北米原油のタンカーが大量に日本に向かっている
日本に向けた北米タンカーが激増しています。
「海上輸送の要衝ホルムズ海峡の封鎖状態が続く中、米国を出発して日本に向かう原油タンカーが急増している。北米は、中東以外からの原油輸入を進める政府の代替調達先の一つ。23日時点で、主要な積み出し拠点である米国メキシコ湾沿岸部を出航した日本向けタンカー13隻が確認されており、うち1隻はパナマ運河を通って日本に着いた。来月以降、喜望峰回りも含めた到着が本格化する見通しだ」
(時事4月28日)
米国発の原油タンカー急増 喜望峰回り多数、代替調達か:時事ドットコム
日本は急激に北米、あるいは中南米原油にシフトしつつあるようです。
中南米航路はパナマ運河がチョークポイントで、大型タンカーが通過できないというのが難点ですが、それでも急増しているようです。
「船舶の位置情報サイト「マリントラフィック」などのデータを、楽天証券経済研究所の西勇太郎グローバルアナリストが分析した。船舶数は約1カ月前の3隻から4倍強に増加。13隻のうち3隻は、大西洋と太平洋を結ぶ全長約80キロのパナマ運河を通過した。通航料が高く、幅の狭さや水深の浅さから大型船が通れないなど制約が多いが、片道30日程度と、50日程度かかる喜望峰回りより航路は短い」
(時事前掲)
結局、昨日アップしたUAEがOPECを脱退してまで増産に踏み切ったのは、悠長に構えていると中東原油のシェアがさらに落ち込み北米原油に切り換えられてしまうからです。
だから増産に転じて価格競争に勝たねばならないというわけです。
「OPECを離脱すれば、UAEは米国やブラジルのように自由に増産できる独立産油国の側に加わることになる。もっとも、ホルムズ海峡経由の海運が事実上停止している現状では、生産や輸出を大幅に増やすのは難しい。イラン攻撃前の水準まで海運が回復する前提では、UAEは原油・石油液体燃料を合わせて日量500万バレルの生産能力まで引き上げることが可能になる」
【Analysis】UAE離脱でOPECプラスの市場支配力低下へ ただし枠組み維持の公算=関係者 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
山路さんがご指摘のように、このUAEのOPEC脱退の裏には米国の強い働きかけがあったはずです。
そもそもOPECは先進工業国に対抗して原油パワーで対置してきたところです。
かつては「アラブの大義」のために原油輸出を制限し、世界不況に陥れた前歴があるところです。
近年も米国のシェールガスに対して敵対的でした。
このようなことを米国は常々苦々しく思ってきました。
今回のイラン戦争をひとつのきっかけとして、中東原油離れを加速し、北米産原油にシフトさせるのは「世界最大の産油国」米国の利害でもあるのです。
日本も不安定な中東原油から北米原油に静かにシフトすることでしょう。
ところで、GW中に高市首相はベトナムとオージーを訪問しますが、さすが目のつけどころが秀抜です。
ベトナムはFOIP(自由で開かれたインド太平洋)には正式加盟していませんが、極めて重要な「理解者」です。
元来、FOIPは日本発のゆるやかな自由主義同盟ですので、FOIPは「正式な加盟国リストを持つ“同盟”」ではなく、ビジョンに賛同し、協力し合う形質のものです。
とくに東南アジアは,中東からのシーレーンが伸びている地域で、中国が侵略して軍事要塞化した南シナ海を通過する地域です。
また様々なサプライチェーンが存在する地域で、今回のホルムズ騒ぎでわかったようにナフサの生産拠点もここにあります。
03 概要
高市さんがベトナムを選んだのは、今ベトナムが窮状に陥っている原油不足を支援し、サプライチェーンを崩壊させないためです。
一方出光興産はベトナムに原油を400万バレル供給することがわかりました。
「出光興産がベトナムに原油400万バレル規模を供給することが27日分かった。事実上封鎖されているホルムズ海峡を通らないルートで調達した。ベトナムの製油所でつくる石油製品は日本への輸出も多く、国境をまたいだ供給網を支える。
原油は燃料のほか、樹脂製品向けの基礎原料などに精製される。ベトナムは日本向け樹脂製品の供給網でも存在感を高める。自動車部品や家電、必需品に使う製品の一部が日本向けに輸出されている」
(日経4月27日)
出光、ベトナムに原油供給 日本向けなど石油製品の生産継続へ - 日本経済新聞
この出光は、日章丸以来のイランとの関わりが深く、タンカー1隻をホルムズ海峡オマーン側で通したようです。
通行料を支払ったかどうかはわかりません。
詳細な情報はまだ公表されていませんが、私はそうとうにイランの分断工作ではないかと疑っています。
とまれ、空疎に騒がしいメディアを横目に、日本は政府、企業共に着々と手を打っています。
« UAE、OPECを脱退して増産へ | トップページ | 「出光丸事件」をどう評価すべきでしょうか »



いつもありがとうございます。
日本の政府・企業の努力には頭が下がります。
一方で原油相場の高騰はこの話に反します。
いよいよイランの油井が不可逆的に機能不全を起こして、
原油の供給が減ってきたのでしょうか。
革命防衛隊は気にしていないようですが、
イラン国民がこれを倒さない限りは、
巨大なガザ地区のような国になるのでしょうね。
投稿: プー | 2026年4月30日 (木) 09時14分
UNCLOSの定めに従って普通に海峡を通行するための交渉ならば、我が国も各国も当然あるでしょうね。
ホルムズ海峡の通航料徴収は誰がやっても国際法違反であり、イランが日章丸の件を我が国と世界に向けてアピールしてきても、それとは区別して、例えば小泉悠先生の言葉をパクらせて頂くと「それはお前許されないことだよ、と言ってあげるのが友人」と私は常々考えています。
コロナ禍の時、沖縄科学技術大学院大学の当時の学長は「何もしなければ沖縄で4万人が死亡する」と言いました。
北大のち京大の西浦教授は「何もしなければ重篤患者は85万人、うち半数が死亡する」と言いました。それらは「何もしなければ」の話なので、予測を外しても「外れたのは何か対策をしたからだ」と言える話。ほぼ何も言っていないのと同じです。当時からあったこの批判は正しいと、私も思います。ですが、そう批判した人たちが何故か今回、「○月に○○が枯渇する」という類の話を簡単にSNSでリポスト、拡散しているのはどういうことなのだろう?そこそこ発言力や影響力のある人が、陰謀論者や承認欲求常習者として知られている者のポストを引用するようにまでなってしまった。
「○月に○○が枯渇する」というのも「このまま何もしなければ」の話であって、実際は民間企業を中心に、官僚と政権も対策を取っている。
問題は、コントロールできない己の心、他人の心ではないのか。
個人から企業まで、先んじて多めに確保しようと買い占め・買い置きや過剰発注する己と他人の心の動きは制御し難く、それに売り惜しみが合わさって、「受注が止まった!」「買えない!足りない!」と報道される。
「あるから大丈夫」と発表されれば我々は安心して消費してしまうし、「不足する」と発表されれば我々は買い占め・買い置きや過剰在庫保持に走る。
それはそれぞれの立場ではそれなりに合理的な行動なので、「デマや思い込みや不確定情報で煽る不届者」以外を責めることはし難い。経済を動かしながら消費や発注・買入で無駄遣いもしない心掛けをして乗り切るか、欲しいままに使う・買う・確保する自由を第一に行動するか。
個人でも企業でも政治でも、事態の良くない影響が長期化する場合のプランを(その出番が無ければそれが何よりとして)考えていく必要はあると考えますが、世の中が、人の心がどう動いていくのか、そちらも私には予想できません。
投稿: 宜野湾より | 2026年4月30日 (木) 11時23分
マスメディア様が不安を煽ったぢゃなかった、案じて下さったせいなのかどうかは判断しかねるのですが、作業用手袋の転売価格がすごい事になっていました。
一例を紹介すれば、アマゾンで100枚1500円くらいのゴム手袋が某転売屋御用達サイトで500枚3万円。250枚930円のポリ製手袋が2万円以上。そんなのが多量にありました。
これも、タンカーが日本に到着しだせばどうなるか。
転売屋さんや支持率下げたい御一行様も大変ですね。
投稿: ハルキゲニア | 2026年4月30日 (木) 12時52分
今日は紅海側からのタンカーが日本に着いたそうです。
節約・自粛ムーブに陥らないよう、政府・経産省は踏ん張っています。
また、出光丸の件はイランのプロパガンダ作戦にまんまと嵌っています。もちろん日米の分断工作ですが、孤立したテロ国家イランが世界に見せる「日本との絆」って、日本なんてチョロいもんです。
投稿: 山路 敬介 | 2026年4月30日 (木) 23時14分