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2025年12月22日 (月)

独自核武装はできなくはないが簡単ではない

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共同通信の卑劣なリークによる騒動は、ある意味いい機会でした。
オールドメディアは「非核5原則」で「議論させない・考えさせない」を強要してきますが、大いに考えていきましょう。

たとえばこんなケースです。
北朝鮮や中国が核による脅迫をした場合、あるいは米国が極端なトランピズムに走って中国と太平洋を二分割するG2などに走った場合、すぐにでも核武装は必要となります。
今はトランプの趣味のディールとやらの範囲ですのでなんとかなっていますが、信用なりません、あの男。
ではその時、「唯一の被爆国」と泣き言を言っても、そうか、では3番目の被爆国になりなと言われるだけのことです。
唯一の核抑止は核兵器しかないのは自明だからです。
しかしいきなり核兵器が湧いて出るわけではありません。
どのような問題点があるのかを洗い出し、どのていどのリードタイムがかかるかを議論をしておかねばなりません。

結論から言えば、独自核武装は「やってやれなくはないが、そう簡単なことではない」と考えています。
核武装するためには、国内世論の支持をうけねばなりませんし、NPT条約といった政治的問題もありますが、それについては今回は考慮からはずします。 
どうでもいいからではなく、逆にあまりにも大きすぎるテーマだからです。
何回か扱ったテーマですが、技術的なことに絞って見ていこくことにします。 

さて、今の北の非核化を見ても、ひとことで核武装といってもいくつかの要素があることに気がついておられると思います。 
まず第1に、核爆弾を作れる核物質がなければ話になりません。
第2に、核弾頭が実際に想定どおりの性能かどうか証明するために核実験せねばなりません。
第3に、弾道ミサイルを発射する潜水艦である戦略原潜が必要です。

ほかにも付随して、再突入や多弾頭など、いろいろたくさんの問題がありますし、そもそも報復核攻撃を受けた場合のシェルターがなければなりませんが、今日は3ツだけを取り上げます。 

まず第1の核物質についてですが、「原発に詳しい」と自称して福島事故対応を混乱に陥れた(ネトフリの『ザ・デイズ』を見て下さい。この男がいかに有害だったかわかります)管直人元首相は、かつて川内原発前の宣伝カーの上で、こんなアジ演説をしていました。


「原子炉はもともと核兵器製造に使うプルトニウムを作るために開発されたものだ。そして70年前にプルトニウム型原爆が長崎に落とされたのだ。
私はプルトニウムと人類は共存出来ないと考えている。そうしたプルトニウムを新たに生み出すこと自体が人類を危険に晒すことだ。原発がプルトニウムを作ったんです」

バッカじゃなかろか、この人は。この人は、軍事用原子炉と商業用原子炉が炉の構造自体からして違っていることを知らないようです。  
核兵器に使用できるプルトニウムは、純度90%台後半の高濃度Pu239だけです。

Puradioactiveplutoniumisotopepuradihttps://www.dreamstime.com/pu-radioactive-plutoniu...

一方、民生用原発から出るプルトニウムはPu240で、これはそのままでは軍事転用はできません。
よく何発分のプルトニウムというガサツな言い方をメディアはしますが、商用プルトニウムと軍用プルトニウムは別物です。
この軍事用プルトニウムであるPu239を、日本は保有していません。 
世界の核分裂性物質の量 - 核情報によれば、日本の軍用プルトニウムの保有量は文字どおりゼロです。 
反原発・反核論者たちは、「日本がプルトニウム備蓄して核爆弾を作る気だ」と主張していますが、ナンセンスです。
http://kawasakiakira.at.webry.info/201507/article_14.html

それは「できる」というだけで、軍事的合理性を考えない妄論です。
日本が国策として核兵器を作るとなると、中国や北朝鮮の中距離核を抑止しうる同等のものが必要です。
そのためには、たとえば米軍が運用しているMk85核爆弾は約8メガトンですから、最低でもその程度の破壊力が必要となります。
原発の副産物として作られるPu240は不純物が多く、不発の確率が非常に高いために、これを濃縮して軍用Pu239するためのプラントが必要です。
このプラントが日本にはありません。作ればいいのですが、そのためには立地確保から始めなければなりませんから、10年単位の時間が必要でしょう。
たかだかといってはナンですが、代替航空施設を作ろうとしている辺野古ですから県と20年間もめているのですから、推してしるべしです。
ですから私は兵器級プルトニウムを作る濃縮プラントを作ることは、技術的にはそう難しくありませんが、政治的にはかぎりなく無理だと思っています。

核爆弾本体はちょっと優秀な理系大学生がクラブ活動で作れるていどの技術レベルですが、仮になんとかして核爆弾を作ったとしても、次の壁は本当に爆発するのか検証をせねばならないことです。
よくある誤解は爆弾本体が単純なために容易にできてしまうと錯覚することです。
核爆弾は本体そのものより付帯する諸々の要素のほうが膨大なのです。
仮に出来上がっても、モノがモノだけに、作りましたでは終わらず、その威力や爆発特性などを実際に爆発実験せねばなりません。 
そこで第2の核実験の壁が立ちはだかります。 
核実験をしないと、予定されたスペックどおりの性能がでるのか、不具合がないか検証できません。 

すると考えるまでもなく、日本国内に核実験場などができる場所はありません。
日本は狭すぎるのです。それが広大な砂漠を持つ米露中との大きな違いです。
もちろん、フランスなどのように海外県でやるという暴挙はできませんし、外国が貸してくれるはずもありません。

ひとつだけ抜け道があります。それはすべての実験を、スパコン上の仮想実験をすることで代替することです。
実際に、中国はそれを心配しているようです。
http://news.searchina.net/id/1584694?page=1 
コンピュータ・シミュレーション核実験とは、臨界前核実験のことで、実際の核爆発を伴わずにバーチャルにやってしまおうということで、既に核保有国は実用化しています。

技術的には可能です。ただし、核実験のコンピュータシミュレーションでやるとしても元種が要ります。
米国やフランスもスパコンで臨界前核実験をシミュレートしていますが、それは既に実際の実験をして入力する諸元データーを持っているからです。
その実データーを得るためにフランスは、世界中の轟々たる批判を尻目にムルロワ環礁で核実験を強行したのです。

Bom00100564977ムルロワ環礁核実験https://www.jiji.com/jc/d2?p=bom001-00564977&d=011...

いうまでもなく、日本にはこの元種に当たる実データがありません。もちろん米国ですらこんな物騒なものを貸してくれるはずもありません。
ですから、日本に世界一のスパコン技術があろうとなかろうと、商用プルトニウムがあろうと難しいのです。
ただし、実験段階を飛ばして実戦配備という手もあることはありますが、そんな実際に爆発するかしないかわからないようなものは、大戦末期ならいざ知らず、現代では笑い物になるだけでのことです。
日本が作らねばならないのは、負けそうになってヤケッパチで作るものではなく、あくまでも「平時の抑止力」だからです。

第3に核弾頭の小型化や再突入技術をクリアしたとして、その運搬手段について考えてみましょう。
弾道ミサイルについては、日本は世界最高水準のものを既に持っています。
だからすぐに独自核武装ができると思ったら大間違いです。
H2やH3、イプシロンもそのままでは使えないのです。

というのは日本の国土は縦深が浅い国です。日本列島は前線から後方までの縦の線が極端に短いために、弾道ミサイル基地を隠しておくことが難しい地形です。
双方が核を保有している関係において相手方は、まずこちらの核報復能力を奪いにきます。
つまり敵が第1撃でねらう目標は核ミサイル基地ですが、これを地上で隠す場所は日本にはない以上、海に潜って水中から発射する水中発射弾道ミサイル(SLBM)を開発するしかありません。
その潜水艦は、深海深く沈潜し、静かに命令を待つ性格ですから、息が短く搭載能力に余裕がない通常動力型潜水艦は不適です。
したがって戦略原潜が必要です。

20101216165948戦略原潜http://d.hatena.ne.jp/masousizuka/20101216/1292486...

これもやってやれないことはないでしょうが、未知の領域ですから10年単位で考えねばなりません。
日本が国策として独自核武装をするということは、単独の核爆弾を作ればいいということではなく、その実験方法、原子力潜水艦などとトータルなパッケージで考えねばならない問題なのです。

このように考えてくると、政府や自民党国防部会が「検討を開始」と宣言することはできますし、それはそれで一定のブラフにはなりますが、実際には極めて困難である私は思います。
白けさせてすまないのですが、ひとり独裁国が発射する核ミサイルを防ぐためには、現実的にはMDイージス艦か、イージス・アショア、ないしはTHAADしかありません。
政治的には非核三原則という時代遅れの虚構から醒めて、「持ち込ませる」ことを真剣に政治日程に載せるべきです。

私は自主防衛力は強化するべきだと思っていますが、かくほど左様に 「戦後」が作った壁は厚く複雑なのです。

 

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コメント

「核爆弾本体はちょっと優秀な理系大学生がクラブ活動で作れる程度の技術レベル」その昔、沢田研二主演の「太陽を盗んだ男」という映画がありまして…

今回の内容、文系の私(決して文学に造詣が深いわけではない)にとって、とても勉強になる話でした。有り難うございます。

日本の核武装の話題になると脊髄反射的に広島長崎を持ち出す人がいます。仰ることは理解できますし、あのような惨禍を繰り返すべきではないのは言うまでもありません。しかし日本の安寧を守るために核武装が必要かどうかの話題すらタブー視する風潮はもはや宗教と呼べます。
一方、こちらも脊髄反射的に日本は即核兵器や原潜を持って米国と縁を切れ。と吹聴する一派もあって、これはこれでなかなか厄介ではあります。

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