トランプが高市さんを叱ったって?
もう毎日毎日トランプ漬けでうんざりしますが、トランプが高市氏に電話で自制を求めたという情報がメディアを駆けめぐりました。
元ネタはウォールストリートジャーナル(WSJ)北京支局です。
「米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は26日、トランプ米大統領が先に行った高市早苗首相との電話会談で、首相に台湾有事を巡る発言に関して抑制するよう求めたと報じた。米国が重視する米中通商交渉への影響を回避する狙いとみられる。
報道によると、トランプ氏は台湾問題に関して中国を刺激しないよう首相に助言したものの、発言の撤回までは求めなかったという。日米両関係者の話として伝えた」
(時事11月27日)
台湾有事発言、高市首相に抑制要求か トランプ氏、日米電話会談で―報道:時事ドットコム
日本のメディアが日米離反だ、ヤーイヤーイ、米中は日本の頭越しで手を握っているのだ、という調子で報じたために、政府は直ちにこれを否定しています。
そもそもこのトランプの電話は、習近平が突如予定にない電話をトランプにかけたことから始まっています。
予告が来たのが午前3時ですぜ。
トランプは日本が疑問を持たないように、習の電話を切るとそのまま折り返し高市氏に電話したようです。
このへんの機微を産経はこう伝えています。
「トランプ氏が電話をしたいと言っている」。米側からの要請を伝える外務省幹部への電話が鳴ったのは、25日午前3時だった。
この申し出まで日本側には、日中対立と距離を置くトランプ氏の態度に気をもむ向きがあった。米側はグラス駐日大使が自身のX(旧ツイッター)に「同盟国である日本を支えていく」と投稿するなど日本支持を打ち出していたが、肝心のトランプ氏は日中対立をほぼ静観していたからだ。
加えて、この直前の24日にはトランプ氏が中国の習近平国家主席と電話会談を実施し、日本側の危機感は一層強まった。
だが、申し出から約7時間後に行われた電話会談は、両首脳のケミストリー(相性)の良さを内外に発信した10月の会談を彷彿(ほうふつ)とさせる友好ムードが漂うものだった。トランプ氏は「久しぶりだ」と声をかけ、自らが参加を見送った南アフリカでの20カ国・地域首脳会議(G20サミット)について「俺は行かなかったが、どうだった?」とたずねたという」
(産経11月27日)
日米首脳電話会談の内幕 「トランプ氏が電話したいと言っている」深夜の連絡、政府は安堵 - 産経ニュース
では、ひるがえってなぜ習が恥を忍んでトランプに電話をしたのか、そこから考えていきましょう。
理由は自ずと明らかです。
北京は高市氏の「存立危機事態」発言に過剰に反応しさまざまな嫌がらせ(彼らの言葉で言えば「懲戒」)措置を発動していたのですが、これがまったく効かない。
一番効くだろうとと思っていた訪日制限も一部の中国系旅行会社には効いたものの、全体としてはまったく訪日客は減少していない有り様です。
海産物などとっくに中国市場を当てにする構造から脱却しているために涼しい顔。
むしろこんな「懲戒」は、やればやるほど中国の醜悪さを世界に喧伝しているようなものとなりました。
中国は焦ったのでしょうね。中華帝国が怒れば周辺国は恐れおののいてひれ伏す、歴代の自民党政権だってすぐに公明党あたりが飛んできてペコペコ平身低頭したのに、サナエめ、まったくビビらない、政権支持率はむしろ上がりっぱなし、驚異的な70%以上をキープしています。
中国はなんなんだこれは、オレ様が怖くないのか、と頭を掻きむしったのでしょうな。
それでとうとう日本のボスだと思っている米国に叱りつけてもらおうと思ったようです。情けない話です。
内容は首脳間の電話会談など明らかにするわけがありませんから内容は不明ですが、もしWSJのいうような「自制を要求する」ようなものなら、日本政府もなんらかの対応を迫られたでしょう。
高市氏は電話を受けたこと自体は認め、トランプが「いつでも電話してくるのを歓迎する」と笑いながら言ったと明かしたそうです。
そして木原官房長官はWSJの記事自体を否定しました。
テレ朝
「ウォール・ストリート・ジャーナル
「トランプ大統領は、台湾を巡る摩擦で中国との貿易交渉に影響が出ることを避けたいと考えている」
木原稔官房長官は、この報道内容について明確に否定しました。
「トランプ大統領から台湾の主権に関する問題で『中国政府を挑発しないよう助言』との記述がありますが、そのような事実はない点は明確にしておきます。ウォール・ストリート・ジャーナル側に対して、すでに申し入れは行ったところ」
(テレ朝11月28日)
「中国を刺激しないように」高市総理にトランプ大統領助言か WSJ報道 木原長官否定(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
ちょっと考えれば分かるのですが、このWSJ記事は北京支局の発信です。
署名はWSJの中国支局長リンリン・ウェイですが、なぜ北京支局がワシントンのホワイトハウスの機密性が高い首脳間電話の内容が分かったのでしょうか。
そこからして不思議ですが、それを元記事の「tone volumeを下げるよう advise した」という表現を、最初に扼した時事通信が「抑制するよう求めた」と訳してしまいました。
そして元記事の「アドバイスした」が、日本のメディアの中では一人歩きし「米国、高市政権に抑制要求」、さらには「高市政権、米国と離反」という具合に増殖していきます。
ですから、別に日本に中国から圧力を受けて叱ったなんてもんじゃないのです。
もちろん答弁の撤回などする気などさらさらありません。
そもそもトランプも分かっているように「存立危機事態」を宣言し集団的自衛権を発動する対象は米軍に対してなのですよ。
想定している事態は、東アジアの紛争で米艦が攻撃を受けた場合に日米が共同で防衛することと、米軍に対する後方支援です。
これって米国にとってこれほどありがたいことはないんじゃありませんかね。
米国が東アジアで敗北する唯一の可能性は、日本が基地使用を拒否するなどの非協力的対応をとったケースだけですから。
だからこの習の電話がトランプへの圧力依頼ならばまったくの空振りでした。
むしろこんなマネをしたことによって、今の米中貿易交渉で借りを作ってしまうことになり、おまけに対日カードすら払底したということを世界に向けてバラしてしまったのです。馬鹿ですね。
また、トランプ電話会談の後にも懲りもせず今度は王毅外相がフランスに泣きついています。
「 中国の王毅外相は27日、フランスのエマニュエル・ボンヌ大統領外交顧問と電話会談を行った。会談で王氏は、高市早苗首相による台湾に関する最近の「挑発的」な発言は中国の主権と領土保全を侵害するものだと述べた。中国外務省が会談の内容を発表した。
王氏はまた、中国の核心的利益に関わる問題についてフランスの支持を求め、同国が引き続き「一つの中国」の原則を順守することへの期待を表明した」
(ブルームバーク11月27日)
中国外相、台湾問題でフランスに支持要請-高市氏への圧力継続(Bloomberg) - Yahoo!ファイナンス
まさに恥の上塗り。
今回の戦狼領事の暴言から発する外交部の度重なる失態を挽回しようとしてかえって墓穴を掘ってしまったようです。
台湾問題は一貫して「中国の国内」問題であるはずが、これを米仏にクチバシを入れることができる国際問題にまで格上げしてしまったのですからなんともかとも。
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WSJの件の記事は中国おひざ元からの発信でしたが、11/28の沖縄タイムズでは1面上段、3面、7面と大々的に出ていました。キャンペーンの予定だったか?
どう訂正するか見ものですが、今日の朝刊時点では一行も出ていません。
ともかく中国側による類似の悪所作は散々経験しているので、アーティストや企業は対中リスク管理強化を徹底すべきです。中国は普通の国でないのは明らかなので、外務省はじめ注意喚起を怠るべきでないです。
投稿: 山路 敬介 | 2025年11月29日 (土) 17時25分