トランプ関税、連邦最高裁違法判決
トラ親分大ピンチです。連邦最高裁(連邦ですから、これ以上の上級審はないということ)がトランプ関税に違法判決をつきつけました。
さすが米国、大統領の狂った独走に司法がストップをかけたことになります。
「最高裁はこの日、ホワイトハウスが昨年導入した世界的関税措置について、賛成6、反対3で、トランプ氏が大統領権限を逸脱したと判断した。この判断は、トランプ氏の関税措置に異議を唱えていた企業や米州政府にとって大きな勝利といえる。数十億ドル規模の関税が還付される可能性があるからだ。しかし一方で、世界貿易はさらに不透明な状況になった。(略)
最高裁で争点となったのは、トランプ氏が昨年導入した、世界中のほぼすべての国からの輸入品に対する関税措置だ。
当初はメキシコ、カナダ、中国を標的とした措置だった。しかし昨年4月2日、この日をアメリカ「解放の日」と呼んでトランプ氏が発表した新たな関税措置では、その対象が数十カ国へと劇的に拡大した。
ホワイトハウスは、1977年制定の国際緊急経済権限法(IEEPA)を関税の正当化の根拠にしている。IEEPAは、「異常かつ並外れた脅威」に対処する権限や、緊急事態に際して貿易を「規制」する権限を大統領に与えている」
(BBC2月21日)
トランプ氏、全世界対象の10%追加関税を発動 米最高裁の関税措置「無効」判断に対抗 - BBCニュース
全世界への代替関税15%に上げ表明 トランプ氏がSNSに投稿、時期明示せず - 産経ニュース
いまや「関税」はトランプの魔法の杖と化しています。
元産経新聞ロンドン支局長の木村正人氏は、これを米国が「世界の保険屋を止めて、ゆすり屋となった」ためだと評しています。
「第二次大戦後、米国は「世界の保険屋」として海と空の安全、財産の保護、国際貿易ルール、ドルの安定という安全保障と経済の基盤を提供してきた。しかし第2次トランプ政権になって脅しと取引で利益を得る「ゆすり屋」に変貌した――。
米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は米外交誌フォーリン・アフェアーズ9/10月号に『新しい経済地理学:ポスト米国の世界で利益を得るのは誰か』と題して寄稿、米国は「保険提供者」からみかじめ料を強要する「用心棒」に成り果てたと嘆いている」
(木村正人8月30日)
米国を「世界の保険屋」から「ゆすり屋」に変質させたトランプ、その“大いなる勘違い”こそ米国経済最大のリスク(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)
この世界秩序安定を、地球を支え続ける大地の神タイタンよろしく担ってくる見返りとして、世界は米国市場に気前よく投資してきたのです。
それは米国にかつてない繁栄をもたらし、米国発の技術や法的基準は普遍的な存在となりました。
この役割を止めてやる、保険屋なんて儲からないから各国からしっかりみかじめ料を取るぜ、というのですから、あんた馬鹿か。
なんであんたの国を国際社会は盟主と仰いだのか、それは人格高潔だからじゃなくて、世界秩序の安定に骨折ってきたからです。
そりゃいいかげんで、わがままで、時には傲慢そのもの、やり方は乱暴でしたが、それでも代わりをする国がいなかったからです。
結果、国際通貨としてのドルの安定と国際貿易秩序が守られ、軍事的にはならず者国家を抑制できたのです。
これが 米国が「世界の警官」と、いくぶんかの皮肉をこめて評されたワケです。
それをかなぐり捨てたのがトランプです。
こんなことをしていたからオレの国は衰退した、ボロボロになるまで富を吸い上げられちまった、もう止めだ、止め。
これを「解放の日」と呼ぼうぜ、というわけです。
その「解放」のための武器が関税でした。
ご承知のように世界すべての国に対して関税をかけました。
しかも法的根拠はいいかげん、吹っ掛けた数字は根拠なしですから、たまったもんじゃありません。
トランピストは米国の関税主権だから問題ないと弁護していますが、それは一定のルールの下での話です。
大統領が突如思いつきで世界すべての国に大幅な関税をかけていいもんじゃありません。(あたりまえだ)
すでにこの最高裁判決の前にも、米国の貿易会計の裁判所である国際貿易裁判所(CIT)は、トランプ関税を無効であるという裁定を出しています。
「米国の国際貿易裁判所(CIT)は5月28日、トランプ政権が課した国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税は違法との判断を下した。その後、政権は直ちに連邦巡回区控訴裁判所に上訴した。これを受け、控訴裁は翌29日、同控訴裁が検討する間、CITが下した判断を一時的に停止することを命じた。従って当面は、現在の追加関税措置が継続される」
(ジェトロビジネス短信2025年5月30日)
政権は連邦裁判所に上告して、ここでも負けました。
今回の連邦最高裁はトランプのお手盛りで保守派を増やしてあったのですが、ダメでした。
「トランプ氏が昨年導入した関税措置の大半を無効とした最高裁判事には、リベラル派3人に加え、トランプ氏が最高裁判事に指名したエイミー・コーニー・バレット氏とニール・ゴーサッチ氏も含まれる。
一方、クラレンス・トーマス、ブレット・キャヴァノー、サミュエル・アリートの保守派3人は関税を無効にすることに反対した。
トランプ氏は、共和党政権に指名された最高裁判事が、自分の通商政策を無効としたことを「まったく恥ずかしい」事態だと述べ、自分の政策に反対した判事たちは「ただの愚か者で、他人の言いなりだ」、「非常に非愛国的でこの国の憲法に忠実ではない」と攻撃した。
今回の判断を受け、米ウォール街では、米主要500社の株価指数「S&P500種」が前日比約0.7%高で取引を終えるなど、株価が上昇した。アメリカ国内の企業は、最高裁による関税無効判断を慎重ながらも歓迎した」
(BBC前掲)
司法はこんな関税を自由自在に大統領が決めることが可能か、と問うています。
結論はノーです。関税を決定する権限を持つのは大統領ではなく、連邦議会だからです。
「国際貿易裁判所 (CIT)は今回、米国では憲法上、連邦議会が「税金、関税、輸入税、および消費税を課し、徴収する」権限および「外国との通商を規制する」権限を有していることから、IEEPAが全ての国・地域からの輸入品に対して無制限に関税を課す権限を大統領に委任しているかどうかを判断した」
(ジェトロビジネス短信2025年05月30日)
米国際貿易裁判所がIEEPA関税を無効と判断も、連邦控訴裁は判断の一時停止命じる、追加関税は当面継続へ(中国、カナダ、米国、メキシコ) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
トランプが法的根拠にしているのは国際緊急経済権限法(IEEPA)ですが、国際貿易裁判所 (CIT)はこの法をもってしても議会は大統領に無制限の関税を乱発する権限を与えていないと断じています。
「CITは、1974年通商法122条は巨額かつ重大な国際収支赤字に、同301条は不合理または差別的な外国の通商措置や政策、慣行に対処する場合に限ってのみ大統領に関税を課す権限を与えていると他の通商法を例示し、IEEPAについても、議会は大統領に輸入を規制する無制限の権限を与えることを意図していないと判断した。
また、IEEPAに基づく権限は、「米国の国家安全保障、外交政策、経済に対する、その原因の全部または大部分が米国国外にある異常かつ特別な脅威に対処」する場合にのみ行使できるとし、トランプ政権が主張していた関税によって生じる「圧力」または「影響力」は、緊急事態に対処するための直接的な手段にはならないとの見方を示した。これらの見解により、IEEPAに基づき課された関税を無効とし、永久に差し止めるために必要な行政命令を10日以内に発令するよう命じた」
(ジェトロビジネス短信前掲)
つまりトランプが主張する「巨額な貿易赤字」「貿易の不公正」などのことは、従来からある通商法122条というルールで解消できるのだから、国際緊急経済権限法などを持ち出すなというわけです。
通商法122条は、1974年に制定された通商法の一部です。
通商法には大統領が巨額かつ重大な国際収支赤字に対処するため、最大15%の追加関税や輸入割当などの規制措置を150日間賦課できる権限を付与しています。
●1974年通商法122条の概要
目的: 巨額かつ重大な国際収支赤字への対処。
権限: 大統領に輸入課徴金や輸入割当の賦課を許可。
関税上限: 従価で15%を超えない範囲。
期間制限: 150日を限度。
※『WTO ルールの概要 - 経済産業省』
PowerPoint プレゼンテーション
関税は、物品の輸出入に際して課せられる税金。輸入関税を指すのが一般的。
• WTO加盟国・地域は、他加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことについて、WTO協定の一部である自国の譲許表で約束。約束された税率をWTO協定税率(WTO譲許税率)と言い、GATT第2条はWTO加盟国・地域に対して、WTO協定税率を超えない関税率の適用を義務づけている。
•我が国の関税率には、全ての国に適用される「基本税率」の他に、WTO加盟国・地域に適用される「WTO協定税率」、特定の国・地域に適用される「特恵税率」、暫定的に定められる「暫定税率」など幾つかの種類が存在。原則として、特恵税率、WTO協定税率、暫定税率、基本税率の順に優先して適用される。
そこを大統領令一本で押し込んだという荒技(というか反則技)をしたのがこの男です。
ですから、トランプが大統領を辞めたら、あるいは気が変わったりしただけで、このトランプ関税なるものは雲散霧消するはずです。
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ふむ。敗訴直後にギャンギャン喚きながら「全世界に10%の新たな関税」と言ってたのに、翌日には15%にしたのは122条での上限ね。
1974年って、米国はベトナム戦で疲弊し宇宙開発で散財して···そこにニクソンショック&ドルショックが起きた上にオイルショックで大混乱という時代の法律です。
政権による恣意的運用は折り込み済みですが、150日という制限があります。
問題は去年ボードを抱えながら誇らしげに国別関税措置を発表したけど、全く根拠に乏しい上に自分に媚びへつらったりすると下げてみせるとか適用にも一貫性が全く無いというね。
これから米国内の各企業から関税の変換要求や訴訟が山ほど来るでしょうから、ただでも人員削減された連邦公務員の方々はご愁傷さまです。
一番の問題は関税が跳ね上がっても、米国の貿易収支は悪化してることかな。駆け込み需要の反動も少しはあるだろうけど。
散々物価が高いのはオバマとバイデンの無策のせいだー!と何かにつけて言ってきたのに結局自分も無策というか、そもそも関税ってのは上げたら自国民の負担になるという基本が分かっていない謎のタリフマンです。
投稿: 山形 | 2026年2月23日 (月) 05時57分
「連邦最高裁の判決で反省するような殊勝なタマではありません」沖縄にもそういう知事がいますね。
投稿: 珊瑚は大切に | 2026年2月23日 (月) 08時07分
15%をどうのこうのと騒いでいたのはそういうことでしたか、なるほど。
山形さんのおっしゃる通り、トランプ関税が違法となれば国内企業は返還しろとなるでしょうな、利息もつくかな。
トランプ大統領は関税で儲かったと喜んでいましたがねぇ。
どうにか回避しようと周りに無理難題をいうことでしょう。
トランプ関税が無くなれば輸出側もホッとしますね。
アメリカ国内に工場を移した企業もあるので、投資や雇用を考慮すればアメリカにとって損失だけではない。
投稿: 多摩っこ | 2026年2月23日 (月) 11時41分
実は、関税と消費税は似ているんですわ。ただ、消費税というのは直接的に消費者が払うので有権者からの受けが悪すぎる、関税なら間接的に消費者が払うので政治的にラクだし、貿易相手国の企業は「アカン、関税分をそのまま価格に上乗せしてはライバル社に負けてまう、こうなったら利益を削って関税分のいくらかはウチが負担するカタチにせんならん」と相手国企業が関税の内いくらかを実質的に負担することになるんで都合がいい。
米国財政は火の車、政府も借金漬けなら国民も借金して浪費してる。もちろん、米ドルが基軸通貨とされているからこんな自転車操業が許されてるんですわ。超越した軍事力もある超大国の信用力が、世界じゅう(わが日本国も米国債をタンマリ買ってる、買わされてる?)からカネを集めさせる。
けど、モノ事には限界というものがあって、コロナ騒ぎでドルを刷って刷って刷りまくった後の祭りで、流石に米国の信用力も低下し始めて、米国債、特に長期30年なんてのは金利が5%近くまで上がってきて金利払いも莫大になり始め、米国財政はこのままだと"発散"してしまう可能性だってあるんですわ。その米国に比べてさらに気が遠くなるような借金比率の日本だけど、9割方が国内債権者なんで自国民に対してインフレ税を課せばいい、米国の場合は外国から搾り取るしかない。
トランプ親ビンが、あのソロスヘッジファンド出身のベッセントさんを財務長官に起用したのは、もはや正攻法では財務立て直しは不可能とみて、金融世界の裏のウラまで知り尽くした彼を「三顧の礼」で迎え入れたらしいとのウワサですわ。
実際に米国財政に"発散"の兆候が表れたら、米国だけではなく全世界が只では済まない、世界的な金融恐慌になりますわ。リーマンショックの時は民間金融機関の信用喪失に、中国をはじめ各国政府がカネを出したのでまだ収まったけど、今度は政府そのものの信用喪失なんで、もう助ける者がいませんわ。エライことですわ、世界的な戦争の原因になるやも知れん。
そういうワケで、トランプ親ビンはゼニの亡者みたいになっているんですが、実は真の愛国者で平和主義者であり、米国はもちろん結果的に全世界が酷い恐慌や戦争にならないように戦っているんですわ、たぶん。
投稿: アホンダラ1号 | 2026年2月23日 (月) 23時48分
「日本は借金漬け」という財務省の与太話を未だ信じている人がいるんですか?
投稿: 珊瑚は大切に | 2026年2月24日 (火) 16時58分