経済政策の目的は財政再建ではなく、経済成長させることです
高市政権が「責任ある積極財政」に転換したら政府長期金利が上がったというのでメディアは、さぁ市場がサナエノミクスに不信任を出したと小躍りしています。早々と短期政権になるという予測すら出ています。
テレビでもあの政治評論家(というか政治評判家)の田崎史郎氏がこんなことを言っていたようです。
「恵から「基礎的財政収支のことですね」とプライマリーバランスの意味について説明しつつ、田﨑氏に次の言葉を促され、「新しい財政再建目標をどうするのかというのを示してないわけです、今」と新たな指針を示していない高市氏の言動について話した。
さらに「示してないから、マーケットはどんどん国債発行が増えていくんじゃないか、歯止めがかからないんじゃないか、って」と話した。恵からも「だから不安になっているんじゃないか、ってことですね」と合いの手が入った。
田﨑氏は「財政再建目標をしっかり立てれば、多少は国債発行を増やしてもいいんですけれども、その目標すら示していないのが問題なんですよ」と断言した」
(日刊スポーツ12月1日)
田﨑史郎氏「財政再建目標を…」高市首相の物価高対策に「国債発行増えて歯止めかからない」断言(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
いかにも永田町の泥水の中で世渡りしてきた人物らしい意見です。
国債発行が増えて行く?だからなんなんですか?
こういう人らは、経済政策の目標を財政再建に置いて、経済成長をニの次三の次にします。
むしろ経済成長が始まる時のインフレすら悪しき物価上昇と捉えて、成長の芽を潰してしまいます。
高市氏がやろうとしているのはいわば「保守革命」なのですが、それをまったく理解できていません。
安倍氏亡き後の石破政権までの自公連立政権は、憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などを後回しにして、LGBT法や選択的夫婦別姓などリベラル政策をとり、外交政策では対中宥和路線でした。
また経済政策としては、財政健全化路線を柱とする緊縮路線でした。
さて、長期金利はたしかに上がる傾向にあります。10年物国債だと下のように動いています。
長期金利とは、一般的に10年物国債の利回りを指します。
短期の国債利回りが政府の政策金利の影響を受けやすいのに対し、長期金利は景気変動やインフレの動向など、より実体経済の状況を反映する傾向があります。
現在の日本国債10年物利回り(JP10Y)は1.877%で、この1週間で0.22%、この1ヶ月では7.90%増加しています。また、この1年では75.58%上昇しています。
またCDS(クレジット・デフォールト・スォップ)がありますが、至って平穏です。
国債の信用リスクは、国が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性を指します。このリスクを測る指標の一つに、CDSがあります。
CDSは、特定の国債がデフォルトした場合に備え、損失を肩代わりする保険のような金融商品です。
そんなに積極財政が不安ならCDSを買い込みなさい。
つまり、高市氏の積極財政が登場する以前から長期金利は上昇傾向にあったのです。
ですから景気の変動やさまざまな要因で変動する長期金利を、積極財政に転換したから市場が反応したというのは短絡です。
ところが積極財政=財政危機というガチガチの固定観念にとらわれている人たちは、積極財政→国債発行急増→財政赤字拡大→財政破綻→日本破滅という図式で考えるようです。
田崎氏の言う「財政再建目標をしっかり立てれば、多少は国債発行を増やしてもいい」という考え方は、実は「なんのために国債発行をするのか」という目的がなくなってしまい、「財政再建目標」が絶対目標のように転倒してしまっています。
下のグラフは産経の田村秀夫氏が作った国債金利(10年物)とGDP成長率、と政府純負債の関係を、アベノミクスが始まった2012年から見たものです。
赤線が政府純負債ですが、名目成長率(緑線)が上昇すると反比例するように下がっているのがお分かりになるだろうと思います。
同時に緩やかに国債金利も上昇しています。
「アベノミクスは異次元金融緩和政策によって長期金利をゼロ%前後にまで押し下げた。しかし、財政のほうはPB黒字化目標に縛られ、消費税増税など緊縮路線を続ける羽目になった。その結果、需要不足によるデフレ圧力は根強く、名目成長率は15年度をピークに下がり続け、政府純負債のGDP比は上昇する始末だった」
(田村秀夫 11月29日)
無責任極まる高市財政非難メディア 政府の新規国債発行額にみる債務膨張抑制への配慮 田村秀男の経済正解 - 産経ニュース
アベノミクスは3本の矢(金融瀬政策・積極財政・構造改革)を掲げつつも、金融緩和はクロダバズーカによってゼロ金利まで下げながらも、財政は財務省の執拗な抵抗に会ってプライマリーバランス黒字化論に縛られておもうに任せず、消費増資税まで強いられて苦戦しました。
残る3本目の矢である構造改革は、各省庁の利権が絡んだ岩盤規制の壁を打ち破ることができず、獣医学部増設も加計問題で苦しみました。
「そのトレンドを逆転させるきっかけになったのは、20年の新型コロナウイルス禍である。当時の安倍晋三首相は現金給付、補助金など大型財政出動に踏み切った。財政状況はこのときこそ悪化したが、景気は財政によって下支えされ、21年度にはV字型に回復した」
(田村前掲)
皮肉にもコロナ禍がデフレの淵に沈み込もうとする日本経済を回復させたのです。
つまり、金融政策一本のまま戦わざるをえないハメに陥り、個人消費が牽引する健全なデフレ脱却に至らないまま終了しました。
こう見てくると、なにがアベノミクスに足りなかったのか、どこをさらに強化すればいいのか明白です。
それこそいま高市政権がとっている積極財政です。
名目経済成長の上昇を持続すれば、税収の自然増によって政府債務は上昇せずにおのずと健全財政になるのです。
経済を回復させれば税収が増える、という子供にも分かるこの理屈が、エリート財務官僚の皆さんには理解できないようです。
財務省はなんと税収はゼロ成長を前提にしているのですからたまげます。
日本経済はゼッタイに成長しない、しないといったらしない、なぜならオレラが成長しそうになると潰すからだ、ということのようです。
いつも景気が回復しそうにてると消費増税をしかけて成長の芽をつぶしてきていたのでヘンだとは思っていたのです。
案の定、彼らには彼らしか通用しないロジックがありました。それが「税収弾性値1.1」という迷信でした。
税収弾性値とは、「名目GDPが増えた時に税収がどの程度増えるか」という予測値のことですから、財務省の1.1とはゼロ成長で前提としていたわけです。
これが、岸田-石破政権の時にやたらと出てきた「恒久的財源」論です。
もちろん現実には、税収の伸びが1.1なんてことはありえません。
下図は90年代後半に消費税増税をして以後の、過去15年間の一般会計税収ですが、名目GDPが増えれば税収は1.1どころか3倍ちかくに増大することがわかっています。
一般会計税収の推移
ですから経済に冷や水を掛けなければ、1兆円ていどの税収不足など軽く自然の税収増だけで得られてしまいます。
コロナ不況の真っ最中で個人消費がメタメタであったにもかかわらず、予想を3.1兆円も上回りました。しかも2年連続です。
普通に考えれば景気が回復すれば税収は今回の3.1兆円上振れしたようなことが起きるはずですが、彼らの税収弾性値では1.1しか成長しないはずなので、常に財政危機なのです。
田崎氏がしたり顔で言うような「経済再建目標を明確にしろ」というようなプライマリバランス黒字化論で経済成長の芽を押しつぶしてしまえば、アベノミクスの轍を踏むことになります。
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金融の素人なので、トンチンカンな疑問なのですが、いつも不思議に思うのは、国債の金利にあんなに神経質なのですかね?
実際に国債持ってる人にしたら、金利上昇したほうが美味しいんじゃないの?運用益が出るってことでしょ?
それに、日本の国債は大部分が日銀が持っているんで、金利上昇分の利益は日銀に入ってくるんじゃない?日銀に入るってことは、最終的に国の利益になるんじゃないの?しらんけど。
投稿: 一宮崎人 | 2025年12月 2日 (火) 08時47分