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2026年1月 7日 (水)

ベネズエラ攻撃を三つの視点でみると

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今回の米国のベネズエラ攻撃を見る視点は大きく三つあると思います。
ひとつは法的視点、二つ目は国際政治、三つ目は軍事的側面からです。

さて日本のメディアが言うように、国際法的に見ればまったくアウトです。
米国によるベネズエラ攻撃が国際法違反とされる主な理由は以下の通りです。
まず、国連憲章第2章第4項にある「武力行使の禁止原則」への違反です。
この条項は、武力による威嚇または武力行使を禁止しており、米国の今回の軍事攻撃はこれにま正面から違反しています。

この条項は、「各国の領土は侵されるべきではない」という原則に立っており、国境の現状変更の禁止をうたっています。
次に、「他の国の政治体制に武力で介入してはいけない」という政治的独立の原則にもつながります。
これが国連が本来担うべき「平和維持」の理念でした。
ただし、今の国連はこの「平和維持」機能を完全に喪失してしまっていますが。

トランプのベネズエラ攻撃は、この国際法の観点から見れば弁解の余地なく一発レッドです。
ベネズエラという一個の主権国家に対する軍事攻撃を仕掛け、仮にも国家元首であるマドゥロを拘束し連行したことは明らかに法的には内政干渉行為です。
また、 ベネズエラが米国を攻撃していない状況での軍事攻撃ですから、自衛権の行使とは言えません。
トランプはマドゥロが麻薬カルテルと共謀して大量の麻薬を米国内に送り込んでおり、米国司法が逮捕することを求めているということを理由に上げていますが、米国の司法権は外国には及びません。
したがって、最初の国際法的観点からは米国の今回のベネズエラ攻撃は違法であると見られています。

この見方を取るのは、中国、ロシア、そしてメディアです。
中国は4日、米国に対してベネズエラのマドゥロを即時解放するように求めました。

「中国は4日、米国に対してベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を即時解放するよう求めた。
米国は3日にベネズエラの首都カラカスを攻撃し、マドゥロ氏を拘束した。
中国外務省は声明で、今回の攻撃を「国際法の明確な違反」と非難。「中国は米国に対し、ニコラス・マドゥロ大統領とその妻の身の安全を確保し、直ちに開放し、ベネズエラ政府を転覆させるのをやめるよう要求する」と述べた」
(AFP1月4日)
中国、米国にマドゥロ大統領の即時解放を要求(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

さてここで、もうひとつの視点が登場します。
この事件の影の主人公である中国との関係から見るとどうなるでしょうか。
産経の経済記者である田村秀男氏はこう述べています。

「まず知るべきは、ベネズエラが習政権の拡大経済圏構想「一帯一路」の中南米の橋頭堡(きょうとうほ)であることだ。同国は反米左派のチャベス氏が1999年に政権を奪取したが、2005年以来、米国の経済制裁を受けてきた。経済不振に陥ったのをみて割り込んできたのが中国だ。習氏が党総書記に就任した12年からベネズエラ向けインフラ投資が本格化した」
(産経1月6日)
トランプ政権のベネズエラ攻撃 「債権の罠」にはまった中国 利権封じ込めへ 田村秀男 お金は知っている - 産経ニュース

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習近平主席とマドゥロ大統領がハイレベル委員会会議閉幕式に出席--人民網日本語版--人民日報

ひとことで言えば、ベネズエラは中国の南米における最大拠点なのです。
習が掲げる一帯一路の南米のハブであり、中国がこれまでにベネズエラに投じた融資は実に620億ドル超(約9兆7000億円)といわれています。
お気の毒ですが、紙屑となりましたね。
この巨額融資は石油収入で払われる
石油担保融資で、今回の事件前から原油価格の低迷で長らく中国への返済はまともに行なわれていなかったといわれています。

中国は反米極左政権のマドゥロ政権との関係を重視しており、両国は2023年9月に「戦略的全天候型パートナーシップ協定」に署名しています。中国に輸出されるベネズエラ産原油の量そのものはたいしたものではなく、中国の総石油輸入量の5%から8%を占める程度です。
しかし中国は山東半島にベネズエラ産の重質油を処理するためだけに設備を建設しています。

それはなぜでしょうか。
ベネズエラの原油の大部分は粘度が高く、長鎖炭化水素や不純物を多く含む重質油および超重質油だからです。
少し説明します。

超重質油は、重質油よりもさらに重たく、ドロドロとした粘度が高い原油です。常温では固形に近くタールやアスファルトに近い状態で地中に固まって存在しています。
ベネズエラではオリノコ地帯に埋蔵されていますが、予想がつくように採掘が非常に大変です。

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2019年のベネズエラの原油生産、輸出、精製状況|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

固体に近いものに加熱したり蒸気を注入したりして柔らかくしてから採掘しますが、掘った後も不純物が多く、そのままでは使えません。
精製したり輸出できる状態にするには、軽油などの希釈材が必要で、生産コストと手間がその分高くつきます。

この難点がチャベツが作った国営石油会社ペデベーサの手には負えなくなった大きな理由です。
この重質油を汲み上げて精製し輸出するには専門的技術者(その多くは米国人でしたが)が多数必要でしたが、チャベツは彼らを国外追放してしまったために素人集団ではどうにもならなくなったのです。

中国はこれに目をつけて融資を持ちかけました。

中国からベネズエラへの融資総額(一帯一路関連投資)は、前述のように約620億ドルで、それは中国のラテンアメリカ・カリブ海地域への総融資額(約1200億ドルから1500億ドル)の約40%から50%を占めていますから、つまりは半分はチャベツが持っていったことになります。

一時中国への原油輸出は低迷した時期がありましたが、23年8月に習政権はベネズエラ利権拡張策を再開すると表明しました。

「中国の民間企業コンコルド・リソーシズが、ベネズエラ油田開発に10億ドル超を投資し、26年末までに日量6万バレルの原油生産を目指していることが明らかになった。これまで中国国有企業が主導してきた対ベネズエラ関係において、民間企業の本格的な参入は異例だと22日付けロイター通信などが報じている。
同社は最終的に500本の油井を開発し、26年末までに生産量を日量6万バレルに引き上げる。生産される原油は軽質油と重質油の混在型で、軽質油はベネズエラ国営石油会社に供給され、重質油は中国に輸出される見通し」
(北海道石油新聞2025年8月25日)
中国、ベネズエラ油田開発に10億ドル超投資 - TOPICS - 北海道石油新聞社

米軍のカラカス攻撃は、これを受けての中国特使との会談のわずか数時間後であったのは、トランプの習へのメッセージです。
南米は米国の勢力圏だ、中国は手を出すな、オレらが仕切る、というわけです。
さらに親中国家のハブだったベネズエラが親米に変われば、かつてあった左派政権の玉突き的誕生と逆な現象が生じます。

ベネズエラは最も古い共産国家である隣国キューバへ経済支援してきましたが、それが停止されればキューバは立ち行かなくなります。
トランプは、米国が何もしなくても近い将来キューバは経済的に崩壊するだろうとの見方を示しています。
また先日の選挙でホンジュラスが親中から反中右派に政権交代したため、ベネズエラ、キューバが親米に代われば、残るはニカラグアだけということになります。

このように、法的文脈とはまったく別次元で世界政治は動いています。
トランプは国際法学者がいくら罵倒しようと別次元で生きており、着々と手を打っているだけのことです。
まさに好むと好まざるとにかかわらず、です。

明日は三つ目の軍事的側面から見てみます。

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コメント

 アメリカのような先進国が明らかな国際法違反を侵した事は衝撃的なようですが、そもそもクリントンもブッシュも同様の事やってましたしね。今、この件で国連で丁々発止やってますが、いつものように同意的結論なんか出ようもありません。

記事にもあるように、国際法違反への強制力を持った歯止めが効くような国連体制はないんですから、違反者たる米国は安泰です。
あれば中国の南沙諸島での馬鹿げた略奪的基地建設は防げたし、プーチンのウクライナ侵略戦争はありません。さらに、ハマスには国際法なんぞ関係ありませんし、だからイランのような小ずるい国家はテロリストを利用するのだし、国際政治とは分けて考えるべきものですね。そうした現実を考えると、日本政府としてハッキリした評価を出す事は控えるべきです。

それにしても、トランプの戦略性ってのは面白いです。
アホで思い付きばったりなのかと思えばそれだけでなく、効果も満点。中国やロシアが国連で吠えても致し方なく、次にどういう手を出してくるか分かりませんが、中国製レーダー網もロシア製迎撃システムもモノの役には立たない事がバレたと言えるんじゃないでしょうか。

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