イラン情勢いっそう加速化
イラン情勢がわずか数日いっそう炎上しています。
イランと「伝統的友好関係」があるそうな日本のメディアは、ナニに忖度しているのか無関心を決め込んでいて、読売も朝日も外信にわずかに小さな記事を申し訳ていどに乗せているだけです。
一方欧米系メディアは、連日一面トップ扱いで大きく取り上げています。
BBCを見てみましょう。
「通貨下落を発端としたイラン各地の反体制デモは10日にも各地で続き、100以上の都市や町へと広がり、近年で最大規模のものになっている。多数の抗議者が殺傷されている様子で、さらに多くが拘束されている。イラン国内の医療機関の医師たちは9日夜、BBCに対して、眼科病院をはじめ病院が死傷者であふれていると話した。抗議ではイスラム共和国の終わりを求める声が上がる一方、イランの治安当局はそろって抗議参加者に強い警告を発している。
イラン発のさまざまな映像には、首都テヘランで9日夜に抗議者たちが大勢で通りに出て車両を燃やすなどしている様子や、首都近郊カラジで政府庁舎が放火された様子などが映っている。
イラン革命防衛隊は10日、治安当局と共に「国益と国の戦略インフラおよび公共の資産を守る」活動に参加すると表明した」
(BBC1月10日)
イランの医療関係者、死傷者が病院にあふれていると話す 反体制デモ続く - BBCニュース
CNNはこう伝えています。
「(CNN) イランで行われている抗議活動に参加した複数の人々が、首都テヘランの路上に多くの群衆が集まり、残忍な暴力が振るわれたと証言した。ある女性は、病院で「遺体が積み重なっている」のを見たと話した。
身の安全を理由に匿名で証言した60代半ばの女性と70歳の男性は、8日と9日にテヘランで行われたデモには、あらゆる年齢層の人々が参加したと語った。だが、9日夜には、軍用ライフルを持った治安部隊が「多くの人」を殺害したという」
(CNN1月11日)
イラン各地で抗議デモ、病院には「遺体が山積み」 インターネット遮断は逆効果に - CNN.co.jp
BBC
直接に自分が取材したのではない情報に対しては、必ず検証を入れるBBCはこのように述べています。
「デモはイランの国内各地で行われている。BBCヴェリファイ(検証チーム)は67カ所の映像を確認した。
南東部ザヘダンで9日、金曜の礼拝後にデモ参加者が集まった様子の映像を、BBCペルシア語とBBCヴェリファイが検証した。
映像の一つでは、ハメネイ師を指して「独裁者に死を」と叫ぶ声が聞こえる。別の映像では、地元のモスク付近にデモ参加者が集まっている状況で、複数の大きな破裂音が聞こえる。
8日に撮影され検証された別の映像には、中部イスファハンにある国営放送IRIBの子会社事務所が燃えている様子が映っていた。火災の原因や負傷者の有無は不明」
(BBC前掲)
詳細な分析も出始めています。
ボストンの伝統ある月刊誌The Atlanticはこのような署名記事を掲載しています。
Is the Iranian Regime About to Collapse? - The Atlantic
「47年前、イランはアメリカと同盟していた君主制を反米神権政治に置き換える革命を起こしました。今日、イラン・イスラム共和国は反革命の瀬戸際に立っているかもしれない。
歴史は、体制が単一の失敗からではなく、致命的なストレス要因の重なりによって崩壊することを示唆しています。私たちの一人、ジャックは、革命が成功するために必要な5つの具体的な条件について長い記事を書いています」
(The Atlantic 2026年1月10日)
イランの体制が倒れる5つの条件とはなんでしょうか。
まず第1に深刻な財政危機です。
「これらは財政危機への対応として始まりました。国家通貨の暴落、財政が空っぽの国家です。アメリカの政治では、3%を超えるインフレ率は政権を失脚させる傾向があります。イランのインフレ率は全体的に50%以上、食料は70%で、世界でも高い水準の一つです。過去1年間で、イランの通貨はドルに対して80%以上下落しています。
1979年には1米ドルが70イラン・リアルの価値がありました。現在、その価値は147万リアルで、99%以上の減価償却となっています。イラン通貨は単なる交換手段というよりも、国民的絶望の日々の指標となっています。そして過去の経済危機とは異なり、今回の崩壊は階級を超え、バザールの商人や裕福な人々、貧困層にも影響を及ぼしています」
(The Atlantic 前掲)
実にインフレ率が平均で50%、特に重要な食料は実に70%にも達しています。
そして比例してイラン通貨はドルに対して80%も下落しています。
ベネズエラがそうであるように、ハイパーインフレは国民各層をまんべんなく直撃し、生活を破壊します。
結果、いままで政権を支えてきた富裕層、バザール商人までもがデモに立ち上がっています。
唯一の外貨を稼ぎだしていた原油輸出は、経済制裁を食らって過去1年で20%下落しました。
イランは中国にダンピング価格で石油を売ってどうにか糊口を凌いでいるありさまです。
電気や水の配給は途切れがちで、若者の失業率は青天井で、外国に人材流出が絶えません。
もう一つの重要な崩壊の予兆は支配階層が分裂していることです。
「国家崩壊の第二の条件であるエリートの疎外もイランで広く見られます。
1979年に広範なイデオロギー連合として始まったものは、2026年までに一人政党、すなわちアリ・ハメネイ政党に縮小した。
イスラム共和国の建国の父であり元首相の一人であるミール・ホセイン・ムサヴィは、現在15年目の自宅軟禁状態にあります。
存命の元大統領は全員沈黙または排除されている。モハンマド・ハタミは完全なメディア禁止下にあり、マフムード・アフマディネジャドは周縁化され監視され、ハッサン・ロウハニは88名からなる専門家会議(次の最高指導者を選ぶ聖職者)への議席獲得を禁じられた」
(The Atlantic 前掲)
いまやイランはハメネイひとりの独裁国家と成り果て、かつて共にイスラム革命を指導した元大統領や首相らは全員が自宅軟禁されています。
また国家の行政基盤を作っていたテクノクラートや技術官僚たちも、なんの専門知識もないハメイニの取り巻きに取って代わられてしまいました。
かくしてかつてのソ連と同様に、イスラム共和国は核心となるべき信念を喪失し、権力を取り巻くのは富と特権に動機づけられた者たちだけになてしまいました。
死亡したソレイマニ司令官とハメネイ師
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58855
ハメネイは革命防衛隊を直接の指揮下に置き、数々のテロをソレイマニにやらせてきました。
典型的なのはシリアで、市民虐殺を繰り返してきたと言われています。
イラクも大半を掌中にしていますし、パレスティナのハマスやレバノンのヒズボラも革命防衛隊の別動隊にすぎません。
イエメンのフーシー派武装集団も同様です。
ソレイマニが率いるコッズ部隊に操られて中東全域がイラン化しつつあったのです。
この総指揮を執っていたのがソレイマニで、彼を抹殺したのがトランプです。
革命防衛隊(IRGC)がハメネイを支持しているのは利権のためで、いま燃え上がるデモ隊弾圧の前面に出ているのは彼らです。
メディアが「治安部隊」と言っているのは、ほぼすべてがこの革命防衛隊です。
彼らだけがハメイニ体制に忠誠を誓って国民に銃口をむけています。
彼らの暴力だけがハメネイを支えています。
長くなりましたので、明日に続けます。
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NHKって、テヘラン支社があったハズだけど。
見ないフリですね。
投稿: 通りすがり | 2026年1月12日 (月) 15時44分
いつもありがとうございます。
天安門事件のようなものが起きているのでしょうか。
イランもブルジョア階級が没落となれば、
いずれにしても元の中露の頼れる仲間ではないのですね。
原油を買い叩くなんて、
潰れそうなので貸しはがしに出たバブル崩壊後の銀行のようです。
ベネズエラもそうですが、
中国からしたら、敵の手に落ちるよりはガザのような無法地帯にすると思います。
国家を運営するより破壊する方が遥かに安上がりですから。
投稿: プー | 2026年1月12日 (月) 22時12分