中東は千夜一夜物語の世界のままです
日本人の通弊として、世界どこでもじぶんの国と同じようなもんだという美しい誤解があります。
だから中東世界がわからない。
うちの国は世界的に見て、極めて特殊な地勢学的特徴があるのです。
なんといっても四方を海で囲まれた自然国境が存在し、その中にほぼ同一の人種が暮し、強烈な宗教支配がなく、国家と国を分離しないでも自然にひとつだと思える、こんな国世界でもあんまりないですよ。
では、中東はどうかというと、アリババと30人の盗賊の千夜一夜物語の世界のまま止まっています。
国はあっても国家はないのです。
たとえば今イランが停戦協定破りだと騒いでいるレバノンは、表向きは国家という体裁ですが、私たち日本人が考える「国」とはまったくちがいます。
なんとレバノンという国家の中にヒズボラというテロ集団が国を作って、勝手にやっているのです。
こういう状態を国家内国家(二重国家)と呼びますが、様々な勢力が代表を送って政権をつくって国家の顔を整えています。
こんな国だから日産を食い潰した大悪人であるカルロス・ゴーンが逃げこんでも匿ってもらえるというわけです。ま、カネさえあればですがね。
で、ヒズボラはなんでレバノンにしがみついているかといえばレバノン南部から地続きでイスラエル北部に浸透できるからです。
かつてこの国境地域にはアラファトのPLOが陣取って、イスラエルに連日ロケット攻撃を仕掛けていました。
いまは役者が替わって、イランが武器を与えて訓練した育成したヒズボラです。
産経
イスラエルはこのレバノン南部の国境地帯に、国境からリタニ川まで緩衝地帯を作りたいと考えています。
「イスラエルのカッツ国防相は24日、イランと連携する民兵組織ヒズボラを標的に行っているレバノンへの軍事攻撃を巡り、「自衛のための緩衝地帯」を設けるとしてレバノン南部を広範囲に占領する意向を示した。トランプ米政権がイラン側との停戦協議でレバノンの戦闘を扱うかは不明だ。
ロイター通信によると、カッツ氏はイスラエル軍幹部との会合で、北部国境に隣接するレバノン南部の防衛線をリタニ川流域まで北上させ、一帯を支配下に置くとの見通しを示した。リタニ川以南のレバノン領は全国土の10%近くに相当。
イスラエルがこれほど広い地域の占領方針を示したのは初めてだという」
(産経2026年3月25日)
イスラエル、レバノン南部を占領の意向「自衛のための緩衝地帯」 レバノン政府は苦慮 - 産経ニュース
ネタニヤフはテロ禍の根絶を期しており、ガザと西岸を支配下に置くまでは枕を高くして寝られないとかんがえていますし、レバノン南部にも緩衝地帯を設けるまでは戦いを止めないつもりです。
中途半端なところで妥協すれば、必ず再びテロの温床となるからです。
中央アジアから中東の砂漠地帯には、海や川のような自然国境は皆無です。
だからアラビア半島の国境線は不自然に一直線ですよね。
ここで通用するのは「力」です。有体にいえば軍事力。
軍事力で支配した地域が領土です。その意味で、レバノンという国家があってもそんなもんは芝居の書き割りみたいなもんで、ヒズボラにとっては自らが支配する土地は「国」なわけです。
そしてここで通用する唯一の「法」は、国家が定めた近代法ではなくシャリフ法だけなのです。
国際法ですか、もちろん話の外です。
ヒズボラは、人間の楯を使って学校施設や民家の下のトンネルから執拗なロケット弾攻撃を仕掛けたりしていますが、彼らの「イスラエルを地中海に追い落す」という反ユダヤのスローガンは、言い換えれば「力による国境の拡張」なのです。
そうはさせじとイスラエルは押し返すといわけですが、イスラエルはいままでこうやって自国の四方に緩衝地帯を作ってきたのです。
ですから今回イラン戦争停戦条件で絡まってしまいましたが、イスラエルからすれば冗談ではない、アレはアレ、コレはコレだといいたいのでしょう。
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