高まる緊張・イラン情勢
トランプが、ベネズエラ沖に配置していた空母ジェラルド・R・フォードを中東に移動しました。
これで中東水域には2個空母打撃群という巨大な軍事力が展開していることになります。
「2月13日、アメリカのトランプ大統領は、中東地域における軍事プレゼンスを大幅に強化する方針を発表した。最新鋭の原子力空母「USS Gerald R. Ford(CVN-78)」を中心とする空母打撃群を、すでに展開中の空母「USS Abraham Lincoln(CVN-72)」に続く2隻目の空母戦力として追加派遣するという決定だ。この動きは、イランの核開発問題と地域における影響力拡大に対する米政府の軍事的・外交的圧力を一段と強める意図を鮮明に示すものである」
(ミリレポ2月15日)
米国、最新鋭空母フォード級を中東へ “2隻体制”が意味するもの
1.9兆円の軍艦【世界一高価な原子力空母・ついに配備】史上初の電磁式カタパルト搭載/アメリカ海軍 - YouTube
このジェラルド・R・フォード空母打撃群はベネズエラ沖からの移動を命じられただけであって、まだ到着には3、4週間ほどかかるとみられていますから、2個空母打撃群が揃うのは3月の中旬あたりとなるようです。
フォードは既に展開しているエイブラハム・リンカーンのようなニミッツ級空母によく似ていますが、米海軍が海上戦闘の未来像について、どう考えているかを示す重要な技術的革新を盛り込みました。
最大の特徴は電磁カタパルト(EMALS)ですが、まだ完成の域にはほど遠いようで、この巨艦の実戦配備の足を引っ張ってきました。
トランプはもうこんな金食い虫は止めちまえと喚いたようですが、残念ながらカタパルトのような巨大な装置は付け替えられんのですよ。
結局、総工費129億ドル(約1兆4400億円)掛かったといわれていますが、たぶん今後も改修が続くでしょうからこんなものでは収まらないはずです。
それはさておき、就役するやさっそく使わなきゃ損々とばかりにベネズエラ沖の海上密輸封鎖に投入されていましたが、本来、こんなバカデカイものが活きるのは今回のような対イラン作戦であることはいうまでもありません。
なお、横須賀を母港とするジョージ・ワシントンは東アジア水域から離れておらず、南シナ海にいたエイブラハム・リンカーンが中東水域に移動したようです。
今後本格戦争に発展すると、ジョージ・ワシントンも派遣されて3個空母打撃群となると思われます。
また、地上兵力は約5700人が追加兵力として中東地域に派遣されており、空軍も負けじとばかりにF-15Eなどを投入しているようです。
加えて、英国も空軍の戦闘機を前方展開し、空域の警戒・戦闘準備態勢が著しく強化されているそうです。
このように空前の規模にまで膨れ上がっているわけですが、あと3,4週間で兵力の集積段階が終了し、いつでも即応できる状態になるはずです。
では、トランプはこのような巨大な軍事力をどう使うのでしょうか。
対イラン戦争に投入するのでしょうか、さもなくば今やっている交渉の軍事的圧力でしょうか。
正直わかりません。
私はあの「ケチな平和主義者」であるトランプが、簡単にダンビラを抜くとは思えません。
ダンビラは抜くと元のサヤに納めるのが大変なのです。
合理的に考えれば、期間限定でしかも空爆だけではイランの神権体制を転覆できません。
イランはロシアから買った「S-400」(射程60キロ)や「S-300」(同30キロ)の長距離防空ミサイルシステムを保有していますが、これがとんだ食わせ者でウクライナでもベネズエラでもポンコツだったことは証明されています。
中国も同じものを使っていますから、さぞかし青くなっていることでしょう。
ですから、米国は空軍力をおもうぞんぶん投入できるはずですが、これだけではイランの坊主体制がコケるほどヤワではありません。
常に冷静なISW(国際戦争研究所)はこのように述べています。
「私たちの分析は、政権が数十年にわたり国内の弾圧のために最適化してきたイランの国内治安機構に焦点を当てています。
我々の核心的な前提は、指導者や治安部隊が国内の不安を抑圧する能力と意志を保つ限り、政権は存続し続けるということです。治安部隊が抗議を暴力的かつ致命的に抑圧する能力と意欲は、政権の進路を決定する上で最も重要な要素の一つである。
抗議鎮圧に関わる将校は、一般的に法執行司令部(LEC)、バシジ組織、イスラム革命防衛隊(IRGC)の3つの治安機関のいずれかに所属している」
イラン政権不安定の指標 |ISW
この弾圧部隊は膨大な兵力を持っています。
「IRGC地上軍は約15万人の隊員を擁し、32の地域部隊に分散しています。 政権が既に特定した部隊以外に残存しているのは、アルテシュとして知られる通常軍である。アルテシュ(国軍)地上軍は約35万人の人員で構成されています」
(ISW前掲)
しかしこれらは限界を迎えつつあるのは確かなようです。
- 弾圧のためにアルテシュ(国軍)を使ったことは、政権が必死になり、訓練もイデオロギーも乏しい部隊を使うリスクを冒していることを示している
- 地上部隊外にIRGC部隊を派遣して弾圧を行うことは、政権が絶望的になり、訓練されていない部隊を使うリスクを冒していることを示している
- 抗議者が長期間市中心部を占拠したり、敏感な場所に侵入したりすることは、治安部隊が特定の抗議を制御する能力を欠いていることを示している
- 弾圧なしに持続的な抗議活動は、治安部隊が特定の抗議を制御する意志や能力を欠いていることを示しています
- 政権が抗議を抑圧するために自警団活動を奨励することは、治安部隊が増大する負担の中で弱体化していることを示している
- 抗議活動以外の犯罪率の上昇は、治安部隊が高まる負担の中で弱体化していることを示している可能性があります
- 抗議者が都市や州をまたいでコミュニケーションを取り、連携しているということは、抗議者たちが何らかの形や組織を持っていることを示しています
(ISW前掲)
抗議者は連絡組織を作り、都市間で抗議を拡大していますが、彼らは常に外国の支援が欲しいと叫んでおり、それはなんらかの外国軍の介入のようです。
トランプは空軍だけの攻撃はするかもしれませんが、地上軍の投入はあまりにリスクが高すぎます。
相手が小国のベネズエラですらしなかったのですから、より厳しい抵抗と複雑な地形を持つイランに対しては二の足を踏むはずです。
抵抗運動も健在ですが、神権体制を倒した後のことになると受皿が見えません。
パーレビジュニアは帰る気満々ですが、果たして彼に今のイランをまとめ上げられるかどうか。
こうして考えると、交渉次第では限定的な空爆くらいはするかもしれませんが、本格介入は難しそうだと思います。
« 日本の対中姿勢の変化ひとつでこれだけ変わります | トップページ | 米国、辺野古には長い滑走路が必要 »



コメント