活断層は原発再稼働ができない理由にはならない
原発再稼働が遅れている原因のひとつは原子力規制委員会です。
「世の中の方は「再稼動の検査をしている」としていますが、それはほぼ終わっているんです。再稼動審査というのは、法律上義務づけられた点検の審査です。今ほとんど終わっています。
今、原子力規制委員会がやっているのは、2012年6月の原子力規制委員会設置法にともない、「原子炉設置変更許可」「工事計画認可」「保安規定変更認可」の3点セットと呼ばれるものの審査です。
単なる定期検査の完了確認ではなく、新しく出来た規制基準への適合性を審査しているのです。つまり原子炉を設置するための、認可を最初からやり直しているわけです。これには大変な時間と手間がかかります」
(諸葛宗男(もろくず・むねお)元東京大学公共政策大学院特任教授)
そして規制委員会が重視するは活断層です。
今回の敦賀原発の場合、敷地内に活断層があることが問題視されました。
しかしそもそも、日本は活断層だらけの土地です。
三つのプレートが集まって、その上に浮いているわが列島に活断層なんぞフツーにそこにあるものなのです。
ハッキリ言ってしまいましょう。地震と原発 は関係ありません。
日本にはこれだけ活断層があります。
かといって、活断層があるから国民を立入禁止にするわけにはいかず、その上で普通に暮らして、生産を営んでいます。
問題は活断層があるかないかではなく、あるとしてもそれに万全の備えが出来ているかどうかなのです。
原発施設の地震の揺れの基準値は、個々の原発によって異なっています。
え、全国一律ではないのかって。はい、違います。
原発施設が立っている場所の地層は、場所により異なっていますからね。
地層が軟弱な場所では、地震の揺れは大きいでしょうし、岩盤の上に立てられれば地震には強いわけです。
したがって、個別の原発によって想定される最大震度は違っています。
原発建屋を設計する場合、基準値に数倍をかけた値を基にして安全基準を定めます。
いわば崖の10メートル先が基準値だとすれば、そこから4、5倍先の4、500メートル先にテープを張っておくのです。
耐震設計の専門家の入倉孝次郎氏はこう述べています。
「仮に基準地震動を策定しても、それを上回る強さの限界的地震動が来る可能性は否定できない。だから、そのような『残余のリスク』を想定して耐震設計している」
原子力発電所の耐震設計のための基準地震動 - 入倉孝次郎研究所
つまり、基準値地震動=耐震限界値ではなく、実際の原発施設は必ず倍数の安全率をかけて耐震設計されているわけです。
これを知らない裁判官や訴訟団は、「基準地震動にあってはならない地震が来たらどうするんだ。だから、新安全基準は緩すぎる」と言うのですが、ソンナことはただの素人考えにすぎません。
入倉氏は、いかにもその道のプロらしく淡々とこう答えています。
「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」
「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」
(福井新聞2015年4月15日)
そのとおりで、予想された以上の震度が原子力施設を襲ったことは何度かあります。
たとえば、東日本大震災時の福島第1原発においても、基準地震動を越える揺れが襲っていたことをご存じでしょうか。
宮野廣法政大学教授による 単位ガル クリックすると大きくなりますhttp://www.gepr.org/ja/contents/20140630-02/
上図は、宮野廣法政大学教授『福島原発は地震で壊れたのか』から引用したものですが、最大の加速度は、いずれも基準値地震動の平均460ガルを超えています。
最大に超えたものは、2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。
さらにもっとも震源域に近かった女川では基準値580に対して636ガルで、ここも実測値が基準地震動を上回っています。
東日本大震災以上の大きな振動が発電所を襲ったケースに、2007年の中越沖地震動があります。
東電は地層の褶曲構造によって、施設内に大きな影響が出たと説明しています。
地質調査と基準地震動|柏崎刈羽原子力発電所|東京電力
実際に柏崎刈羽原発を襲った実測震度です。カッコ内が基準地震動です。比較してみてください。
いずれの原子炉も基準地震動に対して約50%、最大の2号炉では273ガルの基準値に対して、実に3倍の680ガルが襲っています。
この激震に対して、各原子炉は正常にスクラム(緊急運転停止)しています。後の配管の調査でも破断は認められていません。
つまり原子力施設は、基準値を大きく上回る振動に耐えていたのです。
しかし後に起きる東日本大震災をみれば、東電はこの柏崎刈羽の教訓にもっと学ぶべきでした。
柏崎刈羽では、2700カ所以上の機器類の破損があり、3号機の起動変圧器は炎上し、外部電源も一時的に失われています。
ただし、非常用ディーゼル発電機が正常に起動したために、事なきを得ています。
しかし起動後も電力不足状態が続き、タービン駆動給水ポンプを動かすために補助ボイラーが起動しましたが、1から5号機と6,7号機でそれぞれ一台しか使用できないようなシビアな状況でした。
そのため4号機の冷温停止には、丸2日かかっています。
東電はこの柏崎刈羽で経験した地震による全交流電源の停止(ステーション・ブラックアウト) という事態を、もっとシビアに総括して、今後に生かすべきでした。
そうしていれば、福島第1で簡単に水没する場所に予備電源エンジンを置くなどという大失態をせずに済み、福島事故そのものが起きなかったことでしょう。
福島第1では大事故になったものの、その隣の女川では高台に施設があったために事なきを得て、津波にあった被災者を施設内に避難させています。
双方共に外部電源を喪失しましたが、福島第1は予備電源水没によって事故に至り、女川は無事でした。
そしていま女川は再稼働を始めました。
この福島第1と女川との違いを強調しすぎてしすぎることはありません。東日本大震災クラスの地震でも、原発は壊れておらず、破壊されたのはその後の津波による非常用電源の水没による冷却機能の喪失です。
よく地震で原子力施設が壊れた、地震大国日本に原発を稼働させてはならない、などと言うガサツなことを言う人がいます。
おおむね社民党系や共産党系などの脱原発団体ですが、これは福島第1の事故原因が地震によるものだという意図的誤認識によっています。
地震による施設損壊が原因ではないと、規制委員会は正式に否定しています。
あらためて福島第1原発の事故調査報告を読むと、こう記しています。
① 政府事故調報告書では、原子炉圧力容器、格納容器、非常用復水器(IC)、原子炉隔離時冷却系、高圧注入系等の主要設備被害状況を検討している。津波到達前には停止機能は動作し、主要設備の閉じ込め機能、冷却機能を損なうような損傷はなかったとしている。
② 民間事故調報告書では、津波来襲前に関して、地震により自動停止し未臨界を維持したこと、外部電源を喪失したが非常用ディーゼル発電機(EDG)により電源は回復したこと、その間にフェールセーフ(安全装置)が働きMSIV(非常用炉心冷却装置)が閉止したこと等、正常であったことが述べられている。
③東電最終報告書では、1号機~3号機について地震による自動停止と、自動停止から津波来襲までの動きに分けて評価している。前者は各プラントとも地震により正常にスクラムしたこと、外部電源喪失したがEDGにより電圧を回復したこと、EDG起動までの間に原子炉保護系電源喪失しMSIVが自動閉したこと等の結論を得ている。
(宮野論文前掲)
福島第1の事故原因は、ひとえに屋上に予備電源を設置していなかったから起きたのです。
このことを忘れて、揺れるからアブナイ、津波が来たらアブナイ、という脱原発派の認識は誤っているばかりか、現実にはなんの解決にもなりません。
だからこそその「残余のリスク」をいかにして減らしていくか、「想定外」が来た場合それをどのようにして極小化できるのか、というリスク管理的視点を完全に欠落させているからです。
これが工学系の考える、万が一事故が起きてもさまざまな方法でシビアアクシデントにならないようにブロックする深層防御の考え方です。
だから営々と福島事故以来、各電力会社はほとんど採算を度外視して、高い防波堤を作り、施設を強靱化し、予備電気を津波が到達しない高台に移設してきました。
それがどうみても法律のプロであっても、原子力工学や耐震設計のプロではない裁判官の鶴の一声で打ち消されてしまうからイヤになります。
この国の再稼働の権限者は、いつから地裁になかったのですか。
このような判決によっては、日本の原発の安全性は一歩も進化しないどころか、後退してしまいました。
なぜなら、それはかつてあった「原発は絶対に事故を起さない」という原発安全神話の、単純な裏返しとしての「原発絶対危険神話」でしかないからです。
原子力規制委員会は真正面から原子力施設の安全性と、それが果たさねばならない社会的役割を認識して答申するべきです。
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コンクリートと活断層の区別も付かない規制委員会に原発に対する大幅な権限を持たせるのは、まさに「何とかに刃物」ですね。それにしてもココログで反原発と言うか、放射脳のブログが目立つのは何故でしょうか?
投稿: 珊瑚は大切に | 2025年12月 5日 (金) 03時38分