UAE、イランに対して闘争宣言
UAEがイランに対して闘争宣言とでもいえる厳しい声明を発しています。
日本のメディアはスルーしているのでアップしておきます。
これはUAEの駐米大使ユセフ・アル・アタイバ氏による「UAEはイランに立ち向かう」と題した講演です。
まず、UAEの現在の情勢認識はこうです。
「過去3週間半の戦争は、私たちがほぼ50年間知っていたことを確認させました――イランの革命は世界の安全保障と経済的安定に対する脅威です。イランにアメリカ、アラブ首長国連邦、そして世界経済を人質に取らせてはなりません。単純な停戦だけでは不十分です。私たちはイランのあらゆる脅威、すなわち核能力、ミサイル、ドローン、テロ代理勢力、国際海上航路の封鎖に対処する決定的な結果を必要としています」
ユセフ・アル・オタイバ大使がウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿:UAEはイランに立ち向かう |ワシントンDCのUAE大使館
そしてUAEの置かれた立場は、この理不尽なイランの攻撃の矢面に立たされているとしています。
「40マイル離れた場所では、UAEがこの紛争の最前線に立っています。イランはエミレーツに対して2,180発以上のミサイルとドローンを発射しており、これは他のどの国よりもはるかに多い数字です。我々は世界で最も効果的な防衛シールドの一つを持ち、これらの攻撃の95%以上を迎撃しています。
国境を越えて、イランは空港、港湾、エネルギーインフラを攻撃しています。肥料や製造のためのエネルギー輸送や供給を封鎖し、代理ネットワークを通じて世界中のテーマパークや文化施設を脅かしています」
ワシントンDCのUAE大使館
UAEは米軍基地だけではなく、大規模な民間施設やアルミ製造プラントへの攻撃を受けました。
またこのような有形な攻撃だけではなく、ドバイが有していた世界有数の金融センターの位置を失おうとしています。
「[ドバイ 17日 ロイター] - 中東の紛争が深刻化すれば、ペルシャ湾岸諸国の銀行から3070億ドルの預金が流出する恐れがある――。S&Pグローバル・レーティングスは最新の報告書でこう警告した」
(ニューズウィーク3月18日)
湾岸諸国の銀行、紛争深刻化なら3070億ドルの預金流出も=S&P | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
結果、UAEはドル預金の流出という現象に直面し、米国に通貨スワップの支援を求めています。
またその原資である石油に関してはホルムズ海峡を閉鎖されているために紅海側のフジャイラ港から積み出しています。
「日本は原油輸入の9割以上を中東に依存。ホルムズ海峡を通過せずに輸送できる中東の港は、輸送能力は限られるが、パイプラインがあるサウジアラビアの紅海側に位置するヤンブー港や、同海峡から外海に出てすぐの場所にあるアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港が挙げられる。 実際、先月28日にはヤンブーからの原油を積んだタンカーが愛媛県に到着。紅海からアラビア海に出るバベルマンデブ海峡を通り、マレーシアでの積み替えを経て日本に届けられた」
(時事4月28日)
原油輸送、代替ルートを模索 ホルムズ封鎖で、政府や海運会社―喜望峰回り、コスト倍増も:時事ドットコム
これについて駐米UAE大使はこう言っています。
「インフラを強化し、ホルムズ海峡を迂回する石油パイプラインを建設しました。しかし、この重要な航路を再開し、世界の消費者にエネルギー供給を回復させるためには、地域全体が連携して努力する必要があります」
ワシントンDCのUAE大使館
ここでオタイバ大使が言っている「地域全体の連携」とは、おそらくこの迂回路が常にイラン革命防衛隊の息がかかったフーシ派によってテロ攻撃を受けていることを指していると思われます。
UAEはサウジと共同してこの地域からフーシ派を排除しようとしました。
「脅威は残っている。フーシ派はこの10年にわたり米国やイスラエル、英国、サウジ主導の連合から断続的な攻撃を受けてきた。弱体化したものの、壊滅には至っていない。このため、西側の多くの海運会社は依然としてイエメン周辺海域への航行を避けている。
紅海沿岸の険しい地形は、フーシ派が兵器を隠すのに適している。昨年、米国やイスラエルによる空爆で指導層や装備の多くが失われたが、フーシ派の活動に詳しい地域の当局者によると、同派は再編や少なくとも一部で再武装を進めている。サウジや、かつてはアラブ首長国連邦(UAE)が支援した対抗勢力もフーシ派を拠点から排除することに失敗しており、同派はイエメン西部ホデイダなど重要港湾を含む紅海沿岸の広い地域を支配し続けている」
(ブルームバーク3月30日)
ホルムズ海峡の代替ルートにフーシ派の脅威-紅海が重要な理由とは(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
フーシ派はイラン戦争に参戦することを正式に表明していますから、イラン戦争が集結し次第、今この地域にいる空母3隻体制という空前の軍事力をフーシ派にも振り向けるはずです。
この段階でUAEやサウジはいままで手控えてきた湾岸諸国きっての空軍力を投入するかもしれません。
さて、いままでUAEはイランに対して微妙なスタンスをとってきました。
オタイバ大使は、イラン戦争直前まで米国を説得したこと、国内の米軍基地はイラン攻撃に使わせていないことでバランスをとろうとしていますした。
「これは私たちが望んだ戦争ではありません。最初の攻撃の数時間前まで、UAE当局者はテヘランからワシントンへの集中的な外交努力を行っていました。私たちはイラン側に、戦争が起きた場合、UAEの領土や空域はイランへの攻撃に使われないことを明確に伝えました」
ワシントンDCのUAE大使館
日本のメディアや中東屋たちは口を揃えてイスラエルこそが地域最大の脅威であって、これを地中海に蹴落とすことが「アラブの大義」だという湾岸諸国の共通認識があると言ってきました。
これが日本の中東屋が大好きな「アラブの大義論」です。
この連中はまるで湾岸諸国が一致して反米反イスラエルであるかのようなトーンで説明してきたのです。
もちろん違います。パレスチナに対する入れ込みには濃淡があって、カタールのようにハマスの最高幹部に軒を貸すような国もあればサウジやUAEのように距離を置く国もあったのです。
というのは、ハマスに対して武器を与え訓練をしてきたイランこそが「アラブの大義」の裏で、イスラム原理主義革命の輸出を図り、湾岸各国に浸透してテロ組織を作り上げて王政打倒を続けていたからです。
表面的には目をつぶってきましたが、さすがに今回大規模なミサイルやドローン攻撃を受けるに至って明確に転換したのです。
それをこう大使は表現しています。
「私たちはイランの最初の標的にされることを知っていました。それは単に近いからだけでなく、私たちが全く異なるからです。UAEは現代的で進歩的、繁栄するムスリム社会であり、国民のために成果を上げています。私たちは女性を力づけ、すべての信仰を歓迎します。UAEはイランが勝てない議論であり、受け入れられない考えです」
ワシントンDCのUAE大使館
この大使の表現に「私たちは女性を力づけ、すべての信仰を歓迎します」とあるのは新鮮です。
これはイスラム諸国の通弊であった女性の地位の極端な低さを改善し、他宗派との共存も認めるという民主主義の大義を確認したからです。
この極北がイランの神権政治の圧政であり、それに対してUAEを「現代的で進歩的、繁栄するムスリム社会」と対置したわけです。
つまりこの戦争は民主主義の防衛戦争だと位置づけたのです。
この戦争で中東地域は大きく変わるでしょう。
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日本の報道は、こと中東関連に関して壊滅的状況です。
サウジがかつて中国の仲介でイランと国交を結んだ事を以てして、日和見的な中立主義のように報じますが違いますね。記事にあるようなUAEばかりじゃなくサウジですら停戦に危機感を持っていて、米国による徹底的なイランへの攻撃を望んでいます。何もトランプはイスラエルに騙されたとかじゃなく、アブラハム合意は中東の真意で核心的政策だった、って事でしょう。
投稿: 山路 敬介 | 2026年4月28日 (火) 19時02分