ドローンに見るウクライナとロシアの違い
ロシアに対してウクライナが反撃を続けています。
ウクライナは過去4年間の戦争の中で、ドローンというまったく新しい戦術の次元を作り出しました。
これは単なるロシアに対する対抗手段の枠を越えて、今や21世紀の戦争の仕方そのものを変えるまでになっています。
その結果、クリミア半島へのウクライナ側からの物流路を封鎖することに成功し、一方で長距離ドローンによってロシアの中心地域まで攻撃の範囲に入れることに成功しました。
ロシアという国はいびつな人口分布を持つ国で、人口の約75%がウラル山脈の西側に集中して居住し、彼らが政治経済の中心を担ってきました。
ここはウクライナから続く肥沃な穀倉地帯であり、ロシアが自らをヨーロッパの一部だと考えているのはこのためです。
もっともヨーロッパから見れば、ロシアなんぞ東方野蛮国にすぎず、それがロシアのツァリーたちの積年のコンプレックスでしたが。
一方、それ以外の地域、すなわち中央部はツンドラ地帯であり、極東地域にも少数民族が居住していますが経済は大きく立ち遅れています。
プーチンがウクライナ戦争に駆りだし、一説で50万人という途方もない戦死者を出しました。
その大部分はこのウラル以東の地域から出しています。
「イギリス最大のスパイ機関によると、ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、約50万人のロシア兵が死亡した。英政府通信本部(GCHQ)のアン・キースト=バトラー長官が27日、就任後の初の公開演説でそうした分析を明らかにした」
(BBC2026年5月28日)
ロシア兵約50万人がウクライナでの戦争で死亡と英情報当局 - BBCニュース
小泉悠氏は「プーチンは国民を消耗品だと思っている」と言っていますが、プーチンがそう思っているのは、あくまでもウラル以東のアジア系ロシア国民だけです。
ウラル以西のヨーロッパ系ロシア国民は徴兵を免れ、ウクライナ戦争はテレビで見聞きするだけのものにすぎませんでした。彼らがプーチン政権の支持基盤です。
それが覆されたのは、先日来のウクライナによるモスクワ爆撃があったからです。
製油所の巨大な上部構造が吹き飛ぶ、モスクワでウクライナの大規模ドローン攻撃 産油国のロシアが燃料輸入へ(字幕・18日) | ロイター
ウクライナはウラル山脈まで到達する射程2000kmの攻撃型ドローンを開発し、モスクワなどの国家中枢すべてがいまやウクライナ軍の射程に入ってしまいました。
いまやプーチンは自慢の戦勝記念日すらおちおち開けないほどです。
またウクライナはクリミア半島に続く補給路であった橋を落とし、クリミア回廊を遮断しました。
そのためにクリミア半島はいまやガソリンやガスをはじめとした物資が枯渇し孤立した「島」と化しています。
クリミアは従来はヨーロッパ系ロシア人の避暑地だったようですが、今年はどうなりますことやら。
さて、ウクライナ側のドローンの戦果ばかりがでてきますが、ロシア側のドローンはどうでしょうか。
いやロシアのほうがウクライナより量産しており、発射数はむしろ多いくらいです。
ただし当たらないので、ほとんど戦況には影響がないだけのことです。
「ロシアは、2025年3~5月の間、1か月当たり平均して約3,000機以上のドローンを使用してきた。しかし、標的への命中率は12.5%にとどまっている。一方、ゲラン2の単価は約2万ドルに過ぎないため、命中率が低かったとしても、ウクライナ側に賦課できるコストは大きい。ロシアは、ドローン生産を月産5,000機から数万機にまで増やすことを目指し、それを実行に移しつつある。ウクライナでは、今後、1日当たり1,000機のドローンが飛来することになるとの観測もある」
(地経学研究所2026年3月)
ドローン製造戦争:ウクライナ戦争におけるもう一つの戦場|地経学研究所(IOG)の研究活動
またロシア製ドローンは、設計がイラン、部品のほとんどは中国製で占められています。
「ロシア製ドローンはイランの設計に基づいているが、一方でその部品、特にエンジン、航法装置、炭素複合材、電子機器、バッテリー等は中国に大きく依存しているとされる。特に、エンジンと電子機器はイランによる供給が困難で、中国がその役割を担っていると指摘されている。
ゲラン2及び3の製造拠点であるアラブガ地区には、「鄧小平物流コンプレックス」と通称される中国との共同物流施設が存在しており、中国からのドローン部品供給が大規模に行われていることが窺える」
(地経学研究所前掲)
一方ウクライナも同様に戦争初期には中国製部品に依存していました。
しかしロシアと同盟を結ぶ中国はウクライナへの部品供給を制限したために、一時は部品調達に苦しんだようです。
しかしそれを乗り越えたのが、持ち前の精密工業を活かした内製化の成功でした。
「この問題に対応するため、ウクライナは部品の内製化に着手し、ドローン専用部品の生産により単価低減と性能向上を実現しつつある。
もう一つの有効な対応策は、西側諸国とのドローンに係る生産協力である。ウクライナ防衛生産基盤は、戦争勃発後急速に拡大し、売上規模ベースで、開戦以来35倍の規模となった。
それにもかかわらず、政府予算の不足により、その生産余力は十分活用されていない状況にあった。この資金ギャップを埋めるため、欧州各国は自国の資金や対露制裁で得た凍結資産の利子を原資としてウクライナに資金を提供し、ウクライナ国内でドローン等を生産する「デンマーク・モデル」を推進している」
(地経学研究所前掲)
ウクライナの避難民が製造 戦況を変える“ドローン” ウクライナに残る家族と離れて戦争の終結を願う【ウクライナ侵攻から1年】|TBS NEWS DIG - YouTube
たとえばラトビアでは避難民がドローン工場で働いています。
このような周辺国の強い支援があってドローンはウクライナのロシアを「押し戻す力」になったのです。
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