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2025年12月

2025年12月27日 (土)

日本は崩れつつある核管理にどう対応するのか

040

今年の更新もこれが最後となります。
新年は1月5日(月)からになります。
皆様、よいお年をお迎え下さい。
                                管理人

核抑止の実態は、核兵器というモノだけを見ていてもわかりません。
核抑止は、核のトライアドと相互確証破壊理論(※2)、そしてNPT(※3)によって成立しています。

トライアドは長くなりますから説明を省きます。
※1核の 3 本柱 
※2相互確証破壊 - Wikipedia
※3核拡散防止条約 - Wikipedia

そしてNPTは核軍縮、核不拡散、軍事目的への核の使用禁止、という三つの部分から成立しています。

Npte4b889e69cace69fb1

NPT(核兵器不拡散条約)について | 国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜 (hiroshimaforpeace.com)

このNPTの三つの柱は常に揺らいでいますが、その原因は、ロシアが核の使用を政治的な脅迫に使い、核軍縮交渉からの離脱を宣言したことです。

「ロシアと米国の核軍縮合意、新戦略兵器削減条約(新START)は、ロシアのプーチン大統領の履行停止表明で修復がほぼ不可能になった。ウクライナ戦争と並行し、新たな軍拡競争が勃発するリスクが高まる一方、米ロ両国は50年余りにわたりこれまでの核軍縮条約がもたらしてきた安定的かつ予測可能な核管理の枠組みに頼れなくなる」
(ロイター2023年2月22日)
焦点:新START、修復ほぼ不可能 核リスク拡大へ | Reuters

このロシアの離脱で、それまで不十分ながらも「非核化への道」を歩んでいた核軍縮が座礁しました。
反核団体のICANのように、このロシアの暴挙を非難せずに核兵器禁止条約締結しない日本を攻撃するのは、とんでもない倒錯です。
核兵器廃絶国際キャンペーン - Wikipedia

そしてもうひとつの原因は、核大国である中国がそもそも核軍縮のテーブルにつこうとさえしていないことです。
それどころか、中国は「使える核」である中距離弾道ミサイルを増強し続けました。
「使える核」とはブラックな話ですが、大陸間弾道弾が大国間の者に限定されているのに対して、近隣国、つまり弱小どもと中国が思う相手に使えるものだからです。
大陸間弾道弾はその破壊力の大きさ故に全面核戦争となりますが、中距離核は相手の策源地を破壊するための小型核ですから「使いやすい」のです。

中国は米露がINFに拘束されていることを尻目に、様々な射程距離の中距離ミサイルを開発しました。
そしてこの中距離核戦力を背景にして、韓国・日本・沖縄・グアムなどに実戦配備された米軍の戦力を脅かし、九州-沖縄-台湾を結ぶ第1列島線の内部への米国の空母の接近を防ごうという「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を推進しています。

このような「使える核」への中国の変化に危機感を抱いた米国は、2019年8月にINFから脱退した後、米国・中国・ロシアの3カ国を包括する核軍縮の枠組みを作ろうと主張してきましたが、もちろん中国は見向きもしませんでした。

2番目の核不拡散も、ロシアがベラルーシに核ミサイルを前進配備することで崩れました。
米国は対抗措置をかけていませんが、ヨーロッパの核のバランスが崩れてしまった以上、なんらかの措置は必要となります。
するとまた核戦争への道が近づくわけです。

明らかな核拡散防止条約条約違反ですが、だれも止められませんでした。

「ロシアとベラルーシは25日、ロシアの戦術核ミサイルをベラルーシ領内に配備することを正式決定する協定に調印した。
バイデン氏は26日、ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備する計画を進めていることを「極めて否定的」にとらえていると述べた。米国務省もロシアの核配備計画を非難している。
米国の反応に対して在米ロシア大使館は「米国がわれわれに仕掛けた大規模なハイブリッド戦争の中、必要と考える手段で安全を確保することはロシアとベラルーシの主権的な権利」と強調。「われわれが取った措置は、国際的な法的義務に完全に合致するするものだ」とした」
(ロイター2023年5月29日)
ベラルーシへの戦術核配備、米は批判する資格ないとロシア一蹴 | ロイター (reuters.com)

そして三番目の核の軍事利用転用禁止は、北朝鮮とイランで完全にザルとなっています。
これも米国は有効な阻止方法を持たないまま、北朝鮮はほぼ完成の域に達しています。

では、日本はこのような崩れ掛かっているNPT体制にどう対処するのでしょうか。
ひとつの選択肢としてあるのは、石破氏が主張していたニュークリアシェアリングと「持ち込ませる」という核共有です。

この主張は石破氏をリベラル候補と見て推しに回ったメディアは完全スルーしていましたが、同じようなことを彼らが大嫌いな安倍氏も言ってました。
ちなみに高市氏の官邸ブレーンのオフレコ発言すらあの騒ぎですから推して知るべしです。
一定の現実性を持った案です。

「自民党総裁選9候補は16日夜、インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」主催の討論会に臨んだ。石破茂元幹事長は、米国の核兵器を日本で運用する「核共有」について「非核三原則に触れるものではない」と述べ、議論の必要性を訴えた。上川陽子外相は日本は唯一の戦争被爆国だとして慎重姿勢を示した」
(共同9月17日)
石破氏、「核共有」議論を 上川氏慎重、総裁候補討論(共同通信) - Yahoo!ニュース

日本においては、安倍氏の提言をきっかけにニュークリア・シェアリング論が急速に現実味を帯びました。
ニュークリアシェアリングは、冷戦期に考えられた核の前方配置です。
突如核攻撃を受けた場合、米国が対応できないケースを想定していたわけです。
ですから、当然核拡散防止防止条約(NPT)の決め事の範疇でシェアされる以上、あくまでも管理、運用権限の一切が米国にあります。

自国では核兵器を製造せずに、米軍基地に保管して有事に際して米国に合意を受けて受け取るニュークリアシェアリングによって、ドイツ、イタリア、トルコ、オランダ、ベルギー領内に核が置かれています。
NATOはこのシステムを使って、これらのNATO加盟国に常に150~200発のB61核爆弾が備蓄していますし、1991年に軍縮計画の一環として撤収するまで、アジアでは韓国のオサン空軍基地に常備されていました。

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日本で繰り返し語られる核共有の幻想と実体 

ただし冷戦が終了すると、シェアされた方のドイツなどは核兵器を置かれることを嫌がり始めていました。
冷戦も終わって核戦争なんかありっこないのに核なんか置きやがって、ささっと持って返ってくれ、というわけです。

ところがこれが大きく揺らぎました。
ロシアがウクライナ侵略に当たって、核を恫喝の道具にしたからです。

核保有超大国ロシアが、核もなければNATOという核の傘もない小国を侵略してしたことは西側に衝撃を与えました。
侵略に当たって、プーチンはドスを効かせてNATOと米国に、「手出ししたら核戦争になるからな」という脅迫までしています。
このロシアの核戦争の脅迫に、NATOと米国は屈してしまいました。
ウクライナ侵略冒頭、軍事介入するのかと聞かれたバイデンは、にわかに顔色を変えて「米国に戦争をさせる気なのか」と青ざめました。

これが現在のニュークリアシェアリングを巡る世界の情勢です。
米軍に核を「持ち込ませる」ことが大前提ですから、石破氏がいうように「3原則に抵触しない」などということはありえません。
またこの提案を受けた場合、米国はNPT(核拡散防止条約)を遵守する意志を明確にすることを望むでしょう。

それと同時に、日本に核兵器を移動した場合、その管理保管が万全に行われるかを徹底に調査するはずです。
最大のネックは、日本が核兵器の軍事機密情報を万全に守りきれないのではないか、という不信感がいまだ拭えないからです。
これは海自によるイージスシステムの情報漏洩事件で現実のものとなりました。
経済安全保障法という形で、高市氏は大きな仕事をしましたが、このような機密保全の仕組みが必須なのです。

またいかなる形であれ核の保有に踏み込むのなら、危機に至るエスカレーションの度合いに応じて、いかに日本社会が耐えるのかが問われます。
緊急事態への法的・制度的準備も同時に準備せねばなりません。

具体的にいえば、経済安全保障、スパイ防止法や緊急事態法の制定など社会的強靱性を保有して初めて米国にニュークリアウェアエングを要求できるのです。

石破氏はこのような一連の社会の強靱化にすこしでも役立つ動きをするどころか、ことごとく潰しに回りました。
むしろサヨクメディアの言うがままに政権批判を繰り返し、党内で煮詰まった議論のちゃぶ台返しをして妨害し続けてきたのはこの人です。
そんな人が、いまさらニュークリアシェアリングで米国と対等になんてとんだファンタジーです。

あんのじょう、石破氏は首相になってもこのやっかいなテーマには手も着けませんでした。
しかし彼がどうであろうと現実は変わりません。




2025年12月26日 (金)

「遼寧」、空母のようなもの

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年末年始のお休みについて
押し迫ってまいりましたが、今年も年末年始のお休みを頂戴します。
12月29日(月)~1月4日(日)までお休みとし、1月5日から再開いたします。

コメントに「遼寧」は空母かという質問がありましたので、お答えしておきます。
答は、もちろん「空母」に決まっています。
ただし未成熟な、限定的な能力しか持たない「空母」であることは中国自身認めており、「練習艦」に区分しています。
中国の砲艦外交の主役でありきわめて政治的な艦艇であって、近隣諸国に軍事的脅威を与えて恫喝することが目的で作られた空母だということが、他国のそれと比して異様なまでに特出しています。

もっとも、日米海軍からは潜水艦の標的艦とも揶揄されています。
これは今回の事件でも明らかになりましたが、対潜警戒をすべき駆逐艦が1~2隻しか随伴していないことからも潜水艦からの攻撃に脆弱であろうことは容易に想像がつきます。
軍事的脅威は侮ってはなりませんが、ほどほどです。

さて、今回のレーダー照射事件を引き起こした航海はこのようなものでした。

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中国空母「遼寧」、艦載機発着260回 宮古海峡を北上し東シナ海へ | 毎日新聞

なお、能勢伸之氏は、米空母「ジョージ・ワシントン」が「遼寧」打撃群の頭を抑えるように横須賀に入港しており、これ以上の北上を阻止したと見ています。
「ジョージワシントン」の航路と重ねてみます。


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レーダー照射の裏に潜む“中国の緊張”とアメリカ軍の圧力 「ロバートスモール」「トリポリ」のダナン入港の狙いは【日曜安全保障】|FNNプライムオンライン

「ジョージ・ワシントン」は「遼寧」艦隊を迂回する様子も見せず、12月8日前後に北大東島東方でそうとうまでに接近していますので、この能勢氏の説には説得力があります。

「ジョージワシントン」空母打撃群は正規空母を中心としてこのような編成です。

・航空母艦: 打撃群の中心となる艦です。×1隻
・巡洋艦: 艦隊防空や対地攻撃などを担います。×1~2隻
・駆逐艦: 対空、対潜、対艦など多目的な任務を遂行します。×2~3隻
・潜水艦: 敵艦艇の探知・攻撃や情報収集を行います。×1隻~2隻
・補給艦:作戦海域での燃料や物資の補給を担います。×1隻(変動あり)

米側は6隻から9隻の大規模な艦隊に対して、「遼寧」打撃群は駆逐艦2隻、それも途中から燃料切れをおこしたと見えて1隻という寂しです。
この8日時点では随伴艦は1隻だったかもしれません。
最後に補給艦が到着したものの、いまだ中国には洋上補給能力が限定的だと思われます。

実はこのような空母と空母の展開阻止運動は、実は中国も実施しています。

「中国海軍の空母2隻が6月に日本周辺の太平洋上などに展開した際、米空母打撃群の迎撃を想定した演習を実施していたことがわかった。複数の日本政府関係者が明らかにした。米軍役と中国軍に分かれて対抗する形式の訓練で、米空母が採用している航行方法を模倣した動きをしていたことなどから判明した。日本政府は、中国軍が台湾有事を見据え、米軍の接近を阻止する能力の向上を進めていると分析している」
(読売2025年7月18日)
中国空母が日本周辺で米空母の迎撃訓練、米軍役と中国軍に分かれ対抗…台湾有事を見据え実施か : 読売新聞

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中国空母が日本周辺で米空母の迎撃訓練、米軍役と中国軍に分かれ対抗…台湾有事を見据え実施か:写真 : 読売新聞

この時、「山東」打撃群と「遼寧」打撃群は、米海軍の運用規則どおりに500カイリ(約930キロ・メートル)程度の距離をとって運動しています。
おそらくは実戦においての米海軍の動きをまねた予行演習だと思われています。
中国国防省も、6月末、遼寧と山東が実施した訓練について、「太平洋西部海域に出て、互いを相手として実戦的な対抗の訓練をした」こ公表しています。

では「遼寧」空母打撃群の能力はどの程度なものでしょうか。
あたりまえですが、空母は作戦に必要な量の武器と燃料を搭載した航空機をいかに早く、いかに多く投射できるかにかかっています。

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上の写真は珍しく「遼寧」の飛行甲板を上から見たものですが、艦首に巨大なスキージャンプ台があり発艦スポットは二本ありますが、艦首でひとつになっています。
ここからスキージャンプで勢いをつけて発艦し、アレスティングワイヤーを使って着艦します。
ご覧のように「遼寧」の発艦スポットは、前部に2か所(滑走路105メートル)、中部のアングルドデッキに1か所(滑走路195メートル)の計3か所あります。
一方米空母の滑走路は3本で、カタパルトが4基装備されており、蒸気駆動で航空機を加速させます。
約91メートルの距離で、平均約21.8トンの艦載機を2秒間で時速0kmから約265kmまで加速させることができます。
発艦能力は 昼間は37秒ごとに2機の発艦と1機の着艦を同時に行うことができ、夜間でも1分ごとに同じ作業が可能です。
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この蒸気カタパルトがあるかないかが決定的な違いです。
ですから「遼寧」から発艦する戦闘機はスッポンポンか、あるいは最低限のAAM(空対空ミサイル)2発を装備しているに止まっています。
下写真を見ると、まるでなにも搭載していないのがわかりますね。
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下の写真は米空母から発艦しようとするFA!8ですが、吊るしものと呼ばれる装備を満載しています。
方や「遼寧」はスッホンポンで、さらには前部2か所の発艦スポットからの発艦させる場合は、J-15のエンジンの推力不足から燃料もしくは武器の搭載量を制限しなければなりません。
これが上写真での真実です。仮に無理やり多くの武器を搭載したとしたら、燃料のほうを制限せねばなりません。
そのためにはロシア製のIL-78空中給油機を使って空中給油しなければ作戦行動が不可能ですが数が足りませんから、展開能力に制限があります。
どちらがどうだとは言うも愚かですが、同じ「空母」といってもこれだけ能力に差があるのです。
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わが国にも少数生息するチャイナラバーには、アングルドデッキのスポットを使用すれば大量に武器・燃料を搭したまま発艦可能だという人がいますが、その場合構造上前部の2か所の発艦スポットは使用できません。
その艦首2本も立て続けに発艦させるのは無理で、仮に最長の滑走路を使用したとしたら、それ以降の準備作業にはそうとうの時間を要すると考えられています。
またカタパルトがないために固定翼機の運用に限界があり、早期警戒管制機を乗せることができません。
早期警戒管制機は長時間の運用が必要ですが、どうやらヘリを使っているのが観察されていますから艦隊防空もまたお粗末であろうことが推測されます。
一方、米海軍空母は、「E-2C/D」という極めつきに優秀な早期警戒機が搭載されていますが、もうこうなると較べるのは野暮でしょう。
このように「遼寧」はあくまでも習作であってとうてい一人前の「空母」と肩を並べることは難しいでしょう。
この程度の能力で太平洋に出張るのは無謀というべきでしょう。

2025年12月25日 (木)

酔っぱらい帝王、こんどは「戦艦」だ

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昨日記事はとっくにできていたんですか、アップし忘れていました。すいません。

ところでもう手がつけられないね、トランプ親爺。
こんどは「戦艦」作るとの仰せ。
つい先日トランプは人もあろうに現職の首席補佐官からアル中のような人格」と言われていました。

「米誌バニティ・フェアは16日、米国のスーザン・ワイルズ大統領首席補佐官のインタビュー記事を公開した。トランプ大統領を「アルコール依存症のような性格の持ち主」と語るなど率直な発言が波紋を広げている。
ワイルズ氏は、父親がアルコール依存症だった経験から、「依存症の人は飲酒すると気が大きくなる」と指摘し、トランプ氏について「自分にできないことは何もないと考えて行動している」と述べた。実際のトランプ氏は酒を飲まないことで知られる。バンス副大統領についても「10年来の陰謀論者だ」と語った」
(読売2025年12月17日)
トランプ氏は「アルコール依存症のような性格」、首席補佐官の率直な発言が波紋…実際は酒飲まず : 読売新聞

わ、はは、そりゃそうだ。
思いつきとハッタリで世界を混乱に陥れるなんて、シラフの人間ならむりです。
飲まないんですが、常に酔っぱらっているのでいっそうコワイ。
昨日言ったことと今日言うことが違う、コレが欲しい、アレが欲しい、皆んな欲しい、それが感情の激しい起伏と共に出てくるんですからたまったもんじゃありません。

どうやらトランプは、オレはなんでも出来る、という万能感で政権を運営しているようです。
で、こんどは「戦艦」が欲しいそうです。やれやれ。

「アメリカのドナルド・トランプ大統領は22日、自らの名を冠した海軍の新たな重武装「戦艦」シリーズを承認すると発表した。「黄金艦隊」の刷新の一環だとしている。
トランプ氏は、フロリダ州にある自身のゴルフクラブ「マール・ア・ラーゴ」で、ピート・ヘグセス国防長官、マルコ・ルビオ国務長官、ジョン・フェラン海軍長官と共に演説に臨んだ。
その中で、「トランプ級」と呼ぶ新たな艦艇2隻の建造を承認したとし、今後最大25隻まで建造する計画だと述べた。
トランプ氏は、「これまで建造されたどの戦艦よりも速く、大きく、圧倒的で、100倍強力なものになる」と主張。極超音速兵器や「極めて殺傷力の高い」兵器を搭載し、海軍の旗艦になるとした。
トランプ氏は演説の際、「トランプ級」の艦艇の完成予想図を両側に置いた。そして、建造は国内で行われ、「数千人」の雇用を生み出すと述べた」
(BB2025年12月23日 )
米大統領、「トランプ級」軍艦からなる「黄金艦隊」構想を発表 - BBCニュース

トランプと一緒に登場した海軍長官ジョン・フェランという男は、軍歴もなく海軍関係者でもないただの資産運用会社の経営者ですが、多額の献金で今この地位に就いています。
軍歴もない海軍長官は初めてだそうです。
ジョン・フェラン(実業家) - ウィキペディア
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ゴールデンフリート

この「戦艦」がどんなものかといえば、その名も「トランプ級」と名付けられ(でも1番艦はなぜか「デファイアント」)、トラ親方が大好きなゴールドに忖度して金ぴかの「黄金艦隊」というんだそうです。酒場の冗談みたいな話ですが、本気です。
これがまるで軍艦版満漢全席。スタミナ系ラーメン店の全部乗せです。

  • 全長:840~880フィート(約256~268メートル)
  • 全幅:105~115フィート(約32~35メートル)
  • 喫水:24~30フィート(約7.32~9.14メートル)
  • 排水量:3万5千トン以上
  • 速力:30ノット以上
  • 乗組員数:650~850人
  • クラス規模:20~25隻
  • 機関:ガスタービン&ディーゼル
  • ヘリコプター格納庫と飛行甲板(V-22オスプレイとFVL)

乗っける兵装もテンコ盛り。まだ出来てもいないレールガンやレーザー砲を積んでブイブイいわしています。
まぁ、彼が任期の間には日の目を見るたとはないでしょうから、次期政権が民主党なら確実に白紙化されるでしょうね。

トランプ級『戦艦』の兵装(出典:GOLDEN FLEET

  • 主砲:レールガン(電磁砲)×1基(32MJ級)
  • 副砲:Mk45 62口径5インチ砲×2基(並列配置)
  • 大出力レーザー砲×2基(300kW級または600kW級)
  • VLS:特大サイズ×12セル(CPS極超音速滑空ミサイル)
  • VLS:Mk41×128セル(SM-6やトマホークなど)
  • CIWS:対ミサイル用(60kW級ODINレーザー砲)×4基
  • CIWS:対ミサイル用(RAM)×4基
  • 機関砲:対水上艇用(Mk38 30mm機関砲)×4基
  • 対ドローン装置:Counter UxS Systems×2基
  • 電子戦装置:SEWIP Block III×4面
  • AESAレーダー(SPY-6多機能レーダー、RMA37個)×4面
  • イルミネーター(迎撃ミサイル誘導用レーダー)×3基

建造費は史上もっともカネを注いだ失敗空母のジェラルド・フォード級空母に匹敵するそうですが、当初見積もりはかならず大幅に狂いますからこんなもんじゃ済まないでしょう。

「なおアメリカ海軍協会(USNI)の報道では「一時は5万トン案や1万5千~2万トン案も検討されていたが、最終的に3万5千トン案に落ち着いた」とされています。建造コストは100~150億ドル(約1兆5000億円から2兆2500億円)が予想されているとあり、1隻あたりでこの金額となるとジェラルド・R・フォード級航空母艦(1番艦の建造費約130億ドル)に匹敵します」
(JSF12月23日)
アメリカがトランプ級『戦艦』デファイアントの建造計画承認を発表、排水量3万5千トンのミサイル戦艦(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

ほんとうに懲りない奴。
新機軸はせいぜいひとつまで。それもよそで実験して実証された装備だけを乗せないと、またフォード級空母の失敗を繰り返します。
フォード級空母も新機軸の全部乗せでした。
電磁カタパルト(EMALS)は蒸気カタパルトを一新するはずでしたが失敗の連続。
空母の主要装備なのにいまも不安定で、しかもいったん壊れると海上では修理が効かない。
アドバンスト・アレスティング・ギア(AAG)も不安定。航空機や弾薬を飛行甲板に上げるアドバンスト・ウェポンズ・エレベーター(AWE)はまったくいうことを聞かないジャジャ馬。
この開発と空母システムへの統合を新造艦の建造と同時にやったのですから、完成の大幅遅延と予算の大幅超過です。
業を煮やしたトランプがこんな電磁カタパルト止めちまえと言ったところで、いまさらハズせないのよね。
かくしてやっと出来たと思ったら故障。
修理といってもいまの米国の貧弱な造船能力では、それもタップリ時間を食うのですから処置なしです。

では、こんなモンスター「戦艦」が建造可能かといえば、ハッキリ言って今の米国にはむりです。
満足に現役の駆逐艦さえ補修できない国が、こんな馬鹿げた怪物を作れるわけがありません。

今の米国の造船業は悲惨の一語に尽きます。
造船所は老朽化して、設備は陳腐化しており、技術者や老練な職工もとっくに辞めてしまい、満足な修理さえできないのですから話になりません。

かつては世界をリードする存在でしたが、現在ではそのシェアがわずか0.1%以下、繰り返しますがコンマ1%の国に成り下がっていたのです。
冷戦終結でバッサリ海軍予算をカットしたためです。
一世代潰すと、もう技術は継承されなくなるんです。
ですからそうとうに前から米海軍の艦艇をメンテナンスしているのは日本でした。
理由は確実に納期を守り、技術は世界最高水準だったからです。

横須賀では艦艇本体、佐世保では電子装備の面倒を見ていたのですが、そのために故障するとわざわざ第7艦隊に配置換えしていたとか。

なぜ中国海軍がすさまじい勢いで追い上げているかといえば、船舶シェアの約6割を占める建造能力があるからです。
いまや世界で16位まで落ちぶれたんですから、こんな国に「黄金艦隊」なんぞ出来る道理がありません。
戦闘艦のみならず兵站を支える商業船も、実はメイドインチャイナなんですから目も当てられません。
こんな建造能力の崩壊が、中国の海運支配と軍事的勢力を拡大させてしまっているわけです。

だから、こんな馬鹿げたモンスター艦隊にカネを投じる余裕があるなら(ないと思うけど)、抜本的に米国造船業を再建するところから地道に始めるべきなのです。

 

2025年12月24日 (水)

日米原子力協定がネック

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石破前首相が、またもや外野からマウンドの高市投手の背中にボールをぶつけています。

「石破前首相は20日生出演した番組で「(発言は)誰が言ったかわからず、個人的な見解をオフレコで言っている」とした上で、「我が国が核を持てばNPT(核拡散防止条約)やIAEA(国際原子力機関)からも出て行かないといけなくなる」と述べ、「何よりも日本のエネルギーを支えている原子力政策が成り立たなくなる」と指摘しました。
その上で、「核を持つことの安全保障上の意味は否定しない」としつつも「日本にとって決してプラスにならない」と述べました。
“核保有発言”をめぐっては、自民党の中谷前防衛相が「(高市首相は)よくよく事の重要性を考えて、(進退を)ご判断をいただきたい」などと与野党から厳しい声が出ています」
(福岡TNCテレビ2025年12月20日)
石破前首相「日本に決してプラスにならない」 官邸関係者の“核保有”発言めぐり見解「原子力政策成り立たなくなる」 生放送で指摘|福岡TNCニュース

分かりきったことを言って政府批判をしたつもりだから、この人困ります。
今回の「政府要人」の発言とやらも、核兵器を保有すべきに重心があったのではなく、むしろ後段の「NPTがあるから難しい」に胆があったのは素直に読めばわかりそうなもんです。

国民民主の玉木氏もそれを理解してこう投稿しています。

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Xユーザーの宇佐美典也さん

こんなこと核兵器を議論する時のイロハのイの大前提ですからね。
核兵器を独自に開発しようとするとNPTを脱退せねばなりません。
同時に「核燃料供給に関する日米原子力協定」も破棄せざるを得ませんから、軽水炉用ウランは輸入が不可能になり、今ある使用済みウラン燃料も返却せねばなりません。
そして日本のウラン備蓄は2,3年分しかないとみられているために、我が国の商業発電は短期で壊滅します
※http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/hatukaku/siryo/siryo8/siryo2.pdf#page=7

ね、核武装って経済的にも、外交的にも、そして原子力の商業発電にとっても、ぜんぜんワリに合わないのです。
原子力発電も一緒にダメになりますよ、それでもやりますか、と言う問題です。
こここそが独自核武装をしようとする時の最大のネックなのです。
このようなことを真面目に考えないで、「核ミサイルが欲しい」というのは止めてほしいし、逆に「原発稼働すれば核武装が始まる」というデマも止めてほしいものです。

ゲル氏はそれなりに知識としては知っていて、政府批判するから困った君です。
そしてリベラルのゲル氏に大甘なメディアは、彼が「核を持ち込ませる」と言おうが、そのことを問題視しません。ダブスタもいいところです。

では逃げ道はないかというと、あることはあるのです。
かつてゲル氏も首相になる直前にはこう言っていました。

「最近、ロシアと北朝鮮は軍事同盟を結び、核技術がロシアから北朝鮮へ移転されています。北朝鮮は核およびミサイル能力を強化しており、中国の戦略核兵器がこれらの動態に加えられれば、米国の地域での長期抑止力はもはや機能しなくなる。これに加えて、中国、ロシア、北朝鮮の核同盟に対する抑止力を確保するアジア版NATOも存在します。アジア版NATOは、アメリカの核兵器共有や地域への核兵器導入も具体的に考慮しなければなりません
(『石破茂が語る日本の新安全保障時代:日本の外交政策の未来』2024年9月25日 ハドソン研究所)

石破茂が語る日本の新安全保障時代:日本の外交政策の未来 |ハドソン研究所

この寄稿では、アジア版NATOばかりが騒がれましたが、それより具体現実性では「核兵器共有」つまりニュークリアシェアリングや、「地域への核兵器導入」、言い換えれば「持ち込ませる」のほうが重要です。
ただし「持ち込ませる」はもちろん、ニュークリア・シェアリングも日米同盟が生きているというのが大前提なのよね。
言い換えれば、米国からの自立という意味でこのふたつの方法は無意味なわけです。

じゃあ日米同盟がグラついたら、米国が米中は和合だ、日中で倒れるまでやればいいなんていうMAGA思想に純化したらどうします。
MAGAとは、煎じ詰めると米国だけ得をすればいいという究極のミーイズム思想です。
たとえばウクライナが勝とうと負けようとロシアとうまくやって米露協調でやっていきたい。
だから支援もらっているくせにうるさいことを言うゼレンスキーはホワイトハウスから追ん出す、わが身かわいさのヨーロッパもNATOからでていくぞと脅す。

中国に噛みつくサナエは放っておく。
やがて中国に負けて静かになったら恩を着せてフォローすればいい。
もしも中国が日本を軍事攻撃しても、米軍基地が標的にならないかぎり巻き込まれるのは御免だ。
万が一日本が核攻撃にでもあっても、米本土はセーフなようにな。
台湾?関係ねぇよ、ただもめたくはないからすこしばかり武器援助はしておくか。

たぶんこのあたりが本音。
今回の「政府高官核保有発言」なる煽り記事についても、この微妙な時期に日本から日米同盟を廃棄する可能性は自殺行為だとわかっているから、米国は呑気なもんです。

「米国務省報道担当官は19日、日本政府高官が「日本は核(兵器)を保有すべきだ」と発言したことを受け、取材に対し「日本は核不拡散および核軍備管理の推進において世界的なリーダーであり、米国にとって重要なパートナーだ」とのコメントを出した」
(日経2025年12月20日)
米国務省「日本は核不拡散の世界的リーダー」 高官の核保有発言巡り - 日本経済新聞

国務省は、日本の核武装には日米原子力協定がガッチリとはまっていることを充分に知っています。
原子力発電と核兵器は裏表のコインなのです。
日米原子力協定は、アメリカ合衆国から日本への核燃料の調達、再処理、資機材・技術の導入について定めた条約です。

この協定は、これまで複数回改定されていますが、現行のものは1988年7月17日に発効した協定で、使用済み核燃料の再処理に関する包括的事前同意などが含まれています。
この協定は30年間の有効期間があり、いずれかの国が6ヶ月前に文書で通告しない限り自動延長されます。

  • 原子力の平和利用に関する日米協力 平和的な目的のための原子力の研究、開発、利用における協力を定めています。
  • 核兵器製造の禁止 協力によって導入された施設や核物質を核兵器製造に利用することを禁止しています。
  • 核物質の移転、再処理の包括的事前同意特定の施設における使用済み核燃料の再処理や、核物質の移転について、事前に包括的な同意が与えられています。
  • 核物質の貯蔵協定の対象となる核物質は、両政府が合意する施設でのみ貯蔵が認められています。
  • 再処理と形状・内容の変更 核物質の再処理や、照射以外の方法での形状・内容の変更は、両政府の合意がある場合に限り認められます。
  • 濃縮ウランウラン235の比率が20%未満の濃縮は認められていますが、20%以上の高濃縮ウランについては両政府の合意が必要とされています。

したがってこの協定によって、使用済み燃料は蓄積することができず、核燃料サイクルに回すしかなくなったのです。
ですから核燃料サイクルにも反対し、かつ原発を止めたりすれば、核廃棄物は溜まる一方となります。

この日米原子力協定を知らなかった民主党政権は、2012年9月の野田政権の時に2030年代に原発ゼロとすることを政策化しようとしたことがあります。
しかしところがギッチョン、この政府の決定はなんとわずか2日後の9月19日にひっくり返ってしまいます。
たった2日間の原発ゼロだったのです。
なにがあったのかって、米国に脅かされたのです。

野田政権は、原発ゼロ政策の打診に訪米団を送りだしましたが、その時、面談したホワイトハウス要人からにべもなく冷やかな顔でこう言われたそうです。
「日本政府はNPTをどう考えているのか知りたい」
ご承知のように、NPTは1970年3月に発効した核軍縮を目的とした、米、露、英、仏、中の国連常任理事国5ヶ国以外に、核兵器を持たせないための核不拡散条約です。

おそらく、野田政権の交渉団は、予想しない質問にギョッとしたと言われています。
米国がNPTを外交的オブラートに包まず突きつけたのには理由があります。
たぶん水面下で米国はこう言ったはずです。

「日本政府の原発ゼロ政策は、日本政府が国際公約を破棄して、プルトニウムを協定以上に蓄積し、独自核武装に進むのだと理解してよいのだな。それは米国の核の傘から抜け出しすという意思表示と捉えていいのだな。
その場合、日米同盟は廃棄され、日米はかつての大戦前夜に似た状態に戻ることになる。それを日本政府は分かってやっていることなのだな」

彼らの頭にはカッコよく脱原発を宣言したアンゲラ・メルケルの姿があったでしょうが、日独は置かれた状況がまったく違うのです。
不勉強な彼らは知らなかったのでしょうが、実はドイツはとっくに「核武装」しています。それが、ニュークリアシェアリングです。
説明すると長くなるので煎じ詰めれば、米国の許可の下にNATO各国軍が核兵器を保有し、有事においては当該国がそれを使用するシステムです。
この核兵器保有国に、ドイツは入っています。もちろん、有事の際も、一国はもちろん、NATO全体が了承しても、米国が拒否権を行使できます。

つまり、ドイツは新たに自国で核兵器を開発する必要がないのです。
ドイツにとって脱原発政策は、純粋にエネルギー安全保障上のテーマとなりえるのに対して、日本は、独自開発する能力と、投射能力を持つが故に、独自の核武装路線を取るという国際問題にまで発展するのです。

そこまで考えて、慎重に米国への根回しをしてからするならともかく、政権担当能力すら怪しい民主党政権が、普天間でガタガタになった日米関係の時期に、思いつき的に言い出してどうかなるほど、脱原発政策はシンプルではなかったのです。
同じように独自核武装もシンプルではないのです。

 

 

2025年12月23日 (火)

ルビオ、お前もか

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マルコ・ルビオ国務長官の腰が抜けました。
ルビオだけが、第2次トランプ政権で唯一まともな政治家だと思っていた人には、ルビオお前もかと叫びたかったはずです。
ルビオは、中国に関して常に最も厳しい姿勢で臨んできました。
たとえば2021年5月11日、上院でのスピーチでは、「中国に敗れた場合、屈辱の世紀が私たちを待っている」と述べていました。

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ルビオ氏、中国が超大国になるための不正行為を批判、中国政府の台湾侵攻を阻止するためにさらなる努力が必要 - VOCO News|Global Chinese Instant News and Information Network

「ルビオ氏は、「21世紀は中国と米国の関係によって定義される。率直に言って、これがバランスの取れた関係を確保するための最後のチャンスだ」とし、「米国は過去数十年間、中国とのビジネスで金を稼ぐことに夢中になってきた一方で、知的財産が盗まれ、雇用機会が奪われるなど、さまざまな脅威がもたらされた。
中国は将来の戦争で、米国が投資した技術を利用して米国に立ち向かう可能性もある」とした」
(レコードチャイナ2021年5月18日)
米国の反中急先鋒のルビオ氏「中国に敗れた場合、待っているのは屈辱の世紀」―中国メディア

まことに道理が通った議論で、まさに中国は西側先進国、なかでも米国の技術を盗み軍事的経済的拡大を遂げてきました。
たとえば「中国製造2025」計画なるものを策定し、ロボット工学、バイオテクノロジー、人工知能といった世界の最先端産業において主導権を握ることを目指しました。
この目標達成のため、米国が持つ経済的指導力の基盤である知的財産を様々手段で取得するよう、政府や企業に指示してきました。
「様々な手段」とは、産業スパイを国家があらゆる機関や時には民間人を使い、国家規模で行うのです。
さすがに盗まれまくった米国は、通商法301条に基づき、中国の技術移転強制や知的財産権侵害に対する調査を開始しました。

ルビオはこの最先鋒で、中国への対応策の提言として以下のような具体的な政策を提言しています。

  • 技術・研究開発への投資増加
  • 南シナ海、東シナ海、台湾などでの中国との軍事対抗
  • 世界貿易機関(WTO)改革と中国製品への関税徴収と規制
  • 中国による医療分野支配の防止
  • ウォール街への透明性の要求と中国軍関連企業への投資流入の防止
  • 新疆ウイグル自治区での強制労働によって製造された製品の流入禁止

妥当です。まことにストレートな反撃でした。
そのルビオが国務長官に指名された時、ならず者とごますりを集めたようなこの第2次政権にも一本芯じ通ったかとほっとしたものでした。
それがいまやこの様です。

「米国のルビオ国務長官は19日の記者会見で、悪化している日中関係への対応について、「我々は日本との強固な同盟関係を継続しながら、中国と生産的な協力方法を見いだすことが可能だ」と述べた。中国側の行動は批判せず、対中配慮をにじませた。
中国軍機による航空自衛隊機へのレーダー照射が起きて以降、ルビオ氏が日中関係について言及するのは初めて。ルビオ氏は「最近の中国による日本への挑発行動を非難するか」と問われたが、「(日中の)緊張関係は以前から存在していた」と述べるにとどめた」
(読売12月20日)
ルビオ米国務長官、にじむ中国への配慮…挑発行為を非難せず「日中の緊張関係は以前から存在していた」 : 読売新聞

なにが「日中の緊張関係は以前から存在していた」ですか。
今、中国があらゆるチャンネルを使って全面的に日本を押しつぶそうと画策していることは誰の目にも明らかです。
それをイヤー前からあったことなんだよねですか、呆れてモノが言えない。頼もしい同盟者だこと。
呆れた記者団がこう追及のひとつもしたくもなります。

「あなたは長年にわたり、中国に対して強硬な発言をされてきたことで知られていますが、失礼ですが、中国による最近の日本に対する挑発的な行動を非難されますか?」
Secretary Rubio delivers remarks to the press

するともう目が泳ぐわ、腰が引けるわ、両手をあげてこんなことを言っていました。

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読売新聞

「私には別の仕事がありましたから。今の私の仕事は、外交において米国大統領と米国を代表することです。中国とは良い進展を遂げてきたと思っています」
Secretary Rubio delivers remarks to the press

ダメだ、こりゃ。今の私はトランプの召使でしかありませんから、クビになっちゃいますから、というわけです。
そしてより突っ込んでこんなことも言っています。ある意味、これが核心です。

「緊張は必ず生じるでしょう。それは間違いありません。結局のところ、中国は豊かで強力な国であり、地政学上の要因であり続けるでしょう。私たちは中国と関係を築き、対処しなければなりません。協力して取り組める点を見つけなければなりません。
そして、現在そして近い将来、緊張の局面が訪れることを認識できるほど、両国は成熟していると思います。責任ある国家運営の一環として、私たちの仕事は協力する機会を見つけることです。
なぜなら、中国と米国が協力して取り組める世界的な課題があれば、それは解決できると私は考えているからです。そして、緊張の局面は必ず訪れるでしょう。私たちは皆、それを認識しています。そして、私たちの仕事は、この二つのバランスを取ることです。両国ともそれを理解していると思います」
Secretary Rubio delivers remarks to the press

今、トランプがやっているのはただの貿易交渉ではなく「中国と米国が協力して取り組める世界的な課題」について話ているのです。
それがなにかは分かりませんが、おそらくはアジア、太平洋、インド洋地域の「安定」のはずです。
それを「協力して取り組む」、まさにG 2の考え方そのものてす。
いちおう表面的にはトランプは中国と日本をバランスすると言っています。
怪しいものです。トランプにとって日本などよりはるかに重要なパートナーのはずです。
ましおや台湾などは知ったことかというわけでしょう。

思えばウクライナ和平でもそうでした。
プーチンが作ったような和平案が出てきた時、ルビオは「これはロシアの願望だ」と言いながら、結局はそれを取り消して唯々諾々とトランプに従いました。
腰抜けめ。そんなに国務長官の地位が大事か。
ポンペオやボルトンがいたら、なんというか聞きたいもんです。

 

2025年12月22日 (月)

独自核武装はできなくはないが簡単ではない

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共同通信の卑劣なリークによる騒動は、ある意味いい機会でした。
オールドメディアは「非核5原則」で「議論させない・考えさせない」を強要してきますが、大いに考えていきましょう。

たとえばこんなケースです。
北朝鮮や中国が核による脅迫をした場合、あるいは米国が極端なトランピズムに走って中国と太平洋を二分割するG2などに走った場合、すぐにでも核武装は必要となります。
今はトランプの趣味のディールとやらの範囲ですのでなんとかなっていますが、信用なりません、あの男。
ではその時、「唯一の被爆国」と泣き言を言っても、そうか、では3番目の被爆国になりなと言われるだけのことです。
唯一の核抑止は核兵器しかないのは自明だからです。
しかしいきなり核兵器が湧いて出るわけではありません。
どのような問題点があるのかを洗い出し、どのていどのリードタイムがかかるかを議論をしておかねばなりません。

結論から言えば、独自核武装は「やってやれなくはないが、そう簡単なことではない」と考えています。
核武装するためには、国内世論の支持をうけねばなりませんし、NPT条約といった政治的問題もありますが、それについては今回は考慮からはずします。 
どうでもいいからではなく、逆にあまりにも大きすぎるテーマだからです。
何回か扱ったテーマですが、技術的なことに絞って見ていこくことにします。 

さて、今の北の非核化を見ても、ひとことで核武装といってもいくつかの要素があることに気がついておられると思います。 
まず第1に、核爆弾を作れる核物質がなければ話になりません。
第2に、核弾頭が実際に想定どおりの性能かどうか証明するために核実験せねばなりません。
第3に、弾道ミサイルを発射する潜水艦である戦略原潜が必要です。

ほかにも付随して、再突入や多弾頭など、いろいろたくさんの問題がありますし、そもそも報復核攻撃を受けた場合のシェルターがなければなりませんが、今日は3ツだけを取り上げます。 

まず第1の核物質についてですが、「原発に詳しい」と自称して福島事故対応を混乱に陥れた(ネトフリの『ザ・デイズ』を見て下さい。この男がいかに有害だったかわかります)管直人元首相は、かつて川内原発前の宣伝カーの上で、こんなアジ演説をしていました。


「原子炉はもともと核兵器製造に使うプルトニウムを作るために開発されたものだ。そして70年前にプルトニウム型原爆が長崎に落とされたのだ。
私はプルトニウムと人類は共存出来ないと考えている。そうしたプルトニウムを新たに生み出すこと自体が人類を危険に晒すことだ。原発がプルトニウムを作ったんです」

バッカじゃなかろか、この人は。この人は、軍事用原子炉と商業用原子炉が炉の構造自体からして違っていることを知らないようです。  
核兵器に使用できるプルトニウムは、純度90%台後半の高濃度Pu239だけです。

Puradioactiveplutoniumisotopepuradihttps://www.dreamstime.com/pu-radioactive-plutoniu...

一方、民生用原発から出るプルトニウムはPu240で、これはそのままでは軍事転用はできません。
よく何発分のプルトニウムというガサツな言い方をメディアはしますが、商用プルトニウムと軍用プルトニウムは別物です。
この軍事用プルトニウムであるPu239を、日本は保有していません。 
世界の核分裂性物質の量 - 核情報によれば、日本の軍用プルトニウムの保有量は文字どおりゼロです。 
反原発・反核論者たちは、「日本がプルトニウム備蓄して核爆弾を作る気だ」と主張していますが、ナンセンスです。
http://kawasakiakira.at.webry.info/201507/article_14.html

それは「できる」というだけで、軍事的合理性を考えない妄論です。
日本が国策として核兵器を作るとなると、中国や北朝鮮の中距離核を抑止しうる同等のものが必要です。
そのためには、たとえば米軍が運用しているMk85核爆弾は約8メガトンですから、最低でもその程度の破壊力が必要となります。
原発の副産物として作られるPu240は不純物が多く、不発の確率が非常に高いために、これを濃縮して軍用Pu239するためのプラントが必要です。
このプラントが日本にはありません。作ればいいのですが、そのためには立地確保から始めなければなりませんから、10年単位の時間が必要でしょう。
たかだかといってはナンですが、代替航空施設を作ろうとしている辺野古ですから県と20年間もめているのですから、推してしるべしです。
ですから私は兵器級プルトニウムを作る濃縮プラントを作ることは、技術的にはそう難しくありませんが、政治的にはかぎりなく無理だと思っています。

核爆弾本体はちょっと優秀な理系大学生がクラブ活動で作れるていどの技術レベルですが、仮になんとかして核爆弾を作ったとしても、次の壁は本当に爆発するのか検証をせねばならないことです。
よくある誤解は爆弾本体が単純なために容易にできてしまうと錯覚することです。
核爆弾は本体そのものより付帯する諸々の要素のほうが膨大なのです。
仮に出来上がっても、モノがモノだけに、作りましたでは終わらず、その威力や爆発特性などを実際に爆発実験せねばなりません。 
そこで第2の核実験の壁が立ちはだかります。 
核実験をしないと、予定されたスペックどおりの性能がでるのか、不具合がないか検証できません。 

すると考えるまでもなく、日本国内に核実験場などができる場所はありません。
日本は狭すぎるのです。それが広大な砂漠を持つ米露中との大きな違いです。
もちろん、フランスなどのように海外県でやるという暴挙はできませんし、外国が貸してくれるはずもありません。

ひとつだけ抜け道があります。それはすべての実験を、スパコン上の仮想実験をすることで代替することです。
実際に、中国はそれを心配しているようです。
http://news.searchina.net/id/1584694?page=1 
コンピュータ・シミュレーション核実験とは、臨界前核実験のことで、実際の核爆発を伴わずにバーチャルにやってしまおうということで、既に核保有国は実用化しています。

技術的には可能です。ただし、核実験のコンピュータシミュレーションでやるとしても元種が要ります。
米国やフランスもスパコンで臨界前核実験をシミュレートしていますが、それは既に実際の実験をして入力する諸元データーを持っているからです。
その実データーを得るためにフランスは、世界中の轟々たる批判を尻目にムルロワ環礁で核実験を強行したのです。

Bom00100564977ムルロワ環礁核実験https://www.jiji.com/jc/d2?p=bom001-00564977&d=011...

いうまでもなく、日本にはこの元種に当たる実データがありません。もちろん米国ですらこんな物騒なものを貸してくれるはずもありません。
ですから、日本に世界一のスパコン技術があろうとなかろうと、商用プルトニウムがあろうと難しいのです。
ただし、実験段階を飛ばして実戦配備という手もあることはありますが、そんな実際に爆発するかしないかわからないようなものは、大戦末期ならいざ知らず、現代では笑い物になるだけでのことです。
日本が作らねばならないのは、負けそうになってヤケッパチで作るものではなく、あくまでも「平時の抑止力」だからです。

第3に核弾頭の小型化や再突入技術をクリアしたとして、その運搬手段について考えてみましょう。
弾道ミサイルについては、日本は世界最高水準のものを既に持っています。
だからすぐに独自核武装ができると思ったら大間違いです。
H2やH3、イプシロンもそのままでは使えないのです。

というのは日本の国土は縦深が浅い国です。日本列島は前線から後方までの縦の線が極端に短いために、弾道ミサイル基地を隠しておくことが難しい地形です。
双方が核を保有している関係において相手方は、まずこちらの核報復能力を奪いにきます。
つまり敵が第1撃でねらう目標は核ミサイル基地ですが、これを地上で隠す場所は日本にはない以上、海に潜って水中から発射する水中発射弾道ミサイル(SLBM)を開発するしかありません。
その潜水艦は、深海深く沈潜し、静かに命令を待つ性格ですから、息が短く搭載能力に余裕がない通常動力型潜水艦は不適です。
したがって戦略原潜が必要です。

20101216165948戦略原潜http://d.hatena.ne.jp/masousizuka/20101216/1292486...

これもやってやれないことはないでしょうが、未知の領域ですから10年単位で考えねばなりません。
日本が国策として独自核武装をするということは、単独の核爆弾を作ればいいということではなく、その実験方法、原子力潜水艦などとトータルなパッケージで考えねばならない問題なのです。

このように考えてくると、政府や自民党国防部会が「検討を開始」と宣言することはできますし、それはそれで一定のブラフにはなりますが、実際には極めて困難である私は思います。
白けさせてすまないのですが、ひとり独裁国が発射する核ミサイルを防ぐためには、現実的にはMDイージス艦か、イージス・アショア、ないしはTHAADしかありません。
政治的には非核三原則という時代遅れの虚構から醒めて、「持ち込ませる」ことを真剣に政治日程に載せるべきです。

私は自主防衛力は強化するべきだと思っていますが、かくほど左様に 「戦後」が作った壁は厚く複雑なのです。

 

2025年12月21日 (日)

日曜写真館 人悼み人なつかしみ冬の朝

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黒々と明けて白々冬の朝  稲畑廣太郎

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鳥群れがとびだす冬の朝日かな 小川えいいち

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五時はまだ星の綺麗置く冬の朝 稲畑汀子

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ミルクのごと冬の朝日が体内へ 田中空音

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星の綺羅仰ぐ旅立冬の朝  稲畑汀子

 

2025年12月20日 (土)

非核三原則は金科玉条なのか

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共同が「官邸幹部」のオフレコ会話を記事にするという卑劣な手段で核保有について煽っています。
いうまでもなくオフレコを記事化するのは重大な信義違反で、以後このての議論は表面に出なくなるだけのことです。
しかしこれで核保有の議論が立ち消えになったわけではなく、秘密、かつ真剣に検討を続けられるというだけのことです。

高市政権で安全保障政策を担当する官邸筋は18日、「私は核を持つべきだと思っている」と官邸で記者団に述べ、日本の核兵器保有が必要だとの認識を示した。発言はオフレコを前提にした記者団の非公式取材を受けた際に出た。同時に、現実的ではないとの見方にも言及した。核保有発言は、唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」の実現に取り組む政府の立場を著しく逸脱するもので、国内外で反発を招く可能性がある。 高市政権は日本が平和国家として堅持してきた「非核三原則」の見直しなど、安保政策の大規模な転換を検討している。
非公式取材で記者団から核保有に対する考えを問われ、官邸筋は核保有が必要だとした上で「最終的に頼れるのは自分たちだ」と説明した。一方「コンビニで買ってくるみたいにすぐにできる話ではない」とも話した」
(共同2025年12月18日)
首相官邸筋「核持つべきだ」 安保担当、非公式取材で|47NEWS(よんななニュース)

やれやれオフレコを暴露して、切り取りかい、たいしたメディアですな。
もちろん今の日中関係にこういうガソリンを投下したら中国は大喜びです。

首相官邸幹部核保有発言を巡り、中国外務省報道官は19日の記者会見で、「一部の日本人が国際法を破り、核兵器を保有するという危険な企てを抱いていることを暴露した」と反発し、「中国と国際社会は高度に警戒しなければならない」と主張した」
(読売12月19ニチ)
官邸幹部の核保有発言、中国外務省報道官「危険な企て暴露」「中国と国際社会は高度に警戒を」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

共同の意図は見え見えで、中国様、どうぞ高市政権を叩き潰して下さいませ、というお願いにすぎません。
自分ら左翼メディアがいくら高市氏を叩きまくってもびくりともせずに支持率は70%越え。
こんなに自分らは無力だから、オレらに代わってどうぞ中国様叩いて下されというわけです。いったいどこの国のメディアなんだか。

20251220-050654

「非核三原則」について知ろう|ニュースがわかるオンライン

今日のメディア報道には「国是たる非核三原則を変えるのか」という記事で溢れましたが、ちょっと待って。
そもそも非核三原則は国是でもなければ、金科玉条でもありません。

ただの国会対策だったと、阿比留記者が述べています。

「三原則は佐藤氏が国会対策上唱えたものにすぎなかった。かつて安倍晋三元首相は、自身の大叔父に当たる佐藤氏が三原則に言及した経緯について筆者にこう語っていた。
「佐藤氏は『政府として非核三原則を順守する』と述べたが、あの答弁は(野党だった)公明党に国会に出席してもらって沖縄返還協定を採決するための取引にすぎなかった。国是といってもそんなものだ」
それを公明が「国会質問で初めて政府に迫ったのは公明だ」(山口那津男元代表)と手柄を誇り、日本社会の核アレルギーも手伝って歴代政権が踏襲する中でやがて国是とまで持ち上げられるようになった。出発点は「そんなもの」だったのである」
(産経2025年11月20日)
国会対策から「国是」に化けた「非核三原則」の欺瞞と限界 阿比留瑠比の極言御免 - 産経ニュース

非核三原則がいかに現実から浮遊したものか、少し考えればわかるはずです。
日本は中国、ロシア、北朝鮮という日本を敵視する三つの国に隣接して存在しています。
しかも中国に至っては軍事的圧力を強める一方です。

こういう中で米国の拡大抑止だけがかろうじて日本を核攻撃から守っている、というのがほんとうの姿です。
そして米軍の艦船や航空機が核を搭載しているかどうかなんて自己申告にすぎません。
たぶん米軍は「その質問には答えられない」とあいまい路線を貫くでしょう。

その上、トランプとなって米国の核の傘の信頼性そのものが揺らいでいるから日本も核保有を考えたほうがいいんじゃないか、というだけのことです。
現実にできるかどうかは別次元の話です。
あくまでも議論はフリーでなければどうにもなりません。

立憲はさっそくこの共同の煽りに反応して政局化しようとしましたが、自分らが政権にいた頃はこう言っていたのです。

「そもそも政府はこれまで三原則の堅持をうたいながらも、米国が国内に核兵器を持ち込む場合もあり得ると答弁してきた。民主党の鳩山由紀夫政権時の平成22年、当時の岡田克也外相は国会で、有事における核兵器を搭載した米艦船の国内寄港や米爆撃機の飛来について、次のように述べた。
「非核三原則をあくまで守るか、それとも国民の生命の安全を考えて異なる判断を行うかは、そのときの政府の判断であって、今からそれを縛ることはできない」
国会で三原則の堅持を明言しなかった高市首相を厳しく追及した岡田氏自身、現実的には例外があることを認めているのである」
(産経前掲)

もうすでに非核三原則のうち「持ち込まない」はお題目にすぎなくなっているのです。
それを野党もメディアもよく知っていながら、政局化したい一心で大騒ぎしているだけのこと。
ならばおおっぴらに議論したほうがよくはないのですか。

 

 

2025年12月19日 (金)

EV墓場を知っていますか

Sndddf

中国には「EV墓場」という面妖なものがあります。
YouTubeでも見ることができます。 

「中国は、最近電気自動車の製造・販売台数で世界のトップクラスに躍り出ました。しかし、その台頭には少し恐ろしい側面があるのかもしれません。最近YouTubeに投稿された映像では、中国の自動車メーカーが政府の優遇措置を受け、資金を調達し、販売台数を伸ばすために何か怪しい行為が行われていることが明らかにされています。
今回のドローン映像には、何千台もの放置された中国の電気自動車で埋め尽くされた広大な畑が映し出されています」
(テスラニュース2023年6月22日)
中国で大量に放置されるEVの墓場、広大な畑に何千台もの電気自動車は一体なぜ?

20251219-023646

テスラニュース

まぁ、この「EV墓場」を告発したのが他ならぬテスラですから割り引いて見た方がいいのでしょうが、とまれ中国がハンパでない供給過剰になっていて叩き売るか、捨てるかしているのは確かなようです。
中国で続々出現 EVの墓場【CATCH THE WORLD】

EVはよく言って上げれば「未完の商品」、悪くいえば失敗商品です。
自動車技術における途上国でも簡単にできてしまいます。なぜなら、アレは自動車であって自動車でないからです。
シャーシの上にバッテリーをポンと乗せて運転装置を取り付け、それをお好きなシェルをくるめば一丁上がり。
人類が160有余年、いまや完成の域に達した内燃機関をバイパスしてしまえるんですから、すごいといえばすごい。
スゴイどころか、いまや内燃機関を押し退けて自動車産業の覇者になりかかっていました。

これを国家ぐるみで推進したのが中国です。
メーカーに生産補助金をつけ、買えばこれまた補助金がつく、国が竹馬を履かせ続けてEVを作り続け、余剰となって外国に大規模輸出をかけました。
というか中国政府はハナから世界の自動車産業の覇者となるきがムンムンでした。
世界のEV普及の動向はこのようになっています。

20251219-030622

EV充電エネチェンジ 

「2024年の世界の電気自動車の販売台数は1700万台を超え、このうち64%が中国、18%がヨーロッパ、8%がアメリカで販売されました。保有台数は5800万台に達し、中国・ヨーロッパ・アメリカが世界の電気自動車保有総数の約93%を占めています。
市場1位の中国は、2024年の電気自動車販売台数が1130万台と、世界の3分の2(64%)を占めています。保有台数は3400万台で、世界の半分以上の電気自動車が中国にあります。
市場2位はヨーロッパで、2024年の電気自動車販売台数は318万台と世界の18%を占めています。電気自動車の保有台数は1410万台で、世界の24%の電気自動車はヨーロッパにあります。
ヨーロッパの中でもっとも市場が大きいのはドイツです。ドイツでは2023年末にEV補助金が停止となり、電気自動車販売台数は2023年70万台から57万台へと減少したものの、依然としてトップの座を維持しています。次いでイギリスが55万台、フランスが45万台となっています。
第3位の市場はアメリカで、2024年の電気自動車販売台数は152万台と世界の8%を占めています。保有台数は630万台で、世界の10%の電気自動車がアメリカにあります。
日本のEV市場は依然として小規模です。2024年の販売台数は10万3000台と世界の0.5%、保有台数は62万台で世界の1%にとどまっています」
(EVエネチェンジ 2025年5月28日)
【2025最新版】世界の電気自動車(EV)の動向は?普及率から総台数、販売台数まで解説 |EV充電エネチェンジ 

ヨーロッパで普及したのはEVが売り物にしたゼロエミッションという売り文句に騙されたのです。
ゼロエミッションとは、事業活動やものづくりから発生するあらゆる廃棄物や排出物を限りなく「ゼロ」に近づけるという考え方ですが、たしかにEVは車両から排ガスを出しませんが、発電段階では排ガスが発生し、電気を大食いします。
搭載される電池の環境負荷も大きく、廃棄しようとすると大変なコストがかかります。
さらに電池寿命は8年程度で、電池寿命が切れたら乗せ代えるためには新車一台分のコストがかかります。
ですから内燃機関の車両のように数十万キロ走るらうなことはできず、完全に使い捨て自動車です。
つまり生産から廃棄まで含めたライフサイクル全体の環境負荷では、内燃機関にはるかに劣ります。
また冬場はバッテリーが起動しないために凍死するものさえ現れ、バッテリー発火事故も絶えません。
これが失敗商品だと言われるゆえんです。
こんなモノを大規模に作り出し、世界に売りさばいた中国の罪は重いでしょう。

EVが溢れだした最大の原因は生産過剰です。
中国は今、ありとあらゆる製品が過剰生産に陥っています。
日本でも液晶テレビなどはそのいい例で、エコポイント駆け込み需要が終わった瞬間、叩き売りが始まり、家電メーカーの地獄の釜が開いたのは記憶に新しいことです。
ただし通常、自由主義経済においては過剰生産は、このような冷酷な市場の調整能力によって淘汰されます。要するに、売れてければ、作らなくなるという当たり前の調整弁が機能します。 

ところが中国では経済の調整弁がバカになっています。生産能力が過剰なのは大部分が国有企業だからてす。 
こうした国有企業が生産能力の拡大に走るのは、業界における生産規模の「順位」が大変に重要だからです。 
国務院の国有資産監督管理委員会(国資委)から新しい投資を受けられるのがこの生産規模の「順位」なので、これに食い込むことは企業にとって死活問題となります。 
「順位」を下げれば、同業他社が国資委融資を得てしまってシェアを奪ってしまうために、負けじと生産設備にジャブジャブと投資を注ぎ込むことになります。

中国企業にとって真の敵は、海外企業ではなく自国の国有企業です。
中国のEVメーカーはBYD、NIO、Xpeng、Li Autoなど40社以上に登り、ひしめき合って、つぶし合いをしています。
同業他社に勝てないと、自分の地位は来期からなくなってしまいます。
また、地方政府にとっても自分が目をかけた企業が伸びれば賄賂が増えます。

共産党・政府幹部とその一族が汚職によって得た富は、1990年代末にGDPの13~17%(胡鞍鋼・清華大学教授推計)に上ると推定されています。
もはや賄賂は文化というより、経済の重要な一部だと考えたほうがいいのかもしれません。
このような融資と賄賂の関係で堅く結びついた政財癒着は、企業が潰れるところまで突っ走ることになります。

ちなみに、このような狂熱経済の爆発によって、中国の格差は天文学的に拡がってしまいました。
所得格差指標・ジニ係数は0・61(中国人民銀行・西南財経大学調べ)とアフリカの崩壊国家並みです。
革命が起きるのが0.4以上といわれていますから、中国民衆にとって一番必要なのは「共産党」でしょうね(笑)。
そのようなわけで、しなくてもいい企業拡大を経済合理性を度外視して死に物狂いでしたあげく、倉庫には売れ残った製品が山と積まれることになります。 

たとえば中国には太陽光パネルメーカーだけで十数社ありますが、最近その大手LDKソーラーも倒産し、社長は国外逃亡して行方知れずです。
太陽光発電資材メーカーのGCLも倒産寸前で、在庫したウエハーだけでなんと2億枚といいますから、とてつもない規模です。
パワーコンデショナー(インバーター)の世界シェア4割を握るSMAソーラーは、太陽光発電関連資材の暴落を受けて売り上げ激減で、とうとうリストラに踏み切り、株価大暴落で風前の灯火状態。
これらの生産過剰に陥った中国企業は日本の太陽光発電事業にむらがり 、いまやそのパネルは100%ちかくがメイド・イン・チャイナです。
税金同様に搾り取られる再エネ賦課金で、日本人は中国企業を食わしてやっているのですからやってられない。

このような馬鹿げた生産過剰がヨーロッパを飲み込み、やっとEUも脱炭素政策に内在する嘘に気がついたようです。
なにが本当に環境負荷が少ないのか、次世代の自動車はEVなのかどうか、EVに各種補助金をつけねばならないのか、ようやくその疑問にぶち当たったのです。



2025年12月18日 (木)

EU、やっとEVの幻から覚醒(遅いよ)

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EUがいままでの内燃機関自動車販売禁止を撤回しました。
つい先日まで内燃車は新車販売させない、ハイブリッドも締め出す、なんて言ってたのに、勝手なもんです。
事実上のEV敗北宣言です。

「欧州連合(EU)は内燃機関車に対する事実上の新車販売禁止を撤回し、環境に優しい輸送機械への移行で自動車メーカーがいっそう柔軟に対応できるようにすることを提案した。
この提案で、欧州は電気自動車(EV)販売が一段と鈍化することが示唆され、前バイデン政権が導入した燃費基準の見直しを進める米国の路線に近づく。世界的にも、グリーン化を利益に結びつけることに自動車メーカーは苦戦し、 米フォード・モーターは15日、EV事業の抜本的な見直しに伴い195億ドル(約3兆円)の費用を計上すると発表した。
EUはガソリンやディーゼルを燃料とする内燃機関を持つ新車の販売を2035年から禁止するはずだったが、新たな提案でこの要件を緩和する。2030年代半ばまでに目標とする自動車の排ガス削減率は、現在の100%から90%に引き下げる」
(ブルームバーク2025年12月16日)
EU、内燃機関車の新車販売禁止を緩和-苦戦の欧州自動車業界を支援 - Bloomberg

こうなるのはわかりきっていました。要するに、EUはチャイナのエコ詐欺にやられたのです。
チャイナのBYD(比亜迪股份有限公司 )は圧倒的にEVのみならず自動車生産でWWやトヨタを追い抜こうとしていました。
中国の経済誌「財新」はEVで世界一となったと書いています。

「中国のEV(電気自動車)最大手、BYD(比亜迪)の事業規模がアメリカのテスラをついに上回った。
BYDは3月24日、2024年の通期決算を発表。同年の売上高は前年比29%増の7771億200万元(約16兆782億円)に達した。一方、テスラが1月29日に発表した決算によれば、同年の売上高は前年比1%増の976億9000万ドル(約14兆6621億円)だった。
なお、BYDの2024年の純利益は402億5400万元(約8329億円)と前年比34%の大幅増益を記録。中国自動車市場の熾烈な価格競争にもかかわらず、過去最高益を更新する圧倒的な強さを見せつけた」
(財新2025年4月10日)
中国BYD、2024年の事業規模「テスラ超え」の衝撃 純利益も過去最高更新、PHVの急成長が原動力に | 大解剖 中国「EV覇権」 | 東洋経済オンライン

これを読む限り、いまや落ち目のテスラなどものともせずに世界一のEV自動車メーカー、いや自動車生産の覇者に向けて邁進しているように見えました。
なぜここまでチャイナのEVは強いのでしょうか。変に思いませんか、つい10年ほど前まではまともな車さえ作れなかったチャイナが、電気自動車がトレンドとなったやいなや世界トップに躍り出ようというのですから。

理由は簡単。チャイナはEVの核心である電池技術と市場シェアを握っているからです。
先進工業国では原材料の環境負荷が高い素材は生産できません。やればできるのですが、コスト的にあわないのです。
ところがチャイナでは環境負荷を無視して生産できるため安く生産でき、安く輸出できたのです。
このれに先進工業国は飛びついてしまったわけです。ガッチリとチャイナの仕掛けた罠に掛かってしまったのですね。

安価なのです。確かに環境汚染を中国に押し付ける形にはなりますが、それが正しいかどうかは別問題です。同時に、レアアースと同様、中国にシェアを握られるリスクも内包しています。
そしてこの怪しげな罠にハマったままで、「脱炭素・温暖化阻止」を絶対疑い得ない真理と祭り上げてしまったのですから、処置なしです。
かくして基幹的素材を握られ、脱炭素イデオロギーにがんじがらめとなって、主力産業だったはずの自動車産業を滅亡の道に誘い込んだのです。

日本はCOPに行くと必ず「化石大賞」なるものをもらいますが、知ってのとおり世界のCO2の大部分は中国と米国で排出しています。

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国別の二酸化炭素(CO₂)排出量-統計資料から調べる|かながわ気候変動WEB

しかしこんな事実を無視して環境運動家はなぜか日本だけを標的にしたがります。
中国のCO2排出をストップしない限り、わずかな先進工業国の排出を止めてもなにも変わりません。
本気で炭素排出を減らしたいのなら、火力発電所を日本が作っている炭素排出量が抑えられた発電機に切り換え、自動車をハイブリッドにすればよいのです。
しかしEUはそれらを全否定してしまったのです。

ドイツは、「地球環境のためなら死ぬのは覚悟」という意識高い系政策を強引に進めた結果、エネルギーは常に不安定に陥り、電気代は高止まりし、EV推進によって国内の自動車産業は壊滅的なダメージを受けました。
ドイツ社民党のシュレーダーは強引に脱原発を実行し、それによるエネルギー不足をロシアからの安価な天然ガス輸入で補おうとしました。

シュレイダーは原発廃止で地球にやさしくとばかりにキレイゴトを言っていましたが、その裏でプーチンと癒着したパイプライン計画ノルドストリームの拡大を進め、退任の後には、ロシア国営エネルギー企業のガスプロムなどの役員を歴任するという売国ぶりです。

そしてこの脱原発を完成させたのがメルケルでした。
彼女が推進した再生可能エネルギーは、太陽光や風力などの自然エネルギーを極限まで拡大し、不足時にはフランスから原子力発電由来の電力を買うという構造を作り出しました。

これでドイツの製造業は高いグリーン電力で競争力が失われる一方で、ロシアからの天然ガスで自家発電を回して凌ぐという矛盾したことをせねばならなくなりました。

この構造が壊れたことで、ドイツの産業界の国際競争力は危機的状況となりましたが、受難はまだ続きます。
この歪んだエネルギー構造は、ウクライナ戦争によるロシア制裁によりパイプラインが閉鎖、ドイツは必死になって新たな天然ガス供給国を探すはめとなります。
それだけにとどまらず、脱炭素エコノミーに乗ってドイツの自動車産業はEVへの全面的切り替えを行いました。
フォルクスワーゲンやアウディはEVに社運を賭けてしまったのです。

このEV熱病は世界的なものでした。
トヨタを唯一の例外として、ほぼすべての自動車企業がEVこそ次世代のものだと思ってしまったのですから深刻です。
EV老舗のテスラは、この自動車産業の複雑さに頭をぶつけ、いまでももがいています。

そりゃそうです。自動車購入は5年後前後に中古で売ることを前提にして考えられています。
オートローンも保険もそれが前提ですが、ではまっさらの未経験者が中古車市場という価格があってないようなマーケットをどう作ったらよいのでしょうか。
まずまちがいなく、テスラの5年落ちなど無価値なゴミです。
電池を取りかえねばならず、新品の電池は自動車1台分もするからです。
ましてや海のものとも山のものともわからないBYDのEVなど、中古車市場ではゴミ扱いされるはずです。
もっともBYDは、ゴミになってもかまわないくらいに思っていることでしょう。
BYDは政府の手厚い補助とEV誘導政策を受けて、わずか数年で世界有数の自動車企業に成長したような会社です。
中国製EVの成長率は、2018年から2020年までの3年間は5%程度でしたが、2021年には16%、2022年には29%、2023年には38%と急速に拡大しました。

販売台数別でみると、2021年は325万台、2022年は590万台、2023年は810万台と脅威の伸び率をみせています。
いまや世界のEV市場を独占しつつあるBYDは、ブラジルなどに生産拠点を拡げて非人道的な労働で工場を建設しています。

EVは未完成な技術です。
EVは20万キロ~30万キロ走行すると駆動バッテリーがダメになり、交換費用だけで車が1台買えるような値段がします。
ガソリン車なら100万キロは走れるでしょう。
そのうえに寒冷気候に弱く、寒いとすぐにバッテリーが上がります。
寒いと充電量が半分程度で止まったり、充電時間がおそろしくかかります。
それを警戒して、ガソリンを使った自家用充電器を車に積んでいる人が増えています。
そりゃそうでしょう、零下の気温でEVに充電機がない田舎で止まられたら、下手すりゃ死にます。
ですからEVの新車を買っても長続きせずにガソリン車やハイブリッド車に戻ろうとして中古車屋に持ち込んでも、EVの査定は捨て値です。

そもそもその電気自体はどのようにして確保されているのでしょうか。
仮に中国のように全面的にEV化した場合、エネルギー源の確保はもとより、発電所、送電網、変電設備、発電に必要な燃料の増産など、総合的に強化していくしかありません。
エネルギー源は原油やLPGですから、常にエネルギーに飢えて世界をさまようことになり、実際そうなりました。
再生可能エネルギーを拡大するためには、日本では「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という名目で電気代に上乗せしています。
とんだ増税ですが、この賦課金によって各家庭の電気代は1割ほど高くなっています。
このように国民負担を増やして、国民生活を圧迫しながらEVを進めていたわけです。

つくづくドイツに学ぶな、と思います。

 

2025年12月17日 (水)

ウクライナを守る枠組みが誕生間近

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ウクライナが求めてきたNATO並の安全保障の枠組みができつつあります。


「アメリカや欧州諸国、ウクライナの代表団は15日、ドイツ・ベルリンで、ウクライナでの戦争終結に向けた協議を行った。アメリカは協議後、北大西洋条約機構(NATO)の条約に相当する安全の保証をウクライナに提供する用意があると表明した。
米当局者は、この「非常に強力な」保証は、NATO条約の第5条をモデルにしたものだと説明。ロシア側がこれに同意することを期待していると述べた。第5条では、加盟国に対する武力攻撃は全加盟国への攻撃と見なし、防衛に協力すると定めている」
(BBC2025年12月16日)
アメリカ、ウクライナに「強力な」安全の保証を提供する意向示す 領土問題は解決せず - BBCニュース

「NATO並」という苦しい表現なのは、NATO加盟に反対している米国と一部のヨーロッパの国があるからです。


NATOへの加盟は、ヨーロッパの自由と平和の価値を共有する国にとって大切な一歩で、以下の条件が揃わねばなりません。

①民主主義の原則。 政治体制が民主主義であること。
②少数民族の公正な扱い。
③市場経済の確立。
④平和的解決。 国際紛争を平和的に解決する能力。
③軍事貢献。 NATOの集団防衛に貢献できる軍事力。
④文民統制。 軍隊が文民の民主的な統制下にあること。

ヨーロッパが、ロシアにすり寄る米国の機嫌を害さないように、慎重にまとめた結果です。
表向きは「ウクライナがNATO加盟を断念する」と言わせつつ、実態は「NATO第5条」に準じるような枠組をつくろうというのですから大変でした。
ともかくトランプが、ウクライナに領土は割譲しろ、NATOには入れん、さっさとドンバスを明け渡せですから、話にならない。
こと外交に関しては、バイデンのほうがよほどましな大統領でした。

ヨーロッパとウクライナとしては、最大の支援国であることはまちがいないのですから、表向きはヘーヘー仰せのとおりにいたしやす、と言いつつ、しっかり今回のような代替案で補填しているというわけです。


 

2025年12月16日 (火)

やっぱり「南京大虐殺」ですか

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案の定、中国は歴史カードを切ってきました。
伝統的な日本攻撃カードです。

「【南京時事】旧日本軍による南京事件から88年を迎えた13日、中国江蘇省南京市の大虐殺記念館で国家追悼式が開かれた。式典に出席した石泰峰共産党中央組織部長は演説で「軍国主義を復活し、戦後の国際秩序に挑戦し、世界の平和・安定を損なういかなるたくらみも決して容認しない」と述べ、日本の右傾化を念頭にけん制した。
 中国は2014年からこの日を「国家哀悼日」に指定し、毎年追悼式を開催している。習近平政権が今年を「抗日戦勝80周年」と位置付けているのに加え、高市早苗首相の台湾有事発言に中国側が強く反発する中での式典開催となった」
時事2025年12月13日 
中国、「軍国主義の復活」日本けん制 南京事件88年で追悼式典:時事ドットコム

もううんざりするくらい繰り返し議論されてきたテーマです。
政治的にキッチリ色分けされていて、左翼は大虐殺派、保守系は虐殺幻派となっています。
で、私はといえば、ことこのことに関しては「限定的にあった」派です。

中国と日本の「大虐殺」派筆頭の東大の加藤陽子氏は『満州事変から日中戦争へ』という本の中で40万人説を出していますが、荒唐無稽にもほどがあります。 
こういう人とは、中国共産党・政府と同じでまったく議論そのものが成立しないと思います。
最後になると、「侵略した土地で1人でも殺せば虐殺だ。侵略した日本が悪いぃぃ」という感情論になるのは目に見えているからです。 
南京事件や慰安婦問題かイヤなのは、事実の探求ではなく、初めから結論を用意した政治闘争になっているからです。

そして、中国共産党の豊富なプロパガンダと、日本外務省の比類ない無為無策によって、宣伝の主要な場を欧米、カナダなどに移行し、「南京アトロシティ」「南京マサカー」として完全に根付いている現実があります。 
また、1930年代と現代では人権感覚が隔絶しており、兵士の殺害についても極めて狭く解釈されるようになっています。 
これは慰安婦問題でも見られたことで、管理売春が世界の一般的制度だった戦前と現代を並べて、今のラジカル・フェミニズムの規範で過去を裁こうとしています。 
当時の人々は、当然のこととして当時の価値観、当時の制度と法の下で生きているわけですから、本来後世の私たちは腰をかがめて、当時の人たちの視線に立たねばならないはずです。 

そこで、私はひとつの価値尺度として、国際法的にはどうなのだろうかという視点を考えてみました。
というのは、戦時国際法であるハーグ陸戦条約・ジュネーブ条約は80年前と今も共通だからです。 
私が今回言っていることは、どこそこで日本兵が何百人殺したというレベルの話からいったん離れて(後述しますが)、それが「組織的・計画的虐殺なのか、それとも戦闘行為なのか」ということです。
私は計画的大量虐殺はなかったと思います。日本軍に30万人という那覇市人口に等しい市民を丸々殺害し、処理する能力も意志もありませんでした。

Photo_21937年12月に南京城陥落で喜ぶ日本兵。https://the-liberty.com/article.php?item_id=10397 

かといって、日本がまったく白い手袋だったとも思いません。 
掃討戦における捕虜の大規模な殺害、便衣兵摘出時の一般市民殺害は、日本軍側記録にも残されています。
戦闘員との交戦と違って、丸腰の捕虜と便衣兵はいわばグレーゾーンなのです。このことに触れないと公平さを欠きます。 
やや詳しく見てみます。

南京戦において、中国軍が全面崩壊し、掃討戦に移った1937年12月14日から、日本軍は大量の中国兵を捕縛しています。


①第13師団 幕府山付近        ・・・1万4777人 捕虜(飯沼守日記)
②第16師団 堯化門鎮          ・・・7200 捕虜(第36連隊戦闘詳報)
③下関など南京北側           ・・・3096 捕虜 (第33連隊戦闘詳報)
④城内安全区摘出           ・・・約2000 便衣兵(佐々木到一私記)
⑤城外                ・・・数千名 便衣兵(同上)
⑥第9師団 南京北部掃討地域          ・・6670 便衣兵(歩兵第7連隊戦闘詳報)
⑦第6師団 下関          ・・・約5500 捕虜(第45連隊史・第6師団戦闘詳報)
⑧第6師団 漢中門外 捕虜と認めず ・・・約1000名 捕虜と認めず(折田護日記)
⑨第114師団 南京城南部              ・・・1659 捕虜 (歩兵第66連隊第1大隊戦闘詳報)
⑩国崎支隊 江興州               ・・・2350 捕虜 (国崎支隊戦闘詳報) 
・計                              ・・・4万5000人
・うち処刑が記録されているもの①②③④⑤⑧⑨  ・・・計約4万人
・捕虜として認められて殺害された者①②③⑨   ・・・計2万6730人

これらは部隊の戦闘詳報と従軍した兵士の日記などによる数字ですが、ひとり単位までカウントされていても必ずしも正確ではありません。 
これは戦闘詳報では往々にして戦果を誇大に書いてしまう人間心理が働くからで、上の表にある「佐々木到一私記」は有名な資料ですが、「当師団のみで5万人を解決した」と書いている部分もあります。
ですから、おおよその手掛かりとなる数字ていどに押さえていただきたいのですが、これに民間人で便衣兵と誤認された数を加えて、おおよそ4万人前後となります。
この数字に民間人被害数を加えたものが、秦郁彦氏などが唱える3.4万~4.2万という「中虐殺」説です。(『南京事件・「虐殺」の構造』)

Photo_3入城式。戦友の遺骨を抱いている。

「便衣兵」は現代では死語となっていますが、中国特有の市民の姿をした兵隊です。今風に言えば、テロリストと言っていいでしょう。
私服を着ているのにいきなり爆弾を投げてきたりします。もちろん国際法違反ですが、中国はこれをおおっぴらに行ったために、日本はこれに悩まされ続けました。
この戦法が問題なのは、軍が一般市民までも「怪しい奴ら」とみてしまうことです。
米軍が4千人ものテロリストによる戦死者を出したイラク戦争を見れば、お分かりいただけるかと思います。まったくあれと同じ構図です。
レジスタンスがいけないというのではなく、大戦中のレジスタンスはドイツ軍からみればリッパなテロリストに写ったでしょうが、軍服は着ていなくても腕に腕章をしたり、揃いの徽章をつけたベレーなどをかぶっています。
レジスタンスは国際法的には「市民軍」(militia and volunteer corps )扱いを受けますが、正規軍同様に戦時国際法を守る義務は課せられていて、破ればただのテロリストとして裁判なし処分されても文句はいえません。

脱線しますが、よく「自衛隊はいらない。市民が守るんだ」と元気のいいことを言うリベラル文化人がいますが、そんなことをすれば侵攻軍によって真っ先に裁判なし処刑されるのでお止めください。
武器もない、その扱いも知らない「市民が戦う」って、それって竹槍持って本土決戦をするってことですか(苦笑)。本気でやったら地獄でしょうな。
それはさておき、一方軍人はジュネーブ条約によって、捕虜の資格を持ちます。
脱走を企てたり、抵抗をしない限り、捕縛した側もやたら撃ってはいけません。

Photo_4集めされた便衣兵。私服を着て民間人と判別不能。ヘルメットの跡などて判別したが、最後は雰囲気だったという。

では、この便衣兵はといえは、戦闘員が充たすべき以下の条件全部に違反していますから、アウトです。


戦闘員が充たすべき条件
①責任を持つ指揮官がいること。
②遠方から見てはっきりとわかる軍隊の徽章、軍服を着用していること。
③武器を隠し持っていないこと。
④戦時国際法を遵守した行動をとること。
1、To be commanded by a person responsible for his subordinates.
2、 To have
a fixed distinctive emblem recognizable at a distance.
3、 To carry arms
openly.
4、 To conduct their operations in accordance with the laws and
customs of war.

南京戦において中国軍の司令官は、中国文化の「エライ奴から先に逃げる」という文化を発露して、真っ先に逃げてしまいました。
しかも「お前ら死守しろ」と言って、降伏すらしなかったのですから話になりません。
卑怯もさることながら、指揮官は敗北した場合、敵軍に降伏を通知せねばなりません。
白旗を持った軍使が敵陣に赴き、「わが軍は本日何時何分を以て貴軍に投降いたしました」ということを通告し、「分かりました。では何時何分を以て戦闘行為を中止しますから、武器を捨てて陣地から出てきてください」という答えを貰わねばなりません。
これを攻める側が受諾すればその瞬間に休戦が成立します。
これが国際法的に「正しい負け方」なのです。

下の写真がシンガポール陥落時の英軍の降伏軍使の写真です。日本軍の先導者に率いられて白旗と国旗をもって従っています。これが文明国のスタンダードです。Hi英軍のシンガポール降伏。これが「正しい降伏」の仕方

南京戦の場合、あくまでも司令官・唐智生が降伏のための軍使を送って、降伏が日本軍司令官・松井岩根によって認められなければ降伏は成立しないのです。
よく勘違いされますが、兵隊が手を上げて投降した時点では捕虜としての要件を充たしていません。
本当に降伏する意志があるのか戦闘中では見極めがつかないし、武器を隠し持って攻撃されるかもしれないからです。
陸戦条約では投降した敵を殺傷することを禁じていますが、現実には中国軍のテロリストまがいの戦争をくぐってきた日本軍にとって、微妙なところです。

まとめておきます。


●投降兵(正規軍兵)
①武装解除の上で、捕虜として捕縛した投降兵を殺害することは違法。
②ただし、捕虜の敵対行為が原因で殺害した場合、状況により判断が[異なる。
③投降とほぼ同時に殺害した場合、戦闘中、戦闘行為の継続中ととるか、虐殺ととるかは個々に判断。

というわけで、私はこの捕虜殺害とされた約2万6千人に関しては、国際法的にも日本に非があると言われても仕方がないと思っています。

ただし、日本は当時捕虜条約を批准していなかったので、違法ではないとする説もあります。

 

Photo南ベトナム・サイゴンの崩壊の日。逃げた兵士が捨てた軍靴や装備が散乱している。

さて、司令官が真っ先に逃げてしまったために、それでなくても士気が高いとは言えない中国軍は我先にとヘルメットを捨て、軍服を脱いで市民から服を奪って隠れようとしました。
このために日本軍は、本来想定していなかった「摘発」をするはめになりました。
この時に戦闘で興奮している日本兵によって、多くの誤認殺害がなされたと思われます。
民間人の人数に言及した資料としては、スマイス調査報告がありました。かなり問題のある資料なのですか、スマイス報告書の数字はこうです。


・農村部の一般市民殺害数(対象は江寧県の一部・・・推定1000人以下。
・都市部
                          「兵士の暴行」・・・2400人
                        「拉致」されたもの・・・4200人
計                       死者3400人 拉致4200名

一方、安全区国際委員会という外国人居留者から日本大使館に提出された「南京暴行報告」によれば、安全区内における「殺人」は50名でした。
スマイス報告書は「拉致」が便衣兵摘発なのかどうかわかりませんし、もしそうだとしたら処刑された可能性があるわけでそれと重複カウントされた可能性があります。
したがって、農村部で1000人以下、都市部で2000~3000人(うち便衣兵の摘発が1000~2000人)、計3000~4000人ていどだと思われます。
また、この民間人被害者の相当部分、特に農村部の被害の多くは、軍規が崩壊した中国軍も関係していることは想像に難くありません。

Photo_5

また中国軍には督戦隊という味方の兵士が逃げないように、後ろから機関銃で撃つための特別部隊すらいました。
映画『スターリングラード』で冒頭にでてきますね。あのチャイナ・バージョンです。
この督戦隊が機銃を乱射して、軍服を捨てて逃げようとする自軍の兵士をなぎ倒していたという証言もあります。
私個人の推測としては、捕虜の違法殺害の2万6千人に、摘発時の誤認民間人殺害2000~4000人を加えた2万8千~3万人ていどだと推測します。
あるいは安全区国際委員会の民間人被害者50名が正しければ、一気に下がって2万6050人という事になりますが、なんともいえません。

「虐殺ゼロ」派は、捕虜が国際法要件を充たしていない、便衣兵処分は正当であるとしていますが、後者はともかくいったん受け入れた捕虜を裁判なし処刑したことはいかがなものでしょうか。
南京事件を、おおざっぱに見てきましたが、数字はとりようでいくらでも変化するので、あくまでもひとつの目安にすぎません。

問題は何度も繰り返しますが、「国家意思」の有無です。
南京一般市民を全員殺戮することを命じた大本営の命令書、あるいはその議事録、それを受けた中支派遣軍から師団への命令書、師団司令部から連隊司令部への命令書、現場指揮官への命令書などなど大量になければなりません。
よく敗戦時に焼却したという人がいますが、慰安婦問題もそうでしたが、軍というのは巨大な官僚機構ですから、上から下まで各級で文書が大量に残っていなければなりません。

とまれ便衣兵といい、督戦隊といい、戦争のルールがまったく違う相手と戦ったのが、当時の日本だったのです。
それは今に至るもまったく変わりません。

 

2025年12月15日 (月)

メガソーラーに規制始まる

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やっとメガソーラーに規制がかかりました。ほんとうにやっとというところでした。
岸田、菅、石破と3代に渡って再エネにゲタを履かせ続けたのですが、やっとこれで終止符が打たれます。

ところで麻生氏はいみじくも石破政権を「どよーんとした感じで、何にも動かないという感じがあった」 と評していますが、まさにその通り。
ゲル氏はこの批評にぶつぶつ言っているようですが、今の高市政権のように「世の中のことが決まり、動いている」という空気とは正反対でした。
鈍重で重苦しく、活気がなく、不細工で先行きが見えない。
とうぜん何事も決まらず、しかも大きな選挙をやるたびに政権基盤が大揺れなのですからなんともかとも。

今の高市政権で、日本がいきなり目が醒めたように政策が倍以上のスピードで動いています。
政権発足からわずか1.5か月で、いままで天井に張りついていたガソリン価格が140円台となったようにすばらしいスピード感があります。
なんだやりゃ出来たんじゃないですか、それをあれやこれや言い訳してネグってきただけ。
要は、前政権があまりに怠惰で「どよーん」だっただけです。

その中で日本のエネルギー政策を歪めてきた再エネに対する過剰な支援が見直されます。

「政府・自民党は大規模太陽光発電施設「メガソーラー」について、2027年度から新規事業に対する支援を廃止する方針を固めた。メガソーラーを巡る環境破壊などが社会問題化しており、東日本大震災以降の普及促進方針を根本から転換する。環境影響評価の実施も厳格化し、野放図な拡大に歯止めをかける」
(読売12月14日)
新規メガソーラー、電力買い取り価格上乗せ廃止へ…消費者が支払う再エネ賦課金が原資(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

経済的合理性が皆無な再エネがこんなに支援されてきたのは、脱炭素イデオロギーがあったからです。
だから立憲のように再エネを「国内(電力需要の)100%にする」なんて空論を政策に掲げた政党も出たわけです。
100%無理なだけでなく、200%国民を不幸にします。
いまでも風力、太陽光、地熱など合わせても8%に満たないのに、どこをどうしたら100%になるんだっつうの。
北海沿岸の風力発電から長距離送電網を作って、森林伐採しまくってまで「自然エネルギー」を増やしたメルケルのドイツですら、せいぜい2割台です。

Fig11

2018年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合(速報) | ISEP 環境 ...isep.or.jp

このメルケル・ドイツのFITを丸パクリしたのが日本のカン総理でした。これが悲劇の始まりです。
脱原発に熱心な民主党政権時代にはグリーンニューディールなんて言っていた米国も、早々と壁にぶち当たって、いまや原子力を増やそうとしていますし、トランプは化石燃料に舵を切りました。

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世界ひろしといえど、原発ゼロにして再エネを100%に近づける、なんてイっちゃったことを言っていたのは立憲のところくらいです。
そもそも「自然エネルギー」で唯一モノになるのは水力くらいでしたが、脱ダムやっちゃったのは民主党政権でしたっけね。
「自然エネルギー立国」なんて、イメージだけでしゃべっているからこうなるのです。

なぜそうなるのでしょうか。理由は単純です。
化石燃料資源が豊富にあり、したがって安価かつ安定したエネルギー源だからです。
これは経済産業省の試算結果にでています。
資源エネルギー庁「発電コストワーキンググループ資料」(H27.5)

まず2014年における、各種エネルギー源の価格比較です。

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資源エネルギー庁 発電コストワーキングチーム

なぜ企業は化石燃料を使い続けるのか、その理由はなんといっても安いからというのは上のコスト比較のグラフを見れば一目瞭然です。
安ければ使う、というただそれだけです。
しかし野放図に使えば環境汚染を引き起して、環境コストが増えてしまいます。
また原油価格が上昇すれば原油の消費は抑えられ、消費が抑制されるために原油輸出国は増産して価格を下げるしかなくなります。
こういった市場メカニズムで動くのが、化石燃料の特徴です。
なんといっても人類は産業革命以降、化石燃料とはもうかれこれ200年以上つきあってきていますから、自律的市場経済のシステムがしっかりと組み込まれているのです。

ですから、自由な選択が許される民主的経済システムにおいては、同じ目的を達成するための最小コストを目指しますから、化石燃料しか選択の余地はありませんでした。
ですから、なにが哀しくて、化石燃料の4倍もするような再エネを使わにゃならんのですか。(泣く)
再エネが増えたのは経済外的要素、つまり政治の強制です。

したがって、化石燃料以外を企業が使わねばならぬとしたら、それは経済外的強要、つまりは政府が強制的に化石燃料から再エネに転換するような政策をとった場合に限ります。
化石燃料には、炭素税をかけて高くしてしまい、一方で再エネはFIT(全量買い取り制度)というトンデモ制度で高く買い上げ、それを家庭や企業に再エネ賦課金で税金のように支払わせてるようなアコギなことをして、やっと再エネが増えたのです。
ひとつの政治目標を達成するために、無理やりに経済合理性に反する計画経済を押しつけているわけですから、うまくいくわけがありません。

こういう経済は政治によって支配できる、イヤなら税金高くして使えなくさせてやろう、オレの好みのものには補助金で竹馬はかせて、それを家庭と企業に払わせてやろう、というような発想を社会主義的思考といいます。
こういうことを考える人たちの脳味噌は芯までカチカチですから、地球温暖化阻止→火力発電削減→原発ゼロ→再エネなんて図式が並んでいるのでしょうね。

実はこれらの事柄は、なにも考えないとスッと矛盾なく繋がるようですが、実は矛盾した要件です。
というのは、地球温暖化の主な原因が二酸化炭素かどうかはとりあえず置くとして、現実にCO2削減をしようと思うと、もっとも手っとり早いのが、原子力を増やすことだからです。

原子力はなんせ二酸化炭酸ガスや硫黄酸化物をまったく排出しない「クリーン」なエネルギーだからで、ただCO2削減が目的ならば、化石燃料発電(火力)をさっさと止めるには、原子力に一本化するのが近道です。
ただし、3.11の福島事故のように事故が起きた場合、その規模と影響の時間尺の長さは巨大で、他のエネルギー源のそれとは比較になりません。
廃炉コストも馬鹿にならないという欠陥があります。

つまり原発もまた未完成な技術体系なことは確かですから、せいぜいが3分の1くらいにとどめておくのが無難なのです。
いま新世代原発の登場によって福島事故のような全電源停止状況でも炉心冷却可能なタイプが生まれてきてはいますが、むしろハード以外の耐用年数制限の問題、高濃度廃棄物の最終処分のあり方、核廃棄物と原発稼働数との関係(総枠規制)、あるいは核リサイクル施設の存続といった未解決な問題が山積しています。

これらの諸問題は、いくら新世代原発がステーションブラックアウトであっても炉心冷却出来るようになったといえどもつきまとう以上、原発は「今なくては困るが、そこそこに」というのが私の考えです。
私はその意味で、少なくともGE型のような旧世代原発から段階的に削減して、新型の原子炉にリプレイス(置き換え)していくしかないと考えています。

とまれ、高市政権は再エネに待ったをかけました。エネルギー政策の正常化に向けた大きな一歩です。

 

 

2025年12月14日 (日)

日曜写真館 星空も生者の側に蘭溢れ

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蘭の花はみだら晩学稚気多く 小野蒙古風

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われをにくむ人に贈らむ蘭の花 会津八一

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つと入や蘭の香にみつ一座敷 松瀬青々

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月落ちてひとすぢ蘭の匂ひかな 大江丸

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幼な子が鼻よせて嗅ぐ蘭の花 細見綾子

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むせび泣くあまりに高き蘭の香に 渡辺恭子

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蘭の香の言葉のはしにただよへり 米澤吾亦紅

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蘭というきれいな玩具たまわりぬ 柴田美代子

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われ等みな名もなき山の蘭の花 会津八一

 

 

2025年12月13日 (土)

日米共同訓練で中露をはね返す

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日米が横車を押し続けている中国に強いメッセージを送りました。
「防衛省 ・統合幕僚監部は2025年12月11日(木)、自衛隊がアメリカ軍と日本海上の空域で共同訓練を実施したと発表し、その様子を捉えた画像を公開しました。共同訓練では、米軍のB-52爆撃機を航空自衛隊の戦闘機がエスコートする光景が実現しました。航空自衛隊は共同訓練に、主力戦闘機であるF-15戦闘機3機(第6航空団)、最新のステルス機であるF-35戦闘機3機(第3航空団)を参加させました。アメリカ軍はB-52を2機派遣し、各種の戦術訓練を行ったとしています。
なお、12月9日にはロシア軍のTu-95爆撃機2機が日本海から東シナ海に進出し、東シナ海で中国軍のH-6爆撃機2機と合流した後、四国沖にかけて長距離の共同飛行しています。
防衛省・統合幕僚幹部は今回の訓練を通じ、「力による一方的な現状変更を起こさせないとの日米の強い意思及び自衛隊と米軍の即応態勢を確認し、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化した」としています」
空自機が米軍の「黒い巨人機」を護衛!? 最新ステルス機も参加して共同飛行 ロシアの前で「訓練です」(乗りものニュース) | 自動車情報・ニュース - carview!
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ロイター

この空自がエスコートしたB-52が核搭載可能かどうかはわかりません。
元来B-52は核搭載機として開発されましたが、多様な任務を与えられており、一概に核を搭載しているかどうかは判別できません。
ただし、米空軍は必要に応じて、核爆弾を搭載したB-52を24時間体制で即時出撃できる準備を進めることもあります。

なお中露爆撃編隊が、この日米訓練に先だって日本海を四国沖まで共同飛行しています。
統合幕僚監部 12月9日

12月9日(火)午前から午後にかけて、日本海から東シナ海に進出したロシアの爆撃機(Tu-95)×2機が、東シナ海において中国の爆撃機(H6)×2機と合流した後、東シナ海から四国沖の太平洋にかけて長距離にわたる共同飛行を実施したことを確認した。
また、当該爆撃機が沖縄本島と宮古島との間を往復して飛行する際、中国の戦闘機(J-16)×4機が合流したことを確認した。
この他、日本海においてロシアの早期警戒管制機(A-50)×1機、ロシアの戦闘機(Su-30)×2機を確認した。
これらに対し、航空自衛隊の南西航空方面隊等の戦闘機を緊急発進させ対応した。
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統合幕僚監部

写真も自衛隊機によって撮られています。

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統合幕僚監部

この中露編隊が「遼寧」艦隊と共同で作戦していたことは、これに艦隊動向マップを重ねて見るとわかります。

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統合幕僚監部

中国空母艦隊は宮古海峡を通過して太平洋に進出した後に、いままでと違った航路をしました。
12月8日から駆逐艦が一隻抜け、代わりに補給艦が合流し、空母1隻+駆逐艦2隻+補給艦1隻となっており北上を開始しました。
補給艦を合流させることで北上を可能にしたものと思われます。
またこれが、日本海を南下してくる中露爆撃編隊との共同作戦を意図したことは明らかです。

中国がこの時期にこれだけ大規模な空海共同作戦をとったのは、高市氏の発言もさることながら、ベネゼエラに意識が集中しているトランプが、東シナ海まで意識が回るまいという読みがあったようです。
しかし小泉大臣の迅速な対応により日米防衛大臣が共同歩調を取れたことで、この日米の共同訓練という形で打ち返しました。

 

2025年12月12日 (金)

空母「遼寧」ポンコツ艦隊の意図

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12月5日、中国初の空母「遼寧」が、東シナ海に姿を現しました。
そして翌6日午後に今回のレーダー照射事件を引き起こします。
この水域は既に日米によって国際手続きに則って訓練・試験区域(NOTAM)を設定されてあった水域(空域)でした。
下図の薄い紫色の部分が日米が訓練していた水域です。

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まこ、このようなこのような水路航行危険情報が公表されていました。

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このようなエリアに意図的に空母艦隊を進出させ、100回を越える離発着訓練をしていたわけです。
中国側は事前通告したと主張し、音声を公開しました。時間は
12月6日午後2時10分と28分です。

中国軍側
「こちらは中国の101艦です。私たちの編隊は計画通り艦載機の飛行訓練を行います」
自衛隊側
「中国の101艦へ。こちらは日本の116艦です。メッセージを受け取りました」

日本の海自はDD116「てるづき」です。

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DD-116 Teruzuki Right - てるづき (護衛艦・2代) - Wikipedia

ここで海自とされる女性の音声はCopyと言っていますが、これは「受信した」という通信の末尾によくつけられる用語で、「了解した」という意味ではありません。
中国はこれを事前通告といっていますが、事前通告は最低でも数日前の衆知期間を置くもので、また地図上で北緯東経を告知し、かつ訓練期間も公表して危険を回避するのが国際ルールです。
この海自艦艇からのCopy という返答を、中国はねじ曲げて「了解した」と言っています。
例の「ひとつの中国」と同じで、中国の言うことを「聞きました」と「同意します」をあえて混同してミスリードさせています。


事前通告されたこの日本の訓練領域に、中国側はあえて入ってきて艦載機訓練をすれば日本側は警戒監視をするのは当然です。
またこの艦隊が異常に日本沿岸に接近しているのは今日もアップした地図でわかるでしょう。
20251210-100606
朝鮮日報
おそらく今回の「遼寧」艦隊の目的は、太平洋に進出し沖縄と奄美をいつでも狙うことができるというデモンストレーションでしょう。 
いうまでもなく、高市氏の発言に対する軍事的ゼスチャーです。

ではこの危険をゲームを誰がやらせたのでしょうか。
福島詩織氏はズバリ習近平だとみています。
「今の解放軍は中央軍事委員会7人中、制服組3人が失脚によって欠けて補充されていない機能不全状況です。つまり習近平中央軍事委員会主席の決断がそのまま良識ある軍人の意見や検討なしに末端に降りてくる状況です。ですから、末端の人員が、習近平への忠誠アピールに、かなりチキンレース的な挑発をやる可能性があると思います。
軍部へのホットラインに誰も応答しなかった、そうですが、今の解放軍が大粛清の真っただ中であると考えれば、それも当然かと。ホットラインに習近平の不興を買ってでも応答できる立場、良識のある軍官がいないんじゃないでしょうかね」
(福島香織 中国趣味聞12月12日)

もちろん習その人が自衛隊機をロックオンしてビビらせてやれ、と言ったかどうかは定かではありませんが、今の中国軍の指導部は粛清されまくったために習に異論を唱える者がいません。
だから通常なら、軍の官僚組織で誰かが危機感をもって待ったをかける案件でも、末端は習に忖度して過激な行動に走る可能性があります。

ただし、同時にこれは中国の弱みをさらけ出していることです。
「遼寧」を軍事ツールとして見た場合、空母というより、「空母もどき」と言ってかまわないからです。
中国は例によってこれを「国産空母」と呼んでいますが、呼びたい見栄心は痛いほどわかりますが、ご承知のように、入手経過自体がパッチモンです。

1998年の冬、厳冬のウクライナに怪しげな自称実業家を名乗る中国人が訪れ、「ねぇ、オレ、鉄くず商人なんだけど、あんたの国の空母ワリヤーグを売らない」と持ちかけました。
ウクライナ政府の担当官と、中国人が持参したという62度のパイチュー(白酒)をグビグビやりながら、結局、アルコールの濃い霧に包まれたままウクライナの言い値の40億ドルを2000万ドルに買いたたいてしまったそうです。
やりよりますなぁ。空母一隻2000万ドルとは!(爆笑)

ちなみに、米空母はだいたい50億ドルくらいです。 

当時ウクライナは慢性的な国庫カラの状態で、国家ぐるみでロシアのEU向け天然ガスを盗んでいたくらいですから、足元を見たのでしょうが、それにしてもエグイ。 
中古空母というのは、インドやオージー、ブラジルなどが運用していますが、さすが、クズ鉄再生「空母」は世界にこれ一隻という貴重な存在です。 
しかしなにぶん2000万ドルで買いたたいたクズ鉄再生「空母」ですから、様々な問題を抱えていました。

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まずは、肝心要の動力が使い物になりませんでした。 
ウクライナも武器に再生されるのを避けるために、蒸気タービンの配管を切断し、重要部品を取り外していたからです。 
もちろんいっさいの資料文書は付けなかったために、さすがコピー大国中国も手こずったようです。 

この「遼寧」も2000万ドルで買いたたいたのはいいのですが、蒸気タービンがうまく再生できないために一時はお蔵入りかと言われた時期もありましたが、なんとか海に浮くことはできました。 
しかし、空母が艦載機を射出するに足る速度をだすことが難しい上に、射出用カタパルトがありません。
なんといってもこれが致命的でした。

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おそらくペイロード(最大積算量)一杯の燃料やミサイル類を搭載して発艦することは相当に困難だと言われています。
まぁ、カタパルトという現代空母に必須のシステムがなかったのが問題でした。
現代のジェット戦闘機はともかく重い。J-15なら全備重量で27トンもあります。

これを甲板からはじき出すんですからハンパじゃありません。
だから英国はハリアーなどというSTOVLという垂直離陸も、短距離離陸も可能な特殊な戦闘機を開発したのです。

ところがカタパルト技術を持っているのは世界でも米国だけですから、中国やロシアが歯噛みしてもどーにもならなかったのです。
しかし空母が欲しい、カッコよくアジアを地回りして近隣諸国をおどして回りたい、そのような地域覇権国への渇望が止まらずに手を出したのがクズ鉄空母ワリヤーグだったわけです。

で、手に入れました。天にものぼる心地だったことでありましょう。
しかし乗せたロシア製スホーイSU-33のパクリのJ-15にはSTOL性能などありません。
代わりになる機体はない。で、どうするのか。
いや、なんの燃料搭載を減らして、爆弾やミサイルをギリギリしか積まなきゃいいんです。
これでなんとか飛ばせる、キャホーというわけでした。航続距離は激減するし、攻撃力は限定的ですがカッコは一人前。
アジア諸国あたりを相手にするぶんにはこれで十分だ、なにか言われたら訓練中ですって言っておけ、というわけです。

しかしだからといって、ギリギリのミサイルを積んで航空機を飛ばすだけはできますから、脅威であることはまちがいありません。
このように今のところ「遼寧」は兵器というより、近隣諸国を威嚇するための心理的・政治的ツールと呼ぶほうがよい存在です。

また艦載機のJ-15もエンジンに致命的欠陥を抱えており、頻繁に墜落事故を起こすしろものです。
いままで少なくとも4回の墜落事故が確認されています。2016年4月27日には、空母着陸訓練中にJ-15が墜落し、パイロットが死亡する事故も起きています。この事故の原因は飛行操縦制御装置の故障とされています。

着艦装置回りも耐久性が危ぶまれています。

搭載しているWS-15ジェットエンジンの推力損失の問題は解決されていないうえに、艦載機であるにもかかわらずエンジンブレードが塩害に弱く脆いと言われています。
これらは初飛行から10年もたつというのに改善されたとは聞きません。
つまり飛び立って正常に飛行し、降りてくるという基本的なことがアブナイ機体のようです。

おまけにパイロットの質が上等とはいえません。
自分が火器管制レーダーで愛敵をロックオンすることが、どれほど恐ろしいことなのかわかってやっているとは思えません。
前回のP3Cへの異常接近でも、プロフェショナル意識を持ったパイロットなら、命令されてもやらないことです。
それを安易にやってしまう。それが勇気だと勘違いしている。しょーもないクズパイロットたちです。
未熟傲慢無知。
自衛隊機の沈着冷静な対応の爪の垢でも煎じて飲みなさい。

このような「空母打撃群」の使い道は、張り子の虎として使うしかないじゃありませんか。

 

 

2025年12月11日 (木)

常識がない奴と会話するのは大変だ

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あーあ、書く気になれない。だってつまんないんだもん。
思ったとおりの展開というのも能がない話で、この中国によるレーダー照射事件はかつてのコリア海軍の同種の事件と同じ軌道を辿っていますから、同じ結末となるでしょう。

観光客は日本に行かさん、なんて言って自爆してしまったかと思うと、こんどはサンフランシスコ条約は無効だなんてメチャクチャを言い出し、さらにそれで日本が柳に風と受け流していると、とうとう自衛隊機にロックオンするというクレージーぶりです。
どうしたらいいの、こういう奴って。
よくコメンターで話し合いをしろという者がいますが、ルールから説明せにゃならない人と「話し合い」が成立するんでしょうかね。
はたまたやり返せなんて気楽に言う人もいますが、ナニ言ってんだか。
いいですか、今の日本は手を出さない、紛争にしないという姿勢をキーブすることが得点になっているのです。
それを手を出してしまえば、チャイナと同じ土俵に乗ってしまいます。損ですね、馬鹿馬鹿しいですね。
勝手にやらせて自滅を待つのが正解なのです。

さて、メンドーですが、チャイナにルールというもんがあることを教えてやらねばなりません。
公海は国際法上、すべての国が自由に航行や軍事演習を行う権利を持つ場所です。
だからなんでもしていいわけじゃありません。(あたりまえだ)
むしろ逆です。
他人に迷惑をかけるなという大人のルールを守れない奴は、公海でナニかしてはいけません。
国際紛争になり、こじれると戦争になってしまうからです。

軍事演習をしたいのなら、近隣の関係国に航空関係ならがNOTAM(ノータム)、海上関係なら航行警報といった方法で広く情報を共有しなければなりません。
さらに平時の艦艇に対してはCUES(海上衝突回避規範)があり、やってはいけないことが列記されています。
ちなみにCUES2.-8.1aには「砲やミサイルの照準、火器管制レーダーの照射、魚雷発射管やその他の武器を他の艦船や航空機がいる方向に向けない」という一項が入っています。

しかもこれすらいわばマナー協定であって、国際法そのものではありません。 
ですから、これらは国際的に定められた義務ではありません。
では守るも守らないも自由かといえば、一切無視して軍事演習を近隣国の近辺でやれば、なんて常識のない馬鹿な国と蔑まれます。

今回の位置関係はこんなかんじです。
朝鮮日報の地図は位置関係がでていて便利です。

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                         朝鮮日報

上図に日本のEEZの図を重ねてみましょう。

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排他的経済水域(EEZ)とは? | 日本の最南端・最東端の国境離島 〜東京都 沖ノ鳥島・南鳥島〜

チャイナの軍事演習の地域はモロに入りますね。
EEZとは、沿岸国の基線から200海里(約370キロメートル)までの水域のことで、Exclusive Economic Zone の頭文字をとって「EEZ」と呼ばれています。
この水域では、漁業や石油・天然ガスなどの資源探査・開発、海洋科学調査といった経済活動を沿岸国が排他的に行うことができます。

では軍事演習はどうなのでしょうか。
国連海洋法条約では、EEZにおける自国の権利行使や公海の自由の行使に際して、他の国の権利や利益に「妥当な考慮(due regard)」を払うことが義務付けられています。
これは、軍事活動についても同様に適用されると解釈されています。
UNCLOS 58条3項で「沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払う」こと義務づけられています。
しかし具体的に何を指し、どの程度の配慮が必要なのかは明確に示されていません。
つまりあいまいではあるのですが、大人の常識で考えろというヤツです。

いかに公海であろうとEEZでの軍事演習は、沿岸国の船舶や航空機の安全に配慮する必要があり、そのため多くの国は演習の際、国際的な安全基準に従い、NOTAM (航空情報) や航行警報によって情報を周知させています。
今回のチャイナ海軍のようにノータムは出さない、航行警報も出さないというのは言語道断の蛮行なのです。

え、なになにチャイナは「事前に日本側へ通報していた」、無線交信の音声データを公開しただろうって。
確かにチャイナは「艦載機の飛行訓練を行う」旨を伝え、日本側とされる声が「メッセージを受信した」と応答しています。
しかしこれってノータムでもなければ、航行警報でもない、ただの「挨拶」です。
事前に日本がその区域を通過する船舶や航空機に危険情報を出し危険を回避するものではありません。
そもそもこれは海上であって航空機に対してではありませんから話になりません。
だから危険回避のための特定空域の飛行制限をかけようがないわけです。

逆にこれでチャイナはノータムも航行警報も出していなかったことが暴露されてしまいました。
本当に馬鹿ですね。

 

 

2025年12月10日 (水)

トランプの「意気揚々たる撤退」をしたら

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舛添氏と意見が一緒になることはきわめて稀なのですが、氏はこう言っています。

「日中間の対立を前にして、トランプ政権は敢えて介入しようとはせずに、沈黙を守っている」と言及「中国とのディールを同盟国との関係よりも優先させている。これは、ヨーロッパについても同じである。アメリカと中国で世界を支配する『G2体制』が念頭にあるようだが」と推し量った上で、「それでは民主主義は守れない」と私見を述べた」
(日刊スポーツ12月9日)
舛添要一氏、中国がホットライン応じず「軍事的衝突の危険性が高まる」懸念強める(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース

あーあ、ユーウツですが、大いにありえますね。私も同じことを危惧しています。
トランプはマーブルチョコよろしく取っ替え引き換えいろいろなことを言いますから真意がよくわからないのですが、要はカッコよく米国が「意気揚々たる撤退」をしたいだけだと見ています。
世界に責任をもつのはマッピラ、戦争はしたくない、米国がまだ力を持っているうちに米国の庭に戻りたいということです。
「米国の庭」というのは勢力圏ということです。
そして世界の秩序維持は他の超大国となぁなぁで仕切っていく。

まぁ、すぐにG2になることはありえませんが、トランプは常にその傾向を強く持っていますから警戒せねばなりません。
ヨーロッパでは既にその片鱗を見せており、アジアでも地域覇権国と共同統治しようとする誘惑が常にあります。
ちなみにヨーロッパではその相手がロシアであり、アジアでは他ならぬ中国です。
なんだぜんぶ敵じゃないかと思われるかもしれませんが、敵と手打ちせにゃ縄張りは守れんぞな。

さてG2体制にはいくつもの段階がありますが、おそらくその最終的な形態は、在日米軍は沖縄はおろか日本全土から撤収し、グアムの線まで後退します。 
このラインを中国は「第2列島線」と呼び、伊豆諸島を起点として小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアへ至る線まで中国海軍を進出させることを目標にしています。

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(図 右側の赤い線が第2列島線、左赤線が第1列島線 Wikipediaより) 

その場合、日本が置かれた条件を思いつくままに上げれば、このようなものです。

①人口1億2千万人、高い技術力をもつGDP世界4位規模の工業国である。
②日米同盟崩壊によって、集団的防衛体制(日米安保、NATOなど)を持たない孤立した国家となる。
③エネルギー自給率、食糧自給率共に低く、長大、かつ不安定なシーレーンによって輸入されている。
④防衛力は中規模であり優秀であるが、専守防衛のみに偏っている。
⑤MD(ミサイル防衛)は限定的ながらすでに保有し、潜在的核兵器開発能力を持つ。
⑥憲法問題など多くの防衛関係と情報関連の法整備が不十分である。

以上のようなわが国が、ハワイ以東までを「約束された海」として海洋進出する中国の矢面に孤立して立たされた場合、いかなることになるでしょうか。 
しかも、その時、わが国は唯一の外国との軍事同盟である日米安保を廃棄されてしまっていたとします。 
あまり考えたくない最悪シナリオですが、あえて考えるなら、日本が取りうる選択肢はたぶんきわめて限られたものになるはずです。

現在の自衛隊には他国への侵攻能力はありません。それは、戦力を外国に投入する能力がないからです。
その能力のことを専門用語で、戦力投射能力といいますが、戦力投射能力(パワープロジェクション)とは、俗に言う他国への「攻撃能力」、あるいは外征能力のことです。
侵攻する国に、多数の兵員と武器弾薬を送り込む能力、あるいは、核ミサイルを撃ち込む能力です。

●戦力投射能力として、国際常識上分類される兵器
①大陸間弾道ミサイル(ICBM)
②大型空母(原子力推進であることが望ましい)とイージス艦、攻撃型原潜による空母打撃群
③水中発射型核ミサイル(SLBM)登載戦略ミサイル原潜、長距離核ミサイル搭載大型爆撃機
④他国に橋頭堡を築くための海兵隊
⑤大量に兵員装備を送り込めるC-17やC-5など戦略大型輸送機
⑥大量の兵員・装備を送り込める強襲揚陸艦
⑦空軍の攻撃機、戦闘機、電子戦機、空中警戒管制機などで作る打撃群(ストライクパッケージ)

●戦力投射能力を保有している国
①米国、仏、英国、中国、ロシア
②米国、仏、英(中露は能力不足)
③米国、ロシア、中国、英国、仏
④多くの国で持つが、本格的な海兵遠征打撃群は、米国のみ。近いものはロシア、中国、英国。
⑤米国、ロシア、中国、英国、仏
⑥米国、英国、仏、中国。他の国も個別には保有するが能力不足
⑦米国、NATO、ロシア

これらすべてを共通して保有するのはP5(常任理事5ヶ国)で、いずれも外征型軍隊を保有しています。
わが国は日米安保が存在するために、この①~⑦までの軍備を持つ必要がありませんでした。
よくリベラル派の人は日米安保があるから、日本は世界の果てまで米軍に追随せねばならない、などといいますがそのようなことはありえません。
逆に外征型軍隊の保有から免れた軽武装国家でいることが可能でした。

その結果、海自は対潜水艦作戦と対空防御のみ、空自は迎撃のみ、陸自は守備専門に特化しています。
世界の専門家から見れば、自衛隊がアスリートだとするなら、水泳なら平泳ぎだけ、陸上なら高飛びだけ、球技ならバトミントンだけが得意といった、すこぶるバランスの悪い「軍隊」なのです。ただしどの「競技」も金メダルですけどね。
そもそも憲法上は「軍隊」ですらなく、「軍隊のようなもの」なんていう奇妙な武装集団は、世界にひとつしかありません。
わが国が、やがてそのいずれかひとつを少数持つことはありえますが、一定数揃わないと外征型軍隊とは見なされません。
戦力はあくまで一定数なければ、現実に機能しないし、質だけではなく「量」の問題だからです。

さらには、それを支える大枠の哲学、つまりドクトリンがなければ、装備は意味をなしません。
これが国際関係論でいう、脅威=能力+意志という法則です。

たとえば、わが国で強襲揚陸艦や長距離輸送機を装備することはありえますが、それはあくまで離島防衛のためやPKO派遣のためです。
ですから、装備数もあくまでも少数であって、これでは外征など絶対に不可能です。
それは日本には外征する必要がなく、したがって外国に侵攻するためのドクトリンそのものが不在だからです。

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写真 米海軍空母打撃群。こういうのを言葉の正確な意味で「空母」と呼ぶ。いかに多くの艦船群によってなりたつのかわかる。人員も約7000人に登る。米国はこれをなんと12セット持っているのだから、むしろ呆れる。ただし予算不足で、稼働しているのは3セット。

日本の場合、①から⑦まで、その全部が欠けていますし、その意志も能力もありません。
ただし、日本はこれらすべてを10~20年後には実現可能な技術力と経済力を有しています。
もし本気で外征型軍隊を作る気なら、改憲して、国防予算を今の5倍ていどにするしかありませんが、やってやれないことはありません。
日本は初めから無理な小国ではなく、フランスと同等の戦力を持つことも可能です。

かつての帝国海軍は、実に国家予算の6割をつぎ込んでいました。海軍が予算を独り占めにしたために、国民は貧しく、陸軍は常に海軍を憎悪していました。
いかに身の丈にあっていない一点豪華主義の海軍だったかわかります。
現代において、そのような「攻撃力」を持つ意味はまったくありませんし、そもそもこんな状況にならないために、日米同盟という集団的自衛権があるのです。

戦前は集団的安全保障という、概念そのものがありませんでした。

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                                                               ロイター

しかし不幸にも、米国の裏切りによって日米同盟という日本やアジア全域の安全保障インフラそのものが消滅した場合、わが国は、①から⑦を保有するフランスのような中規模軍事大国になるしか生き残れないでしょう。

オバマはギリギリ覇権国から転落する崖っぷちで、どうしようかと逡巡しているといましたが、共和党のトランプと民主党のサンダースが、立場は左右両極ながら、一致しているのは覇権国からの撤退です。これはきわめて象徴的です。
このような時期に、野党が言うように集団的自衛権を強化するための安保法制を撤廃したらどうなるのでしょうか。

それは、日本からも「日米安保などいらない。もう日本はアジアの安定には協力しないよ」という外交的シグナルだと100%、そう受け取られます。
これがトランプの孤立主義を加速することだけは間違いありません。
トランプは、「戦争法案廃止」となっていたら、ほら見たことかと口を歪めて、「言ったとおりだぜ。ジャップは1ドルも出さない。汗もかかない。こんなチキンな奴らのために、米国の青年の命を捧げるわけにはいかないぜぇ」と叫ぶことでしょう。
トランプ現象とは、「意気揚々たる撤退」なのですから。

トランプ現象を彼らの国内事情にだけに狭く見るのではなく、米国は確実にトランプが言うような方向に舵を切りつつあることを、日本人はいいかげん理解したほうがいいと思います。
私は「平和国家」を叫ぶ人たちには抜きがたい不信感を持っていますが、「平和国家」であることの遺産はしっかりと継承すべきだと思っています。
おそらく今起きている世界の覇権国シフトには、大規模な戦争がなければ半世紀以上の時間かかることでしょう。
その間に、米国はどんどんと外国に展開する軍隊を引き上げていき、内向きの「普通の大国」に戻る可能性もあります。

この過渡期に対応して、私たちも「平和国家2・0」を作る時期なのです。
戦争をしないために、何に備えるべきなのかを真剣に議論する時期に、このトランプが現れたことに感謝せねばなりません。

トランプはまったく信用できません。故に備えなければならないのです。

 

2025年12月 9日 (火)

高市は世界で孤立しているって?

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習近平は高市氏の発言に対して、欧米を仲間に引きずりこもうとやっきです。
トランプには電話をかけ、英国にはすり寄り、マクロンはわざわざ呼び寄せて下にも置かないおもてなしをして見せました。
その結果はいかに。

まず米国から。

「[台北/北京 3日 ロイター] - トランプ米大統領は2日、米国と台湾の公的な交流に関する指針を定期的に見直し、更新することを義務付ける「台湾保証実施法案」に署名した。
法案成立を受け、台湾は謝意を表明。中国は不快感を示した。
法案は米国務省に対し、台湾との交流に関する指針を少なくとも5年に1度は見直すよう定めている。
台湾総統府の報道官は声明で「(この法律は)米国と台湾との交流の価値を再確認し、より緊密な米台関係を支持するものであり、民主主義、自由、人権尊重という共通の価値観を堅持する揺るぎないシンボルだ」と述べた」
(ロイター12月3日)
トランプ氏が台湾保証実施法案に署名、台湾が謝意 中国反発 | ロイター

これはキツイ。習近平は中南海でごみ箱のひとつも蹴飛ばしたんではないでしょうか。
これがトランプのマーブルチョコというヤツです。
あの男はいくつも色の違う玉を持っていて、その都度出したり引っ込めたりするのです。

WSJが高市氏にトランプが自制を要求したなんてほぼほぼ「誤報」を出して、それを受けて一部のコメンテーターは大喜びで、サナエはゴマすったがトランプは米中G2時代に備えて、台湾を見捨てた、やーいやーい、梯子に上ってはずされぞ、見たことかという発言が出ました。

そう思って習近平もニンマリしたでしょうが、こんどはなんとこの「台湾保証実施法案」により、現在行われている「実質的外交関係」は「公式な外交関係」に引き上げてしました。
米台断交以降、自粛されていた米国と台湾の公式な高官交流が可能となる法的条件が整ったことになります。
この法律は国務省の判断次第で、トランプ大統領をはじめとする現役高官が台湾を訪問できるようになり、逆に米国として台湾高官を受け入れることも可能にする法律です。
この先はもう台湾との国交正常化しか残っていませんから、それのための準備法というわけです。
提案議員はすっきりと、これは中国が台湾の主権を奪うことを阻止するためだと言っています。

「この法案を提出したミズーリ州共和党上院議員のアン・ワグナーによれば、「この法案は中国に対して明確なシグナルを送るのだ」と言います。「つまり米国は中国共産党が台湾の主導権を奪おうとたくらむことに断固反対し、同時のグローバルな影響力を拡張することにも反対だ、と」(福島香織12月8日中国趣聞)

また台湾南華大学国際事務企業学部の孫国祥教授氏はこう言っています。

「中国共産党が長年台湾問題を内政問題とし、頼政権を分裂勢力と位置付けてきました。ですが、今回、米国がこの法律によって米台間の公式接触の深めていくと、その中共の政治的ナラティブが弱められていくことになります。これは、中国が国内にむけて「国際社会が一つの中国枠組みを承認している」と主張することをより困難にしていくでしょう。
中国にとって、この法案は、米国が台湾に武器を販売よりも、長期的構造的な課題となる、ということです」
(福島前掲)

つまり中国がいままで主張して止まなかった「ひとつの中国」というナラティブは否定され、諸外国を従わせていた軛がはずれようとしているということになります。
これは大きい、実に大きい一歩です。たぶん英国はこれに追随するでしょうし、自由世界も追随するかもしれません。
高市氏の台湾有事は日本の「存立危機事態」だという勇気あるひとことが、世界に及ぼした巨大なインパクトです。

現に英国のスターマー首相はこのような発言をしました。

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対中外交は安保確保と協力推進の両輪で、英首相が演説 | ロイター

「英政府は世界第2位の経済大国である中国との関係修復を試みているが、中国によるスパイ疑惑や旧植民地である香港の行方をめぐり、両国関係は依然として緊張状態にある。
スターマー氏は2024年11月、中国の習近平国家主席と会談。英中首脳の直接会談は2018年以来で、両国関係の改善の兆候を示すものだった。だが、1日に行われたシティ・オブ・ロンドン市長主催の毎年恒例の晩さん会で、中国について、「真の国家安全保障上の脅威」であり、引き続き同国政府に対し人権問題を提起していくと述べた。
これに対し在英中国大使館は2日の声明で、「根拠なく中国を非難し、内政に干渉する英国側の発言に断固反対する」と述べた」
(AFP12月3日)
中国、英首相に「真の国家安全保障上の脅威」と呼ばれ猛反発 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

英国は中国を「国家安全保障上の脅威」と認定ですか、踏み込みましたね。
以前から英国は、国防大臣が「台湾有事があれば英国艦隊を出動させる」と明言していたのです。
また新しいデカイ大使館を中国がロンドンに建てる計画にも了承を与えていません。

新大使館問題とは、2018年に中国政府がロンドン中心部に広大な計画地を購入した、完成目論見ではヨーロッパ最大の大使館となる計画でしたが、英国政府は待ったをかけています。
英国政府は、この建設許可の承認決定を複数回延期しています。
当初は2025年9月上旬に予定されていましたが、10月21日、そして12月10日へと再延期されました。

理由は、英国政府が「中国は真の国家安全保障上の脅威」と認識しているので、広大な新大使館がスパイ活動に利用される可能性があるからです。
英国では、すでに中国製監視カメラの公共施設への設置や通信インフラにおける中国企業の関与が問題視されており、その元締めに新大使館が使われるのは必至です。

スターマー首相は、加えて「香港における自由の制限」を含む人権問題について、引き続き中国政府に問題提起していくと述べています。
先日行われた香港立法会選挙で、親中国派がすべてを占有しました。

香港の議会(立法会および区議会)の選挙では、選挙制度の変更や政府による「愛国者」認定の必要性から、親中派の候補者が議席を占める傾向にあります。
2021年の立法会選挙において、中国政府主導で選挙制度が変更されました。
これにより、立候補には政府機関からの「愛国者」認定が必要となり、民主派の候補者は候補すら擁立できない事態となりました。
また、2023年の区議会議員選挙でも同様の制度変更があり、市民の投票で決まる議席が全体の2割以下に減少しました。
英国は、今後香港の民主主義に大いに介入していくことでしょう。
これは返還条件にあった一国二制度を公然と破るものだからです。
そしてこのような中国の民主主義潰しが続くなら、もはや「香港を返せ」という話です。

またヨーロッパ最大の親中国であったフランスは、マクロンがこれで4回目で、今年12月3日から5日の日程で中国を国賓訪問しました。
今回は、マクロン氏にとって4度目の訪中となります。

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日本経済新聞

人民日報はこう嬉しそうに書いていました。

「現在、国際情勢は混迷している。中国側は仏側と共に、今回の訪問を契機として、中仏国交樹立の精神を発揚し、戦略的な意思疎通を強化し、実務協力を深化させ、多国間の調整を緊密化し、中仏の包括的な戦略的パートナーシップの新たな進展を後押しし、中国EU関係の健全かつ安定的な発展の促進、多国間主義と世界の平和・安定・繁栄の維持に、一層の貢献を果たすことを望んでいる」
(人民網2月3日)
外交部がマクロン仏大統領の訪中について説明--人民網日本語版--人民日報

そりゃ嬉しいでしょうよ。
小賢しい小日本が生意気にも逆らったために台湾問題が大きくクローズアップされてしまい国際問題化した時期に、年来の友人のマクロンが駆けつけてくれたのですから諸手を上げて大歓迎でした。

「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は4日、訪中しているフランスのマクロン大統領と北京の人民大会堂で会談した。習氏は台湾問題を念頭に「それぞれの核心的利益と重大な関心事について相互の理解と支持を深めるべきだ」と述べた」
(日経12月4日)
習近平氏「核心的利益に理解と支持を」 台湾念頭、マクロン氏に提起 - 日本経済新聞

「核心的利益と重大な関心事」って、もちろん台湾問題のことです。
しかし帰国するやマクロンはこう述べて、中国に冷や水をかけました。

[パリ 7日 ロイター] - フランスのマクロン大統領は、中国を先週訪問した際に、同国が欧州連合(EU)に対する貿易黒字を削減する措置を取らなければ関税を課すと警告したことを明らかにした。
マクロン氏は訪中時、中国に対し「持続不可能」な世界貿易の不均衡、地政学、環境問題での協力を強化するよう求めた。
同氏は仏紙レゼコー日曜版に掲載されたインタビューで「中国は特にわれわれからの輸入を大幅に減らしたことで自国の顧客をつぶしているため、中国の貿易黒字は持続不可能だと彼らに説明しようとした」と述べた。
「彼らが対応しなければ、われわれ欧州は今後数カ月で、米国に倣って中国製品に関税を課すなど強力な措置を取らざるを得なくなると伝えた」と語った。
中国に対するEUのモノの貿易赤字は2019年以降60%近く拡大している」
(ロイター12月8日)
仏大統領、中国に関税警告 対EU貿易黒字巡り=仏紙 | ロイター
というわけで、一方的に雪崩込む中国製品をなんとかしろ、しないとトランプのような高関税をかけざるをえないぞ、ということです。
このように米英仏の意見は出揃いました。
さて、どちらが孤立しているのでしょうね。

2025年12月 8日 (月)

中国、武力行使の前段にまで突入

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中国は正気を失いつつあるようです。
とうとう武力行使の前段にまで突入してしまいました。

[東京 7日 ロイター] - 小泉進次郎防衛相は7日未明、中国軍機が自衛隊機にレーダーを2回にわたって照射したと発表した。いずれも沖縄本島南東の公海上で、自衛隊機は中国海軍の空母から発艦した戦闘機に対領空侵犯措置をしていた。
小泉氏は「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為」としたうえで、「極めて遺憾で中国側に強く抗議し、再発防止を厳重に申し入れた」とした」
(ロイター12月7日)
中国軍機、空自戦闘機にレーダー照射 太平洋上で空母から発艦(ロイター) - Yahoo!ニュース

小泉大臣は深夜にもかかわらす記者会見をおこない強く抗議しました。いい仕事です。
防衛省の発表。

※2025年12月6日(土)、沖縄本島南東の公海上空で対領空侵犯措置
※中国空母「遼寧」搭載J-15戦闘機が空自F-15戦闘機にレーダー照射
①16時32分頃から16時35分頃
②18時37分頃から19時08分頃 ※上記①とは別のF-15に照射
「今回のレーダー照射は、航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為であり、このような事案が発生したことは極めて遺憾であり、中国側には強く抗議し、再発防止を厳重に申し入れた。なお、自衛隊機及び隊員に被害はない。」
防衛省・自衛隊:中国軍機による自衛隊機へのレーダー防衛省は7日夜、中国軍の空母「遼寧」など艦艇4隻が、沖縄本島と大東諸島の間の公海を通過し、鹿児島県の喜界島から約190kmの海域に進んでいると発表した。

この間、中国海軍は「遼寧」空母打撃群4隻を尖閣から宮古島の間を通過させて展開していました。

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防衛省

そしてこの空母から飛び立った中国軍戦闘機J-15から12月6日18時37分頃から19時08分頃まで、実に30分間にわたってレーダー照射を受けました。

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「遼寧」搭載J-15

自衛隊機にはロックオン警報が鳴り響いており、それが30分近く継続しました。
これは中国戦闘機が、レーダーで自衛隊機をロックオンしたことを意味します。
ロックオンとは空対空ミサイルを発射誘導する準備として、レーダーが通常の広い範囲を探る捜索モードから目標にレーダー波を集中させる照準モードに切り替わることです。
つまり、後は中国機がミサイル発射ボタンさえ押せば、ほぼ確実に自衛隊機は撃墜されたというきわめて危険な行為です。
自衛隊機は2機編隊で対応しており、僚機が撃墜された場合、司令部の了解をとった上で自衛戦闘に移る可能性がありました。
その場合、今の日中間でもっともあってはならない偶発戦争が起きる可能性があったわけです。

なお、半年前の2025年6月には、海自の哨戒機が中国空母「山東」の戦闘機から威嚇飛行を受けていました。
この時は、中国「遼寧」空母打撃群は日本の南鳥島や沖ノ鳥島の経済水域内(EEZ)を航行していました。
中国の海軍高官は、「中国空母の行動は作戦行動だった」と明らかにしています。
この時は、「遼寧」の戦闘機がP-3Cに異常接近して追い払おうとしました。
おいおい、ここは日本の管轄下にあるEEZだぜ。
日本が経済水域内で監視行動を行うのは当然のことであり、我が国の防衛のために実施しなければならないことにもかかわらず、他国の管轄水域にまで入り込んで、軍事演習を行い、あまつさえ当該国の航空機を追い払っているのですから横暴も極まれりです。

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画像ギャラリー | 危なっ!中国空母の戦闘機が自衛隊機に「超接近」 目の前に迫る機体を捉えた画像を防衛省が公開 | 乗りものニュース

今回は相手が機敏な機動をする戦闘機なので、ロックオンしてきたものだと思われます。

これは2018年12月20日に能登半島沖を飛行していたP-1哨戒機に対して、韓国海軍の「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から火器管制レーダー照射を受けた事件と同種のものです。
この時、「クァンゲト・デワン」は前後2基ある火器管制レーダー「STIR-180」のうち、後部の1基を自衛隊哨戒機に向けられていることが撮影されており、単に捜索していたのではなくピタリとミサイルを照準していたことがわかっています。
このような行為は、戦闘の前段階であって準戦闘行為と受け取られています。

このような事件が起きたのは公海上の国際空域であって、中国の管轄権はありません。
では、どうしてこのような危険な行為を中国軍は行うのでしょうか。

よく中国海軍は統制が効いておらず、指揮統制の未成熟で、現場パイロットの裁量が大きすぎるから起きたという人がいますがどうでしょうか。
確かに中国海軍は海軍として図体は世界第2位であるという巨体ですが、急成長した軍隊によくある品位を欠落させた未熟な組織です。
技術的にも日米海軍とは比較にならない未熟さだと評されています。
そのくせ、いやだからか、攻撃的な行動のみが評価され、国際常識を逸脱することが推奨されるような好戦的文化風土があるようです。

海自の幹部養成過程の幹部学校で徹底的にたたきこまれるのが国際法です。
また現場において過剰なほど国際法規を遵守するという海自の組織文化がありますが、中国海軍の場合これと真逆なものを持っているようです。
つまり、国際領域を事実上占有することによって実効支配していくという既成事実化戦略です。
じわじわと重要海域、この場合台湾東側から尖閣水域、宮古海峡までを実質的に「中国の海」とすることです。

これは将来彼らが欲して止まない台湾侵攻において、台湾海峡、台湾東側、宮古海峡一帯から海自と米海軍をあらかじめ追い出すことを意図しています。

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台湾有事が発生したとき、日本近海で実際に何が起きるのか 中国が日本に対し繰り返している軍事的示威行動と情報収集の実態(2/4) | JBpress (ジェイビープレス)

ちなみに中国は日本の抗議を鼻先でせせら笑って突き返したようです。
まぁ、さもありなん。 からだと腕力だけはデカくて、頭はカラッポ、世間常識はなく、粗暴なことがカッコイイと思っている軍隊、おおこわ。

 

2025年12月 7日 (日)

日曜写真館 月落ちてひとすぢ蘭の匂ひかな

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われをにくむ人に贈らむ蘭の花 会津八一

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星空も生者の側に蘭溢れ 花谷和子

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既望は葉がくれに見る蘭の香ぞ 松岡青蘿

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むせび泣くあまりに高き蘭の香に 渡辺恭子

 

2025年12月 6日 (土)

中国にはもう打つ手がない

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中国は空鉄砲を撃ちまくって、自分で蟻地獄に呑み込まれていっています。
え~、願いましてはこんなもんかな。

・日本向けの団体旅行の自粛→オーバーツーリズムの日本はむしろ歓迎。打撃は中国系旅行会社だけ。
・日本製アニメの上映延期→見れなくなった中国人が悲鳴。
・日本の水産物輸入を再停止→とっくに日本は北米などに販路を構築済み。
・パンダの貸与期限の不延長→そうかパンダも政治の武器だったことが知れ渡る。
・日中会合の中止→急ぐものがあるわけでもなし。
・認知戦乱発→サンフランシスコ条約は違法だと言い出し爆笑。
・米国と国連と英国、仏に告げ口外交→米英仏からうるさがられる。
・歌っている歌手の電源カット→さすがは権威主義国家。こんな馬鹿なことはウチの国はしないと日本人が納得。

私はもうそろそろお終いかななんて思っています。
だってこの先は例の2012年の尖閣国有の時の官製デモしかないじゃないですか。
この時は、日本企業と商業施設がターゲットとなり、焼き討ちされました。

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中国の反日デモから10年 破壊された百貨店の社長を癒やしたのは:朝日新聞

いま、中国政府がこんな暴動指令を国民に出せるでしょうか。
尖閣国有化以上に台湾がらみは「核心的利益」でしょうから、いつやるのかなぁと「楽しみ」にしていたのですが気配もなしです。
そりゃそうです。今は不動産バブルが弾け、デフレに突入したと言われています。

すると中国政府は不動産関連の悲観的報道を禁止し、統計データすら公表を禁じてしまいました。
さらにSNSの規制は強まる一方です。こんなことをすると逆に水面下で不安が蓄積し、いつ大規模デモや騒乱に発展するかわかりません。
政府も実態が把握できずに適時対策も打てませんから、いっそう深刻化していきます。
国民に情報統制という三猿を強いて済むと思うのが共産党官僚の浅ましさです。

とうとう不動産バブル崩壊は拡大の一途を辿り、恒大などの民間セクターから国有セクターに広がり、国有銀行なども差し押さえ物件の競売を始めました。
これが国民に伝わると、不動産価格はいっそう下落が加速しました。
これとそっくりな現象はバブル崩壊後の日本でも見られましたが、規模が違います。
おそらくカネを提供した銀行、建設会社、保険会社に連鎖し、最終的には銀行などで預金の取り付け騒ぎにまで発展することでしょう。
隠蔽するだけ恐怖のガスがたまるからです。

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中国:香港の大規模火災 政府は調査を実施するとともに表現の自由を保障すべき : アムネスティ日本 AMNESTY

こういった中で、香港で1963年以来という大規模火災が発生し、11月28日の段階で死者128人と報じられています。
消防士からも殉職した者が出て、まだ200人以上とまだ連絡が取れない状況で、捜索が続いているようです。
福島香織氏はその原因についてこう述べています。

「竹の足場が原因のようにいわれていますが、私も竹の足場よりも、「偸工減料」と、労働局の官僚の怠慢のせいだと思いますね。竹の足場は、ある意味、香港建築文化の一つで、香港のように狭い土地で高層ビルをメンテナンスするとき、人力で持ち運びが可能な軽くて丈夫な竹の足場の方がいい、ととび職たちはいいます。
それよりも、労働局が現場巡回していたのに、住民から訴えを受けていたにも関わらず、防護ネットの問題や、火災報知器の問題を放置していたというのが、大火災の本当の原因ではないでしょうか。問題の所在をわかっていながら、それを受け止めようとしない。
香港の官僚は、かつて、こんなに無能ではありませんでした。香港官僚は給与は高いですが、給与が高いからこそ汚職をせず、清廉に仕事ができた、と言われています。香港官僚はパブリックサーバントであり、その自意識がきちんとありました。
ですが、香港が中国化するにつれ、その汚職文化、市民の方をむかず、上の顔色をうかがうヒラメ官僚文化まで浸透してきたのではないか、という印象をもちました。
李家超(行政長官)の態度も、言い訳とか、習近平への感謝とかばかり。多くの人民は、李家超への不満も募らせているようです」
(福島香織note11月28日)

こんな状況で、中国が反日暴動を命じたら、そのまま共産党に向かってきてしまうこと必定です。
先日の香港高層マンション大火災もそうでしたが、動員された警官は人々が集まるのを極度に恐れていました。
ガス抜きでチョコチョコと建築業者を逮捕していますが、いまだにキチンとした調査委員会ができたとは聞きません。
こんなことでは、日本と正面切っての戦いはムリムリ。

国是の台湾侵攻ですら怪しいもんです。
軍部、特に海軍はやる気マンマンのようですが、ミサイルや空爆では勝敗は決しません。
陸兵に占領させて初めて勝利といえるわけです。
その主力となる揚陸艦艦隊は台湾海峡、バシー海峡を通過せざるをえないでしょうが、その多くは対艦ミサイルの格好の標的になるでしょう。
また上陸させた部隊も、海上補給線がいったん切断されたら孤軍となってしまいます。
そしてなによりコワイのが、上がった陸兵が泥沼的ゲリラ戦に漬かってしまうことです。
ちょうど今のウクライナのように、4日で落とすといいながら延々3年間の泥沼に陥り、展望は唯一トランプだけという有り様です。
こうなったら今の中国は持ちません。
だから内憂を外に向けるという手もなかなか取れない、これが習近平の懊悩のはずです。

まだわが国は打つ手がない、早く発言を撤回しろと言っているコメンターもいるわけですよ。
猿田佐世弁護士がテレビで、「世界中の国を見渡しても日本ほど中国と揉めてる国はない。経済の重要性を考えろ」みたいなことを言って、総スカンを食っていました。
日本には切り札がないぞ、なんて言う人もいます。
さぁそうでしょうか。
日本はクソ落ち着いていますし、エスカレートを望んでいないから切り札をちらつかせることさえしていませんが(上品だねぇ)、あるんですよ。

「[東京 3日 ロイター] - 木原稔官房長官は3日午後の記者会見で、日本が半導体関連素材のフォトレジストの中国向け出荷を事実上中断したとする一部韓国メディアなどの報道について問われ、日本の貿易管理として「報道にあるような変更は行っていないと聞いている」と述べた」
(ロイター2025年12月3日 )
フォトレジストに関する貿易管理変更ない=対中出荷停止報道で官房長官 | ロイター

2019年、日本は韓国に半導体製造材料3品目に輸出規制強化をしました。例の「ホワイト国」の時ですよ。

「政府が韓国向けの輸出管理を厳格化した「フッ化水素」など半導体材料3品目に関し、国内メーカーから許可申請があった輸出1件を許可したことが7日、分かった。また、政府が輸出管理強化の一環として、軍事転用が容易な製品や技術の輸出を制限するリスト規制の対象品目の拡大を検討していることも分かった。複数の政府関係者が明らかにした」
(読売2019年8月8日)

日本は自由経済の国です。
民間の経済活動を政府が統制することは、原則できません。
経済を武器化することはトランプは大好きですが、本来は自由主義経済のタブーです。

唯一できるのは、日本という国全体を危なくさせる案件に対してだけです。
たとえばそれは、輸出した戦略物資が大量破壊兵器製造に転用されたりする場合だったり、反日暴動で日本企業に対して実害が及ぶようなことが起きた場合の対処措置としてです。

今回は前者で、尖閣国有の時にやらかした反日官製デモなどは後者です。
輸出規制強化は禁輸ではなく、厳しくチェックするよというただそれだけのことです。
それでもこれだけのことができるのです。




2025年12月 5日 (金)

活断層は原発再稼働ができない理由にはならない

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原発再稼働が遅れている原因のひとつは原子力規制委員会です。

「世の中の方は「再稼動の検査をしている」としていますが、それはほぼ終わっているんです。再稼動審査というのは、法律上義務づけられた点検の審査です。今ほとんど終わっています。
今、原子力規制委員会がやっているのは、2012年6月の原子力規制委員会設置法にともない、「原子炉設置変更許可」「工事計画認可」「保安規定変更認可」の3点セットと呼ばれるものの審査です。
単なる定期検査の完了確認ではなく、新しく出来た規制基準への適合性を審査しているのです。つまり原子炉を設置するための、認可を最初からやり直しているわけです。これには大変な時間と手間がかかります」

(諸葛宗男(もろくず・むねお)元東京大学公共政策大学院特任教授)

そして規制委員会が重視するは活断層です。
今回の敦賀原発の場合、敷地内に活断層があることが問題視されました。
しかしそもそも、日本は活断層だらけの土地です。

三つのプレートが集まって、その上に浮いているわが列島に活断層なんぞフツーにそこにあるものなのです。
ハッキリ言ってしまいましょう。地震と原発 は関係ありません。

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日本全国の活断層マップ (imart.co.jp)

日本にはこれだけ活断層があります。
かといって、活断層があるから国民を立入禁止にするわけにはいかず、その上で普通に暮らして、生産を営んでいます。
問題は活断層があるかないかではなく、あるとしてもそれに万全の備えが出来ているかどうかなのです。

原発施設の地震の揺れの基準値は、個々の原発によって異なっています。

え、全国一律ではないのかって。はい、違います。
原発施設が立っている場所の地層は、場所により異なっていますからね。  
地層が軟弱な場所では、地震の揺れは大きいでしょうし、岩盤の上に立てられれば地震には強いわけです。
したがって、個別の原発によって想定される最大震度は違っています。  

原発建屋を設計する場合、基準値に数倍をかけた値を基にして安全基準を定めます。
いわば崖の10メートル先が基準値だとすれば、そこから4、5倍先の4、500メートル先にテープを張っておくのです。
耐震設計の専門家の入倉孝次郎氏はこう述べています。


「仮に基準地震動を策定しても、それを上回る強さの限界的地震動が来る可能性は否定できない。だから、そのような『残余のリスク』を想定して耐震設計している」 
原子力発電所の耐震設計のための基準地震動 - 入倉孝次郎研究所

つまり、基準値地震動=耐震限界値ではなく、実際の原発施設は必ず倍数の安全率をかけて耐震設計されているわけです。
これを知らない裁判官や訴訟団は、「基準地震動にあってはならない地震が来たらどうするんだ。だから、新安全基準は緩すぎる」と言うのですが、ソンナことはただの素人考えにすぎません。
入倉氏は、いかにもその道のプロらしく淡々とこう答えています。


「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」
「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」
(福井新聞2015年4月15日)

そのとおりで、予想された以上の震度が原子力施設を襲ったことは何度かあります。
たとえば、東日本大震災時の福島第1原発においても、基準地震動を越える揺れが襲っていたことをご存じでしょうか。 

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宮野廣法政大学教授による 単位ガル クリックすると大きくなりますhttp://www.gepr.org/ja/contents/20140630-02/

上図は、宮野廣法政大学教授『福島原発は地震で壊れたのか』から引用したものですが、最大の加速度は、いずれも基準値地震動の平均460ガルを超えています。 
最大に超えたものは、2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。
さらにもっとも震源域に近かった女川では基準値580に対して636ガルで、ここも実測値が基準地震動を上回っています。

東日本大震災以上の大きな振動が発電所を襲ったケースに、2007年の中越沖地震動があります。
東電は地層の褶曲構造によって、施設内に大きな影響が出たと説明しています。

Photo_2 地質調査と基準地震動|柏崎刈羽原子力発電所|東京電力

実際に柏崎刈羽原発を襲った実測震度です。カッコ内が基準地震動です。比較してみてください。

002_3宮野教授による 前掲

いずれの原子炉も基準地震動に対して約50%、最大の2号炉では273ガルの基準値に対して、実に3倍の680ガルが襲っています。
この激震に対して、各原子炉は正常にスクラム(緊急運転停止)しています。後の配管の調査でも破断は認められていません。
つまり原子力施設は、基準値を大きく上回る振動に耐えていたのです。

しかし後に起きる東日本大震災をみれば、東電はこの柏崎刈羽の教訓にもっと学ぶべきでした。
柏崎刈羽では、2700カ所以上の機器類の破損があり、3号機の起動変圧器は炎上し、外部電源も一時的に失われています。
ただし、非常用ディーゼル発電機が正常に起動したために、事なきを得ています。 
しかし起動後も電力不足状態が続き、タービン駆動給水ポンプを動かすために補助ボイラーが起動しましたが、1から5号機と6,7号機でそれぞれ一台しか使用できないようなシビアな状況でした。
そのため4号機の冷温停止には、丸2日かかっています。

東電はこの柏崎刈羽で経験した地震による全交流電源の停止(ステーション・ブラックアウト) という事態を、もっとシビアに総括して、今後に生かすべきでした。
そうしていれば、福島第1で簡単に水没する場所に予備電源エンジンを置くなどという大失態をせずに済み、福島事故そのものが起きなかったことでしょう。

福島第1では大事故になったものの、その隣の女川では高台に施設があったために事なきを得て、津波にあった被災者を施設内に避難させています。
双方共に外部電源を喪失しましたが、福島第1は予備電源水没によって事故に至り、女川は無事でした。
そしていま女川は再稼働を始めました。

この福島第1と女川との違いを強調しすぎてしすぎることはありません。東日本大震災クラスの地震でも、原発は壊れておらず、破壊されたのはその後の津波による非常用電源の水没による冷却機能の喪失です。

よく地震で原子力施設が壊れた、地震大国日本に原発を稼働させてはならない、などと言うガサツなことを言う人がいます。
おおむね社民党系や共産党系などの脱原発団体ですが、これは福島第1の事故原因が地震によるものだという意図的誤認識によっています。

地震による施設損壊が原因ではないと、規制委員会は正式に否定しています。
あらためて福島第1原発の事故調査報告を読むと、こう記しています。


① 政府事故調報告書では、原子炉圧力容器、格納容器、非常用復水器(IC)、原子炉隔離時冷却系、高圧注入系等の主要設備被害状況を検討している。津波到達前には停止機能は動作し、主要設備の閉じ込め機能、冷却機能を損なうような損傷はなかったとしている。

② 民間事故調報告書では、津波来襲前に関して、地震により自動停止し未臨界を維持したこと、外部電源を喪失したが非常用ディーゼル発電機(EDG)により電源は回復したこと、その間にフェールセーフ(安全装置)が働きMSIV(非常用炉心冷却装置)が閉止したこと等、正常であったことが述べられている。

③東電最終報告書では、1号機~3号機について地震による自動停止と、自動停止から津波来襲までの動きに分けて評価している。前者は各プラントとも地震により正常にスクラムしたこと、外部電源喪失したがEDGにより電圧を回復したこと、EDG起動までの間に原子炉保護系電源喪失しMSIVが自動閉したこと等の結論を得ている。
(宮野論文前掲)

福島第1の事故原因は、ひとえに屋上に予備電源を設置していなかったから起きたのです。
このことを忘れて、揺れるからアブナイ、津波が来たらアブナイ、という脱原発派の認識は誤っているばかりか、現実にはなんの解決にもなりません。
だからこそその「残余のリスク」をいかにして減らしていくか、「想定外」が来た場合それをどのようにして極小化できるのか、というリスク管理的視点を完全に欠落させているからです。

これが工学系の考える、万が一事故が起きてもさまざまな方法でシビアアクシデントにならないようにブロックする深層防御の考え方です。
だから営々と福島事故以来、各電力会社はほとんど採算を度外視して、高い防波堤を作り、施設を強靱化し、予備電気を津波が到達しない高台に移設してきました。
それがどうみても法律のプロであっても、原子力工学や耐震設計のプロではない裁判官の鶴の一声で打ち消されてしまうからイヤになります。
この国の再稼働の権限者は、いつから地裁になかったのですか。
このような判決によっては、日本の原発の安全性は一歩も進化しないどころか、後退してしまいました。
なぜなら、それはかつてあった「原発は絶対に事故を起さない」という原発安全神話の、単純な裏返しとしての「原発絶対危険神話」でしかないからです。

原子力規制委員会は真正面から原子力施設の安全性と、それが果たさねばならない社会的役割を認識して答申するべきです。

 

2025年12月 4日 (木)

中国、今度はサンフランシスコ条約は「不法かつ無効」

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中国は狂乱街道驀進中です。いったいどこまで行くつもりなんでしょうね。
今度は在日中国大使館が、サンフランシスコ条約は「不法かつ無効な文書」だなんて言い始めました。スゴイでしょう。

「在日本中国大使館は2日、高市早苗首相が党首討論で引用したサンフランシスコ講和条約について「不法かつ無効な文書」だとX(旧ツイッター)への投稿で主張した。一部の西側諸国が「中ソなど第2次世界大戦の主要戦勝国」を排除して結んだと批判した。
高市氏は11月26日、立憲民主党の野田佳彦代表との党首討論で、台湾の法的地位を日本が「認定する立場にない」とする政府見解を維持した。日本が1952年発効のサンフランシスコ講和条約で台湾に関するすべての権利を放棄した点に触れた。
日本は台湾の帰属先を明示していないサンフランシスコ講和条約を重視してきた。72年の日中共同声明で「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」と表明した中国の立場を必ずしも認めず「十分理解し、尊重する」としている」
(日経12月2日)
在日本中国大使館、サンフランシスコ講和条約「不法かつ無効」と主張 - 日本経済新聞

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一瞬、へ、ナニを言っているんだと思っちゃいますが、中国の言い分は高市氏が「台湾の地位は定まっていない。わが国はそれを認定する立場にない」といういわゆる「台湾の地位未定論」に怒ってのもののようです。

「高市早苗首相は26日、立憲民主党の野田佳彦代表との党首討論で、台湾の法的地位を日本が「認定する立場にない」とする日本政府の見解を維持した。野田氏が台湾有事の想定を再度問い、首相は「政府がすべての情報を総合して判断する」と具体的な答弁を控えた。
日本が1952年発効のサンフランシスコ講和条約で台湾に関するすべての権利を放棄した点に触れた。台湾とは「非政府間の実務関係を維持している」と説明した」
(日経2025年11月26日)
高市早苗首相、台湾の法的地位「認める立場にない」 具体的答弁控える - 日本経済新聞

ちなみに前首相閣下も同時期に発言していて、こちらは高市首相と正反対に「台湾は中国の一部だ」そうで、この発言を中国大使館は大喜びで拡散しています。

「石破首相は2025年11月26日に東京都内で講演。毎日新聞は同日付の記事で、その様子について、
「石破氏は、1972年の日中国交正常化以降、台湾は中国の一部とする中国側の考えを歴代政権は理解し、尊重してきたと説明。『変えてはならないことだし、ものすごく注意しながらやってきた』と自身の経験も交えて述べた」と報じた」
(JCASTニュース11月30日)
石破茂氏が「中国の手先」と批判された真相 日中外交の発言を中国大使館が切り取り拡散、偽情報も広がる(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

わずか1年で日本政府の公式見解が違ってくるわけはないのですから、高市氏のほうが日本政府の公式見解で、ゲル氏の脳味噌が腐っているのです。
しかしそれはしょせんわが国内部のこと、相手が中国大使館、果ては新華社まで出てくるとなると話は違ってきます。

「【新華社北京12月1日】日本の高市早苗首相は台湾問題で誤りを重ね、根深い歴史修正主義的傾向と、今日の国際政治の現実に対する誤った判断をあらわにしている。
高市氏は最近、国会における党首討論で「サンフランシスコ平和条約でわが国は台湾に関する全ての権利権限を放棄している。台湾の法的地位を認定する立場にはない」と発言した。歴史を意図的に歪曲するいわゆる「台湾地位未定論」は、同氏が先日公然と行った「『台湾有事』は日本の『存立危機事態』になり得る」という誤った主張と同様に、戦後国際秩序に挑戦し、台湾海峡への軍事介入に向けて布石を打とうとする真意を改めて露呈させた」
(新華社12月1日)
日本の「台湾地位未定論」は歴史への無知と現実に対する誤判断(新華社通信)|dメニューニュース(NTTドコモ)

「高市は歴史修正主義だ」なんて、西側諸国の耳に快い表現をしています。
高市氏が就任した当時、外信のいくつかが高市=極右という歪んだ報道をしたことに便乗したのでしょう。
ま、アレは外信といっても日本人記者が書いたものなんですがね。

それはともかく、中国は要約すればこんなことを言っています。

 

  • 主要戦勝国の排除: サンフランシスコ平和条約は、中国やソ連といった主要な戦勝国を排除して日本と単独で締結されたものであり、1942年の連合国共同宣言で禁じられた「敵国との単独講和」に違反している。また、国連憲章や国際法の基本原則にも反している。
  • カイロ宣言・ポツダム宣言の有効性: カイロ宣言(1943年)とポツダム宣言(1945年)こそが国際法上有効な文書であり、これらは台湾の中国返還を定めている。そのため、サンフランシスコ条約の台湾に関する内容は無効である。
  • 歴史的・法的事実: 台湾の中国への復帰は第二次世界大戦の勝利の成果であり、カイロ宣言、ポツダム宣言、日本の降伏文書といった国際法上の効力を持つ一連の文書は、台湾に対する中国の主権を明確に確認している。

ちょっと待って!中国さん、サンフランシスコ条約を否定するとドエライことになりまっせ。分かって言っているのかな。
まず、もしサンフランシスコ条約が無効だとすると、戦後世界の枠組み総体を否定することになります。
日本が台湾の権利を放棄したことも否定されますから、自動的にその前に締結した1895年の下関条約のほうが有効になってしまいます。
日清戦争の結果結ばれた下関条約では、清国が台湾を日本に永久に割譲すると定めていますから、中国の論理に従えば台湾は今も日本領ということになってしまいます。(爆笑)

次に、どうやら中国はサンフランシスコ条約の前のカイロ宣言やポツダム宣言が有効だと言っているようですが、そもそも、何度も書いてきていますが、この時期には「中華人民共和国」なんて国は世界に存在しませんでした。
中国共産党は中華民国内の武装勢力でしかなく、これらの宣言の場に登場した「中国」とは国府で、代表は蒋介石でした。
下のカイロ宣言の時の写真を見て下さい。蒋介石の横にいるのはルーズベルト、そしてチャーチルです。

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カイロ会談から80年:当初は争点にならなかった「尖閣」でいまだに軋む日中 | nippon.com

この写真は中国にとって都合悪いらしく、中国ではこうなっています。
ただし映画のポスターで、作ったのは八一映画会社という国営企業です。

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「微観中国」'15/09 (29)毛沢東は「主役」にあらず 「歴史歪曲」の映画宣伝に猛烈な批判

カイロ宣言やポツダム宣言は連合国の共同声明であり、これを確定したのがサンフランシスコ条約です。
とうぜんのこととして条約が声明に優越します。
したがって、「宣言は有効だが条約は無効」という中国の主張は、条約と声明の重さを逆転させた珍論です。
そのうえこれは多くの国が署名した国際条約ですから、中国がご不満でもいまさらかってに解消できません。

United Nations=国連という訳語は日本の国連信仰に根ざしていますが、もちろん「United Nations」とは、第二次世界大戦の戦勝国連合(連合国)を指すものです。
だから敗戦国規定なんてものがあるわけですが、その連合国に「中華人民共和国」は含まれていません。
理由は前述のとおりですが、その後の1971年にアルバニア決議で台湾は国連を脱退しました。
しかし中華民国(台湾)の政治的地位を明示したものではなく、単に「中華人民共和国の代表権を承認した」に過ぎません。
このため、同決議の解釈については、英米が中国の恣意的な解釈に反対する法律や議会決議を行っています。

そもそも、サンフランシスコ条約は、大日本帝国の海外領土の放棄を定めたものであり、これを「無効」としてしまったら、台湾・満州・朝鮮半島・南樺太・千島列島・南太平洋諸島に対する日本の領有が継続されることになってしまいます。
ついでに、戦後日本もサンフランシスコ条約以降も米国による占領下が継続ということになります。
第一、わが国は独立してない被占領国のままじゃないですか。(笑)

中国は、このサンフランシスコ条約が作った戦後秩序の枠組みの中の特権をいちばん享受してきました。
その最たるものが、国連の常任理事国の地位です。
拒否権を持つ常任理事国として、中国はいかなる中国批判にも耳を傾けませんでした。
南シナ海の軍事支配など侵略そのものですが、一般の国なら国連制裁を食うべきにもかかわらず、なんの制裁も加えられませんでした。
台湾だけに注目しても、サンフランシスコ条約の後に締結した日華平和条約で台湾の権利を放棄したことをうたっていますが、これも「無効」となって、前述したように日本の領有を定めた下関条約に戻ってしまいます。

とまれ、一連の中国の乱痴気騒ぎは日本に関係ありません。
高市氏は「存立危機自体」にせよ、今回の「台湾の法的地位は未定」にしても、従来からの日本政府の見解を踏襲したにすぎません。
ただ「日中友好」とやらに忖度して、あいまいにしなかっただけのことです。
そして騒げば騒ぐほど中国に共感する国は現れず、「台湾問題は中国の国内問題」という自らの立場を自分で覆してしまったわけです。

 

 

2025年12月 3日 (水)

高市政権、原発再稼働に驀進中

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高市政権の大きな特徴は、「あいまいさを嫌う」ということです。
実は高市氏がなにか新しいことを決定したというより、多くは前々から決まっていても歴代政権が摩擦を恐れてナニもしなかったから「一斉に動き出した」ように見えるだけです。
あの存立危機事態が典型でしたが、あんな台湾有事の議論は安保法制の時に膨大を時間を費やして議論済みであってとっくに政府の公式見解は決まっています。高市氏はなんの変更も加えていません。
それを百も承知で元外相のポジションにいた男がネチネチと追及した結果、日中関係は今の有り様です。

歴代政権は多くの問題を、あいまいにしておこうね、角がたたないようにしようね、はっきり言ったら政権が火傷するもんねとばかりに、政府が決めても実行しないまま放置しました。
典型的なのがゲル政権です。
口先だけで不精なのか、無能なのか、無能故に国会で過半数を失くしていっそう無力な存在となり、なにもしないままノンベンダラリとした日々を送ってしまいました。
そのためにやるべきことが山積。

そのひとつが原発の再稼働です。
原発は脱炭素の切り札として再稼働する方針は、実はとっくに決まっていました。
GX会議(グリーン・トランスフォーメーション)で日本のベース電源として位置づけられたエネルギー源こそ原子力です。
GX会議とは、日本がクリーンエネルギーを主軸とした経済・社会システムへと変革を目指すために、2022年7月に設置された会議のことです。
GX会議において原子力の位置づけ変更がされています。

「3) 原子力の活用
原子力は、出力が安定的であり自律性が高いという特徴を有しており、安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う。このため、2030 年度電源構成に占める原子力比率 20~22%の確実な達成に向けて、安全最優先で再稼働を進める」
siryou1.pdf (cas.go.jp) 

GX会議の基本方針では、ウクライナ戦争以降の状況を踏まえて、エネルギー対策に非現実的ではいられないという危機感から、2030年頃までに再び原子力をベース電源の2割にまで引き上げようとするものです。
なにか激増させるように見えますが、福島事故以前には約3割を原子力発電に依存していたので、元に戻っただけのことです。

それを脳のネジが飛んだカンという男が、思いつきで超法規で止めてしまいました。

そして脱原発をやらかして、その代替が再生可能エネルギーですから目も当てられません。
非現実的方法の上に非現実を上塗りすればどうなるかかんがえないでも分かります。
電力不足です。しかも構造的な問題ですから恒常的とならざるを得ません。

総合エネルギー統計これによると、2010年における原子力の発電量は2882億kWhでしたが、11年に前年比約3分の1の1018億kWhに激減し、12年には159億kWhと、前年比でさらに6分の1に激減しました。13年は93億kWhで、14年にはついに統計上ゼロとなってしまいました。
集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)|資源エネルギー庁 (meti.go.jp) 

それに連れて化石燃料依存度は急上昇しています。

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1.1.2 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題 │ 「平成25年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2014)HTML版 │ 資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

原発停止による燃料調達コスト上昇は3.6兆円にも達しました。
原油や天然ガスは100%海外依存ですから、その分国富が流出したわけです。
カン政権の思いつき的原子力停止は、東日本大震災からの立ち直りに打撃を与えたのみならず、今に至るも日本のエネルギー供給に計り知れない損害を与えたのです。

電力会社も指を加えていたわけではなく、原子力規制委員会の基準に沿うべく莫大なコストをかけて安全対策工事をしてきました。
その完成に伴って、徐々に原発の再稼働が進みましたが、2021年にようやく708億kWhにいまで回復しても、それでも福島事故以前の2010年と比べて発電量は4分の1の水準にとどまっています。

いや原子力がなくなった分だけ太陽光だの、風力、地熱、バイオマスだのといった再エネの発電量がさぞかし急増しているに違いない、といったことを考えるでしょうが、あいにくいくら再エネ賦課金として税金よろしく国民から収奪しても、現実には化石燃料への依存度が高まる一方でした。
今年のCOPでも、日本が環境団体から化石賞をもらいましたが、原発を止めて再エネを増やせばそのバックアップ電源で自動的に化石燃料による発電も増えるのです。
再エネを増やそうとすると化石燃料に依存するしかなく、化石燃料を増やそうとすればCO2が増えてしまうのが笑えない現実なのです。
このパラドックスを解く唯一の手段は、原子力を適正な規模で、安全を確認しながら稼働させることしか残されていませんが、原子力がタブー視されたままではどうしようもありません。

政府は不人気を恐れて再稼働をサボタージュしました。
2024年11月、敦賀原発2号機が再稼働の禁止処分を受け、政府もそれを容認しました。
この電力不足の時代に、よくもまぁこんなことが出来たものです。

「福井県の敦賀原発2号機の再稼働を巡り、原子力規制委員会が不許可を決定したことについて、林官房長官は「科学的・専門的判断は尊重すべき」と述べました。林官房長官
原子力発電所の運転は安全性の確保が大前提であり、独立性の高い原子力規制委員会による科学的専門的な判断は、その結果のいかんによらず尊重すべきと考えております」
 日本原子力発電が再稼働を申請していた敦賀原発2号機について、原子炉の真下に活断層がある可能性が否定できないとして13日、原子力規制委員会は「不許可」とする処分を決定しました。
 処分を受けて日本原子力発電側は再申請を行う姿勢を示していて、林長官は今回の指摘を踏まえて「適切に対応していただきたい」と述べました」
(TBS2024年11月13日)
敦賀原発2号機の再稼働“不許可”に林官房長官「判断は尊重すべき」(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

石破政権はいとも簡単に再稼働不許可を容認していますが、これはGX会議という政府が決めたことの公約違反です。
その結果、原発の再稼働が認められつつある西日本と東日本では電気料金の格差が生じました。

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産経ニュース 

「原発の再稼働が進んでいるかどうかで、電気料金に地域差が生まれている。大手電力10社の12月使用分の電気料金では、最も高い北海道電力と最も低い九州電力で約2千円の開きが出た。西日本に比べ原発の再稼働が進まない東日本は火力発電に依存し、燃料費の高騰で電気料金が高止まりしている。価格面においても安価な電力を供給する原発を求める声が強まっている
(産経12月2日)
原発で電気料金は「西低東高」 北電は九電より2千円高 価格面でも再稼働に期待 - 産経ニュース 

北電は2027年に泊原発(北海道)3号機の再稼働で年600億円の燃料費減を見込んでいます。
このうち500億円を活用して家庭向け電気料金を11%程度、企業向けは7%程度値下げする方針だそうです。
東電柏崎刈羽原発(新潟県)は来年1月にも6号機が再稼働する見通しで、収支改善効果は料金に織り込み済みだとのこと。
このような電力会社の努力を政府が後押ししないばかりか放置し続けてきたわけですが、やる気になれば流れは変わるのです。

 

 

2025年12月 2日 (火)

経済政策の目的は財政再建ではなく、経済成長させることです

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高市政権が「責任ある積極財政」に転換したら政府長期金利が上がったというのでメディアは、さぁ市場がサナエノミクスに不信任を出したと小躍りしています。早々と短期政権になるという予測すら出ています。
テレビでもあの政治評論家(というか政治評判家)の田崎史郎氏がこんなことを言っていたようです。

「恵から「基礎的財政収支のことですね」とプライマリーバランスの意味について説明しつつ、田﨑氏に次の言葉を促され、「新しい財政再建目標をどうするのかというのを示してないわけです、今」と新たな指針を示していない高市氏の言動について話した。
さらに「示してないから、マーケットはどんどん国債発行が増えていくんじゃないか、歯止めがかからないんじゃないか、って」と話した。恵からも「だから不安になっているんじゃないか、ってことですね」と合いの手が入った。
田﨑氏は「財政再建目標をしっかり立てれば、多少は国債発行を増やしてもいいんですけれども、その目標すら示していないのが問題なんですよ」と断言した」
(日刊スポーツ12月1日)
田﨑史郎氏「財政再建目標を…」高市首相の物価高対策に「国債発行増えて歯止めかからない」断言(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース

いかにも永田町の泥水の中で世渡りしてきた人物らしい意見です。
国債発行が増えて行く?だからなんなんですか?
こういう人らは、経済政策の目標を財政再建に置いて、経済成長をニの次三の次にします。
むしろ経済成長が始まる時のインフレすら悪しき物価上昇と捉えて、成長の芽を潰してしまいます。
高市氏がやろうとしているのはいわば「保守革命」なのですが、それをまったく理解できていません。

安倍氏亡き後の石破政権までの自公連立政権は、憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などを後回しにして、LGBT法や選択的夫婦別姓などリベラル政策をとり、外交政策では対中宥和路線でした。
また経済政策としては、財政健全化路線を柱とする緊縮路線でした。

さて、長期金利はたしかに上がる傾向にあります。10年物国債だと下のように動いています。

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マーケット|SBI証券

長期金利とは、一般的に10年物国債の利回りを指します。
短期の国債利回りが政府の政策金利の影響を受けやすいのに対し、長期金利は景気変動やインフレの動向など、より実体経済の状況を反映する傾向があります。
現在の日本国債10年物利回り(JP10Y)は1.877%で、この1週間で0.22%、この1ヶ月では7.90%増加しています。また、この1年では75.58%上昇しています。

またCDS(クレジット・デフォールト・スォップ)がありますが、至って平穏です。
国債の信用リスクは、国が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性を指します。このリスクを測る指標の一つに、CDSがあります。
CDSは、特定の国債がデフォルトした場合に備え、損失を肩代わりする保険のような金融商品です。
そんなに積極財政が不安ならCDSを買い込みなさい。

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【CDS】[2169]チャート | 日経電子版

つまり、高市氏の積極財政が登場する以前から長期金利は上昇傾向にあったのです。
ですから景気の変動やさまざまな要因で変動する長期金利を、積極財政に転換したから市場が反応したというのは短絡です。

ところが積極財政=財政危機というガチガチの固定観念にとらわれている人たちは、積極財政→国債発行急増→財政赤字拡大→財政破綻→日本破滅という図式で考えるようです。
田崎氏の言う「財政再建目標をしっかり立てれば、多少は国債発行を増やしてもいい」という考え方は、実は「なんのために国債発行をするのか」という目的がなくなってしまい、「財政再建目標」が絶対目標のように転倒してしまっています。

下のグラフは産経の田村秀夫氏が作った国債金利(10年物)とGDP成長率、と政府純負債の関係を、アベノミクスが始まった2012年から見たものです。

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赤線が政府純負債ですが、名目成長率(緑線)が上昇すると反比例するように下がっているのがお分かりになるだろうと思います。
同時に緩やかに国債金利も上昇しています。

「アベノミクスは異次元金融緩和政策によって長期金利をゼロ%前後にまで押し下げた。しかし、財政のほうはPB黒字化目標に縛られ、消費税増税など緊縮路線を続ける羽目になった。その結果、需要不足によるデフレ圧力は根強く、名目成長率は15年度をピークに下がり続け、政府純負債のGDP比は上昇する始末だった」
(田村秀夫 11月29日)
無責任極まる高市財政非難メディア 政府の新規国債発行額にみる債務膨張抑制への配慮 田村秀男の経済正解 - 産経ニュース

アベノミクスは3本の矢(金融瀬政策・積極財政・構造改革)を掲げつつも、金融緩和はクロダバズーカによってゼロ金利まで下げながらも、財政は財務省の執拗な抵抗に会ってプライマリーバランス黒字化論に縛られておもうに任せず、消費増資税まで強いられて苦戦しました。
残る3本目の矢である構造改革は、各省庁の利権が絡んだ岩盤規制の壁を打ち破ることができず、獣医学部増設も加計問題で苦しみました。

「そのトレンドを逆転させるきっかけになったのは、20年の新型コロナウイルス禍である。当時の安倍晋三首相は現金給付、補助金など大型財政出動に踏み切った。財政状況はこのときこそ悪化したが、景気は財政によって下支えされ、21年度にはV字型に回復した」
(田村前掲)

皮肉にもコロナ禍がデフレの淵に沈み込もうとする日本経済を回復させたのです。
つまり、金融政策一本のまま戦わざるをえないハメに陥り、個人消費が牽引する健全なデフレ脱却に至らないまま終了しました。
こう見てくると、なにがアベノミクスに足りなかったのか、どこをさらに強化すればいいのか明白です。
それこそいま高市政権がとっている積極財政です。

名目経済成長の上昇を持続すれば、税収の自然増によって政府債務は上昇せずにおのずと健全財政になるのです。
経済を回復させれば税収が増える、という子供にも分かるこの理屈が、エリート財務官僚の皆さんには理解できないようです。
財務省はなんと税収はゼロ成長を前提にしているのですからたまげます。
日本経済はゼッタイに成長しない、しないといったらしない、なぜならオレラが成長しそうになると潰すからだ、ということのようです。
いつも景気が回復しそうにてると消費増税をしかけて成長の芽をつぶしてきていたのでヘンだとは思っていたのです。

案の定、彼らには彼らしか通用しないロジックがありました。それが「税収弾性値1.1」という迷信でした。
税収弾性値とは、「名目GDPが増えた時に税収がどの程度増えるか」という予測値のことですから、財務省の1.1とはゼロ成長で前提としていたわけです。
これが、岸田-石破政権の時にやたらと出てきた「恒久的財源」論です。

もちろん現実には、税収の伸びが1.1なんてことはありえません。
下図は90年代後半に消費税増税をして以後の、過去15年間の一般会計税収ですが、名目GDPが増えれば税収は1.1どころか3倍ちかくに増大することがわかっています。

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一般会計税収の推移

ですから経済に冷や水を掛けなければ、1兆円ていどの税収不足など軽く自然の税収増だけで得られてしまいます。
コロナ不況の真っ最中で個人消費がメタメタであったにもかかわらず、予想を3.1兆円も上回りました。しかも2年連続です。
普通に考えれば景気が回復すれば税収は今回の3.1兆円上振れしたようなことが起きるはずですが、彼らの税収弾性値では1.1しか成長しないはずなので、常に財政危機なのです。

田崎氏がしたり顔で言うような「経済再建目標を明確にしろ」というようなプライマリバランス黒字化論で経済成長の芽を押しつぶしてしまえば、アベノミクスの轍を踏むことになります。

 

 

2025年12月 1日 (月)

「存立危機事態」で沖縄県は当事者です

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2022年8月4日当時、ペロシ米下院議長の台湾訪問への報復として、中国は台湾を取り囲む6海域で激しい軍事演習を実施し、さらにあうことか我が国EEZに5発の弾道ミサイルを打ち込むという軍事的脅迫までしています。
その着弾海域は、沖縄県西端の与那国島からわずか60キロほどの至近距離でした。

台湾有事で、中国は台湾に大挙して海を渡り、弾道ミサイルを打ち込んでくるでしょう。
その中で、いまもっとも可能性が高まっているのが、海上封鎖です。
今の日本の海上交通路である台湾海峡は戦闘水域となって、日本は大きな打撃を被るでしょう。

また台湾東海岸も封鎖海域・空域にするでしょうから、その場合与那国島がかかってしまいます。
下の位置関係を見て下さい。与那国は台湾領土の金門島などよりはるかに近いです。

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【図解】台湾周辺地図(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)

上の地理的距離を見て、いや全部台湾域内で終わるさ、日本は米軍の後方支援だけに専念してればいいんだ、なんて考えている関係者はいないでしょう。
私は中国軍は、台湾の東側から侵攻するために与那国や宮古島を押えてくると思っていますし、横須賀から駆けつける空母打撃群を阻止するために尖閣周辺海域で阻止線を張るだろうと考えていますが、この場合はモロにわが国に対する軍事侵攻ですから立派な有事なので、とりえあえず今は置きます。

では、そこまで中国軍がしない場合はどうでしょうか。
それでも台湾空域は、侵攻してくる数百機の中国軍機と台湾・米軍機で溢れるでしょう。
自衛隊機は台湾国境すれすれまで進出して戦闘空中哨戒(CAP)を行っていねばなりません。
平時と違って一回一回那覇からスクランブルをかける時間的余裕がないために、常時危険空域スレスレで待機するわけです。

仮に中国軍機が台湾軍機に追尾されて領空侵犯した場合、自衛隊機は平時のように警告をして翼を振って退去を求めるなどはしないでしょう。
紳士的な自衛隊ですから警告くらいはしたいでしょうが、混乱する戦場で、貴機は日本領空を侵しています。ただちに出て行きなさい、などといえるかどうか。

そりゃそうでしょう。
生命を張った空戦機動している時に、いちいち国境線など気にしていられませんし、今の空戦はマッハ1周辺(遷音速)で行われますから、1分間に約18キロも飛んでしまいます。
すると中国軍機は、たちまち尖閣はおろか与那国、宮古の上空に達してしまいます。
逆に、自衛隊機が中国軍機の射撃を受けた場合、その反撃で台湾領空にたちまち入ってしまいます。
また中国軍は、台湾と尖閣諸島などへのミサイル攻撃も大量にするはずで、その迎撃や発射地点への攻撃も実施されるはずです。
こういう状況で、自衛隊は後方支援に専念できたらそのほうが奇跡です。

しかし、沖縄における有事対応措置はなきに等しく、ようやく自衛隊の警備部隊が小規模駐屯しているのみです。
住民約1600人を抱える与那国町長の糸数健一氏は、2019年に訪問したデニー知事にこう訴えました。

「国は国民保護法でさまざまな状況を想定していますが、住民に避難するよう指示できるのは、武力攻撃事態が認定されてからで、軍事侵攻が始まる段階です。それでは遅すぎます。小さく狭い島には地下壕もありません。何としてでも住民の島外避難が重要ですが、町だけの力ではできません」
玉城知事による与那国町行政視察(8月2日、3日)|沖縄県公式ホームページ


そのとおりです。なぜ与那国町長が県知事であるデニー氏に訴えたのでしょうか。
それは国民保護法における武力攻撃事態において、自治体が主体となって避難計画を策定して避難させるような立て付けになっているからです。

「●国民保護法
(国と地方公共団体との役割分担)
第七条 武力攻撃事態等への対処の性格にかんがみ、国においては武力攻撃事態等への対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態等における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とするものとする」
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 | e-Gov法令検索

実際にデニー知事が避難計画の無視をきめこんだため、業をにやした糸数町長が直接国に問い合わせたところ返ってきた答えがなんと「県を通してくれ」とのことでした。ダーっです。
離島避難計画は、地方自治体の無為と腰が引けた国の対応の狭間に落ちてしまっているのです。

国も避難においては自衛隊や警察を出動させて島民の安全を守るでしょうが、それは避難計画があってのこと。
計画を武力事態になる、いま作っておかねばならないのです。

(安全の確保)
第十七条 政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

あくまでも主体は自治体なのです。
だから糸数町長は、19日、与那国島を訪れたデニー知事に「台湾有事は日本有事、沖縄有事だ。住民を危機回避で島外に避難させる手立てをしてほしい」と迫りました。
それに対してデニー氏の返答はこうです。

「この件については世界中のウチナンチュー(沖縄人)に呼びかけて、どの国とも仲よくするのが大事だ。沖縄県は福建省と姉妹都市だ」

トンチンカンというより、真面目に答える気がありません。
なにが世界のウチナンチューに訴えて世界の国と仲良くするですか、馬鹿ですか。
そこに暴力を振るおうとしている国があり、県民が脅威にさらされているという時に「世界の国と仲良くする」とは、そういうのを思考停止というのです。

糸数町長は、デニー知事があまりに無責任を決め込むために独自案をかんがえました。
まず、島民を隣の大型滑走路を持つ宮古の下地島に移す、しかし与那国のちいさな空港で小型機定期便で運べる人数が一回50人にすぎません。
これをなんとか30回反復し、漁船なども使ったとしても何日かかるのか。
その間、島付近で海上封鎖がなされた場合、海域・空域が封鎖されてしまったら、もうどこにも逃げ場がありません。

弾道ミサイルや爆弾も降ってくるでしょう。
最悪、中国兵が上陸するかもしれません。
9条を書いた御札を入れたお守りを、島民に配るのでしょうか。
避難シェルターも必要ですが、どこにそんなカネが与那国町にあるのか。
町長はため息をつきながらこう言っています。

「有事の際の島民退避に目途がつかない以上、町長としては、危険が迫ったら早めに家族や親戚のいる所に一時的に身を寄せて下さいと言うしかない。飛行機代や当座の出費として、1人100万円支給すれば何とかなる。1600人で16億円。そのための基金の準備を考えています」

ここまで与那国町長を追い込んでおいて、なにが「米国と日本から沖縄を奪い返す」ですか。
沖縄県は「存立危機事態」になった場合、完全に当事者なのです。

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