UAE、OPECを脱退して増産へ
アラブ首長国連邦(UAE)の国営通信などの報道によると、UAEは2026年5月1日付で、OPECおよびOPECプラスから脱退する方針を発表しました。
「[ドバイ 28日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)は28日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟を加えたOPECプラスから5月1日に脱退すると発表した。イラン紛争が歴史的なエネルギーショックを引き起こし世界経済を揺さぶる中、産油国組織と事実上の盟主であるサウジアラビアにとって大きな打撃となる」
(ロイター4月28日)
アラブ首長国連邦がOPEC脱退表明、イラン紛争下で結束に亀裂(ロイター) - Yahoo!ニュース
このOPEC脱退にいちばん腹を立てているのはサウジで、2番目はロシアでしょうね。
湾岸諸国の中で、サウジとUAEの関係は、「仲が良いけれど、ライバルでもある」といういささか複雑な関係だとよく言われます。
共通点は若く強いリーダーシップを持つ人物がトップにいることです。
サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、同盟国からライバルへと転じた。
サウジには皇太子のモハメド・ビン・サルマン(上写真右)、方やUAEには大統領のモハメド・ビン・ザイード(上写真左)がいました。
この両人は、石油の上にあぐらをかき、政治体制も王制国家のままという現状を改革する必要を認めている点は同じでした。
石油依存から金融や観光にシフトすることで近代化を進めてきました。
人気絶大、父性的、親日家。日本人の多くがまだ知らない、UAE・ムハンマド大統領とは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
また外交政策でも、このふたりは従来の「アラブの大義」という虚構に縛られてきたためにイスラエルを敵視しイランを容認する姿勢が現実にそぐわないことを理解していました。
これが露わになったのはイエメンのフーシ派対応です。
サルマンはこのフーシ派という危険なテロ組織の背後にイラン革命防衛隊がいることを知っていました。
サウジはイエメンのフーシ派に対する軍事作戦を開始しました。
と、ここまでは仲が良かった両人の関係が怪しい雲行きになったのは、石油の減産について両国の利害がぶつかったことです。
「アラブ首長国連邦とサウジアラビアの当局者は、表向きには両国は緊密な地域パートナーであると述べている。しかし、舞台裏では状況は全く異なっている。12月、イエメン政策や石油輸出国機構(OPEC)による生産制限をめぐる意見の相違が拡大する中、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はジャーナリストとの会合を開いた。
サウジアラビアの指導者らは、アラブ首長国連邦(UAE)に要求リストを送付したと述べた。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、UAEが要求に応じない場合、サウジアラビアは2017年にカタールに対して行ったのと同様の懲罰措置を取る用意があると警告した。当時、サウジアラビアはアブダビの支援を受けて、ドーハとの外交関係を3年以上断絶し、経済制裁を開始した。
「それは私がカタールにしたよりもひどいことになるだろう」と彼は断言した」
(VnExpress2023年7月22日)
サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、同盟国からライバルへと転じた。
この二人は表面的には友好関係を保っていますが、米国外交官によれは「どちらも『一林に二頭の虎』という状況に居心地の悪さを感じているよう」だそうです。
そういう微妙な空気の中、今回のUAEのOPEC脱退が起きたわけです。
UAEは長年、OPECをサウジが牛耳り、UAEはそれに嫌々従属してきたことに飽き飽きしていました。
この傾向はすでに6年前から顕著でした。
[ドバイ/ロンドン/モスクワ 1日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)は石油輸出国機構(OPEC)でサウジアラビアの考えに常に同調してきたが、そのイメージは今週になって一気に消し飛んだ。協調減産の順守強化の要求を突き付けてサウジ主導の合意形成の取り組みに水を差し、OPECとロシアなど非加盟産油国でつくる「OPECプラス」の生産方針決定をどたんばで事実上延期させる役回りを演じたからだ。
こうした異例の動きは、今後は何年かかけて増産とシェア拡大を目指そうとするUAEの存在感がOPEC内で高まっていることを物語る。またUAEがサウジに対する政治的独自性を高めている表れとも言える。この独自性は、UAEがペルシャ湾岸諸国で真っ先にイスラエルと国交を正常化した事実によって、誰の目にもはっきりとした」
(ニューズウィーク2020年12月2日)
アングル:サウジから「自立」するUAE、OPEC紛糾の原因に | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
UAEはサウジ主導のOPECの減産方針に従属することを拒んで、わが道を行く自立色を強めていました。
今回のことでこの二国は完全に袂を別ったことになります。
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かねてUAEは、OPECおよびOPECプラスから脱退するのは時間の問題でした。推測ですが、裏には米国政府の意向があったんじゃないですかね。ちょうど、米国への通貨スワップの要請もありましたし。なによりトランプ御大が歓迎しています。わが国としても大歓迎で、市場性の高まりが安定供給と価額に寄与する事になると思います。
UAEがまずイスラエルと国交をひらき、サウジは中国の仲介でイランと国交を開きました。記事掲のNW記事のように、この違いは両国の立ち位置の違いを浮き彫りにして来たものと思います。昨日の記事にもありましたが、UAEの民主化路線へのさらなる一歩と考えられます。
何にせよ、価額や生産量の決定権をサウジやプーチンに与えたままでは、ある種の権力や国際的な地位を両者に付与したと同義です。
そこに屯す原油取引マフィアも存在意義がなくなるでしょう。
投稿: 山路 敬介 | 2026年4月29日 (水) 18時14分