ロシア、戦争末期の症状
ウクライナ戦争が始まって丸4年がたちました。
ウクライナ戦争における死傷者数はロシアが数字を出していないので推定ですが、民間人1万5000人以上が死亡し、兵士を含めると双方で最大で180万人に達する可能性があります。
特に痛ましいのは、子どもの犠牲が多いことです。これはロシアが民間地域を標的として爆撃するためで、2022年2月24日以降、爆撃により3200人以上の子どもが死亡または負傷しています。
また2025年になると子どもの死傷者数は一層増加し、2024年と比較して10%増加しました。
ご冥福をお祈りします。彼らの失われた未来のためにも、この戦争を終わりにせねばなりません。
ロシアに限定すると、実に120万人という第2次大戦以降最大の死傷者を出しています。
通常の民主国家なら耐えられない数字です。
「米戦略国際問題研究所(CSIS)は27日、ロシアがウクライナ侵略を始めた2022年2月から昨年末までにロシアとウクライナ両軍の死傷者(行方不明者を含む)が推計約180万人に上るとの報告書を発表した。今春には200万人に達する可能性があるとした。消耗戦で露軍に甚大な犠牲が生じている。
報告書によると、露軍の死傷者は約120万人で、うち戦死者は約27万5000~32万5000人。ウクライナ軍の死傷者は50万~60万人で、戦死者は10万人~14万人と見積もった。
報告書は、ベトナム戦争での米軍の死者数(約4万7400人)などに言及し、露軍の損失は「第2次大戦以降、戦争でこれほど多くの犠牲者を出した大国は存在しない」と指摘した」
(読売2026年1月29日)
ロシア軍の死傷者推計120万人…米研究所「第2次大戦以降、戦争でこれほど多くの犠牲者を出した大国は」 : 読売新聞
では、この無意味な戦争はいつ終わるのでしょうか。
わかりませんが、集結の兆候は見え始めてはいます。
それは戦争の原資であるロシア経済が急激に鈍化し始めているからです。
「ロシア経済が減速している。2022年2月にウクライナ侵略を開始してから、軍需物資を中心とする「戦争特需」を経済成長の原動力としてきたが、ここにきて物価上昇などの副作用の影響が大きくなっているためだ。ロシアの戦費調達を支えてきた石油・ガス収入も陰りが見える。(略)
ロシア経済の苦境は公式統計からも確認できる。露統計局が6日に発表した25年の実質国内総生産(GDP、速報値)は前年比1・0%増にとどまった。23年の4・1%増、24年の4・9%増から伸び率は大幅に縮小した。国際通貨基金(IMF)は、26年のGDP成長率は0・8%増に減速すると予想しており、先行きも暗雲が漂う。
露マクロ経済分析・短期予測センターのドミトリー・ベロウソフ氏は「ロシア経済は著しく悪化している。スタグフレーションの瀬戸際に立たされている」と懸念を隠さない。インターファクス通信によると、マクシム・レシェトニコフ経済発展相は12日、「今年前半には経済がさらに減速すると予想している」と認めた」
(読売2026年2月23日)
ロシア「戦争特需」の限界 侵略長期化 インフレと高金利…ロンドン支局 市川大輔 : 読売新聞
現在のロシア経済は壊滅的ではありませんが、成長の鈍化と高インフレが進行するという厳しい状況にあります。
実はウクライナ侵攻後の一時期、ロシア経済は国際的制裁にもかかわらず「好調」でした。
その秘密は戦争経済というアドレナリンを出しまくってハイになっていたからです。
2024年の経済成長率はなんと3.2%もありました。
「世界銀行は10月17日に発表した欧州・中央アジア経済見通しで、2024年のロシアの実質GDP成長率を3.2%、2025年は1.6%、2026年は1.1%と予測した。
2024年6月に同行が発表した世界経済見通しと比較して、2024年は0.3ポイント、2025年は0.2ポイントそれぞれ上方修正し、2026年は据え置いた。その理由として、消費者心理が好調なことや、実質所得の増加や防衛、インフラを含む政府支出の大幅な増加により、成長率が潜在成長率を大きく上回っていることを挙げた」
(ジェトロビジネス短信 2024年10月25日)
IMF、ロシアの2024年経済見通しを上方修正(ロシア) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
これを聞いたロシアラバーの人たちは口を揃えて「西側の経済制裁は効いていない」、「モスクワやサンクトペテルブルクなとでは消費活動が活発で平時と変わらない」「プーチンの勝利は目前だ」と囃したてたもんです。
トラ親方なんぞ、それをまともに受けて、ロシアは好調な経済に支えられて、まだまだどこまでも戦えるぞ、一方ウクライナを見ろ、もうタオルを投げてもらいたがっているじゃないか、米国が支援を止めれば負けだ、と吠えていました。
馬鹿ですか。戦争はをすれば一時的に景気は上昇するのです。
たとえば日本がおこなった過去の戦争の場合では、1894年に起こった日清戦争では、当時のGDPに対して17%、1904年に始まった日露戦争ではGDPの実に60%もの費用がかかっています。
また1941年から始まる大戦では、なんと880%(!)という仰天する費用をかけて戦争を続けていたわけです。
GDPの8.8倍で、インフレもいいところですが、一見景気はいいように見えるのです。
ロシアの場合も、軍事支出はGDP比率で6.1%に膨れ上がりました。
砲弾を作っても、鉄砲の弾を作ってもGDPとしてカウントされるんですから、そりゃGDPは激増するわな。
ただし戦争は地上最大の消えモノなんです。
「アメリカのCNNテレビは11日、NATO=北大西洋条約機構の分析として、ロシアの砲弾生産能力が、欧米の3倍近い年間およそ300万発に達している可能性があると報じました。欧米がウクライナ向けに生産する砲弾は年間120万発で、NATOの高官は、「われわれは生産戦争に直面している。ロシアの生産面での優位性が、戦場での優位性をもたらしている」と危機感を語りました」
ロシアの砲弾生産能力 欧米の3倍か 年間およそ300万発 NATO危機感(2024年3月12日)
今ロシアは全力で武器を生産していますが、一発の砲弾の材料を作るためには火薬を作る工場が要り、大砲や砲金を作る会社などが必要で、そこに支払いが生じます。
同時に、工員には労賃が支払われますから、国が全力で砲弾や戦車を作り始めたら巨額の公共投資が発生します。
戦争前の不景気はどこへやら、表面的には消費活動も旺盛になり「景気がよくなる」ようにみえるのです。
軍事ケインズ主義なんて言い方をする人もいるくらいです。
しかしそのうらでは120万人とも言われる膨大な死傷者が積み上がっていたのですが。
こういう戦争特需で経済を良くしても、当然それは一時的なもので、物価上昇や財政赤字は拡大する一途となります。
ロシア財政赤字が急拡大 原油価格上限の制裁で打撃 | 日曜スクープ | BS朝日
これが戦争ドラッグの強烈な副作用です。
麻薬中毒でコワイのはやめられなくなることです。
戦争に国家経済の全てを投入すれば、いったんは景気が浮揚てるものの、戦争が終わった瞬間地獄が始まります。
そりゃそうでしょう。戦争経済というのは国家の全リソースを軍需産業だけに投じる極端に偏った経済なのですから。
だから戦争というエンジンが止まってしまったらどうしますか。
経済全体がなにを作ったらいいのか分からずにボーゼンとしてしまうのです。
一方、今、徴兵を強化できるギリギリまで増加させ、北朝鮮の傭兵まで投入していた兵隊たちが、戦争が終われば当然国に還ってきます。
しかしもう仕事がないですよ。工場は武器生産をもう出来ないし、民製品には簡単に転業できません。
これもわが国の例があります。大戦直後の日本は戦闘機を作っていた会社は鍋ヤカンを作ることになり、航空機技術者は失業しました。
そのうえボロボロになった百万以上の負けた兵隊たちが復員してきます。かれらは丸ごと失業者です。
ロシアの場合、安価な中国製がすでに民生品市場を押さえてしまっていますから、いまさらロシア製民生品なんか売れやしません。
命からがら帰ってきた兵隊たちにしごとはないのです。
かくして戦争を止めた瞬間に到来するのは、恐ろしい大失業時代です。
ロシアは今この奈落の淵にいます。
偏った戦争経済で肥大した工業生産を輸出にふりむけるわけにもいかず、民生品にもシフトできません。
ロシアでは戦費の調達のために、中央銀行が政策金利を21%に引き上げていますからインフレが拡大し、物価上昇が止まりません。
その上に財政赤字を埋め合わせるために増税をしまくったツケで、市民生活は窮乏化し゛個人消費は冷え込みました。
こういう不況下のインフレをスタグフレーションと呼びます。
ただひとつの外貨獲得手段だった石油・ガス収入にも陰りが見え始めています。
特にウラル原油の価格が、生産原価を大きく下回る状況が続くという悲惨な状況です。
経済制裁の影響で、輸出先が欧米諸国から中国やインドなどにシフトしましたが、輸出総額はコロナ前の水準まで半減しています。
もはやプーチンは八方塞がりなのです。
« イランとの核協議の内容がわかってきた | トップページ | また始める気かね、政治とカネ »





コメント