トランプの見通しの甘さが宗教カルトを勢いづかせた
トランプという男はほんとうに見通しの甘い人です。
ベネズエラに海軍を貼りつかせているうちに、次のイランと戦争を始めてしまい、イスラエルは勝手にレバノンで戦争を拡大し、ウクライナでは贔屓の引き倒しをしていたロシアが退勢となり、いまやどこを見てもニッチもサッチも行かない袋小路状況です。
まぁ、結果論ですが空軍力だけでイランを屈伏するはずがなかったのかもしれません。
この点で、私も見誤っていました。
相手がカルト宗教国家であることを軽視していたようです。
もちろん、戦術的にはすでに勝敗は決しています。
米軍はイランの軍事力を徹底的に破壊しています。
2カ月前の4月8日には、ヘグセス「戦争省長官」は、「イランは休戦を乞うている」「歴史的で圧倒的な勝利だ」と胸を張りました。
実に強気です。
「対イラン軍事作戦が「歴史的で圧倒的な勝利だった」と主張し、イラン軍を数年にわたり戦闘できない状態に陥らせたと成果を誇示した。(略)
軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長は停戦を歓迎しつつ「一時的に休止したが、作戦再開の準備は整っている」と強調した。
ケイン氏によると、米軍は2月の作戦開始後、イランで1万3千以上の標的を攻撃。自爆型無人機「シャヘド」の生産工場は全て攻撃を受けたとした。ミサイル関連施設の80%以上を破壊し、イランの核開発能力を弱体化させたと説明した5
(産経4月9日)
米軍、最終合意まで展開 ヘグセス米国防長官、成果誇示「歴史的で圧倒的な勝利」 - 産経ニュース
ケイン統合参謀本部議長によれば
・13000 もの目標を精密打撃
・イラン防空網の 80% を無力化
・弾道ミサイル施設 450、ドローン施設 800 を撃破
・2000 以上の指揮・統制司令部が消滅
常識的にはこれで軍事的には終了と米国が考えても当然の戦果でした。
ところが、これだけ軍事的に「圧倒的勝利」を収めながら、イランは交渉で首を縦に振らない、どこまで行っても核は手放さない、手放さないどころか制裁解除を言って賠償金を要求したりする、あまつさえホルムズ海峡の支配地域を拡大し、通行税を取ると言い出す、もうハチャメチャです。
引き延ばされて喜んでいるのが同盟軍だったはずのイスラエルです。
イスラエルはこの際とばかりにレバノンのヒズボラを一掃しようとしました。
まるで火事場泥棒ですが、ネタニヤフはこういうことを平気でする男です。
ネタニヤフ氏もイラン攻撃停止表明 トランプ氏「1人で戦え」と圧力 - 日本経済新聞
「イスラエル軍は13日、レバノン南部で過去24時間に親イラン民兵組織ヒズボラの拠点約150カ所を攻撃したと発表した。イスラエルは米イランの停戦合意後もヒズボラ掃討を掲げレバノン南部で侵攻を拡大。ヒズボラも攻撃し応酬がなお続いた」
(産経4月15日)
イスラエルがレバノン150カ所を攻撃 ヒズボラ掃討を掲げ侵攻拡大 - 産経ニュース
そしてイランは、図々しく和平交渉の議題にレバノンにおけるイスラエル軍の攻撃停止までを入れる始末です。
「イランとイスラエルは7~8日、米イランの4月上旬の停戦合意後初めて相互に攻撃を実施した。トランプ米大統領がイランとの戦闘終結に向けた合意を目指すなか、イランはレバノンでの戦闘停止も合意の対象だと訴えてきた。ただ、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとイスラエルの互いへの敵対心は根深い。レバノン情勢は米イランの合意を阻む障害として今後も尾を引きそうだ。
今回の攻撃の発端はヒズボラによるイスラエルへの攻撃だった。続いてイスラエルがヒズボラの拠点を爆撃して報復。イランとイスラエルが攻撃し合う事態に発展した」
(産経6月9日)
米イランの合意阻むレバノン情勢 民兵組織が連携の動き サウジの原油輸出に懸念 - 産経ニュース
本来、無関係なはずのレバノンのヒズボラまでもが当事者になってしまいました。
つまりかえってこじらせてしまっています。
イランは折れず、イスラエルは火事場泥棒、イライラが募ってトランプは、とうとうネタニヤフをバーロー、このクレージーめと電話で怒鳴ったそうです。子供か。
「お前は正真正銘の狂人だ。私がいなければ、お前は刑務所に入っていただろう。私がお前を救ってやったんだ。今や誰もがお前を憎んでいる。このせいで、誰もがイスラエルを憎んでいる」
Trump to Netanyahu in call on Israel striking Lebanon: "You're fucking crazy"
ネタニヤフに怒鳴っても仕方がありません。
この政権を牛耳っているユダヤ教超保守派が生きているのは、現代ではなく旧約聖書の時代なのですから。
ユダヤ民族が潰し潰された古代に、彼らの脳内はまだ生きていて、二度とディアスポラ(民族離散)はしないと誓っています。
だから彼らは、ガザ市もカンユニスも聖書にあったエリコのように人もろとも焼き尽くさねばならないくらいに思っています。
しかし、時代は違う、現代は現代なのです。
今ここに現実に存在する「国家としてのイスラエル」は、宗教右派が考える聖書の上の「イスラエル」ではなく、現実に多様な文化と人種をはらんだ国家です。
長谷川良氏はこう書いています。
「このように説明すると、「イスラエル」と「ユダヤ民族」はほぼ同じ意味と受け取れるが、1948年に建国したイスラエルの人口構成をみると、3つの異なった出自がある。2022年5月のイスラエル中央統計局によると、①ヤコブの血統引く生粋のユダヤ人(約74%)、②アラブ系でイスラエル国籍を有する国民(約21%)、③キリスト教徒など少数派(5%)で、全人口は約950万人だ。だから、たとえ、ユダヤ人が全体の4分の3を占めているといっても、イスラエル=ユダヤ民族というわけにはいかないわけだ」
ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)
ですからよく誤解されるようにイスラエルは一枚岩でもなければ、ユダヤ教を国是とする宗教国家ではありません。
そこがイランとは根本的に違うのです。
イスラエルは、多様なアラブ民族まで含んで国家として成立しています。
イスラエル国民のアラブ系国民は「アラブ統一リスト」という政党さえ持ち、宗教右派である「宗教シオニスト」とほぼ勢力を拮抗しています。
彼らを法の下に平等に扱うためにも、イスラエルには民主主義が必要だったのです。
ですから、ガザでの戦闘によるこれ以上のアラブ系民間人被害者は、イスラエル国内にアラブ系国民との間に断絶を生むのでしょう。
それでもかまわない、この際とことんイスラエルの敵を踏みつぶし、神が与えたもたシオンの土地を守り抜くのだ、というのがネタニヤフら宗教右派です。
彼らの狂いっぷりはイランの革命防衛隊と好一対です。
革命防衛隊は、油井が二度と使えなくなろうと、軍事力の大部分を喪失しようと、国民が苦しんでいようと気にしません。
最後になれば、かつてイラン・イラク戦争でやったように少年兵にホメイニの肖像写真を持たせて突っ込ませりゃいい、どうだ米国撃てないだろう、くらいに考えています。
ひとことで言えば、彼らは宗教カルトです。彼らに妥協はない。
こんな彼らに時間を与えたのはトランプです。
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>結果論ですが空軍力だけでイランを屈伏するはずがなかったのかもしれません。
結果論ではなく、これはやる前からある程度わかっていたことでは?
過去の戦争を見ても空爆だけで人口数千万の大国を屈服させた例は少ないのではないでしょうか。
そもそも、イランの対空、対地ミサイルが壊滅していて革命防衛隊も崩壊、イランは降伏寸前という予測が間違っているのでは?
管理人さんが過去のエントリではイラク戦争でアメリカは空爆ではイラクのミサイル発射基地をあまり撃破できなかったと書いていますよね。
それと同じような状況だとしてもおかしくないと思います。
投稿: 中華三振 | 2026年6月10日 (水) 12時39分
「事実や現実」と「信仰や物語」を区別して己の内側に共存させられる人と、そうでない人がある。
もしもこの世界に「そうでない人」が多数ならば、とっくに遠慮無く弱肉強食の無常無情な世界であったろうと思う。
誰でも信じるものはあって当然で、「私は何も誰も信じない」と言う人ですら「そうである自分」は信じていることになるが、「私が信じることがこの世の全てだから他人も周りの世界も私を認め私に従うのが当然」になれば俄然カルト味がでてくる。イランの宗教指導者やIRGCの連中もネタニヤフもプーチンも習近平もその域に入っている。そして、自らを救世主キリストに準えた宗教画タッチの絵をAIに造らせて何枚もSNSに投稿して支持者の宗教右派にさえ下品を通り越して冒涜と捉えられたトランプも、そこに足先が入っている様相。
イランで強権を掌握している者たちは昔から皆ああいうものとしても、
ドナルド・トランプ 1946年生まれ
ベンヤミン・ネタニヤフ 1949年生まれ
ウラジーミル・プーチン 1952年生まれ
ついでに習近平 1953年生まれ
ヒトが年齢を重ねる、とは、あのようになる可能性もあることなのか。
5月12日のCNN、意見の異なる5名による討論番組で4月に続いて再び、イランの核開発行動はイランという国ごと滅ぼさない限り止められないだろう、という話が出た。
イランを滅ぼすしかないのでは?それはできるのか?という話がなぜ繰り返されるのかといえば、討論参加者や市井の人々が、「我々が望む安全を手に入れるなら、もはやそれしかないのかも…」とか、「そうでもしない限り、暮らしや経済が戦争前の状態に戻ることはないのでは…」と感じ、思い、考えているからではないのだろうか。
でもそんなことは、「多勢を救うための(相対的少数の)犠牲は仕方ない」と認めることになり、悪の原因たるひとりか数名を排除する話とは違い過ぎて、肯定する者はいない。
「事実や現実」と「信仰や物語」を区別して地域を・国を・世界を構成する考えを持てる者は、あのような人物や国をどう扱ったらいいのだろうか。
投稿: 宜野湾より | 2026年6月10日 (水) 14時32分