イランを「世界一の親日国」と呼ぶ倒錯
国際法違反糾弾というスタンスは、「イランは世界一の親日国だから助けよ」というドグマと対になっています。
たとえば昨日も紹介した朝日社説の結語はこうです。
「日本は米国の同盟国でありながら、イランとも長く友好関係を維持する独自の立場にある。トランプ政権1期目には、緊張緩和のため当時の安倍首相がハメネイ最高指導者と会談した。邦人保護に全力をあげるとともに、戦争を終わらせるための外交努力も怠ってはならない」
(朝日社説3月2日)
(社説)イラン最高指導者殺害 外交より武力頼みの危うさ:朝日新聞 )
橋下氏も朝日の論調とまったく同じことを言っていますし、共産党も声を揃えて同じことを言っています。
イラン攻撃 国連憲章違反は明白/米・イスラエルの「先制攻撃」 「自衛」といえず認められぬ | しんぶん赤旗|日本共産党
国際政治のリアリズムをまったく理解していない空論であり、そもそもイランが「親日」だったことなどパーレビの時代であって、今の神権支配になってからは、ありがたくも分け隔てなく平等にわが国のタンカーを攻撃して頂いています。
「親日国イラン」というのは、外務省アラブスクールと学界アラブ屋の妄想にすぎません。
そもそもイランとはどんな国だったたのでしょうか。
この37年間、イスラム坊主が率いる神権政権は国民を飢餓線上に置き続けました。
「イラン社会は久しく困窮下にある。ウィーン国際経済研究所(WIIW)のイラン経済専門家のマフディ・ゴドシ氏は1月17日、オーストリア国営放送(ORF)とのインタビューで「イラン経済全体、特に銀行部門は破綻している。猛烈なインフレ、通貨の切り下げ、投資資金の不足、汚職、そして操作によってのみ達成される国家予算という悪循環下にある。
その結果、人々は生活必需品を買う余裕がなくなり、食費を減らさざるを得なくなっている。国民の約3分の1が絶望的な貧困の中で生活している一方、イスラム政権トップの腐敗と汚職、縁故主義が拡散している」という」
(ウィーンコンフィデンシャル長谷川良3月2日)
ムッラー政権が過去行ってきた犯罪歴 : ウィーン発 『コンフィデンシャル
イランはある種の「社会主義国」で、イランの企業の8割は国有企業で、しかも政府とイスラム宗教組織、革命防衛隊などのコングロマリット(複合企業)によって支配されています。
いわば共産国家が共産党に連なる国有企業で独占されているように、イスラム原理主義団体が牛耳る社会です。
したがって民間企業はほとんど存在しません。
あるのはハメネイが管理するセタードだけです。
ロイター
「-イランの最高指導者ハメネイ師が、同国の年間石油輸出額を上回る資産規模のビジネス帝国を築き上げていることがロイターの調査で明らかになった。
セタード(Setad)と呼ばれるこの組織は、金融、石油、通信、医薬品をはじめ農場に至るまで産業全般に影響を及ぼしており、ハメネイ師の権力を示すカギのひとつでもある。イラン国民や在外イラン人などの資産を体系的に接収することで成長してきた。また放棄されたとして法廷で土地の権利を主張して、多大な不動産も所有している。
組織の正式名称は「Setad EjraiyeFarmane HazrateEmam」。最高指導者だった故ホメイニ師が1989年に死亡する直前に発した布告では、1979年のイスラム革命の混乱により放棄された土地を管理する目的で機関を設立することになっていた。
設立者のひとりによると、貧困層や退役軍人を支援する目的で設立、2年間活動することになっていた。しかし四半世紀が過ぎ、不動産や企業などを保有する一大コングロマリットに成長した」
(ロイター2013年11月11日)
イラン最高指導者が築いたビジネス帝国、石油輸出上回る資産規模 | ロイター
いまや数十億ドル規模のコングロマリットに成長したセタードは、イマームの執行本部 (EIKO) によって運営され、宗教的少数派、実業家、追放されたイラン人などの財産を組織的に没収して、現在では石油産業から電気通信、金融、医療に至るまで、経済の他の多くの分野をその管理下に置いています。
このハメネイの経済帝国を軍事的に支えてきた勢力が、悪名高いイスラム革命防衛隊(IRGC)です。
彼らはハメネイ師に忠実な暴力装置であるだけではなく、石油とガス産業、建設と銀行を牛耳るコングロマリットでもあります。
またイラン革命防衛隊は、イラクやシリアですさまじいばかりの破壊テロ活動を行っており、中東の混乱の源泉となってきました。
黒井文太郎氏によれば、彼らは海外のイラン民主派勢力に対して国外であるにも関わらず容赦ない暗殺攻撃を続けました。
イスラム革命防衛隊
「イラン人の暗殺は、欧州亡命組を中心に、1980年代から90年代にかけてかなり頻繁に行われ、少なくとも20か国以上で、計350人以上が殺害された。ただし暗殺作戦は、2000年代以降は比較的沈静化している。亡命反体制派の活動家たちが高齢化し、武力で体制を倒せるような存在ではなくなったからである」
(黒井文太郎2019年4月17日)
中東の最重要問題に浮上したイランの国家的テロ組織 ISよりも危険な存在、イラン「革命防衛隊」とは(後編)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
この執拗な大量暗殺のために、国外亡命グループは壊滅しました。
イランで専制政治が続くひとつの理由は、イスラム原理主義政権にとって代わる民主派勢力に指導者がいないためです。
それは全員殺害されてしまったからです。
次に標的にされたのが、イスラエルとユダヤ人です。
イランは、彼らの支配下にあるレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」に指令してイスラエルに対してロケット弾攻撃を仕掛けました。
このヒズボラは、元来は革命防衛隊が82年に作ったレバノンのシーア派テロ組織で、83年にはレバノン駐留の米仏軍に自爆テロを行い、80年代に欧米人30人以上を誘拐したりしています。
これらの活動は、革命防衛隊の指令に従っており、革命防衛隊を通じてイラン指導部と直接につながっています。
いまやヒズボラの活動は、中南米にも及び、麻薬売買にも関わっています。
これらのダーティな資金を基にして、革命防衛隊は多くの国々の反政府テロ組織を作り、育成してきました。
「(革命防衛隊)クドス部隊は、外国のテロ組織を育成する工作も行った。スーダン、パレスチナ、レバノン、イラク、ヨルダン、トルコ、アフガニスタン、タジキスタン、エジプト、アルジェリア、リビア、チュニジアなどの反政府ゲリラを訓練し、テロリストに育て上げる工作である。クドス部隊の軍事顧問がこれらの国々に派遣されて指導することもあったが、イラン国内の訓練所で指導することもあった 」
(黒井前掲)
特にこの浸透工作が成功した地域は、イラク、シリア、イエメン、そしてパレスチナで、この地におけるテロ流血事件のほぼすべてに、イランが関わっているといっても過言ではありません。
よく日本のメディアや「イスラム専門家」たちは安易に「パレスチナの大義」とか「ガザ住民の抵抗」と美名で呼んでいますが、内実はこのハマスやヒズボラなどのイラン傀儡集団にとって替わられています。
それが露になったのが、このハマスの虐殺事件だったのです。
ところで2023年、ノーベル平和賞はイランの女性人権活動家に与えられました。
「ノルウェー・ノーベル委員会は6日、2023年のノーベル平和賞をイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏(51)に授与すると発表した。イランでの女性への抑圧と闘ったことが評価された。
ノルウェー・ノーベル委員会のベリト・ライスアンデシェン委員長は、モハンマディ氏は「イランでの女性への抑圧と闘い、すべての人の人権と自由を推進するために闘った」と受賞理由を説明した。
また、モハンマディ氏の闘いには「多大な個人的犠牲」が伴ってきたと述べた。
モハンマディ氏は、2003年のノーベル平和賞受賞者、シリン・エバディ氏らが設立した人権団体「人権擁護センター」の副代表。女性やマイノリティー、死刑囚の人権擁護などのために活動してきた」
(BBC10月7日)
ノーベル平和賞、収監中のイラン女性人権活動家に イランは「偏った」受賞と非難 - BBCニュース
BBC
ノーベル平和賞委員会は、モハンマディ氏の受賞理由についてイランの「神権的な政権による、女性を標的にした差別と抑圧の政策」に対して、この1年間にデモを行った何十万人ものイラン人を評価するものだと述べています。
モハンマディ氏はこの指導者です。
この1年間のデモとは、22歳のイラン女性マーサー・アミニさんが、テヘランでイスラム教の服装規則を遵守せずヒジャーブ(ヘッドスカーフ)を正しく着用していなかったというささいな理由で宗教警察に逮捕され、警察署内で尋問中に死去した事件から始まっています。
「一方、クルド系のRudawメディア・ネットワークは、「彼女はヘッドスカーフが原因で警察官に殴打された。彼女の父親は娘の体に拷問の痕跡があったと主張している。彼女が以前に病気を患っていたという情報についても、父親は『娘は完全に健康だった』と述べた」と報じた。また、彼女の治療にあたったクリニック関係者は、「彼女は13日に入院した時に既に脳死状態だった」と証言したという」
(ウィーン発 『コンフィデンシャル9月24日)
10年遅れで「イランの春」到来するか : ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)
この虐殺に対して、イラン全土で激しい抗議行動が勃発しました。
「(CNN) イランで道徳警察に拘束された若い女性の死に対する抗議デモが続くなか、当局は24日までに、街路に平穏が戻るまでインターネット接続を制限すると明らかにした。
イランではマフサ・アミニさん(享年22)の先週の死をきっかけに、数千人が街頭に繰り出して抗議を行っている。
アミニさんは首都テヘランで逮捕され、「再教育センター」に連行された。逮捕理由は頭部を覆うヒジャーブを適切に着用していなかったことだとみられる。
16日以降、テヘランを含む少なくとも40都市でデモが行われた。デモ隊は女性に対する暴力や差別、ヒジャーブ着用義務の撤廃を求めている。
デモは治安部隊との衝突に発展し、数十人が死亡したとの情報もある」
(CNN9月24日)
イラン、ネット接続を制限 女性死亡へのデモで死者増加 - CNN.co.jp
イランでスカーフ巡り女性死亡 警察暴行疑惑、抗議拡大: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ヒジャーブは宗教支配の象徴なのです。
イランは国内に対してはヒジャーブから髪一筋はみ出すことすら許さない専制的宗教国家であり、国外に対しては世界最大のテロ輸出国家でした。
このようなイランと「世界一の親日国」と自称して、それを中東外交の基軸としていたのがわが国だったのです。
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国民を弾圧しまくる独裁国家と友好関係なんて、嫌悪感しかない。
かつて小説「悪魔の詩」の作者と出版にかかわった者に対し死刑が宣告され日本語翻訳者が殺害されましたが、この宣告を出したのはホメイニ師だったという事は風化しているのでしょうか。
投稿: ハルキゲニア | 2026年3月 7日 (土) 07時02分
先のコメントにもあるように、翻訳した「だけ」で非イスラム教徒にも戒律を適用されたらたまったものではありません。イスラムヤクザの身勝手な理屈で命を奪われた者や、現在進行形で拘束されている邦人がいるのに、外務省やオールドメディア、一部野党はこの現実を目の当たりにしてもなお「イランは親日国」と強弁するのでしょうか?
投稿: 珊瑚は大切に | 2026年3月 7日 (土) 11時17分
昨日のお題と合わせて長いコメントになりました失礼をお詫びします。申し訳ありません。
アメリカとイスラエルの攻撃根拠は無く国際法に反していますし、小学校誤爆はきちんと明らかにすべきです。同時に、イランによる地域9カ国+キプロスへの無差別反撃、イスラエル市街地へのクラスター弾使用も違法であり、政府批判デモ参加者を殺しまくる統治や侵略国家ロシアへの武器支援は全く擁護できないですし、核開発が原発の為であるとの自らの言葉を積極的に証明してこなかった点も大きな非です。
侵略され毎日戦火の只中にあるウクライナはイラン製兵器で攻撃されているのと、アメリカの助けが不可欠なゆえに、アメリカのイラン攻撃への支持を表明する必要があるのは理解できますし、イランで殺害された多くの抗議デモ参加者の遺族がアメリカ・イスラエルの攻撃を支持するのも理解できます。中東諸国がこれまでイランから受けた被害と脅威を考えれば、とりあえずアメリカ・イスラエル側につくのも理解します。
「悪魔の詩」訳者殺人事件で命を奪われた五十嵐一筑波大学助教授(当時)のご遺族がイランという国やイランとの友好というものにどんな思いをお持ちだとしても理解します。
同時に、攻撃されたイランの小学校で死亡した児童たちの家族の怒りが今後アメリカに向かっても理解できます。
スペイン、イギリス、カナダなどがアメリカとイスラエルの国際法違反に言及していますが、「いつでも法と秩序に拘る」というより、ウクライナが負けロシアが戦争目的を果たすことになれば次に自分たちが直面する脅威の現実を見ているのも理解します。
高市首相は「イランの行動を非難する」と述べました。それが具体的にイランのどの行動を指すのか分からないので、アメリカに添いながらイランを無難に批判、なのでしょうか。
しかしながら、違反や悪事を誰が行っても等しく言及or批判しないならば、現実に対して楽な立場を選んでいることにはなるし、それをダブスタだと批判するだけでいるのも、どっちもどっち論だけで終わるのも、役に立たない法を守る意味はないと嘯くだけなのも、また同じ楽な立場だなと思うのです。
相手が聞き入れないと知っているとしても、アメリカとイラン両方の国際法や国際人道法に適わない点には言及した上で、自国の考えや方針を述べた方が良いと私は考えます。
以上の私個人の考えは、管理人さんや他のどなたにも押し付けないものでもあることはご承知おきください。
それよりも、「国際法の枠外」で生きていくのがトランプ大統領の固い意志なのかどうかは米国が国連脱退でもしないと私には確かめようがありませんが、それはとりあえず置くとして、一昨日昨日今日のお題で思考実験するのは、我々国民にとって必要にして意義があることだと思います。
「国際法の枠外」という、世界の中で正しさの度合いを客観的に測る物差しが無く誰でも主観で何でもやれる弱肉強食の場で(実際トランプ大統領はイラン攻撃理由も目的も、発言を二転三転させている)、トランプ大統領が「ホルムズ海峡を通るタンカーに護衛艦を出すし保険も面倒見る、だが自国の分のタンカーには自分で護衛艦を出せ」と日本に言ってきたら、我々は断るのか参加するのか。
断るならば日米同盟がやがて無くなる覚悟も要りますし、参加するならば今よりもっと汚れる「悪を以てしても、より酷い悪を制する」世界の住人になる覚悟が要ります。
我々国民はその覚悟はできるか、そして描く予定や期待とは違った「相手の都合」が出現した場合のプランはどうするか、悩みながら集合知で答えを見出していく必要はあると考えさせられます。
投稿: 宜野湾より | 2026年3月 7日 (土) 11時54分
いつも楽しみに拝読・拝見しております。
イランが国内では宗教専制国家で、国外ではテロ支援国家だということは、朝日や橋下さん以外の多くの日本人は普通にわかっていたように思います。今回の衆院選の結果もそうですが、マスコミや左側の人の言い分は日本国民からはほぼスルーされつつあります。
イスラエルはイランが支援するハマスやヒズボラが、ガザの市民を盾に潜行しているのをピンポイントで攻撃していました。このイスラエルの凄まじい諜報能力が、今回のホメイニ斬首作戦にも生かされたのでしょうね。イランが逆の立場だったらガザは住民も街も丸ごと消滅していたことでしょう。
今日本政府がやるべきことがあるとしたら、邦人救出とホルムズ海峡安全通行のための自衛隊派遣であって、決して「親日国」としての外交努力ではないように思います。
投稿: 都市和尚 | 2026年3月 7日 (土) 12時23分
「イランは世界一の親日国」という恥ずべき言説は、今や反米の立場からのものである事がハッキリしています。すくなくも「米国との距離感を保つべき」、とする考えの言論人から我々に対するプロパガンダでしょう。また、国際法云々の前に我々が心配すべきはエネルギー安全保障の観点からホルムズ海峡の安全であり、そのためには自衛隊の艦隊派遣も辞さないと言うスタンスは表明すべきだし、サウジやUAEとの連携です。日本はイランからは現在一滴の石油も輸入しておらず、サウジやUAEこそが重要です。
投稿: 山路 敬介 | 2026年3月 7日 (土) 19時24分
平和とは縁遠いトランプがノーベル平和賞をほしがるというのはなぜなのでしょうか
ノーベル平和賞にもっともふさわしくないのがトランプ、そう思います。
ノーベル賞を馬鹿にしないでほしい
morikana625@morikana625
投稿: morikana625@morikana625 | 2026年3月 8日 (日) 10時51分
「ノーベル平和賞にもっともふさわしくないのがトランプ」私は冷戦時代の反核運動のダブスタから抜け切れてない被団協だと思います。韓国の「原爆ランプ」に抗議の一つしない醜態は正に冷戦時代の残滓。本気で核廃絶など考えて無いのは明白。所詮特定の核保有国の代弁者に過ぎません。
投稿: 珊瑚は大切に | 2026年3月 8日 (日) 16時29分
同感です。被団協には違和感をずっと感じていました。
ところでヤフコメで、トランプやイスラエル非難が多いのも気になります。
一方的なコメントがあまりにも多すぎるのです。不自然すぎませんか?
投稿: | 2026年3月10日 (火) 23時54分