習近平、G2への誘い水 出しまくり
米中首脳会談が開かれていますが、ブルームバークが面白い一覧を作って対比しています。
米中首脳会談、双方の発表比較-台湾やホルムズ海峡にどう言及したか - Bloomberg
上図をみるとわかるのは、圧倒的に習近平がラブコールを送っていることで、一方トランプ側は「言及なし」に止まっています。
習はこの会談のテーマはひたすら「戦略的安定性を備えた建設的な関係」の構築」だったようで、競争関係ではなく協力関係だと盛んにアピールしたようです。
たとえば習の発言のこの部分。
「習近平は次のように指摘した。「現在、百年に一度の大変局が加速しており、国際情勢は変動と混乱が入り混じっている。米中両国は『トゥキディデスの罠』を乗り越え、大国間の関係の新たなパラダイムを切り開くことができるだろうか。
手を携えて地球規模の課題に取り組み、世界にさらなる安定をもたらすことができるだろうか。
両国国民の福祉と人類の未来・運命に目を向け、二国間関係の明るい未来を共に切り開くことができるだろうか。これらは歴史の問い、世界の問い、人民の問いであり、大国指導者が共に書き上げるべき時代の答案でもある。
私はトランプ大統領と共に、米中関係という大船の航路を正しく導き、舵取りをしっかりと行い、2026年を米中関係において過去を継承し未来を切り開く、歴史的かつ象徴的な年としたい」
(福島香織note5月14日)
ほー、柄にもなくなかなか知的なことを言うもんだわさ。
「トゥキディデスの罠」とは米国のグレアム・アリソンが提唱した概念です。
「トゥキュディデスの罠(トゥキュディデスのわな、英: Thucydides Trap)[注 1]は、アメリカ合衆国の政治科学者、グレアム・アリソンによる国際政治学上の用語で、新興国が既存の大国の地域的ないし国際的な覇権の地位を脅かそうとする際に、必然的に戦争に陥ってしまう傾向があるという主張を説明するものである」
トゥキュディデスの罠 - Wikipedia
まぁ諸説あって、アリソン説に対しては多くの異説が存在します。
「トゥキディデスの罠 」説をとると、台頭する新興国と既存の覇権大国が、相互不信や相手への恐怖心から戦争に至りやすいということになりますが、共産党トップがあえてこの説を持ち出したのは共存可能だというシグナルです。
一方米国側も今は米中覇権闘争をしたくはない。
国力がもたん、ということです。
だから日中間の対立を前にして、トランプ政権は介入しようとはせずに沈黙を守っています。
中国とのディールを同盟国との関係よりも優先させているようです。
これはヨーロッパについても同じで、いまやNATOは切り捨てられるかもしれません。
トランプの頭に米国と中国で世界を支配する「G2体制」がないといったら嘘になるでしょう。
しかしそれでは民主主義は守れないのですが。
今回も習はトランプとの「特別に親しい関係」をアピールし、G2への誘い水を出しまくったようです。
それに 答えて米国は「中国市場へのアクセス拡大と米国産業への投資拡大」が優先すると答えたようで、要は米国が儲かればいいんだということのようです。
だから巨大企業のCEOを1ダースも連れて行き、習にひとりひとり紹介するなんてことをしたのでしょう。
ある意味、トランプほど籠絡するのが簡単な奴はいないのです。
キンピカをちらつかせ、裏でトランプファミリーに利権をくれてやればよい。
トランプは精神不安定な政権で、1期目と2期めは大きく違っています。
1期めは国務長官にフリーダム・コーカスのマイク・ポンペオが座っており、安全保障補佐官にはボルトンがいました。
彼らは中国脅威論の立場に立ち、中国への高関税政策や先端技術の流出防止に注力しました。
軍事的にも主敵を中国に置き、想定戦場は西太平洋でした。
ところが2期目となってこの両人は切られ、替わって高関税政策となります。
ただし世界すべての国に対しての敵も味方もない無差別爆撃だったので、世界経済は大きく動揺しました。
一方、中国は産出量で世界の約7割、精製で約9割を握るレアアース(希土類)の輸出規制に乗り出して対抗しました。
米国の成長産業はAIですので、厳しいツボを押さえられてしまったことになります。
結局、この不毛な関税戦争が終了したのはこの中国のレアアース輸出規制が効いたからです。
その流れの中で今回の訪中があったわけです。
非常に憂鬱ですが、このふたり放っておくとG2になりますね。
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そう言えば以前、トランプは米中関係をG2と表現していた事がありましたね。習近平としては願ったり叶ったりの表現で、かつ「世界の事は米中二国間関係で決定する」という、これをして中華式秩序形成までの一里塚のように位置付けている事は明らかです。
それでもって彼はアメリカの没落を頑なに信じているワケですが、中国の没落の方が遥かに早いようです。長い目で見て、やがてチベットやウイグル経営に費やす資金も賄えなくなるんじゃないでしょうか。
また、米陣営の我々日本人からみれば、かような言説は気になるところですが、トランプ的世界観では肝心の欧州勢力を従えているとは言えません。中国としても、盟友のロシアやイランにほぼゼロ支援の体たらく。なんでも言うのは勝手ですが、今回の会談においての成果など、わずかに米国企業に利があるだけで、ほとんど見るべき成果が無かったと安堵しています。
蛇足ですが、習近平が「トゥキディスの罠」の事については、馬鹿の一つ覚えのように何度も言及しています。それこそ主席就任直後からです。ほら、よくいるじゃないですか。あまり物を知らない人間が、たまたま一つ難しそうな概念を知って、それを何度も得意げに繰り返す現象ですよ。なにより、今の米中に例えとしての「トゥキディスの罠」は当てはまらないのですけど。
投稿: 山路 敬介 | 2026年5月15日 (金) 20時45分