日本は崩れつつある核管理にどう対応するのか
今年の更新もこれが最後となります。
新年は1月5日(月)からになります。
皆様、よいお年をお迎え下さい。
管理人
核抑止の実態は、核兵器というモノだけを見ていてもわかりません。
核抑止は、核のトライアドと相互確証破壊理論(※2)、そしてNPT(※3)によって成立しています。
トライアドは長くなりますから説明を省きます。
※1核の 3 本柱
※2相互確証破壊 - Wikipedia
※3核拡散防止条約 - Wikipedia
そしてNPTは核軍縮、核不拡散、軍事目的への核の使用禁止、という三つの部分から成立しています。
NPT(核兵器不拡散条約)について | 国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜 (hiroshimaforpeace.com)
このNPTの三つの柱は常に揺らいでいますが、その原因は、ロシアが核の使用を政治的な脅迫に使い、核軍縮交渉からの離脱を宣言したことです。
「ロシアと米国の核軍縮合意、新戦略兵器削減条約(新START)は、ロシアのプーチン大統領の履行停止表明で修復がほぼ不可能になった。ウクライナ戦争と並行し、新たな軍拡競争が勃発するリスクが高まる一方、米ロ両国は50年余りにわたりこれまでの核軍縮条約がもたらしてきた安定的かつ予測可能な核管理の枠組みに頼れなくなる」
(ロイター2023年2月22日)
焦点:新START、修復ほぼ不可能 核リスク拡大へ | Reuters
このロシアの離脱で、それまで不十分ながらも「非核化への道」を歩んでいた核軍縮が座礁しました。
反核団体のICANのように、このロシアの暴挙を非難せずに核兵器禁止条約締結しない日本を攻撃するのは、とんでもない倒錯です。
核兵器廃絶国際キャンペーン - Wikipedia
そしてもうひとつの原因は、核大国である中国がそもそも核軍縮のテーブルにつこうとさえしていないことです。
それどころか、中国は「使える核」である中距離弾道ミサイルを増強し続けました。
「使える核」とはブラックな話ですが、大陸間弾道弾が大国間の者に限定されているのに対して、近隣国、つまり弱小どもと中国が思う相手に使えるものだからです。
大陸間弾道弾はその破壊力の大きさ故に全面核戦争となりますが、中距離核は相手の策源地を破壊するための小型核ですから「使いやすい」のです。
中国は米露がINFに拘束されていることを尻目に、様々な射程距離の中距離ミサイルを開発しました。
そしてこの中距離核戦力を背景にして、韓国・日本・沖縄・グアムなどに実戦配備された米軍の戦力を脅かし、九州-沖縄-台湾を結ぶ第1列島線の内部への米国の空母の接近を防ごうという「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を推進しています。
このような「使える核」への中国の変化に危機感を抱いた米国は、2019年8月にINFから脱退した後、米国・中国・ロシアの3カ国を包括する核軍縮の枠組みを作ろうと主張してきましたが、もちろん中国は見向きもしませんでした。
2番目の核不拡散も、ロシアがベラルーシに核ミサイルを前進配備することで崩れました。
米国は対抗措置をかけていませんが、ヨーロッパの核のバランスが崩れてしまった以上、なんらかの措置は必要となります。
するとまた核戦争への道が近づくわけです。
明らかな核拡散防止条約条約違反ですが、だれも止められませんでした。
「ロシアとベラルーシは25日、ロシアの戦術核ミサイルをベラルーシ領内に配備することを正式決定する協定に調印した。
バイデン氏は26日、ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備する計画を進めていることを「極めて否定的」にとらえていると述べた。米国務省もロシアの核配備計画を非難している。
米国の反応に対して在米ロシア大使館は「米国がわれわれに仕掛けた大規模なハイブリッド戦争の中、必要と考える手段で安全を確保することはロシアとベラルーシの主権的な権利」と強調。「われわれが取った措置は、国際的な法的義務に完全に合致するするものだ」とした」
(ロイター2023年5月29日)
ベラルーシへの戦術核配備、米は批判する資格ないとロシア一蹴 | ロイター (reuters.com)
そして三番目の核の軍事利用転用禁止は、北朝鮮とイランで完全にザルとなっています。
これも米国は有効な阻止方法を持たないまま、北朝鮮はほぼ完成の域に達しています。
では、日本はこのような崩れ掛かっているNPT体制にどう対処するのでしょうか。
ひとつの選択肢としてあるのは、石破氏が主張していたニュークリアシェアリングと「持ち込ませる」という核共有です。
この主張は石破氏をリベラル候補と見て推しに回ったメディアは完全スルーしていましたが、同じようなことを彼らが大嫌いな安倍氏も言ってました。
ちなみに高市氏の官邸ブレーンのオフレコ発言すらあの騒ぎですから推して知るべしです。
一定の現実性を持った案です。
「自民党総裁選9候補は16日夜、インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」主催の討論会に臨んだ。石破茂元幹事長は、米国の核兵器を日本で運用する「核共有」について「非核三原則に触れるものではない」と述べ、議論の必要性を訴えた。上川陽子外相は日本は唯一の戦争被爆国だとして慎重姿勢を示した」
(共同9月17日)
石破氏、「核共有」議論を 上川氏慎重、総裁候補討論(共同通信) - Yahoo!ニュース
日本においては、安倍氏の提言をきっかけにニュークリア・シェアリング論が急速に現実味を帯びました。
ニュークリアシェアリングは、冷戦期に考えられた核の前方配置です。
突如核攻撃を受けた場合、米国が対応できないケースを想定していたわけです。
ですから、当然核拡散防止防止条約(NPT)の決め事の範疇でシェアされる以上、あくまでも管理、運用権限の一切が米国にあります。
自国では核兵器を製造せずに、米軍基地に保管して有事に際して米国に合意を受けて受け取るニュークリアシェアリングによって、ドイツ、イタリア、トルコ、オランダ、ベルギー領内に核が置かれています。
NATOはこのシステムを使って、これらのNATO加盟国に常に150~200発のB61核爆弾が備蓄していますし、1991年に軍縮計画の一環として撤収するまで、アジアでは韓国のオサン空軍基地に常備されていました。
ただし冷戦が終了すると、シェアされた方のドイツなどは核兵器を置かれることを嫌がり始めていました。
冷戦も終わって核戦争なんかありっこないのに核なんか置きやがって、ささっと持って返ってくれ、というわけです。
ところがこれが大きく揺らぎました。
ロシアがウクライナ侵略に当たって、核を恫喝の道具にしたからです。
核保有超大国ロシアが、核もなければNATOという核の傘もない小国を侵略してしたことは西側に衝撃を与えました。
侵略に当たって、プーチンはドスを効かせてNATOと米国に、「手出ししたら核戦争になるからな」という脅迫までしています。
このロシアの核戦争の脅迫に、NATOと米国は屈してしまいました。
ウクライナ侵略冒頭、軍事介入するのかと聞かれたバイデンは、にわかに顔色を変えて「米国に戦争をさせる気なのか」と青ざめました。
これが現在のニュークリアシェアリングを巡る世界の情勢です。
米軍に核を「持ち込ませる」ことが大前提ですから、石破氏がいうように「3原則に抵触しない」などということはありえません。
またこの提案を受けた場合、米国はNPT(核拡散防止条約)を遵守する意志を明確にすることを望むでしょう。
それと同時に、日本に核兵器を移動した場合、その管理保管が万全に行われるかを徹底に調査するはずです。
最大のネックは、日本が核兵器の軍事機密情報を万全に守りきれないのではないか、という不信感がいまだ拭えないからです。
これは海自によるイージスシステムの情報漏洩事件で現実のものとなりました。
経済安全保障法という形で、高市氏は大きな仕事をしましたが、このような機密保全の仕組みが必須なのです。
またいかなる形であれ核の保有に踏み込むのなら、危機に至るエスカレーションの度合いに応じて、いかに日本社会が耐えるのかが問われます。
緊急事態への法的・制度的準備も同時に準備せねばなりません。
具体的にいえば、経済安全保障、スパイ防止法や緊急事態法の制定など社会的強靱性を保有して初めて米国にニュークリアウェアエングを要求できるのです。
石破氏はこのような一連の社会の強靱化にすこしでも役立つ動きをするどころか、ことごとく潰しに回りました。
むしろサヨクメディアの言うがままに政権批判を繰り返し、党内で煮詰まった議論のちゃぶ台返しをして妨害し続けてきたのはこの人です。
そんな人が、いまさらニュークリアシェアリングで米国と対等になんてとんだファンタジーです。
あんのじょう、石破氏は首相になってもこのやっかいなテーマには手も着けませんでした。
しかし彼がどうであろうと現実は変わりません。












































































































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