職員とかがいくら奮闘しても「円安と低利率で話にならん」とUAEの要人から追い返されたりしてましたね。
実際に国債の保有は円建てで殆どが国内だからどうにでもなるわけで、わざわざ海外の金持ちに売り込む必要も無いと思うんだが。
特に戦争経済にでもならない限りは必要ありません。
戦争経済といえば···日露戦争の時に大量の最長100年国債を大量発行し実質的にボーア戦争で経済疲弊していた英国との同盟で「肩代わり」してどうにかした戦争でしたが(言葉は大分違うけど利害の一致)、その100年債を後に敵国になっても踏み倒さず律儀に返済し続けて完済したのがたったの20年前。日本人ってスゲー!と思いました。
財務省の60年ルールはなあ、ズバリ「建設国債」に都合の良い年数で勝手にルール作って固定踏襲しちまいやがったってことでしょう。そんな変なルールに縛られる筋合いは無いです。変な積立金が超多額になってます。
赤字国債そのものがオイルショックの時に手を付けた法的にも禁忌だったのが常態化したわけで(ガソリン暫定税率もグレーだったが)、それがダメだと言うのなら予算に組み込まずにアメリカ張りに「政府機関閉鎖」を行うしか無くなりますね。
そのアメリカは国力を背景に日本や中国に大量の国債を無理矢理買わせて来たわけですが···それこそ額がえげつないレベルです。
日本は同盟国で従順だけど、中国は「今直ぐに売り払うぞ!」という脅しのカードもあります。
投稿: 山形 | 2025年11月20日 (木) 08時23分
「政府財源は税金で!」と言う化石理論に染まっている限り、いつまでも日本の発展はないでしょうね。
そもそも、日本国内で流通している円という価値を創造しているのは、どこか?政府、日銀が債券を発行することで、お札が刷られ、価値あるものが出来上がるのではないでしょうか?
そして税金は、市中に出回っているお札を回収するためにあるということ。そこを理解しないと、Zのいう財政破綻、国の借金理論にいつまでもとらわれてしまうと思います。
投稿: 一宮崎人 | 2025年11月20日 (木) 16時02分