わずか1日の協議で決裂
まぁ、おどろくような結果ではありません。むしろ予定調和です。
イランと米国がわずか1日の協議で決裂しました。
初めから障壁がありすぎました。
米国側の要求はこうです。
●米国側要求
①核施設の解体: ナタンズ、イスファハン、フォルドゥにある核施設の解体。
②ウラン濃縮の恒久的な停止: 国内でのウラン濃縮活動を完全に終了する。
③濃縮物質の引き渡し: すでに保有している濃縮ウラン等の物質を国際原子力機関(IAEA)へ譲渡する。
④武装組織への支援停止: ヒズボラやフーシ派など、親イラン武装組織に対する軍事・財政的支援の全面停止。
⑤ミサイル開発の制限: 弾道ミサイルの保有数や射程距離に制限を設ける。
この米国側提案を見るとわかりますが、焦点はあくまでもイランの核武装です。
よくメディアはホルムズ海峡が交渉の胆だと言っていますが、間違いです。
米国は現時点でホルムズ海峡の軍事的実効支配を完成しつつあり、あとはイランがゲリラ的なタンカー襲撃をしないと確約すれば海上保険屋も安心することでしょう。
イランラバーたちは、ホルムズ海峡を通過する船舶にミサイルの飽和攻撃をしかけてくるぞ、早く高市はイランに土下座して通してもらえ、なんて言っていますが、ただのプロパガンダです。
イランはミサイルをしこたま持っていましたが、今その大部分は使えません。
だって深い洞窟か地下にあり、あいにくその入り口は瓦礫で塞がれている状態だからです。
もちろん瓦礫を撤去して死ぬ気で撃ってくる革命防衛隊もいるでしょうが、「飽和」するほどありゃしません。
だからただの大ぼらですが、一発でも飛んで来れば、当たろうと当たるまいと保険屋が騒ぐので、その可能性がゼロにならないかぎり慎重にならざるをえないのです。
したがって、米国にとってプライオリティはあくまでも核開発放棄です。
イランはあれこれ言っていますが、ゼッタイに米国が呑めないのはこの4点です。
●米国が呑めないイランの要求
①戦争賠償金の支払い、 今回の紛争による損害に対する賠償。
②ウラン濃縮権利の容認: 平和的利用を名目とした濃縮権利の承認。
③中東からの米軍撤退、地域内にある米軍戦闘部隊の完全撤退。
④ホルムズ海峡の主権認容: 海峡の管理権がイランにあることの承認と、通行料徴収の権利。
で、どうなったのか。20時間協議をしたみたいですが、合意できたら奇跡です。
【速報】バンス米副大統領が帰国 米国とイランの停戦協議「合意に至らず」 - YouTube
「米国とイランの代表団による戦闘終結に向けた対面の直接協議が4月11日から、パキスタンの首都イスラマバードで行われた。12日、記者会見に臨んだ米国側代表のバンス副大統領は、「悪い知らせは合意に至らなかったこと。合意のないまま帰国する」と述べた。
米国が求めた核兵器保有を可能にする手段の放棄について、イラン側から明確な確認が得られなかったと説明。さらに、「米国のレッドラインと譲歩可能な範囲を提示したが、イラン側は条件を受け入れなかった」と明らかにした。一方、この発表に先立ち、トランプ大統領は「合意しようがしまいが、どうでもいい」「我々が軍事的に勝利した」と述べ、強硬姿勢を強調していた。イランのタスニム通信も、「イランと米国の協議は終わり、交渉は成立しなかった」と報じた」
(メーテレ4月12日)
【合意至らずバンス氏帰国】米イラン協議“20時間交渉も不調”核放棄巡る相違が鮮明- 名古屋テレビ【メ~テレ】
イランが代表団に「ミナブ168」と名付け、団長にガリバフを選んだ時点で、妥結する気はないのは見え見えでした。
「ミナブ168」とは、2026年2月28日にイラン南部ミナブの学校で爆発があり、生徒や教師など168人が殺害された事態を指しています。
これは米軍・イスラエル軍の残虐さの現れとして大きく喧伝されましたが、後に検証されたBBCの衛星画像ではこの革命防衛隊基地と学校は同一の敷地にありました。
【検証】イランの学校と近隣の軍事施設は攻撃を複数回受けていた……人工衛星画像から明らかに - BBCニュース
つまり、ハマスがガザで常習していたように学校と隣接して軍事拠点を作っていたのです。
いわゆる人間の盾です。
こういう所業をする革命防衛隊のガリバフという大幹部が和平交渉団を率いてきた時点で、イランにはいささかも和平に応じる気はないということです。
ガリバフは革命防衛隊空軍司令官、警察軍司令官だった男ですからね。
モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ - Wikipedia
日本のメディアはこの男のこんな台詞をそのまま伝えてしまっています。
「アメリカとの停戦協議でイランの代表団を率いたガリバフ国会議長はアメリカはイランの信頼を得るのに失敗したと批判しました。
パキスタンでのアメリカとイランとの協議は合意に至らず終了しました。
イラン側を率いたガリバフ国会議長は12日、「イランの代表団は前向きな提案を示したが、最終的にアメリカはイランの信頼を得ることができなかった」と自身のSNSに投稿しました。
アメリカ側の対応に問題があったこと示唆しています」
(テレ朝4月13日)
「米がイランの信頼得るのに失敗」 停戦協議めぐりイラン代表団のガリバフ氏が批判(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
なにが「米国はイランの信用をえられなかった」だ。ばかか。
こんなテロリストの親方の捨て台詞を伝えて協議を代弁させる、実に低劣です。
今後米国は、ホルムズ海峡の掃海作戦を本格化させる一方、2週間の停戦終了と共に攻撃を再開するでしょう。
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衛星写真を見た限りだと軍事施設とそれほど離れていなさそうに見えますが、一応子供の絵が描かれた壁で仕切られてはいたそうです。
そして、座間や横須賀、三沢など各地の米軍基地内に軍人家族向けの学校があるように(アメリカ本土も含めて)基地内に学校があるのは珍しくなく、それを人間の盾と呼ぶのは不適当なんじゃないでしょうか。日本だと隊員の子供は宿舎から一般の小学校に通うのが普通なので違和感がありますが。
実際、米軍も国際法違反の批判を恐れているのか攻撃自体の正当化はしていませんね
投稿: 中華三振 | 2026年4月13日 (月) 11時08分
米軍がイランの小学校を「精密に誤爆」したこと自体は事実で、軽んじて良い話ではありません。
中華三振さんも書かれている通り、「人間の盾」は媚米に片足を突っ込んでいるかと思います。
投稿: ねこねこ | 2026年4月13日 (月) 13時07分
停戦協議などしないとしていながら、先にパキスタン入りをしていたのが、まず最初にずっこけました。
会談に先立ち日本のメディアからはイランから提出された10項目の条件につき、「大半は合意の見通し」などとイラン側に沿った主張がされていましたね。マスコミはイランと言う国がどういうものであるか、まるで分っていないのでしょう。今でもね。
とまれ、大勢が相手でも物おじしないバンスをやったのは正解でしょう。
ちなみに「人間の盾」はイランの十八番です。
下部組織ハマスの所業だけでなく、石油精製施設を「人間の鎖」と称し、子供たちによって輪で囲むなどと呼びかけています。
イランの指導層は先のデモで2万人~4万人の自国民を機銃掃射して命を奪ったケモノです。
逆に件の小学校が人間の盾かどうかはともかく、米国が民間人被害が出やすい事が地上戦を忌避している理由の一つです。
あのような卑劣で見苦しいウソだらけのテロ国家をもって、米国のような成熟した民主主義国と比べる方がどうかしています。
それにしても、ねこねこさんの言う「媚米~云々に片足突っ込んでる」とは言い過ぎじゃないでしょうか。
投稿: 山路 敬介 | 2026年4月13日 (月) 16時59分
いつも楽しみに拝読・拝見しております。
今日の日本の株式市場は下げましたが大幅なものではなく、決裂を織り込み済みだったようです。マーケット的には、あのイランがちゃんと交渉の場にやって来て米国と長時間交渉に同席したことが1979年のテヘラン米大使館人質事件以来で、イランは相当追い込まれた状況になっているという認識です。
イラン側には軍事的な反撃オプションがほぼ消えてしまい、米国の攻撃を避けるため人間の鎖を作るしかなくなっています。しかもその人間の鎖はイラン国民の自発的な行動ではなく革命防衛隊が銃で動員したものです。国際法以前の残虐かつ非人道的行為なのに、なぜか日本のメディアはスルーですね。私はミナブのことにしても普通に「人間の盾」だと思っています。
投稿: 都市和尚 | 2026年4月13日 (月) 21時55分
山路さん
「片足突っ込んでる」、つまり「まだ足を引っこ抜けば引き返せる」ということなので、まあご容赦を…
投稿: ねこねこ | 2026年4月14日 (火) 13時02分