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2026年4月23日 (木)

ホルムズ海峡、日本はなにもできなくてよいのか

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元外交官の宮家邦彦氏と私はめったに意見があわないのですが、今回は違いました。
宮家氏は『日本が半世紀も放置した宿題、ホルムズ海峡での暴挙に何もできなくてよいのか』という一文を発表して警鐘をならしています。
日本が半世紀も放置した宿題、ホルムズ海峡での暴挙に何もできなくてよいのか 宮家邦彦 宮家邦彦のworld watch - 産経ニュース

冒頭、宮家氏はこう設問を建てています。

「筆者の本音は「遅すぎないか」だった。第1期トランプ政権高官も「最初から同海峡を制圧」すべきだったと批判する。米側はイランの能力を過小評価していたのだろう。
海峡の実質的支配実現でイランは核兵器にも匹敵する「抑止力」を図らずも手に入れた。日本では「原油価格高騰」「通航料1隻3億円程度」といった議論が多いが、問題はそれよりはるかに深刻だ」
(産経前掲)

つまり、イランは海峡封鎖という「核兵器並の力」に目覚めてしまった、ということのようです。
ならばこれを目覚めさせたトランプが悪いということになりますから、宮家氏の定番の主張であるトランプ=愚かな帝王という見方につながっていきます。
はて、そうでしょうか。

20260423-023025

アメリカはどうやってイランを止めたのか?ホルムズ海峡のもうひとつ外で行われたこと。|織原松治

このような悲観サイドの見方は米国メディアにも強く存在します。

「WSJは「米国のイラン体制転換は裏目に出た」とのタイトルのポッドキャストで同国新体制を分析している。戦争が「穏健派・実利主義者・外交官」という層を実権から一掃し、「暗殺者・爆破犯・終末論者」が権力の中枢を占め、これが今の実際の実権者と分析。
彼らは「ホルムズという世界経済を人質に取ることで既に勝利したと解釈している」と考察。米国にとって「最悪の合意」以上に、合意そのものが成立しないことが懸念されるとしている。欧州はすでに米国を外したホルムズ管理体制を設計している。中国・インドも招待された。米国が単独で交渉を主導しようとする限り、強硬派との二者間交渉と時間との戦いという最も不利な構図が続く5
(日経4月22日)
トランプ米大統領「停戦延長」発表 対イランで期限示さず、封鎖継続 - 日本経済新聞

では、現実派を一掃して革命防衛隊が権力を握ったイランは、この「勝利」を維持できますか?
たぶんそれなりに勝利感を味わっていられるのは今だけです。
イランとの2週間という停戦期限がすぎても、トランプは停戦を延長して待ちの構えをとっています。
なぜでしょうか。その理由はイランの原油のタンクはいっぱいになるのを待っているのです。
まえにも触れましたが、イランの油井の大部分は老朽化して水コーニングという方法で絞り出しています。
いわばなくなりかかった歯磨きのチューブをムリムリに絞っているようなものです。

そのためには一定の圧力で水やガスを使って汲み上げを続けなければ、この油井は地下水がまざってしまい永久に使い物にならなくなります。
そして国内タンクに入る量には限界があります。
だから、イランはどんなに安値だろうと石油をたたき売りしてきたわけですが、今回とうとうその限界が来ました。
イランの現実的生命線は、革命防衛隊という宗教カルト集団がなんと言おうと宗教でも戒律でもなく原油です。
原油の汲み上げ油井に地下水が混ざればイランは国家破滅です。
アラグチなどの現実派が停戦を目指したのは、油井の停止と永遠の破棄という物理的な期限が近づいていることが分かっているからです。

だから、ホルムズ海峡封鎖が「核兵器並の破壊力」を持とうとどうしようと、イランは米国と合意しなくては国家が立ち行かなるのです。

では、日本はなにもしなくてよいのでしょう。
宮家氏は否と述べています。常日頃米国民主党寄りのリベラル派だった宮家氏が違うというので驚きました。
ホルムズ海峡をイランのようなならずもの国家に封鎖されることは、とりもなおさず国家的危機に直結するからです。

つまり国家の生命線を、きまぐれなならず者に握られたままでよいのかということです。

「考えてみてほしい。ホルムズを含む国際海峡が特定の国により軍事的・政治的に管理され、自由航行が保証されなくなる事態は、経済合理性の議論を超える大問題だ。イランの行為は国連海洋法条約の「公海での航行の自由」という法益を根底から覆す暴挙であり、貿易立国の海洋国家・日本の存立基盤そのものを揺るがしかねないからだ。
これが「新常態」とならないよう日本はあらゆる手段を尽くす必要があるが、エネルギー確保、備蓄、代替手段開発など化石燃料に依存しない強靱(きょうじん)な経済・社会を実現するといった既存の政策の延長では不十分である」
(産経前掲)

そして米国が主導し、護衛船団を作って国際艦隊でこれを守ろうとする時に、その最大の利益享受国の日本がなにもできないでよいのか、と説きます。

「某国が軍事的手段で政治目的遂行のため国際海峡での自由航行制限を試みるとき、それを阻止する国際社会の活動に参加することは「悪」なのか。中東村での消火活動はむしろ「善」ではないのか。これこそ「普通の国」なら当然考える「正しい軍事力の使い方」ではないのか。
それが「憲法、法律上できない」なら、そろそろ憲法や法律自体を変えるときが来たのではないのか。1970年代の2度の石油危機以来、半世紀間先送りにしてきた真摯(しんし)な議論を日本の国会は今こそ始めるべきである」
(産経前掲)

珍しく同感です。9条があるからなにもできません、ではいつまでも通らない、そういう時代が来ているのです。

 

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コメント

中共が台湾有事を起こした時、我が国が仮に中道改革連合や立憲民主党の政権だったとしても、沖縄の在日米軍基地の使用許可をアメリカに出す。それくらいには、我が国の外交安保に安定性はある。
イランと個別交渉して払う額を相談できる、払えば安全だ、出費の更なる増加は無い、などとは信じられないが、トランプがホルムズ海峡を管理して通航料や対価を取ると言い出すことは無い、とも信じられない。実際トランプはそれを口にしていた。
何をするかわからない不安定に加え狂気的ナルシシズムすらあるトランプのような人物が率いる時もあるアメリカだから同盟であり続け、戦う相手にしない方が得策である我が国の環境だが、何がどうなっていても追随、一蓮托生が同盟か?という当然の疑問がある。
同盟国が間違おうとしている時・間違った時に、間違っていると言い合えるには、我が国はどうなったらよいだろうか。
今ホルムズ海峡に、戦闘は望まなくとも(EU諸国やその他の諸国と共に)参加することを考えるならば、今の状況は国際法違反vs国際法違反の戦いで生まれているとの認識を避けてはいけないと考える。現在の日米同盟の我が国にとってのコスパの良さを手放し、得るものと同時に理想より汚れることや失うことを我々は受け入れることになるとすれば、目の前のホルムズ海峡に近々向かえるような超短期では進められない。進められないが、その話はした方がきっと良い。
誰がどれだけジリジリしようともこれはすぐには決まらないと同時に、エネルギーや物資で民間企業や官僚が必死で対策しているが、先の心配はある。悩む。悩みます。

いつも楽しみに拝読・拝見しております。
今のイラン、ホルムズ海峡封鎖で中国以外の全世界を敵に回して勝ったつもりでいる様子は、何だか真珠湾攻撃直後の日本のようですね。イランの中枢はあの革命防衛隊ですから、時間を稼いだ米国に油井ごと国を破壊されても、まだ勝った勝ったと言っているかもしれません。
日本は日本で、例えばFOIPのような多国間で艦隊派遣しつつも戦争当事者には加担しないで、参加国の船舶だけを安全に通過させる枠組みが作れないでしょうか。中東の宗教対立や同盟国が勝手に起こした戦争に巻き込まれることなく、自国の権益を守る必要があると思います。もちろん戦争当事者に攻撃を受けたら、排除して反撃する前提です。

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