米中首脳会談はまるでミステリーツアー
今回の米中首脳会談はまるでできそこないのミステリーツアーで、どこに向かうのかわからないまま終わってしまいました。
ただし、中国のほうはある意味フツーに言いたいことを言ったという印象です。
問題はトランプですよね。感激式典で中国をターゲットにしているB-!を飛ばして威嚇したり、晩餐会で台湾の歌やレミゼラブルの歌を流してみせるという小細工はしていますが、要するにアンタなにしたいの、ということがまったく見えません。
ちなみにレ・ミゼラブルのOneDayMoreには歌詞に「民衆の歌を聴こえるか?」とい中共が大嫌いなフレーズがあるので中国では検閲対象の楽曲だそうです。
まるで香港の民主化運動を歌っているみたいだしね。
それはさておき朝日はこういう報道をしています。
「歓迎式典で、トランプ氏は米中両国が「共通の利益を追求することが両国民を結びつけ、第2次大戦で同盟国になった」と発言した。異例の言及だ。中国が戦勝国だったことを根拠に「正義」の側にあるとする習政権の論法を受け入れた面があり、懸念を抱かざるを得ない」
(朝日2026年9月26日)
(社説)米中首脳会談 責任問われる大国関係:朝日新聞
半分あたっているというやつですね。
中国がリキ入れたのは「戦勝国」というナラティブを米国に認めさせることだったのは確かで、トランプが危うく呑みかかったのもたぶんほんとうでしょうね。
昨日もふれたシェンノートうんぬんというヨタ話などトランプの知能を疑いたくなるような発言です。
一方でトランプは公文書館に案内してサンフランシスコ講和条約原本を見せようとしています。
なんとトランプが言ったのか明らかかではありませんが、サンフランシスコ条約を否定することを言うはずがありません。
サンフランシスコ条約こそ戦後秩序の根幹で、ここで戦勝国にもぐりこめれば戦後世界秩序の勝者となれたのです。
だから習は、かねてから中国こそが第二次大戦の戦勝国側で、日本の軍国主義と世界ファシズムと戦ったんだ、オレは勝者だぞと叫んでいました。
もちろん嘘八百で、中共はまったく戦わず、長期間日本と戦ってヘロヘロになっていた国府軍の背中を襲うようにして勝ってしまったというのがほんとのところです。
しかしもちろんそんなことは死んでも認めませんから「オレ勝ち組」のコンセプトでやったのが、先日もふれた2015年の「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利記念日でした。
自由主義陣営は困ったちゃんのパククネしか行かなかったのですが、韓国は日本だったはずですが、かの国では上海あたりに亡命政権があることになっているので連合国の一員だそうです。
ファンタジーがお好きな中韓のみなさんだこと。
オバマも呼ばれていたようですが拒否して面目を保ちました。(トラだったらあぶねぇな)
こと世界認識においては民主党のほうがまともなんです。
だから習の「オレ勝ち組」という演出を嫌悪していました。
トランプのように習やプーチンのような独裁者と体質が通い合い、ディールとやらで取引しようということはなかったのです。
ところで在日中国大使館が、サンフランシスコ条約は「不法かつ無効な文書」だなんて言い始めたのを覚えていますか。
「在日本中国大使館は2日、高市早苗首相が党首討論で引用したサンフランシスコ講和条約について「不法かつ無効な文書」だとX(旧ツイッター)への投稿で主張した。一部の西側諸国が「中ソなど第2次世界大戦の主要戦勝国」を排除して結んだと批判した。
高市氏は11月26日、立憲民主党の野田佳彦代表との党首討論で、台湾の法的地位を日本が「認定する立場にない」とする政府見解を維持した。日本が1952年発効のサンフランシスコ講和条約で台湾に関するすべての権利を放棄した点に触れた。
日本は台湾の帰属先を明示していないサンフランシスコ講和条約を重視してきた。72年の日中共同声明で「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」と表明した中国の立場を必ずしも認めず「十分理解し、尊重する」としている」
(日経12月2日)
在日本中国大使館、サンフランシスコ講和条約「不法かつ無効」と主張 - 日本経済新聞
一瞬、へ、ナニを言っているんだと思っちゃいますが、中国の言い分は高市氏が「台湾の地位は定まっていない。わが国はそれを認定する立場にない」といういわゆる「台湾の地位未定論」に怒ってのもののようです。
中国は要約すればこんなことを言っています。
- 主要戦勝国の排除: サンフランシスコ平和条約は、中国やソ連といった主要な戦勝国を排除して日本と単独で締結されたものであり、1942年の連合国共同宣言で禁じられた「敵国との単独講和」に違反している。また、国連憲章や国際法の基本原則にも反している。
- カイロ宣言・ポツダム宣言の有効性: カイロ宣言(1943年)とポツダム宣言(1945年)こそが国際法上有効な文書であり、これらは台湾の中国返還を定めている。そのため、サンフランシスコ条約の台湾に関する内容は無効である。
- 歴史的・法的事実: 台湾の中国への復帰は第二次世界大戦の勝利の成果であり、カイロ宣言、ポツダム宣言、日本の降伏文書といった国際法上の効力を持つ一連の文書は、台湾に対する中国の主権を明確に確認している。
ちょっと待って!中国さん、サンフランシスコ条約を否定するとドエライことになりまっせ。分かって言っているのかな。
まず、もしサンフランシスコ条約が無効だとすると、戦後世界の枠組み総体を否定することになります。
日本が台湾の権利を放棄したことも否定されますから、自動的にその前に締結した1895年の下関条約のほうが有効になってしまいます。
日清戦争の結果結ばれた下関条約では、清国が台湾を日本に永久に割譲すると定めていますから、中国の論理に従えば台湾は今も日本領ということになってしまいます。(爆笑)
次に、どうやら中国はサンフランシスコ条約の前のカイロ宣言やポツダム宣言が有効だと言っているようですが、そもそも、何度も書いてきていますが、この時期には「中華人民共和国」なんて国は世界に存在しませんでした。
中国共産党は中華民国内の武装勢力でしかなく、これらの宣言の場に登場した「中国」とは国府で、代表は蒋介石でした。
カイロ宣言やポツダム宣言は連合国の共同声明であり、これを確定したのがサンフランシスコ条約です。
とうぜんのこととして条約が声明に優越します。
したがって、「宣言は有効だが条約は無効」という中国の主張は、条約と声明の重さを逆転させた珍論です。
そのうえこれは多くの国が署名した国際条約ですから、中国がご不満でもいまさらかってに解消できません。
United Nations=国連という訳語は日本の国連信仰に根ざしていますが、もちろん「United Nations」とは、第二次世界大戦の戦勝国連合(連合国)を指すものです。
だから敗戦国規定なんてものがあるわけですが、その連合国に「中華人民共和国」は含まれていません。
理由は前述のとおりですが、その後の1971年にアルバニア決議で台湾は国連を脱退しました。
しかし中華民国(台湾)の政治的地位を明示したものではなく、単に「中華人民共和国の代表権を承認した」に過ぎません。
このため、同決議の解釈については、英米が中国の恣意的な解釈に反対する法律や議会決議を行っています。
そもそも、サンフランシスコ条約は、大日本帝国の海外領土の放棄を定めたものであり、これを「無効」としてしまったら、台湾・満州・朝鮮半島・南樺太・千島列島・南太平洋諸島に対する日本の領有が継続されることになってしまいます。
ついでに、戦後日本もサンフランシスコ条約以降も米国による占領下が継続ということになります。
第一、わが国は独立してない被占領国のままじゃないですか。(笑)
中国は、このサンフランシスコ条約が作った戦後秩序の枠組みの中の特権をいちばん享受してきました。
その最たるものが、国連の常任理事国の地位です。
拒否権を持つ常任理事国として、中国はいかなる中国批判にも耳を傾けませんでした。
南シナ海の軍事支配など侵略そのものですが、一般の国なら国連制裁を食うべきにもかかわらず、なんの制裁も加えられませんでした。
台湾だけに注目しても、サンフランシスコ条約の後に締結した日華平和条約で台湾の権利を放棄したことをうたっていますが、これも「無効」となって、前述したように日本の領有を定めた下関条約に戻ってしまいます。
とまれ、騒げば騒ぐほど中国に共感する国は現れず、「台湾問題は中国の国内問題」という自らの立場を自分で覆してしまったわけです。
しかし今回の訪米で、習は意外なところから「味方」を得たのかもしれません。
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