どちらにも止め男がいないイラン戦争
ヤツ82さん、コメントありがとうございます。
おっしゃることは充分理解できるとした上で言いますが゛今回はあまりにもトランプの性格のままの展開なのです。
ご指摘のとおり戦争前の米国の要求は一般的で、決してトチ狂ったものではありませんでした。
「米国側の要求は、核兵器取得の阻止、ミサイル・ドローン能力の低下、米軍や商船への攻撃停止、ホルムズ海峡の安全確保など、かなり明瞭だったように見えます。現在起きているのは、目標がなかったのではなく、イランが要求に従わず、軍事的圧力を加えてもなお屈服していない、という状況だと思います」
では逆にこの自由主義陣営の国なら反対できないこれらの要求を、なぜこの段階で国際社会の承認を得なかったのでしょうか。
いくらでもやる方法はあったはずで、いままでの米国は中東に関わる戦争を起こす場合、必ずヨーロッパや日本の事前合意をもらってから多国籍軍、あるいは同志国連合といった形で攻撃を開始していました。
これをやらないと、米国の外交的孤立を招いてしまうからです。
だからめんどくさくてもやる、どうせ主力は米軍なんだからなどといわずにやる、これが外交の正攻法です。
しかしトランプはやりませんでした。
直接の理由は、おっしゃるように戦術の隠蔽です。
「イスラエルによる指導部への奇襲を起点とした作戦である以上、事前に広く国際社会へ根回しをすれば、イランに察知され、指導部の退避やミサイル・核関連設備の分散を招きます」
トランプはベネズエラで試して成功した斬首作戦をさらに大規模にしてイランでも試そうとしました。
一種の賭博です。カジノホテル経営者だった男はここまでも地金を出しています。
これはイスラエルから事前に秘密の通告を受けていたからで、イスラエル情報機関がハメネイの居所を押さえたという衝撃的なものでした。
ハメネイがテヘランの邸宅にいるという通報を受けて、トランプはハメイニ邸での会議に指導部全員を集めて会議をするきっかけを仕掛けました。これが米国の最後通牒です。
これを待っていたのがモサドとCIAでした。
「イスラエル側の関係者によると、極度に用心深いハメネイ師は日中の方が攻撃されにくいと感じ、警戒を緩めていたという。
夜間に予定されていた攻撃計画は日中へと修正された。
イスラエル時間午前6時ごろ、イスラエル軍機が敷地に空爆を仕掛けた。これが米国とイスラエルが協調した一連の攻撃の口火となった。情報筋によると、イスラエル軍機は高精度弾薬と長距離ミサイルを装備していた。指導者らがいた三つの建物は同時に攻撃され、数時間後、トランプ米大統領はハメネイ師の死亡を発表した」
(CNN3月2日)
米CIA、極度に用心深かったハメネイ師をどのように殺害したのか(1/2) - CNN.co.jp
そしてイスラエル軍に精密爆撃をやらせたのです。
イスラエルに自由に戦争をやらせるとガザの惨状のような暴走をされるという危惧もあったのでしょうが、米国がイスラエルに尻を蹴飛ばされるようにして開戦してしまったことになります。
つまり米国は戦争当初から主導権を失っていたのです。
斬首作戦の結果、イラン指導部は壊滅的被害を受けました。
まさに根こそぎというにふさわしい無慈悲な一撃で、戦争冒頭に相手指導部を壊滅させるというトランプの投機的作戦が図に当たったのです。
短期的にはイランは混乱しました。そりゃするでしょうとも。
いままで人類は多くのやくたいもない戦争をしてきましたが一定のルールがはまっていて、相手国指導部を根こそぎ暗殺するなどという野蛮なまねはしませんでした。
暗殺を手段で用いるなんて文明人がやることではないというのもありますが、実際にそんなことをすれば、和平交渉の相手がいなくなるでしょうからね。
それが今米国が行き詰まっている最大の理由です。
イランはハメネイの伜を最高指導者に据えましたが、これもすぐに空爆されて半死半生となり、決定権者がいなくなってしまったのです。
ひとりのイスラム坊主を頂点とする神権政治体制のトップが空位となり、それを支える最高幹部の多くが死亡した結果、権力が分散して革命防衛隊の中堅幹部クラスのガリバフ、バヒディ司令官、軍中央司令部のアブドラヒ司令官、革命防衛隊出身のゾルガドル最高安全保障委員会事務局長あたりに実権が移ったのです。
彼らには解決能力はありません。外交感覚も限りなくゼロ。経済なんて知ったことかという連中です。
残存指導部は、ただひたすらいままでの路線にしがみつき、神権政治体制を護持し、逆らう民主派を皆殺しにするていどしか能がないのです。
そしてそれを支える革命防衛隊は多くを失い、指揮命令系統もズタズタながら、マニュアルどおりにミサイルのボタンを押し続けているわけです。
本来なら政府側である大統領のマスード・ペゼシュキアンやアッバース・アラーグチ外相あたりがイニシャチブを取り戻して和平に持ち込むべきでしょうが、自分の武力を持たない文官にはむりです。
彼らはこのまま推移すれば、取り返しがつかない油井の被害を受けることも原油輸出という唯一の外貨獲得手段も喪失することがわかっていますし、インフラがメチャクチャになっているのも理解しているでしょうが、いかんせん力がない。
つまりイランには最高意志決定権者も止め男もいないのです。
つくづく天皇陛下という名君がいた日本は幸運でした。
そして米国にはきめのこまかい外交など知ったことか、同盟国なんぞいらない、オレ様だけ目立てばいいんだという希代のスタンドプレイヤーであるトランプしかいません。
こちらも第1期政権のときのようなジョン・ボルトンやマイク・ポンペオのような止め男が不在なのです。
これが今のイラン戦争の不幸な状況です。
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トランプ「どうすりゃいいんだ……」
実際、落とし所をどうするかトランプは悩んでいるでしょう。
拙い頭で愚考すると大体次の案しかないのではと思いました。
①覚悟を決めて陸軍投入、現政府解体までなのか弱体化程度かは不明のアフガンパターン。
②手を引く。撤退の撤収パターン。
③米軍は後ろに回りつつ、イランの国土を削り取りながら最終的には解体して周辺国に領土を分割してそれぞれ占領統治。トルーマン覚書(SWNCC 70/5)パターン。
④のらりくらりと交渉と空爆に専念。勿論補給の道は断ちつつそのうち目標が達成するまで。消極的戦争継続パターン。
自分でまとめておきながらトランプなら④しかないかなぁと思いました。
どうすんだろ、天皇陛下がおられない帝国日本とか考えたくもない。
投稿: Q州 | 2026年7月25日 (土) 07時31分
やっぱり「安倍さんがいたらなあ」と痛感ますよ。一概に賛成も反対もせずに、「落とし所」を指南していたはずです。
投稿: 菅原 | 2026年7月25日 (土) 11時41分
取り上げていただき、ありがとうございます。
前回コメントで私が共有したかったのは、トランプ氏の対応が「よくやっている/及第点に達していない」と0か1かで判定できる種類のものではない、という点だったのだと思います。
軍事的には有効だった判断が、外交面では大きな損失を生むこともある。逆に、正攻法を重ねることで失われる機会もある。今回のように情勢がめまぐるしく変化する局面では、最初の計画どおりに進めることより、何を残し、何を捨て、設計をどう更新しているかを見る必要があるのではないでしょうか。
今回の記事は、私のコメントをかなり踏まえて議論を組み直してくださったものと、勝手ながら受け取っています。重ねてありがとうございました。
投稿: ヤツ82 | 2026年7月25日 (土) 21時27分