原子力事故

日本学術会議 「9.1報告」の画期的意義

063

日本における最も権威ある学術団体である日本学術会議が、福島第1原発事故の子供に対する影響について「9.1報告」を公表しました。 

今なお、反原発運動家、自主避難者、そして朝日、毎日、東京などのメディアを中心として、「フクシマはチェルノブイリだった」とか「甲状腺ガンが激増した」という風聞が後を断ちません。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-b4b4.html 

「特定の集団の不安が孤立化、先鋭化してきている」(「9.1報告」)傾向は今なお続いています。

どうしたことかこの人たちは、特定秘密法、安保法制、共謀罪、モリカケ、そして今の北朝鮮との対話派と完全にダブってしまっています。

それはさておき、このような悪質なプロパガンダは、復興を目指す福島県民に対して深刻な影響を与えました。

「9・1報告」はこう記述しています。

「ソーシャルメディアを介して、チェルノブイリ原発事故の再来とか、チェルノブイリや福島で観察されたものとして、動植物の奇形に関するさまざまな流言飛語レベルの情報が発信・拡散され、「次世代への影響」に関する不安を増幅する悪影響をもたらした。実際に、県民健康調査や長崎大学が川内村で実施したアンケート調査では、回答者の約半分が「次世代への影響の可能性が高い」と答えている。
また平成25(2013)年1月に福島県相馬市の医師が市内の全中学校で放射線の講義を行い、その後アンケート調査を行った結果、女子生徒の約4割が「結婚の際、不利益な扱いを受ける」と回答した。」

相馬市の女子生徒たちがアンケートの4割に、「将来結婚で差別される」と答えたことに愕然とさせられます。

反原発運動家たちは、福島の住民に甲状腺ガンのような次世代への影響がでると主張しました。

それが嵩じると、某女性作家のように「フクシマには子供を行かせない」と叫んだり、某女性歌人のように沖縄まで自主避難してしまったり、果ては某漫画原作者のように「フクシマから逃げることが勇気だ」などと声高に主張するあり様です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-8fd9.html

Photo_2

おそらくそのような言説は、あなたもどこかで聞いたことがあるはずです。

実はこのような流説に対して、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)やIAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)などの関連国際機関や、福島県立医科大学などが緻密な報告書を出して全面否定しています。

科学界や医学界では、発見された甲状腺がんが、原発事故に伴う放射線被曝によるものではないということは既に結論づけられています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-0ca3.html 

しかし、科学的客観報告の積み上げが整った6年後の現在も、原発事故当時の煽り報道は訂正記事を載せられないまま、あたかも「真実」のように流布されています。 

このような状況に対して、最終的決着をつける意味でも、今回の日本学術会議の「9.1報告」は画期的な意義があります。

報告書は長文なために、一部を抜粋して掲載いたしました。ぜひ原文にあたられることをお勧めします。 

■福島民友新聞【9月7日付社説】放射線と復興/不安にこたえる情報発信を 2017年09月07日 08時32分
http://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20170907-202074.php
Photo
                    ~~~~~~~~~~

 

日本学術会議・臨床医学委員会放射線防護・リスクマネジメント分科会 

            子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題(抜粋)
               -現在の科学的知見を福島で生かすためにー

                                            2017年9月1日
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h170901.pdf 

P15 「3) 福島原発事故による子どもの健康影響に関する社会の認識
UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は、福島原発事故による公衆の被ばく線量とリスクの評価を行い、甲状腺がんについては、最も高い被ばくを受けたと推定される子どもの集団については理論上リスクが増加する可能性があるが、それ以外の影響(先天性異常や遺伝性影響、小児甲状腺がん以外のがん)に関しては、有意な増加は見られないだろうと予測している。」
 

「① 次世代への影響に関する社会の受け止め方
胎児影響は、福島原発事故による健康影響の有無がデータにより実証されている唯一の例である。福島原発事故に起因し得ると考えられる胚や胎児の吸収線量は、胎児影響の発生のしきい値よりはるかに低いことから、事故当初から日本産科婦人科学会等が「胎児への影響は心配ない」と言うメッセージを発信した。
これはチェルノブイリ事故直後、ギリシャなど欧州の国々で相当数の中絶が行われたことによる。福島原発事故から一年後には、福島県の県民健康調査の結果が取りまとめられ、
福島県の妊婦の流産や中絶は福島第1原発事故の前後で増減していないことが確認された。
そして死産、早産、低出生時体重及び先天性異常の発生率に事故の影響が見られないことが証明された。
専門家間では組織反応(確定的影響)である「胎児影響」と生殖細胞の確率的影響である「遺伝性影響 (経世代影響)」は区別して考えられており、「胎児影響」に関しては、上記のような実証的結果を得て、科学的には決着がついたと認識されている。」
 

P16 「福島原発事故後、主にはソーシャルメディアを介して、チェルノブイリ原発事故の再来とか、チェルノブイリや福島で観察されたものとして、動植物の奇形に関するさまざまな流言飛語レベルの情報が発信・拡散され、「次世代への影響」に関する不安を増幅する悪影響をもたらした。実際に、県民健康調査や長崎大学が川内村で実施したアンケート調査では、回答者の約半分が「次世代への影響の可能性が高い」と答えている
また平成25(2013)年1月に福島県相馬市の医師が市内の全中学校で放射線の講義を行い、その後アンケート調査を行った結果、女子生徒の約4割が「結婚の際、不利益な扱いを受ける」と回答した。
こうした回答の割合は時間経過や継続的な授業の実施により下がる傾向が見られている。もし全国でこうした誤認が浸透しているのであれば、誤った先入観や偏見を正す必要があり、次世代への影響の調査や、正しい情報発信を継続して行う必要性がある
と考えられる。」 

P16 (福島で甲状腺ガンが増加したという風聞に対して)
我が国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い小児甲状腺がんが発見されている]。
これは一方が健常児の全数調査(悉皆調査)、他方は病気の徴候が出現して診断を受けたがん登録という異なる方法でのそれぞれ異なる結果であり、本来比較されるべき数字ではない。」
 

P17 「平成28(2016)年12月末日までに185人が甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」と判定され、このうち146人が手術を受けたという数値が発表されている。
こうした数値の解釈をめぐりさまざまな意見が報道され、そのたびに社会の不安を増幅した。福島県県民健康調査検討委員会は、中間とりまとめにおいて、これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて小さいこと、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時5歳以下からの発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がないことから、放射線の影響とは考えにくいと評価した。」
 

P18「③ 放射性セシウムと発がんに関する社会の受け止め方
ア 外部被ばく由来
「事故由来の放射性セシウムによる被ばく量で言うと、内部被ばくに比べ外部被ばくの方がはるかに大きい。」
「子どもの被ばくを心配し、転居を選択した自主避難者の中には、経済的不安や家族内の問題(家庭内別居や意見の不一致)、転居先のコミュニティへの不適応と言った問題(例:避難先でのいじめ)を抱えている場合もある。こうしたデメリット因子は、健康影響への懸念の度合いと同様、個人、地域、事故後の経過時間による差が大きく、一概に子どもの外部被ばくとのトレードオフを議論することは難しい。」
 

P19 「イ 内部被ばく由来
「実際に流通する食品を収集して行うマーケットバスケット調査や一般家庭で調理された食事を収集して行う陰膳調査の結果を見る限り、食品中の放射性セシウムから人が受ける放射線量は、現行基準値の設定根拠である1mSvの1%以下であり、極めて低いことが明らかとなっている。
こうしたことから、現在行われている学校給食の検査には、被ばく低減の効果はほとんどないと言える。」
 

P19 「④ 福島原発事故による子どもの健康リスクの相対値
ア チェルノブイリ事故との比較
「ベラルーシ、ウクライナの避難者のうち14歳以下に限って言うと、99%以上が50mSv以上の被ばくを受けた。」
 

「福島原発事故では、甲状腺等価線量が高くなる可能性がある地域で小児甲状腺簡易測定調査が行われ、その結果、50mSv以上の被ばくと推定されたのは、検査した子どもの0.2%であった。」 

P19~20 「イ 日常生活における被ばく線量やリスクとの比較
「福島県の県民健康調査によると、事故から4か月の間に受けた外部被ばく線量の中央値は0.6mSv(県全体)、ホールボディカウンターによる内部被ばく検査では被験者の99.9%が預託実効線量1mSv未満であった。これらは、日本人が1年間に自然界から受ける外部被ばく線量の平均値(0.63mSv)や経口摂取による内部被ばく線量(0.99mSv)に比較的近い。」
 

「また国立がん研究センターによると、高塩分食品や野菜不足と言った食習慣や非喫煙女性の受動喫煙は、100mSvの被ばくと同程度の発がんリスクを持つとある。従って、5年間で100mSvの追加被ばくによって算定される生涯がん死亡リスクの0.5%の増加を、疫学研究により検証するのは難しい。」 

P23「3 提言に向けた課題の整理
「一方、福島原発事故による追加被ばくに関しては、科学的事実が蓄積され、実際の被ばく線量が明らかにされつつあるものの、子どもへの健康影響に関する不安がなかなか解消されない。
そこで、被ばく低減効果の大小にかかわらず、社会から強く要望があった場合は、防護方策を強化する方向で対応してきた。
その結果、社会全体に関して言えば、健康不安は鎮静化の方向に向かっているが、その分、自主避難者、大規模な甲状腺超音波検査で甲状腺がんが見つかった子どもや家族など、特定の集団の不安が孤立化、先鋭化してきている
また放射線防護の原則に従うと、容認されうると判断される程度の検出限度以下の放射線リスクが、必ずしも被災者にとって理解・容認されてはいない現状も明らかになってきた。」
 

以下、諸提言については報告書をご覧下さい。

 

| | コメント (7)

福島事故後1年目 大震災に耐えた東日本の社会は崩壊しかかっていた

030

①緊急時・収束過程基準
②住民参加
③最適化

簡単に説明しましょう。

まず緊急時・収束過程基準(※ICRPの表現ではありません)ですが、これは空間線量や食品基準値に適用されますが、このとき政府の説明がいいかげんだとかえって混乱を深めてしまいます。

事故直後に出た、コメの暫定基準値500ベクレルといったものがそれにあたります。

これはわが国だけが高く設定しているわけではなく、どの国もICRPの指導に沿って実施している緊急時基準値です。 

下図はチェルノブイリでもっとも深刻な被害が出たベラルーシの食品基準ですが、13年かけて段階的に基準を厳しくしているのがわかります。

ベラルーシにおける食品規制値の推移
単位ベクレル/㎏
 

      86年     88年   92年   96年  99年 

・水    370     18.5   18.5  18.5   10
・野菜  3700    740    185   100     40
・果物          同上                  70
・牛肉  3700    2960   600   600    500 
・パン  -        370   370   100     60
・豚肉・鶏肉 7400  1850  185    185     40
・きのこ(生) -      -   370    370    370
・きのこ(乾燥) -  11100 3700   3700   2500
・牛乳   370     370   111    111    100
幼児食品  -      1850                37

日本はベラルーシが13年かけてやった基準値引き下げを、たった1年間でしてしまったことになります。

これで東日本の農業・水産業が打撃を受けなかったら、そのほうが不思議です。

東日本の農水産業は、大震災でたたきのめされ、その後に風評被害で再び殴られたことになります。まさに往復ビンタです。

しかもこれだけ消費者の空気に過剰反応した民主党政権は、国民に満足な説明をせずにお上からのお達しといった出し方をしたために:かえって混乱に拍車をかけてしまいました。

馬鹿としかいいようがありません。

「輸入食品の基準値のほうより、なぜ国産食品のほうが高いのだ」という疑問が生じたのです。

こんなものを食べて大丈夫なのか、子供は感受性が高いので障害をおこしたりはしないか、という声が多くの主婦層から上がってしまいました。

量販店には、「当店は東日本の食品は取り扱っていません」「すべての食品は自社計測しております」、などというポスターが張られることになります。

そしてさらに政府が馬鹿丸出しにも、「レントゲン1回分より低い」などという比喩を使ったために、国民はそういう言われ方したら、「私たちは毎日レントゲンを浴びて暮らしているのか」と考えます。

このようなやってはいけないリスク・コミュニケーションをさんざんして、民主党政権はパニックを拡大しつづけてしまったのです。

反原発運動家、共産党、そして朝日、毎日、東京などのメディアは、ここぞとばかりに低線量内部被曝脅威論を煽りしました。彼らは「東日本にはもう住めない」という合唱をします。

いまでこそ下の写真に登場する「内部被曝の国際的権威」とやらの化けの皮ははがれていますが、こういう者たちが「40万人ガン説」という疑似科学を流布したのです。

Photo_2クリストファー・バズビーを「内部被曝の国際的権威」と持ち上げた東京新聞2011年7月20日

2番目にICPOがいう「住民参加」ですが、政府は原発事故直後に年間被曝基準を、1mSvから20mSvに引き上げました。

これまた当然のこととして、突如20倍になったことに多くの住民は驚き、恐怖しました。

これも科学的には正しい措置なのですが、ここでも充分な政府の説明ケアが欠落していました。

こうなるともう誰も政府を信じなくなります。国民は、政府の公式発表より週刊誌やネットの流言蜚語を信用するようになります。

その時期から、数万人規模の避難区域外からの県外避難者や、自主避難者が大量に発生し始めます。

また2012年2月には、政府は福島県の事故周辺20キロメートルを警戒区域とし、福島県飯館村などを計画的避難区域に設定しました。

ここで、政府の指示による大量の認定避難者が出ます。

これについてのリスクコミュニケーションも、またおざなりでした。

政府は、区域の設定時点において、放射能と健康に関して正しい情報を出して、避難することが妥当かどうか、住民自身にいったんボールを戻して、話あって決定させるべきでした。

そうとうの地域で屋内にいればまったく問題のない空間線量だったはずです。じっくり、政府や行政が説明し、ひとりひとりの意志を確認できるていどの時間的余裕はあったはずです。

お仕着せの半強制避難では、かえって問題が隠されてしまって、解決が遠のいてしまいます。

このような場合、政府のとるべき態度はひとつしかありませんでした。

パニック心理に膝を屈することではなく、政府のいうことに耳を貸してくれるようにすることでした。

すなわち、正しく情報を公開し、正しく説明し、充分な住民の議論をしてもらうことてす。

政府は、「皆さん、ひたすら規制値を下げればいいというのは間違いですよ。そうすることによって別の社会的弊害が起きるのです」と国民に説明すべきでした。

これがICRPがいう「最適化」です。「勧告111」はこう述べています。

「最適化とは、被曝のもたらす健康被害と、それをなくそうとする防護対策の不利益のバランスを取ることだ。例えば、避難によって地域社会の崩壊、また経済活動の停滞などが起こる可能性がある。」

こうして、パニック心理におもねった政府の安全配慮は、かえって復興の妨げになってしまったのです。

このように大震災に耐えた日本社会の秩序は、原発事故収拾過程のたび重なる政府の失敗によって、まさに崩壊の危機に瀕していたのです。

                    ~~~~~~~

 

2012年3月 3日の記事再録

HN「首都圏のママ」さん。

あなたはほとんど私の書いたことを読んでおられませんね。だからちっとも噛み合わない。ひとり相撲をなさっている。
 はっきり申し上げて不毛です。 

こんな危険だという{学説」がある、というのをどんどん張り付けてこられても、無意味です。私も今までそれなりに読んできましたから。 

私は現役の農業者です。実践家です。生活人です。運動家でもなければ、理論を道具にする人間もありません。 

ただ、論理の筋道はつけておきたいと思っています。それも結論があって決めつけるのではなく、新たな証拠やデータが出たら、その都度修正できるような柔軟な眼を持っていきたいと考えてきました。 

低線量が内臓諸器官に影響を与えるという学説はかなり前から知っています。 

セシウムの約6割は筋肉組織に残留します。それも生物学的半減期の間です。そしてセシウムはヨウ素のように甲状腺で濃縮することはありません。 

なぜならヨウ素は甲状腺ホルモンの一種ですから、甲状腺内で300倍に濃縮されますが、セシウムは全身均等被曝といって、全身の筋肉に拡がって分布します。 

一カ所で濃縮されるヨウ素と違って特定の器官に影響を与えることはないといわれています。これが現時点での国際的な放射線防護学の定説です。 

いやそうではない、という異説もあります。私にとっては「そのような説がある」という認識です。 致命的なのは疫学的証拠に欠けることです。

どちらが正しいのかは数年後にわかるでしょう。もしクリストファー・バズビー氏のいうように福島で40万人がガンになれば、この異説の正さが裏付けられたことになるでしょう。 

それまでは、各々の信条に照らして生きるしか方法はありません 

さて、私の基本的な放射能問題に対する考え方はひとつです。 

農業現場の、いやもっと正確に言えば東日本の被曝した農地の生産者として、自分の地域の農産物の安全をどのように回復させていくのか、です。 

都市住民はいとも簡単に「5bq以下」といいます。この数値が、1㎏中の膨大な数の分子の中でわずか5個の放射性物質が出す放射線量というミニマムな状態だと知って言っているのでしょうか。 

現実にゲルマニウム測定器で測る所を見たことがあります。1分間ではなにも出てきません。15分でポツ~ンとひとつでてきました。30分で2個。そしてその時は40分で3個でした。

ゼロリスクを求める人たちは一度この低線量の測定風景を見学するといいでしょう。いかに5bqやゼロベクレルが非現実的なことか実感できるでしょう。 

ところで、「ゼロ」ということは存在しない、「無」だということです。「ない」という証明ほど困難なことはありません 

首都圏のママさんは「検出下限値の5bq」とあっさり言われましたが、失礼ですが言うだけならなんでも言える、と思いました。

おそらくは私たちの地域の農産物は、米とシイタケを除いて5bq以上出ることは考えられないでしょう。その程度まで私たちの自主計測でも下がってきています。

しかし、今後は分かりません。まだ私たちも全部の畑の隅から隅まで計ったわけではないし、森林の放射性物質が大水や大風でまた畑に降ることも可能性としては捨てきれないからです。

チェルノブイリ事故時のドイツ南部は福島南部、茨城北部とだいたい同じ土壌放射線量でしたが、数年後の5bqを超える数値の検出例もあるそうです。5年間は警戒を要します。

このような中で、いきなり5bqやゼロベクレルを求めるというのは非現実的にすぎます。

特に私たちより厳しい状況に生きる福島農業にとってそれは明確に不可能です。技術的にも財政的にも、あらゆる意味で不可能です

ですから、私はこのような過剰に先鋭な基準値は、逆にザルになると思っています

これが100bqという新基準値程度ならなんとかスクリーニングでふるいにかけることができます。

しかし、新鋭の2千万円するゲルマニウム測定器を使って長時間測定しなければならない30bq以下は、農業現場で測定することは不可能です。

もしそのようなことを求められても対応できる産地は全国でも皆無でしょう。

出荷ロットごとのサンプリングによるスクリーニングなら可能でしょうが、その場合数百袋で一検体という範囲となります。そしてその場合のそのスクリーニングはさきほど述べたように30bqが精一杯です。

100bq程度なら、高額ですがベルトコンベア式のスクリーニング器械もあります。しかし、30bq以下で出荷ラインを流すとなると、とてもではないがスクリーニングだけで数時間かかって出荷不能となるでしょう。

更に5bqでやるとなると流通の無作為抽出しかないでしょう。その場合、枯れ草の中の針を探すようなことになります。

私の規制値についての考えは、まずはたとえばコメならば、500bqを半分のバージョン2の250bqに下げて、その間に除染を進行させながら翌年に基準値バージョン3としてまた半分、そしてまた翌年にバージョン4としてその半分というような漸進的な段階を踏んだ基準値が望ましいと思っていました。そして5年間でバージョン5として30bqていどにまで落とします。

しかし、厚労省は農水省となんの協議もすることなく、消費者の不安を農業者に責任転嫁するためだけにこんな新基準値を作ってしまいました。

こんないいかげんなやり方をすれば必ず現実にシッペ返しされます。きっとザルとなると思います。

首都圏のママさん。低線量被曝についての議論は私はしたくありません。

低線量被曝にこだわり続けるのなら、それはあなたの生き方です。あなたはあなたの信条で生きて下さい。

残念ですが、現時点であなたの不安や要望と私の現実が交わることはありません。私は自分の現実と闘わねばなりませんから。

| | コメント (9)

被災地を差別し、復興を妨害した震災瓦礫受け入れ拒否闘争

006

沖縄・宮古市の石嶺議員が自衛隊員をレイプ魔扱いにしたことや、「ニュース女子」番組検証が行われたことなど沖縄関係でも書かねばならないことが溜まってきていますが、もう少し続けます。

さて福島事故から1年後。事故当初、反原発の側に立っていた私は、この震災瓦礫搬入阻止運動に衝撃を受けます。

かくも非科学的で、かくも醜悪な「闘争」など見たことがなかったからです。

今までの左翼運動にとりあえずあった理想主義的な香りは消え失せ、「震災など知ったことか。放射能ゴミを持ってくるな」という地域エゴが剥き出しになっていました。

反原発運動は、いかにして原発を減らしていくのかという冷静な議論とは無関係な、「脱原発」に名を借りる放射能マスヒステリーに様変わりしていたのです。

それは今にも続く、学童に対する「放射能いじめ」の原型です。

避難してきた級友を「放射能が来た」としていじめたように、当時のいい年をした大人たちが、「被災地瓦礫を持ち込むと放射能が移る」と言って騒いだのです。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201701/20170128_73035.html

私はそんな下品な言い方をしませんが、あの辛淑玉氏ふうに表現すれば、りっぱな「被爆地ヘイト」です。

その差別的空気に便乗したというか、煽って火の手を拡げたのが、共産党や「市民団体」とメディアでした。

彼らは被曝していようがいまいが、被災地すべての瓦礫は全部放射能汚染しているという、耳を疑うような非科学的なことを叫んでいたものです。

先日、HN「疑問」という自主避難した人らしい人物が、こんなコメントを入れてきました。

「九州の方たちだって、がれき処分や食の流通で悩まれてる方は多いです」

いまなおこの「放射能瓦礫」デマを信じている人がいるということのほうに、改めて驚きを感じます。

6年たってもこの調子ですから、福島事故1年目は凄まじい騒ぎでした。

彼らは一切の震災瓦礫はケガレているとして、身体を張って受け入れ拒否するという「反原発闘争」を全国で展開します。

Photo_9

時被災地では、膨大な震災瓦礫が被災自治体の処理能力を越えていました。

処理できない瓦礫は被災地に山を成して積み上がり、支援物資を運ぶ道路すら開通できない地域すら出ました。

これを被災しなかった自治体が引き受けていこうとする被災地支援に反対したのが、彼らの運動でした。

反対運動は、「核のゴミの全国処理をゆるすな」と叫びました。「核のゴミ」とは原発から出る低レベル廃棄物、あるいは使用済み燃料などのことであって、震災瓦礫のことではありません。

それを反対派は、「核のゴミ」という過激な表現で煽って、人々に恐怖心を植えつけていました。

一方、反対運動を恐れて尻込みする全国の自治体の中で、東京都の石原知事は率先して受け入れを表明し、それに励まされるようにして全国各地の自治体が続きます。

石原氏の美質である「男気」が出た場面です。今、豊洲で、「安心」を煽ってしまった小池氏ならできないまねです。

それはさておき、受け入れた自治体の処分場の入り口には、反対派が阻止線を張り、車両の下にまで飛び込むといった「市民」の狂態がそこここで繰り広げられました。

このあたりは、後の高江紛争のオリジナル・バージョンを見るようです。

まぁ、同じような人たちがやっているので、同じようなやり方になってくるということにすぎないのかもしれませんが。

この震災瓦礫反対運動には、後の彼らの運動の特徴が凝縮されています。

ひとことで言えば、デカイ声で大げさに叫べば人が動かせると思っている愚民主義です。

①「被災地瓦礫は全部放射能瓦礫」とするような、客観的事実を検証しない非科学的態度
②「核のゴミ」と震災瓦礫を混同してみせるような、誇大なプロパガンダ主義
③搬入トラックの下にもぐり込むような、暴力を厭わない実力主義

また受け入れた後も、延々と処理場周辺の住民に鼻血が出た、頭痛が絶えないという流言蜚語が流されました。

下のまんがは例の雁屋哲の「美味しんぼ・福島の真実」のひとこまですが、「市民団体」が流したデマをそのまま真実に祭り上げてしまっています。

Photo_4

そして彼らは反原発派は、厳かにこのように結論づけます。

Photo_4

このように瓦礫礫搬入反対運動の果たした役割は、瓦礫うんぬんではなく、被災地復興阻止だったのです。

当時の批判論陣を張っていた2012年3月13日と4月2日記事を再掲載します。

                     ~~~~~~

Photo_2

瓦礫処理がデッドロックになっています。その主要な原因は各地の「瓦礫搬入阻止闘争」のためです。

私は今までこれほど醜悪な「闘争」を見たことがありません。

「放射能を全国に拡げるな」というわかったようなわからないようなお題目で、まったく放射能汚染がなかった被災地の瓦礫まで拒否するにいたっては、いかなる名分も彼らにはありません。

国は瓦礫処理特別措置法を作って早急に移送するか、あるいは被災地に処分場を建設して現地雇用を創出しつつ処分するしかなくなりました。

これ以上反対運動が長引き、そのために沖縄まで搬送することをなどになるより、そのほうがいいかもしれません。

Photo_5
先日の会見でも首相は「復興の槌音」うんぬんと美辞麗句を吐くのみで、かんじんの瓦礫ひとつ満足に処分については具体的な発言を避けました。

復興庁も、予想どおりなんのビジョンもないクズ官庁がひとつできただけで、村井宮城県知事からは(松下政権塾・民主党支持)「査定庁」とまで酷評されています。

復興の最大の障害物と今やなってしまった「瓦礫搬入反対運動」は、国民が包囲してやめさせねばなりません。

私は瓦礫搬入反対運動は、科学性を欠いた「脱原発運動」に名を借りた地域エゴであると思います。一体なにに怯えているのでしょうか。 

宮古市の瓦礫が放射能を拡散させるというのはナンセンスな言いがかりです。彼らの反対運動の主張は、「放射能を全国に拡散させるな」というものです。http://akitacity.web.fc2.com/link.html 

Photo_6
被災地で今もっとも深刻なことは、瓦礫処分がいっかな進まないことだということを百も承知でこんな「反対運動」をやっているのでしょうか。 

瓦礫が津波で壊滅した町を新たに復興する上で最大の障害になっており、1年たった今なお未だ着工すらできていない地域が多いことの原因だと知ってやっているのでしょうか。

この人たちは被災地の復興を、真正面から妨害しているのです。 

同じ時期に国は、双葉町に恒久的な放射能中間処理施設を作ることを発表しました。双葉町町長は、「これが法の下の平等か」と嘆きました。 

被災地の瓦礫はいっさい搬出させない、しかし、放射能汚染された廃棄物はどんどん搬入する施設を作る・・・。

人間を馬鹿にしてはいませんか。被災地を踏みにじるのはいいかげんにしなさい。 

さて、宮古市は今強い反対運動をしている神奈川の茅ヶ崎市とほぼ同等の距離にあります。 その福島第1原発からの距離を見ます。

福島第一原発からの距離比較
宮古市    ・・・260km
横浜市    ・・・253km
川崎市    ・・・242km
相模原市   ・・・254km
横須賀市   ・・・267km
 

被曝線量は、外部被曝、つまり環境放射線量と、内部被曝が積算されたものです。この人たちは、自分の住む町の外部被曝線量を見たことがあるのでしょうか。 

2012年1月28日の空間放射線量率の最大値
宮古市     ・・・ 0.052マイクロシーベルト/時
茅ヶ崎市    ・・・ 0.047マイクロシーベルト/時

ほぼ一緒じゃないですか。宮古市が特に危険でもなんでもありません。
 

Photo_4
次に内部被曝を恐れて神奈川に搬入させないと叫んでいるわけですが、かくいう神奈川は生ゴミをの処理を他県に移動しようとしています。

やがては、今満タンになりつつある下水道の汚泥も自分の県の処理施設で処理しきれずに、他県に搬出しようとしています。 

下水道汚泥は都市部の放射性物質の最終蓄積場所です。東京や神奈川の処理施設で高い線量が検出されたことはご承知のとおりです。http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1105310059/

もしここで反対派の人たちがいかなる線量であろうとも搬入を許さないと主張するのならば、とうぜんのこととして神奈川の下水道汚泥の搬出も他県によって阻止されることでしょう。 

因果は巡る水車です。宮古の瓦礫をその放射線量もろくに計測しないうちから、まず拒否しようとする。

その理由に、「いかに低線量であろうとも危険だ」というゼロリスクの論理を持ってくれば、やがては自分に跳ね返って、自分の県の下水処理施設が稼働できなくなります。

Photo_8東京新聞2012年3月13日

ここに、相模川流域下水道右岸処理場の汚泥の焼却灰の放射線量のデータがあります。宮古市瓦礫とは比較にならない高線量です。 

神奈川下水道汚泥放射線量(相模川流域右岸処理場・2012年1月16日)                                      ・・・・・1024bq/kg 

千ベクレル超の下水道汚泥をやがて県外に搬出せねばならない地域の住民が、その10分の1以下の瓦礫の搬入を断固阻止するという笑えない構図です。 

問題は「いかなる低線量でも反対」と立ててしまう非現実性にあります。このような硬直したオール・オア・ナッシング論を言い出すから、議論が膠着してしまうのです。 

今回、神奈川県が受け入れを表明したのは100ベクレル以下の、分類上は通常ゴミです。100ベクレルというのは、瓦礫を食べる人はいないでしょうが、食品の規制値(4月発効)でもあります。 

食品規制値以下なのに搬入拒否するならば、一切の食品は他県から持ち込めないことになります。この人たちは、神奈川県を自給自足にして、瓦礫はおろか食料も持ち込ませないという運動でもするつもりなのでしょうか(半分冗談です)。


ところで、既に東京都は被災地からの瓦礫の搬入を始めており、現実に被災地瓦礫の放射線量のデータも出始めています。 

東京都の被災地瓦礫の放射線量測定値
❶都内のゴミと完全に分別された状態で、確実に被災地瓦礫だけの状態で処理された廃棄物の放射線量                    ・・・・検出限界以下(40bq以下)
❷一つの処理ラインで、時間帯を分けて都内のゴミと被災地瓦礫を流した場合(少量の都内のゴミが混ざった可能性がある)         ・・・・・60bq~90bq/㎏
❸都内のゴミと被災地瓦礫を同時に処理した場合・・・・111bq
 

これをみればわかるように、被災地瓦礫単独での処理の放射線量は、都内のゴミ処理単独の放射線量の2分の1以下です。 

被災地瓦礫に反対する人たちは頭を冷やしたほうがいい。どうせ反対するのならば、自分の地域の下水処理場の汚泥の放射線量を計ってからにしていただきたい。

そして遠からず満杯になる自分の処理場汚泥が、宮古の震災瓦礫の比ではない1000bq超という危険水域の放射線量であることを自覚したほうがいい。

その時、自分たちの高濃度放射性物質汚泥が他県から確実に搬出拒否される事態になる未来に対して思いをめぐらせたほうがいい。

被災地復興に手を取り合って進もうという1年前の誓いをもう忘れましたか。

自分たちの身に降りかからなければ、この人たちは目が覚めないのでしょうか。哀しいことです。

                      ~~~~~

2012年4月2日記事からです。

Photo_3
先日の園遊会に招かれた村井宮城県知事が、陛下から瓦礫の進捗状況をたずねられて、やや苦しげに集積場所に管理しております、というような返答をしていたことが心に残りました。

宮城県は、知事が言うように集積だけは終了しています。しかし、宮城県だけで685万トン、隣県の岩手と合わせると実に2000万トンにも登ります。

これは、岩手県の11年分、宮城県の19年分に相当します。考えるまでもなく、これは当該自治体の処分能力をはるかに超えています。

現地で処分しきれない瓦礫の処分強力を求めているのですが、強硬な反対運動に合ってなかなか進まないのはご存じのとおりです。

その反対理由のひとつに、輸送コストをかけて移動するのは無駄だ、ということがあります。それは一理あることで、近隣の北関東、あるいは北陸、北海道南部で処分協力することが望ましいのは言うまでもありません。

そこで、北関東と北陸、北海道南部エリアの震災瓦礫協力状況を見てみましょう。(政令市を含む)
・受け入れ表明・・・・ 東京都 千葉市 栃木県 新潟市
・前向き検討中・・・・ 千葉県 茨城県 石川 福井 北海道
・拒否      ・・・・ 札幌市 関東・北陸エリアではなし 
・未定      ・・・・ 新潟県

ちなみに全国的に拒否を表明しているのは、和歌山県、徳島県、香川県、宮崎県、長野県で、受け入れ表明しているのは、愛知県です。

現時点で11都道府県10政令都市が受け入れを表明しているか、前向きに検討中です。

一方、政令指定都市で受け入れ拒否を表明しているのは、札幌市、名古屋市、福岡市です。札幌市は拒否理由を、「安全が確証が得られる状況にない」としており、行政みずからが瓦礫反対運動に加担しています。

Photo_7瓦礫焼却で円形脱毛になったという山本太郎議員

現状において、東北を除く地域で瓦礫処理を実施しているのは東京都のみです。

今後、受け入れを表明、ないしは前向き検討中の千葉県、栃木県、茨城県と新潟市の自治体と、札幌市を除く北海道南部などの自治体を中心にして処分態勢を考えていくことになるでしょう

ではあらためて、環境省が定めた瓦礫処分のガイドラインを押えておきましょう。

・可燃物     ・・・・240~480bq/㎏以下
・焼却後の焼却灰・・・8000以下

反対運動や札幌市はこの8000bqが高すぎると主張しています。確かに、この8000bqという環境省の数値は、旧暫定規制値の土壌放射線量が5000bq以上であったことから、誤解を与えかねない数値であることは事実です。

この焼却灰8000bqのみに着目して、反対派はあたかも放射性瓦礫を拡散させる意思があるように理解しているようです。

これは誤解です。現時点で震災瓦礫の処分協力を要請しているのは、岩手県と宮城県のみです。もっとも高い汚染を受けてしまった福島県は要請する意思はありません

岩手、宮城県はほぼ被曝を受けていない地域で、ピンポイント的に被曝したのは一関市のみですが、震災瓦礫の協力要請はしていません。

では、岩手県における震災瓦礫の焼却実証実験のデータを東京、神奈川の下水汚泥と比較します。
・岩手県震災瓦礫焼却灰の放射性セシウム濃度・・・133bq/㎏
相模川流域と酒匂川流域の2施設の焼却灰  ・・・1024
 
東京都下水処理施設の焼却灰         ・・・・2000~1万

133bqというといかにも高そうな感じがしますが、それは食品基準値と比較しているからです。較べるならば下水道焼却灰と比較すべきでしょう。焼却灰は食べません。

すると較べるまでもなく、岩手県瓦礫焼却灰のほうが、はるかに低い線量です。放射線量が、低いのですから、当然すぎるほど当然の数値です。

この両県の空間線量と東京都、大阪府を比較してみましょう。

宮城県・・・0.061マイクロシーベルト/時
・岩手県・・・0.023

・東京都・・・0.056
・大阪府・・・0.076

関東各県はおろか、関西より低い放射線量の土地の瓦礫を拒否する理由を、反対運動を執拗に続ける人たちは明らかにすべきです。

それは岩手県、宮城県に対する根拠のない蔑視です。この反対運動は、被災地と非被災地に分断をもたらしています。

彼らが自分たちの声が、東北の被災地の人たちを傷つけているのみならず、復興・復旧の大きな妨げとなっているか胸に手を当てて考えるべきです。

| | コメント (17)

1ミリシーベルト除染による帰還の遅れは安心原理主義から生れた

073

2011年夏くらいまでは、反原発運動は、ある意味当然な原子力の恐怖に対する運動でした。

当時、この私も自らを反原発派(穏健派)だと思っていましたが、この時期から彼らについて行けなくなります。

それは明らかなデマを根拠に主張するようになったからです。

反原発派の多くは、既に大量に蓄積されている放射線防護学・放射線医療の知見をバッサリと斬って捨ててしまいました。 

福島現地で調査と治療に当たられた長崎大学副学長の山下俊一氏、あるいは放射線医療の第一人者・中川恵一東大病院医師までもが、反原発派によって社会的迫害の対象になった時、私は彼らと決別しました。

彼らは今まで長い時間かけて蓄えられてきた科学的知見を、「原発推進派に仕える原子力村の御用学者」にすぎないとしてゴミ箱に叩き込んでしまいました。 

そのために、再掲記事中央の『美味しんぼ』のように、「放射線の知見はない」というようなことを、平気で言うようになっていきます。  

広島・長崎という放射線被曝の世界最大のデータベースを長年蓄積してきたのが、わが国です。 

世界の放射線防護学は広島・長崎から始まっていて、斯界ではゴールドスタンダードとすら呼ばれています。 

反原発派が当時もっぱら危険だとしたのは、いわゆる「低線量被曝」問題でした。 

3.11前まではゼロだったのだから、1ベクレル、いや0.1ベクレルでもイヤだという「心理」です。 

実際は太陽や地盤から放射される自然放射線量というのは馬鹿になりませんが、この人たちは「ナチュラルな放射線は安全」と漠然と思っていました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-68e6.html 

わきゃありません。ウランだって天然の鉱石に含まれる「自然放射性物質」ですから、安全になってしまいます。 

Photo_2

東日本はおおむね濃い青である0.00561~0.0178マイクロシーベルト/時と世界でも最小の放射線量地域です。

自然放射線量において大阪は、東日本平均7.5倍の放射線量が常に存在する地域だといえるわけです。

大阪は福島事故の放射能被曝を受けていませんから、3月12日の前後で線量に大きな変化はみられません。

2011年9月の地域ごとの線量比較です。

・宮城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.061マイクロシーベルト /時
・岩手県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.023
・茨城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.083
・東京都・・・・・・・・・・・・・・・・・0.056
・神奈川県・・・・・・・・・・・・・・・0.049
・大阪府・・・・・・・・・・・・・・・・・0.076

大阪府は東日本と同じか、それ以上に高い放射線量が常に存在します。

大阪は自然放射線量において、全国有数の土地なのです。

しかし大阪府が、東京都と比較してガン患者が多いという統計データは一切ありません。

いわば私たちは生れてこの方ズッと、宇宙からと地盤からの自然放射線による低線量被曝をしていたことになります。

ですから、このていどの放射線量ではまったく健康に問題がないということを、奇しくも大阪が証明してくれているというわけです。

Photohttp://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031202000141.html

上の写真のように、慰霊の日にも時を選ばず、国会デモをかけるような反原発運動の人たちが出ました。

余談ですが、国会は大理石が多いので、放射線量が高く計測されています。山本太郎クン、低線量被曝しちゃいますよ。いいのかな。

ま、それはさておき、彼らはなぜか「あと3年、2015年3月31日、日本に住めなくなる」と叫ぶエセ予言者・武田邦彦のような者の言うことのほうを信じてしまいました。

ちなみに同じように東日本の数年以内の滅亡を予言した広瀬隆も、この武田もチャラとしてマスコミ業界でたくましく生き抜いています(苦笑)。

たいした鉄面皮ですな、武田さん。2年前に日本は住めなくなったわけだ。それはお気の毒に、ならばどこか外国に住んで下さい。

それはともかく、なぜこんな詐欺師のほうがオーソドックスな学問より好まれたかといえば、それはエセ予言者の言うことのほうが自分の不安心理を説明してくれると思うからです。 

こういうなにがなんでも白い手袋じゃなきゃダメという「心理」を、”ゼロリスク主義”、あるいは”安心原理主義”と呼びます。 

そうです。実はこれは、科学的根拠を欠いた人それぞれの心象風景にすぎないのです。

つまりは今の豊洲問題やオスプレイと一緒の、個々人の心の中にしか相対的にしか存在しない「安心」の問題なのです。

ですから、このような人たちと議論すると、初めはもっともらしい理屈を言っていますが、やがて「危険だから危険だ」という循環論法に流れていって議論にはなりません。

これでは私たち日本人も、お隣の国のことを「情緒の国」と笑えませんね。

もうひとつ付け加えると、このようなゼロリスク信仰が生れるのは、事故初期における民主党政権の情報の出し方の隠蔽と失敗、リスク管理不在にあります。

当時の民主党政権はSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク システム)情報の隠蔽、枝野官房長官の「すぐには影響がない」発言などにより、国民からその情報自体に不信の眼を向けられていました。

また11年夏まで福島県民、特に浜通りの住民に徹底した検診・治療体制を取ることを宣言して、早急にそのサーベイランス体制を作って落ち着かせるべきでした。

それを原発事故冷温停止と同時にやらねばならなかったはずです。

ころが菅首相は、専門家を追い出して官邸に学生時代のゲバ仲間を集めてひたすら荒れ狂っていました。

このような緊急時に為政者に必要な能力は、まず第1に俯瞰して大づかみする能力、第2に専門の官僚の手に分散させて仕事をさせる能力、そして最後にその責任を引き受ける政治家の覚悟です。

菅氏のように、頭が狂乱したまま手足は政治主導で素人政治家が握ったまま。これで緊急対応がなんとかなったら、そのほうが奇跡です。

よく国全体が潰れなかったものです。

こんなていたらくの政府を国民が信じられるわけもありません。

この政府対応は別次元なので、これ以上触れませんが、かくもお粗末極まる危機管理をすれば、このようなことになるという教訓です。

それをなにひとつたりとも反省も総括もせずに、民進党大会はまたぞろ「脱原発で・前倒し」ですって。もう笑うしかない。

武田邦彦と同じで、あんたにだけは言われたくない、です。

反原発廃止撤回で話をまとめた連合会長と幹部に赤恥かかせた蓮舫氏。今年に予想される総選挙を前に、さすがだ蓮舫!やっぱり蓮舫、といってやるべきでしょう。

本日は2016年2月18日の記事を再録します。 

※旧タイトルと同じだったので、改題しました。いつもすいません。

                        ~~~~~~

この「1ミリシーベルト」問題はわかりにくいので、できるだけかみ砕いてお話していきたいと思います。 

まず単位となっている「シーベルト」からいきましょう。略称はSvです。 

放射線防護で大きな足跡を残したロルフ・マキシミリアン・シーベルトさんというスウェーデン人物理学者の名を取っています。 

日本人だったなら、1ミリスズキと言われていたでしょうね。 

よく、聞く放射能(正確には放射線量ですが、一般呼称を用います)の単位にベクレル(Bq)もありますが、どう違うのでしょうか。 

ベクレルのほうは、主に食品や水・土壌の中に含まれる放射能の総量を表す場合に使われます。 

ちなみに、ベクレルは、フランス人のウランからの放射能を研究したアンリ・ベクレルさんの名を取っています。 

ですから、食品の放射能規制値で、「1キログラムあたり500ベクレルとする」というような使い方をします。 

一方、シーベルトのほうは、外部被曝や内部被曝で実際に人体が影響を受ける放射線量を表す単位として、「1時間あたり1ミリシーベルト」のような形で用います。

つまり、ベクレルは本来持っている放射線量の量であることに対して、シーベルトはそれかどれだけ人体に影響のあるのかを示した数値を表しています。

下の写真は、私たちの地域での放射能自主測定の様子です。計っておられるのは茨城大学のk先生です。

この場合、土壌が計測対象なので単位はベクレルです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-c07b.html

044_2

さて、丸川大臣は「1ミリシーベルトには科学的根拠がない」と発言したわけですが、いちおうこの単位も押さえておきましょう。 

これは1シーベルトの1000分の1です。 

ではこの1シーベルトはどのていどに危険な数値かといえば、急性被曝による吐き気などの症状がではじめる数値です。

この倍の2シーベルトになると、5割の人が死亡します。

雄山が「福島から逃げろ」とトンデモを言っていますが、確かに2シーベルト以上なら正しいのですが、あいにく単位はその1000分の1でした。

Photo

雄山こと雁屋哲が「放射線の知見はない」というのは、ただ自分の無知を自慢しているだけです。

それはともかく、逆に半分の500ミリシーベルトでは、リンパ球の減少が見られ、100ミリシーベルトあたりからグラデーションのように、喫煙・暴飲暴食などの生活習慣による健康被害と混じり合って、これが放射能被害だと言えなくなります。 

放射線防護ではこの100ミリシーベルト以下を、「わからなく」なるが、「ないともいえない」ということで、そのまま「いちおうあるかもね」ていどのニュアンスで考えています。 

というのは、100ミリシーベルト以上までは、鉄板の臨床記録があるのです。 

放射能障害が分かっているというのは、悲しいことですが、わが国は広島・長崎の被爆という悲劇を通じて大規模疫学調査である寿命調査(LSS・Life Span Study)がなされたからです。  

これはいわば被曝の巨大データ・バンクで、責任ある広島大学医学部研究機関による、実に20万人以上の、しかも40年間という被曝者の終生に渡る追跡調査です。  

これは被爆者手帳によって、その方が亡くなられるまで健康状況を追跡したもので、世界でこれを凌ぐ疫学記録は存在しません。 

この広島・長崎LSSの調査の結果、以下のような放射能の影響があることがわかっています。   

障害は被曝後数週間で発生する急性障害と、数か月から数十年の潜伏期間を経て発症する後障害(晩発障害)に分けられます。  

これは受けた放射線量によります。

100ミリシーベルト           ・・・・吐き気、倦怠感、リンパ球の激減
250ミリシーベルト以下        ・・・・臨床症状が出ないが、後障害
250ミリシーベルトを短時間に受けた場合・・・・早期に影響が出る
500ミリシーベルト           ・・・・リンパ球の一時的減少
1500ミリシーベルト    ・・・・半数の人が放射線宿酔(頭痛、吐き気など)
2000ミリシーベルト          ・・・・長期的なは血球の減少(白血病)
3000ミリシーベルト          ・・・・一時的な脱毛
4000ミリシーベルト          ・・・・30日以内に半数の人が死亡
(「放射能と人体」1999年による) 

広島・長崎では500ミリシーベルト以上被曝した場合、その線量によってガン発生率が増大することがわかっています。  

1時間に年間許容限度の放射能を浴びてしまうと、人体はDNA損傷を修復できなくなってしまいます。それがガンなどの原因になる可能性があります。

またもや「美味しんぼ」で恐縮ですが、福島で山岡こと雁屋氏は「たまらない倦怠と鼻血が出た」といっていましたが、これは100ミリシーベルト以上を一気に浴びた急性被曝症状です。ホントなら、死ぬか、高い確率でガンを発症します。

雁屋氏が死んだとか、ガンになったという噂は聞かないので、こういう類の話は、世間では「幽霊は見たがる人にのみに見える」と言っています。

Photo_3

放射線はその量と時間によって、大量に一時期に被曝すれば活性酸素を発生させてDNAに損傷を与えます。  

逆に言えば、少量の放射線を浴びても、人体はよくできているもので、切断されたDNAを自己修復してしまいます。  

これをグラフで表したのが、福島事故以来一躍有名になったLNT仮説(閾値なし仮説・Linear-No-Threshold )というものです。 

Photo
100ミリシーベルト(mSv)以上の被曝についてはAのライン(赤実線)のように、被曝線量に比例して発がん率が上昇しました。 

ここまでは、さきほどお話したように広島・長崎の鉄板記録があって「美味しんぼ」のようなヨタではなく事実です。 

しかし、100ミリシーベルト以下については、疫学データーが存在ません。 

しかし、リスク評価としては「ないとも言い切れない」ということで、このグラフでは点線で描いていますが、「100ミリシーベルト以下も線量に比例する」と叫びたい人たちは、実線で書いています。 

しかし、立ち止まって考えてみましょう。

放射性物質という目に見えない無味無臭の物質だから恐怖心が募りますが、これが私も好きなアルコールだったらどうでしょうか。 

アルコールによる健康被害が、このLNT仮説だとすると血中アルコール濃度が0.4%を越えると、約50%が死亡するから0.04%を越えると、約5%が死亡する恐れがあるということになります。

0.04%とは、ビール1本分ていどです。

わきゃないでしょう。だって常識的に考えて、大量摂取すれば危険ですが、少量摂取すれば百薬の長になるかもしれないわけです。

ちなみに酒には強い弱いの体質がありますが、放射能に強い体質などはありません。

ただし、80ミリシーベルトあたりで健康になるという、やや眉唾なホルミシス効果説もあります。

ラドン温泉などの薬効というやつですね。ただし、科学的に解明されておらず、いまのところは異端の説となっています。

このLNT仮説の危なさは、このような大量摂取した時の危険性を、そのまま比例して見積もったことにあります。

ただし、ビール1本をゲコが宴会で、無理やり一気飲みさせられたというケースもあることを考えて、ICRP(国際放射線防護委員会)は、このLNT仮説を否定していません。

おそらく現実にはあえて100ミリシーベルト以下を書くとすると、開米瑞浩氏によればこんな感じではないかとのことです。

Photo_2
しかし、この科学者がデータがないから「わからない」と言っていることを逆手にとって、「わからないから判明していないだけで、ほんとうは危ないのだ」という人がゴッソリ発生しました。

科学者が言う「わからない」は、一般人が使う「わからない」とは意味が違います。

先ほど漫画の中で雄山は、「知見がないことはわからないことだ」なんてバカを言っていますが、知見はありますが、疫学的に他の健康障害の中に紛れ込んでしまって「わからない」のです。

したがって、1ミリシーベルトていどの低線量被曝の健康被害は、「疫学データがないために科学的根拠がない」という意味てのです。

その意味では丸川大臣の言い方は、誤りではありません。

ではまったく低線量被曝の疫学データが「ない」のかといえば、そんなことはありません。

南相馬病院の坪倉正治医師と、東京大学の早野龍五氏によるホールボディカウンター(WBC)の測定と分析結果かあります。

南相馬で測定した約9500人のうち、数人を除いた全員の体内におけるセシウム137の量が100ベクレル/kgを大きく下回るという結果が出ました。これは測定した医療関係者からも驚きをもって受け入れられたそうです。

この調査の時にも実は4名の高齢者が1万ベクレルという高い線量を持っていました。この原因もわかっています。

この方たちは、自分の土地で育てた野菜を食べていたこと、特に浪江町から持ってきたシイタケの原木から成ったキノコ類を食べていたということです。

原因がわかると防ぐこともできるので、この分析は有益なものだと思います。

なおこのキノコによる放射性物質の過剰摂取は、ベラルーシでも観測されています。

ベラルーシで長年被曝に対しての研究と指導を続けている、ベルラルド放射能安全研究所のウラジミール・バベンコ氏は、「基準値の100~200倍あった」と話しています。

おそらくこの被曝原因物質が、乾燥きのこだとすると、25万bqから50万bqという気が遠くなるような線量です。これを5bqですら恐怖する方々はなんと評するでしょうか。

このきのこ類による子供たちの被曝は深刻でした。下図がベラルーシ児童の被曝数グラフです。

075_2

ベルラルド放射能安全研究所による

これを見ると、白くハイライトした部分が飛び抜けて高いのが分かります。2003年11月、2004年11月、2006年11月・・・すべて秋のきのこ収穫期にあたっています。

特にきのこに大きく食生活を依存する貧しい家庭では小児ガンなどが多発したようです。

秋のきのこを食べたこと、これがベラルーシの児童被曝が今に至るも続く最大の原因です。

このベラルーシ特有の原因を押えることなく、「ベラルーシでは、事故後10年、25年経つ今でも小児ガンなどが発症している」ということを平気で書く人がいるので困ります。

では福島に戻って、事故後の子供の被曝状況はどうでしょうか。

坪倉先生のチームでは、これまでに、いわき市、相馬市、南相馬、平田地区で子供6000人にWBCによる内部被ばくの測定をしました。親御さんの心配もあり、この地域に住む子供の内部被ばく測定の多くをカバーしています。(一番多い南相馬市で50%強です。)

6人から基準値以上の値が出ています。6000人に対して6人というのは全体の0.1%で、この6人のうち3人は兄弟です。

基本的には食事が原因に挙げられるでしょうが、それ以外にもあるかもしれないそうです。
子供の線量について、坪倉先生はこう分析します。

「子供は大人に比べて新陳代謝が活発で、放射性物質の体内半減期が大人の約半分ということがわかっています。ですから、子供の場合は例え放射性物質が体内に入ったとしても、排出されるのも早いです。」

このように福島事故の後も、放射能による有意な健康障害は確認されていません。

1ミリシーベルトという民主党の規制値がいかに現実ばなれしているか、おわかりになったでしょうか。

民主党政権は原発事故終息に失敗し、その反動で起きた国民の放射能パニックを、本来ならば正しい情報を与えて、「冷静になれ」とクルーダウンすべきなのを、逆に煽ってしまったのです。

■参考資料 LNT理論に関する論争 原子力技術研究所 放射線安全研究センター
http://criepi.denken.or.jp/jp/ldrc/study/topics/20080604.html

| | コメント (11) | トラックバック (0)

無人・過疎化が進んだ避難地域を作ったのは民主党1ミリシーベルト除染目標だ

137

2016年夏の時点で、原発避難者数は約8万9千人となりました。原発避難先で亡くなった方は、千名を超えて増え続けています。

双葉町「ダッシュ村」の三瓶ジィさんも避難先で亡くなられていました。

いまだ故郷に帰れない人々がこれほどいることに、心が痛みます。

では、この原因はなんでしょうか。

私は原発事故の後に取った科学的根拠のない民主党政権が決めた1ミリシーベルトという除染目標だと考えています。

民主党は事故処理の失敗に驚愕し、その反動で平時の指標を除染目標としてしまいました。

結果、多くの帰還困難地域が生れ、未だ多くの地域に住民が戻ることができなくなりました。

若い家族は、その間に他の地域で仕事と住居を得てしまい、除染が完了したとしても、もはや戻れなくなってしまいました。

除染目標の設定の失敗による無人・過疎化が進むのが、旧避難地域の現状です。妥当な目標にすることで、除染期間を短縮し、できるだけ早く住民の帰還を促すことが正しかったのです。

民進党はすっかり忘却の彼方らしいですが、事故対応に失敗、事故後の収拾にも失敗、エネルギー政策の再構築にも失敗という、3連発のウルトラ級の失敗をしています。

この1ミリシーベルト除染目標設定もそのひとつです。

今週は3.・11から6年目の週という節目に当たって、忘れられかかっている原発事故後の対応について、なにを誤ったのか、何が真実だったのかを考えていきたいと思っています。

当時大量に書いた旧稿を復刻して振り返ることにしますが,今日は2016年2月25日記事を再録します。

                  ~~~~~~~~

平時時には平時の考え方があり、緊急時には緊急時の考え方があります。 

1ミリシーベルトをはあくまでも、何も起きていない平穏無事な時の基準にすぎません。 

ですから、そんな規制値を事故直後に当てはめたら、かえって収束作業の足をひっぱり、住民に不要な負担をかけてしまいます。 

リスク管理は、それをすることによるリスク削減と、それをやったことによる社会的なマイナスを天秤にかけて、軽重を計ることです。 

住民は避難によって職と住を同時に失いました。 

残された街のインフラは痛み、住居も再び住めるかさえ見当もつきません。 

というか、再び故郷に帰ることができるのかも、まったく見通しが立たないのです。 

このような状況の中で、700人以上が亡くなられています。おそらく遠からず千名を超えるでしょう。

原発事故そのものによる死者は出ませんでしたが、避難はこれほど多くの人を蝕み、殺したのです。 

そして誰も住んでいない街を、延々と2.5兆円ものコストをかけて除染作業が続いています。 

除染というとものすごいことをしているように思われるかもしれませんが、そのおもな仕事はただの草刈りです。 

Photo

http://curassy.com/I46b2e1f

除染とは、原発事故により放出された放射性物質由来の環境汚染が、人の健康や生活環境に及ぼす影響を、低減することを目的とした作業です。 

これには2種類あります。 

まず、表土を削ったり、草を刈って放射性物質を取り除く「除去」です。 

もうひとつは、放射性物質を土やコンクリートで覆うことで被ばく線量を下げる「遮蔽」です。 

しかし、こうした「除染」をしても、実は放射能はなくなりません。 

よく勘違いされていますが、放射能は一定の時期まできて核種の自然崩壊が終わるまで消滅することはありません。 

ですから、「除染」とはなんのことはない、どこかに移動するだけです。 

Photo_2同上 

そしてひたすら、行き場のない低レベル放射性廃棄物の山を築くことになります。 

いまやその量は、2千200万立方メートルに達すると推定されています。 

この中間処理施設はすったもんだのあげく双葉街に決まりましたが、建設には1.1兆円かかるとされています。 

除染と中間処理のコストだけでしめてなんと3.6兆円です。 

人は故郷に帰還できず、避難先で次々に亡くなられていき、残った街はダーストタウン化し、そしてその街を除染するために3.6兆円かけて、毎日草刈りをしているというわけです。 

この最初のボタンの掛け違いは、細野氏が環境大臣だった時に決めた「平時」と「非常時」を取り違えた1ミリシーベルトに始まります。 

では、どうしたらよかったのでしょうか。実は解決方法は既に分かっています。

言われてみればコロンブスの卵のようなことですが、徒に人の力で「除去」しようとするのではなく、自然の力を借りることです。 

3・11当初、セシウムは、「謎の放射性物体X」でした。

しかし現在は正体も分かっていて、その弱点もほぼ解明されています。

よく勘違いされていますが、放射性セシウムは万能でもなければ、最強の物質でもありません。

放射性であるという点を除けば、自然界にあるフツーの(非放射性)セシウムと同じだと思ってもかまわないのです。 

問題を煎じ詰めれば、 放射能が長い期間なくならないのなら、人間に利用できないように無害化すればいいだけではありませんか。

要は、放射性物質を「遮蔽」してしまい、人に触れる量を極小化すればいいのです。これが無害化です。

この時にゼロベクレルでなくちゃイヤという人は、ご遠慮ください。話が進みませんから。

リスク管理では、冒頭に述べたように、「それをすることによるリスク削減と、それをやったことによる社会的なマイナスを天秤にかけて、軽重を計ること」をします。

リスクが極小なら、社会的にプラスの方を選択していきます。

具体的にみていきましょう。まずは、敵の正体を知る必要があります。

いったん地面にフォールアウト(放射性降下)したセシウムは、どのような動きをしているのでしょうか。

これも分かっています。 

①表層土壌の鉱物質や腐植物質()に結着して、とどまるケース。
※植物が発酵分解されてできる物質のこと
②表層土壌から溶解してより下の地層に沈下するケース。

②の地下水へ流出するというのもないわけではありませんが、比率にすればわずかです。

というのは、セシウムは土壌の粒子と堅く結合して、簡単に水にとけださないからです。それについては後述します。

下図は2011,年9月の農水省の飯館村における除染実験報告ですが、放射性物質がきわめて浅い地表面にいることが確認できます。

大部分は地表面5㎝ていどのごく浅い層に存在します。http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110914-09.pdf (以下グラフ一緒) 

014_4

①耕していない牧草地や畑地の場合・・・地表面から5㎝までに9割以上のセシウム層が存在する。
②ロータリー(※)で耕した畑地の場合・・・ほぼ均等にロータリー深度に薄まって均一化する。

※トラクターにつける回転刃 

つまり耕さない場合には、放射能はいつまでも表層から5㎝ていどに居続けるということです。

そしてロータリーで耕すと、放射能がなかった下層の土と混合されて均等に薄まっていきます。

プラウ(鋤)で耕すと、鋤は縦に深く掘れるために15~20㎝あたりに埋め込まれた形になります。

いずれにしても、人間や植物が接触する地表面からは「隔離」されることが分かります。

002_4

図 農水省 本宮市における反転プラウ(30cm)耕後の放射性セシウムの深度分布

2011年当時の、私たちの行った実測値で確認しましょう。

なお、これは線量が高いいわゆるホットスポットの計測値です。セシウムは揮発性なので、その時の風向きや地形によって濃淡が生じます。

・2011年3月末の畑地の実測値・・・800ベクレル/㎏
・同年5月第1回目の耕耘後  ・・・100
・同年6月第2回目の耕耘後  ・・・80

※端数切り捨て

このように人間が耕すという営為をすることによって、放射能は確実に無力化していくことが分かります。

ではどうして、土がこのような放射性物質のトラップ(罠)の働きをするのでしょうか。

これは福島現地に入った、心ある農学者たちの地道な研究によって解明されています。

セシウムなどの放射性物質は電荷がプラスです。すると、当然マイナスにくっつきます。

すると土の中の腐植物質は、マイナス電荷ですからセシウムをビシビシと吸着していくわけです。

しかし、電気的吸着は弱いので、短時間で離れてしまいますが、どっこい土壌に含まれる粘土質には無数の分子レベルの微細な穴が開いているのです。

電気的結着が弱まって離れ始めた放射性物質は、次はキレート効果によって物理的に吸着されていきます。

簡単にキレート作用について説明します。

キレートというのは、元々はカニのハサミのことで、カニがチョッキンするように金属分子を鉱物の構造の中にはさみ込んでしまうことを言います。

ある分子がカニのはさみのようにカルシウムイオンなどの金属イオンと強く結合し、安定した化合物(錯体)を作る作用のことです

この場合、粘土やゼオライトの微細な穴がセシウム分子とあつらえたように同一だったというわけです。

そのためにセシウムは穴にキレート作用でスッポリとはまり込みますが、なんと無情にもこの分子の穴は徐々に閉まっていきます。

ピタッと閉まった分子の穴は簡単に再び開くことがないために、「セシウムのアズガバン」となってしまいます。

こうして、放射性物質は、強力に土壌内分子に物理的結着をしますが、時間がたつにつれ結着は強くなる傾向すらあるようです。

これが土壌の「トラップ機能」というもので、この土の思わざる素晴らしい働きによって、セシウムは土壌の分子内に封じ込められることになりました。

私は信仰心が薄い人間ですが、これを知った時、神は我々を見放さなかったと思いました。

ちなみに植物にも移行しますが、たかだか千分の1ていどにすぎません。

ですから実際、私たちがしたひまわりによる除染はまったく効果がありませんでした。

第一、ひまわりの茎って太くて大きいので、持ち出すのが大変で、しかもいちおう低レベル廃棄物ですから燃やしたり、捨てたりもできないので処分が大変です。

このひまわりなどの高吸収作物が有効ではないということは、農水省の上記の飯館村での除染実験でも証明されています。
002_2

http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110914-09.pdf 

こうして考えてくると、放射能移行の少ない草刈り除染は、無駄な労力を巨費を投じて意味のあるかないかわからないことをやっていることのように思えます。

放射性物質を「持ち出す」という発想そのものがダメで、むしろ持ち出さずにその場で「封じ込める」のが正解なのです。

このようにリスクが極小化されれば、くだらない1ミリシーベルト除染などにこだわらず、ケースバイケースで対応を決定し、社会的プラス、すなわち帰還や農業を再開することが正しいリスク管理の選択だったのです。

| | コメント (8)

原発予備電源高台移転と地震原因説について

012

HNふゆみさんのご質問です。

「原発の非常用電源の設置場所は、今はもう日本中どこも皆地上の安全な場所に移されているのでしょうか」

この予備電源問題は、大変に重要なことなので、できるだけ丁寧にご説明します。 

2013年に出した、原子力規制委員会の新安全基準ではそれが最初の項目に入っており、これをクリアしないと再稼働は不可能です。 

すべての原発において、発電所より高い場所への予備電源の設置はなされいます。 

たとえば下図は、中国電力の対策を示したものです。
島根原子力発電所の安全対策について - 中国電力(Adobe PDF) 

Img_3818クリックすると大きくなります

上図の右真ん中て黄色に塗られているのが、非常用ディーゼル発電機のバックアップ電源です。
 

なお、ディーゼルなのは、送電線が倒れたりして外部電源がブラックアウトした場合でも、発電所内で軽油によって非常発電が可能だからです。 

島根の場合、1万2千kW 級ガスタービン発電機×2台を発電所敷地内の40m高台に設置します。 

40m高台まで津波が到達する恐れはありえませんし、万が一それも浸水した場合でも、海水による冷却が可能なように予備の予備の海水ポンプを水密区に設置し、さらにそれもアウトした場合は、予備品を常時保管します。 

ここまでしなくっても、と思いまが、これが規制委員会が命じている新基準の深層防御(多重防御)の考え方です。 

上図を説明しましょう。右から順に

①防波壁の強化。発電所の主要設備への浸水を防止するため、発電所構内の海側全域について防波壁を海ばつ15メートルに強化する。
②建屋の浸水対策強化。建物内の機器を保護するため、水密性を高めた扉への取替などにより、建物内への浸水を防ぐ対策を強化する
③非常用電源の高台への移設
④海水による冷却ポンプの水密化のために、ポンプエリアに防水壁等を設置する

⑤④が浸水した場合の、冷却ポンプの予備部品・代替品の保管

もう一カ所見てみましょう。四国電力伊方原発です。
・原子力発電所を運転したり、停止時に原子炉等を安定的に冷却したり ...(Adobe PDF) 

Img_3811
四国電力は、全電源停止の場合について、こう答えています。 

上図に付けられた説明によれば 

①1号機から3号機まてに各2台の非常用ディーゼル電源を設置(図中○0)
②単独の非常用電源が破壊された場合に備えて、各原子炉間を電源ケーブルで接続し、融通できるようにする(図中④)
③2台の非常用ディーゼル発電機を7日間使用できるだけの燃料を確保(図中⑤)し、必要電力に最小化すれば14日間もつ
④以上が破壊された場合に備えて、海抜32mの高台に大型の空冷式非常用発電装置を4台配備しているほか、電源車も3台配備(図中①)
⑤海抜15mの高台に非常用外部電源受電設備(図中⑧)、海抜32mの高台に非常用ガスタービン発電機(図中⑨)を設置
⑥大規模災害時に比較的短期間での復旧に優れる配電線2ルート(3回線)を至近の亀浦変電所から敷設するなど、電源の多様化を図った(図中⑦)
  

ところで、このように十重二重の多重防御をしていますが、例によって例の如く、反原発主義者の皆さんはこう叫んでいます。
※http://www.mynewsjapan.com/reports/1403 

「近くに中央構造線という巨大活断層があり、 南海地震・大津波の危険が迫っている。
フクシチは地震で破壊されたんだ。
津波で壊れたなんて大嘘だァ!
伊方3号機が事故を起こせば、猛毒のプルトニウムを含む放射性物質で四国が汚染されるぞぉ!」
 

昨日書いたとおりのワンパターンです。

「大地震が来るぅぅぅ!活断層があるからだぁぁぁ!フクシマ(←なぜか、この人たちはカタカナ表記)は地震で壊れたんだゾぉぉぉ(棒)」 

もう事故から5年も立っているのに、まだ言ってんのですかね。あのすいませんが、この福島事故地震原因説はとうに破綻しています。

一時は国会事故調のみが地震説を出していたので、事故調の結論が混乱していましたが、2014年7月に原子力規制委員会が事故原因中間報告書の中で、地震説をバッサリと否定して、既に決着済みです。
東京電力福島第一原子力発電所 事故の分析 中間 ... - 原子力規制委員会(Adobe PDF) 

この反原発原理主義者にかかると、「安倍ヒトラーのポチの規制委員会がなんといおうと信じるもんか」のようですが、私たちも改めて福島事故の原因を押さえておくことは意義があります。

事故報告書は、4種類(独立、国会、政府、東電)ありますが、この中で唯一、「じつは地震で壊れていたんだぜ」と述べているのは国会事故調のみです。

理由は簡単で、国会事故調で主導権を握った田中三彦委員(サイエンスライター)が、ゴリゴリの反原発運動家だったからにすぎません。

Photo田中三彦氏

放射能デマッターの岩上安身のサイトに行くと、仮処分申請の司令塔である反原発弁護団の河合弘之弁護士との記者会見などが大量にでてきます。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E4%B8%89%E5%BD%A6

このようなどう見ても公平性を欠く人物が主導権を握ったのが、この国会事故調だったのです。

それはさておき、この国会事故調こそがいま流布されている、反原発原理主義者の地震破壊原因説のルーツです。 

国会事故調はこう書いています。

「基準地震動に対するバックチェックと耐震補強がほとんど未了であった事実を考え合わせると、本地震の地震動は安全上重要な設備を損傷させるだけの力を持っていたと判断される」(同報告書)

ここで国会事故調がいう「重要施設の破壊」とは、「津波到達前に格納容器から数十tの冷却剤が流出して、これが炉心融解・損傷につながった」というものです。 

この国会事故調の意見について、このように規制委員会は明解に否定しています。

「『基準地震動に対するバックチェックと耐震補強がほとんど未了』であったことは事実である。しかし、そのことをもって、「本地震の地震動は安全上重要な設備を損傷させるだけの力を持っていたと判断」できる訳ではなく、損傷させる可能性があると考えることが妥当」

 ではほんとうに、国会事故調の主張する格納容器からの冷却剤流出はあったのでしょうか。 

下は規制委中間報告書にある、地震の震度と発生時刻です。15時31分~40分にかけて震度2~3です。 

意外に震度が低いのに、驚かされます。 

Img_3832_2

この15時31分~40分にかけて、もし地震で原子炉圧力容器が破壊されていたのなら、国会事故調が言うように、地震発生とほぼ同時に格納容器に亀裂が走り、そこから大量の冷却剤が漏れだしたというシナリオも成り立ちます。 

次のグラフは、原子炉圧力容器の圧力を示すグラフです(前掲)。 

地震発生から津波到達までの45分間は(非常用)電源が生きていたのでメーターの記録があります。

それを見ると配管破断を示すような圧力ロスや、原子炉水位の変化はありません。

即ち、地震によって原子炉に亀裂は入っていなかったのです。 

Img_3823

 これについて規制委員会はこう説明しています。 

「地震発生から津波到達までの原子炉圧力容器の圧力の測定値は、原子炉スクラム
後に一旦約6.0 MPa まで低下した後に上昇し、非常用復水器(IC)起動後に5.0 MPa
以下まで急激に低下した後、IC の起動・停止に応じて約6~7 MPa の間で増減が繰
り返されている。」
「この期間に炉心の露出・損傷に至らしめるような冷却材の漏えいはなかった。」(前掲)

また国会報告書は、風聞を収集した三面記事的報告書なために、格納容器の破損の根拠は、現場にいた作業員が地震発生後、津波が来るまでの間に「ゴーッという音」を聞いたと程度のことです。

ならば既に津波到達前の45分前から放射能漏洩が生じて、所内の放射線モニタリングに記録されているはずです。 

それもないと規制委員会は述べています。

「地震発生から津波到達までは直流電源及び交流電源が利用可能であったことから、地震により原子炉圧力バウンダリから原子炉格納容器外の原子炉建屋内への漏えいが生じれば、プロセス放射線モニタ、エリア放射線モニタ等の警報が発報すると考えられるが、これらの警報は発報していない。」

津波が到達する時刻は、波高計により、第1波襲来15 時27分頃、第2波襲来15時35分頃です。 

この二つの津波が到達したのが、「15 時35 分59 秒~15 時36 分59 秒までの間で、この瞬間に原子炉の電圧は、ほぼ0 V に低下して、その後は電力供給ができない状態に至った」(前掲)わけです。 

Img_3838
上のグラフの右隅の緑色枠内でも明らかのように、津波到達と同時に全交流電源が停止した結果、原子炉が冷却不能となったのです。

この電源停止についても、国会事故調はこう言っています。
 

「国会事故調報告書では、「ディーゼル発電機だけでなく、電源盤にも地震により不具合が生じ、その不具合による熱の発生などによって一定時間経過後に故障停止に至ることも考えられる。」としている。」(前掲)

 規制委員会中間報告書は、これについても完全に否定しています。 

「非常用交流電源系統は、本震が発生してから約50分間は正常に機能しており、これが震度1~2 の揺れの影響により損傷したとは考え難い。したがって、余震によってD/G1A受電遮断器を開放させるような不具合が発生したとは考え難い。」(前掲)

 もういいでしょう。

詳細は、この中間報告書をご覧ください。完璧に地震原因説が否定されているのが分かるはずです。 

それにもかかわらず、おかしな裁判官が、「想定以上の地震が来て、原発がバクハツするぞぉ。仮処分で止めてやる」などと叫ぶのですから困ったものです。

この人たちはきっと受信機が地震によって壊れていて、脳内冷却剤が流出しているのでしょう。 

| | コメント (6)

またもや鼻血 朝日新聞がまき散らす脳内放射能ディストピア

149
いやーさすがに驚きましたね。 

また朝日新聞は「鼻血」を放射能と結びつけてキャンペーンを始めたようです。
核の神話:20福島から避難ママたちの悲痛な叫び 2016年3月19日 

ゾンビーが、わしわしと土かきわけて、墓から手を出してくるのを眺めているような気分。いえ、もちろん、この母親ではなく、朝日新聞のほうです。 

「福島から母子避難した人たちが日本社会の中で見捨てられている」という思い入れたっぷりな書き出しで、ある自主避難の母親(記事実名)の声を紹介しています。 

やや長文ですが、引用します。

「2011年3月11日の原発事故のあと、福島県大玉村の自宅から、主人と当時4歳だった娘を連れて神奈川県相模原市の私の実家に避難しました。(略)
家族が離れてまで避難する理由があるのか、決定的な証拠を出せるような知識はありませんでした。結局、最も
放射能汚染の強かった夏休みまでの3カ月を福島で生活してしまいました。
 娘が幼稚園に行くときは、なるべく肌を出さない服を着せて、マスクをさせました。バスを待っているときに、土とか葉っぱとかを触ると、子ども同士で「放射能がついてるから、触っちゃいけないんだよー」って注意しあっていたんですね。事故前はお友達のように土や葉っぱで遊んでいたのに、それを触らないようにと子ども同士で注意しあっているのは、見ていてつらかったです。

 そうこうしているうちに、娘が大量の鼻血を出すようになりました。噴出するような鼻血だったり、30分ぐらい止まらなかったり、固まりが出たり。風邪の症状はないのに発熱が続いたり、それまでにはなかった皮膚疾患が出たり。
うちの娘だけだったら気のせいかなと思うんですけど、まわりのお母さんたちの子どもたちにも、同じような症状があるって言うんですね。だんだん私は福島で子育てをする自信がなくなりました。」(前掲)

まずは、この女性が自主避難したという、福島県大玉村の場所を確認しておきましょう。 

PhotoGoogle Earth

画像右上に南相馬や双葉が見えますね。この女性のお子さんが鼻血を出して避難したという大玉村は、福島第1の西側にあり、約80キロ離れています。
 

ご承知のとおり、事故当時は東に風が吹いており、放射性物質の大部分は海の方向に吹き流されています。 

ですから、内陸部の被曝はほとんどありませんでした。

Photo_2図 福島県モニタリング検査調査 福島県HP

大玉村の拡散図です。こ覧のように、0.1マイクロシーベルト以下です。 問題にならない放射線量です。

セシウムが検出された大豆が少し出たようですが、何度も書いてきているように、農産物のリスクはその地形によって決定される要素が強いので、そのままその土地のリスクを現しません。

ところがこの田井中雅人記者は、子供に鼻血が出たと言う女性を、まるで福島事故と関連がある「社会に見捨てられた」被害者として描いています。 

Img_3797

この鼻血については、私が答えるより専門家に回答してもらったほうがいいでしょう。 

日本保健物理学会の『専門家が答える 暮らしの放射線Q&A』は、鼻血について一節設けて、こう答えています。 

「まずお子さんの鼻血と下痢について説明します。
放射線被曝によって鼻血が出るとすれば骨髄が障害されたことによる血小板の減少か、皮膚粘膜の障害によって出血しやすくなっていたかのいずれかです。
骨髄の障害による血球数の減少は500ミリシーベルトくらいから起きますが、それによる症状が出るのは1000ミリシーベルト以上です。
また皮膚粘膜の障害は数千ミリシーベルト以上の被曝がないと生じません。
下痢がおきるのも数千ミリシーベルト以上で、それも1万ミリシーベルトに近い線量を被曝しないかぎり生じません。
これらの情報は、放射線治療をはじめとする医療被曝や、過去の原子力・放射線事故の経験など、多くのデータの積み重ねによって得られたものです。
福島第1原発事故による被曝の実態が明らかになりつつありますが、どんなに過大に見積もっても、お子さんにこれほど高い被曝を受けたとはかんがえられません。
(略)
今回の事故による被曝は、身体の一部に限定したものではなく、全身被曝です。
放射能の影響だとすれば症状が鼻血だけに限定されることはなく、そもそも、全身が数千ミリシーベルトの被曝を受けています。
その場合、生死に関わる様々な症状が現れます。そしてお子さんだけではなく、大人にも症状が出るはずです。」
 

整理しておきましょう。

①放射線被曝による鼻血の発症は、1000ミリシーベルト以上の放射線を、一度に浴びたことによる骨髄障害による血小板減少
②数千ミリシーベルト以上の被曝による皮膚粘膜障害
③もしこれたけの放射線をあびたのなら、症状は鼻血などの局所にとどまらず生死に関わる全身被曝になり、他の深刻な症状を伴う。
④子供だけではなく、大人も同様の症状を発症する
⑤今回の福島事故の放射線量では、どんなに過大に見積もってもありえない
 

つまり、この母親のお子さんの鼻血の原因が放射能であったのなら、生命に関わるほどの放射線を一時に浴びた以外考えられず、その場合この母親にも同様の症状がでているはずです。

しかも子供のみならず、この地域で大人も含めて、多数の急性被曝を訴える症状が多発したはずです。

寡聞にして大玉村でそのような事例があったという話は聞きませんし、この女性自身もこう言っています。

「当時は放射能がどれだけ体に影響があるのかなんて分かりませんでしたし、そういう村の空気を感じて、私は言い出せなくなってしまいました。」(朝日前掲)

「そういった村の空気」とは、私も分かる気がしますが、騒がずに行政の指示を待つべきだという考えです。

残念ながら事故当時、民主党政権の遅れに遅れたリスクコミュニケーションの失敗によって、行政機関への信頼感は崩壊していました。

この女性をもし「被害者」と呼ぶのなら、まさにこのリスクコミュニケーションの失敗の犠牲者です。

パニックになったこの女性は、夫の制止を振り切って、家族が解体することを覚悟で、神奈川県まで自主避難してしまったわけです。

「外で遊べないストレスも強かったんで、車を2~3時間運転して山形県米沢市までわざわざ行って、娘に外遊びをさせました。福島から山形に入って、やっと車の窓を開けて深呼吸をするような状態でした。山形に入って私が車の窓を開けたら、寝ていた娘が起きてパニック状態になったんです。「ママ、なんで窓あけるの! 放射能あるのに!」って泣き叫ぶ。」(朝日前掲)

ここまで、子供を脅かしたのは、親の責任です。親の動揺が、常に親を見ている年頃の子供に増幅されて伝わったのです。

そして子供までも、どんな安全な場所でも「放射能がある。窓を開けないで」と泣き叫ぶ脳内放射能地獄に導いてしまった責任は、親にあります。

そしてこの子供の恐慌を見て、さらに親は恐怖にかられます。果てることがない、恐怖のキャチボールです。

気の毒にと思うと同時に、親として踏みとどまるべき時期を逸してしまった母親の責任も問われるべきです。

そしていまや、今の朝日が言う「社会から見捨てられた」境涯に置かれたわけです。

この女性に対しては、冷静さを失ったことによる行動とはいえ、気の毒な側面があります。

むしろ問題は、朝日新聞です。

私は事故後5年もたって医学的には完全否定されて鼻血を、ことさらに騒ぎ立てる負のエネルギーに、ある種の狂気を感じてしまいます。

かつて私は鼻血問題でこう書きました。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-dda8.html

「ここに二種類の人間のグループあります。恐怖に脅えたところまでは一緒でした。
それからが違いました。
ひとつは自分の恐怖を他人で伝染させ声高にパニックを拡げることが「天命」たと思う人間たちであり、一方は黙々と目の前の脅威と正面から戦った人たちです。
どちらが人間としてまっとうな生き方なのかは言うまでもないでしょう。」

この私の思いは、今もまったく変わりません。

この母子が脳内放射能ディストピアから自由になり、早く自らの村に還って再び家族と一緒に住む道を選ばれることを祈ります。

一回解体しかかった家族の修復は、それを作った以上に大変でしょうが、それがお子さんにとってももっともいいことだと思います。

そして、朝日新聞、いいかげんにしろよ!

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-f2f9.html

 

| | コメント (10)

トリチウム「汚染水」の処理は、国際条約に則った海洋放出しかない

093

福島第1原発の現状について、どこをもって「事故を収束」とするか、ということですが、最長で廃炉まで40年です。 

しかし、それまでなにもしないわけではありません。 

今、とくに問題とされているのは、昨日取り上げました「汚染水」です。 

NHK(2016年3月16日)が整理してくれています。

東電の最新の現状報告書「福島第原子力発電所の最近の状況」(2015年12月11日)と共に見ていきます。 

「1号機から3号機では溶け落ちた核燃料を冷やすため原子炉に水を注ぐ必要があり、これが高濃度の汚染水となって建屋の地下にたまっています。
さらに地下水が建屋に流れ込んでいるため、当初、建屋内の汚染水は毎日400トンずつ増え続け、東京電力はこの汚染水をくみ上げて1000基に上るタンクで保管しています。」(NHK前掲)
 

この福島第1が立つ場所は、そもそも安達太良山系の湧水を集めて、大変に地下水が豊富な地点なのです。 

もちろん、建屋の下にたまっている汚染水もありますが、どちらかといえばこの毎日400トンも流入するハンパでない量の地下水に手を焼いています。 

Img_3781図 東電前掲 クリックすると大きくなります

施設を上図の左手から、崖を掘って作ってしまったために地下水に悩まされているわけですが、事故後に崖の上に地下水を汲むポンプ(青い太線)を設置しました。 

それでもなお、崖下に流れる地下水は、3カ所の「くみ上げ」と書いてある井戸からくみ上げていきます。 

とくに重要なのが崖下の井戸で、ここで止めないと、原子炉に流入して「汚染水」となってしまいます。ですから、ここでくみ上げて、なおその先に凍土壁を作っています。

「東京電力はこれまで、建屋への地下水の流入を抑える対策に取り組んできました。おととしには建屋の上流側で地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」と呼ばれる対策を始めたほか、去年9月からは「サブドレン」と呼ばれる建屋周辺の井戸で地下水をくみ上げ、浄化したうえで海に放出する対策も始めました。東京電力の試算では、こうした対策によって建屋に流れ込む地下水の量は1日およそ200トンまで減ったとしています。」(NHK前掲)
ところが、やはり問題は起きています。
ひとつは、東電は原子炉に接触しないようにした上で、浄水装置にかけて放射性物質を除去して海に放出するつもりだったのですが、せき止めた地下水の濃度が想定を上回ったため、放出が見送られたことです。

Img_3785図 東電前掲 クリックすると大きくなります
また、事故時の緊急対策として設置したタンク群の劣化も進んでいます。
福島民友新聞(2016年3月3日)によれば
「現在の汚染水発生量は1日当たり約500トン。内訳は地下水流入分が約150トン、護岸から移送した地下水分が約350トンとなっている。
 また2月25日現在、1~4号機などの建屋内には計約8万1000トンの高濃度汚染水がたまっている。」
NHKによれば、トリチウム問題が足かせになって、1日に新たに500トンの汚染水が発生し、60万トンもの「汚染水」がたまったままになっています。

「 東京電力福島第一原発では、1日におよそ500トンの汚染水が発生し、浄化設備で放射性物質を取り除いて いますが、トリチウムという放射性物質は取り除くことができないため、およそ60万トンが敷地内のタンクにためられたままになっています。 」(NHK前掲)

こうして、足止めを食っているうちに、「汚染水」は日に日に増加して、溢れんばかりになっています。
もはや、福島第1の復旧作業は、タンクのお守りではないかという自嘲すら生まれている昨今です。
Photo写真 朝日新聞2013年8月1日

そして貯めているタンクや、ホース、ポンプの劣化も進んでいます。
「東電は4年前の事故時に急増したフランジ型の貯蔵タンクが耐用年数を迎えて相次いで劣化しつつあることから、貯蔵汚染水の入れ替え作業を進めているが、設備の劣化はタンクだけではなく、今回のホースやポンプなど多くの応急的に投入された部材の劣化が随所で顕在化しつつあることがうかがえる。」F(inance GreenWatch 2015年5月19日 )

つまり、貯めておくという方法は、あくまで事故直後の浄水装置もなく、遮蔽壁もない状態でやむを得ず取った緊急措置だったにもかかわらず、事故後5年たってその限界を迎えつつあるということです。

「 こうした汚染水の処理方法について、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏代表はNHKの取材に対し、 「国の議論では希釈しての排水や、濃縮しての管理など、いろいろ案が出ている。4月以降、地元の方々と話し合い、  どういった形がいいのか決めていきたい」と話し、薄めて海に排水することを含め、どのように処理を進めるべきか、 来月以降、福島県など地元と議論を進めていく考えを明らかにしました。
トリチウムを含む汚染水の処理については、国の専門家チームで検討が進められ、薄めて海に排水する案や 地下に注入する案などが候補とされていて、地元の理解を得ながら、どのように汚染水の処理を進めるかが大きな課題となっています。 」(NHK前掲)

ここで上げられている地下注入などは、別の地下水脈に流入してしまい汚染を拡大しかねない下策です。

これ以上貯めておけない、そしてトリチウムだけに問題が絞られてきて、しかもトリチウムはそもそも非力なエネルギーしかもたない放射性物質である上に、検出量も微量です(下図参照)

ならば解決法は、世界にひとつしか存在しません。海に放出することです。これ以外にありえません。

Img_3788図 東電前掲 クリックすると大きくなります

下図は、世界の原子力施設で液体廃棄物として海に放出した、トリチウム量のグラフです。

 

20130815041950cb8s

 図 海産生物と放射性物質(海洋生物環境研究所 この論文はトリチウムと海洋との関係で教示されるものをたくさん含んでいますので、必読です。

上図のトリチウムは、原子炉の運転・整備、核燃料再処理時などで発生したものが、施設外に排出されたものが大気圏や海洋へ残留したものです。

英国が最大放出国で、実に2500兆(2.5×1015)Bq/年程度、日本は6分の1の400兆(4×1014)Bq/年程度です。

このグラフには再処理施設からの放出量は含まれていないために、英仏はさらに多くなります。 

このように現在でも各国の原子力施設からは、日常的に海にトリチウムが放出されています。 

●各国のトリチウム海洋放出量
・英国(セラフィールド再処理施設)・・・年間1390兆ベクレル(2010年値)
・フランス(ラ・アーグ再処理施設) ・・・年間9950兆(2010年値)
・カナダ(ブルース原発)       ・・・年間1180兆(2012年値)

 これはロンドン条約で認められた、唯一のトリチウム解決法です。ロンドン条約を押さえておきます

「ロンドン条約 1972年は、海洋の汚染を防止することを目的として、陸上発生廃棄物海洋投棄や、洋上での焼却処分などを規制するための国際条約。」
ロンドン条約 (1972年) - Wikipedia

なお、放射性物質の放出は同条約で禁止されているという反原発派の説がありますが、正確ではありません。(欄外参照)

ロンドン条約は、船舶からの海洋へ処分する行為等を禁じていますが、原発施設からの放射性排水の海洋への計画放出は対象に なっていません。

ロンドン条約で許されたトリチウム濃度は6万ベクレル/ℓで、これ以下ならば放出することが国際的に認められいます。

よくある勘違いに、福島第1で事故処理に失敗したから漏れだしているのだろうという誤解がありますが、まったく違います。 

他の国内原発でも、以下の放出がなされています。
 

20130821083725ad5

 

図 各原発からのトリチウム海洋放出の年平均値(2002年度~2011年度)平成23年度  原子力施設における放射性廃棄物の管理状況(2012年8月) 

沸騰水型の最大放出施設は、大飯です。全原発の合計では年間で380兆(3.8×1014)Bq/年で、世界では少ない方に属します。  

放射線の専門家である海洋生物環境研究所の御園生淳氏、富山大学水素同位体科学研究センター長松山政夫教授の意見を紹介しておきます。

①水として摂取しても10日くらいで半量が排泄されてしまうので内部被曝の可能性は低い。
②トリチウムの出す放射線量のエネルギーが低いので、外部被曝はありえない。
③毎日100ベクレル/㎏のトリチウムを含む食物を1年間食べた場合の摂取量は、0.0015ミリシーベルトで、,セシウム137の約千分の1ていどで比較にならない。
④トリチウムは何かに濃縮することがないために生物濃縮は考えられない。

もし、今後、福島第1から、トリチウムを含んだ「汚染水」を放出するなると、以下のルールに則って行われことになります。  

原子力施設のトリチウムを告示濃度限界の6万ベクレルまで希釈してから、海に計画放出し、拡散させます。  

これは先の述べたロンドン条約の国際ルールに則っていますから、文句を言ってくる国は韓国以外にないでしょう。

いや韓国も重水炉を持っているために、アジア最大のトリチウム放出国でしたっけ(笑)。 

漁業関係者は風評被害に痛めつけられて来ましたから、粘り強い説明が必要でしょう。  

外国の専門家は、このわが国の汚染水対策に同意しています。  

訪日したスリーマイル島事故を経験したNRC元専門家も、「直ちに海へ放出すべきだ」と助言しています。  

いずれにせよ、完全廃炉になり、使用済み燃料棒の処分が終了する時まで、冷却水は止められませんから汚染水は出続けます。

私はかねがね常に言ってきたことですが、事故処理に原発賛成も反対もまったく関係ありません。

もはや反原発はイデオロギーになってしまったようですが、願わくばイデオロギーの眼鏡で事故処理を見てほしくはありません。

広く世界でどのようなトリチウムの処理がなされているのかを知ってから判断すべきなのに、原発反対だから汚染水処理を止めろと言っているようにすら聞こえます。

というか、実際そう言っています。 近視眼も極まれりです。

どうも、彼らの声を聞いていると、凍土壁が失敗しそうだと手を打って喜び 、タンクが漏れると万才を叫んでいるようにすら見えます。 破滅願望なのでしょうか。 

反原発主義者にしても、このままタンクが溜まるだけ溜まって処理不能になり、炉の冷却水の循環もできなくなることが望みではないと思うのですが。

 

福島第一原子力発電所における汚染水の放出措置をめぐる国際法(西本健太郎 東大特任講師)
「海洋と放出とロンドン条約ロンドン条約は1975年に発効し、高レベル放射性廃棄物の海洋投棄が禁止された。以後この条約の下で実施されていたが、1982年の第6回の会議で、海洋投棄に関する科学技術問題を再調査し、その結論が出るまで投棄を一時停止するという提案が行われたことから海洋投棄は一時中止することになり、この年以降は実施されていない。その後、1993年の第16回会議で、放射性廃棄物の【船からの】海洋投棄は全面的に禁止となり、1996年には海洋投棄規制を強化するための議定書(1996年の議定書)が採択され、2006年3月に発効、日本は2007年10月に批准している。」

※参考文献 
ポストさんてん日記 トリチウムとは?危険性は?海洋放出量の基準値は?
海産生物と放射性物質(海洋生物環境研究所
トリチウム流出の影響  福島第一の地下水(安井至教授の市民のための環境学ガイド2013/8/10)
・原子力資料室
http://www.cnic.jp/knowledge/2116?cat_id=1
・医療での自然放射線安全にお答えします
http://trustrad.sixcore.jp/tritium-2.html

| | コメント (2)

福島事故が「収束」していないってホント?

086
今回の大津地裁山本判決のバックグランドになっているのは、東京新聞(2015年9月20日)によれば、この3点セットのようです。

①原発の安全対策、とくに事故時の原発の安全対策、事故時の住民避難などの防災対策が不十分
②原発から出る核のごみの処分方法が決まっていない
③福島第一原発事故が収束していない

この③の「福島第1の事故は収束していない」という人たちのサイトへ行くと、明日にでもハルマゲドンが来ると泣き叫んでいます。 

たとえば、衝撃! 福島原発第一の怖い現状! - NAVER まとめなんかだけ見て生きている方にとって、福島第1の現状は、「もうお手上げ原発汚染水」「再臨界している」ということのようです。

この人たちにとっては再臨界=核爆発を意味していますから、都知事選に出た細川氏が言っていたように、「ロシア軍の情報によれば、福島で事故後に再び核爆発があった事実がある」そうで、おおコワ。

いえ、再び起きた「核爆発」ではなくて、言っている人の脳味噌のほうがですが(笑)。

まぁ、細川さんのいう「核爆発」は論外として、確かに「汚染水」の流出は止まっていません。河北新報(2015年12月19日)です。※河北新報を福島と表記してしまいました。もちろん宮城です。ご指摘に感謝します。

「東京電力福島第1原発で発生する汚染水が1日300トンから600トン程度に増加していることが18日、分かった。汚染地下水の海洋流出を防ぐ海側遮水壁の完成後、岸壁に近くトリチウム濃度が高い井戸「地下水ドレン」の水位が想定を超えて上昇。くみ上げて原子炉建屋に移送する量が増えたのが原因という。」

Photo河北新報前掲

汚染水の出所は3カ所です。

①原子炉の冷却系の循環水
②汚染水貯蔵タンクからの漏水
③流入する地下水

これら3ルートはいずれも汚染の濃度の差があっても放射性物質を含んでいる可能性があるので、浄化装置にかけねばなりません。

やっかいなのは、福島第1が、地層を15メートルほど掘って作られているために、施設近辺に豊富な地下水脈があることです。

1日約1000トンの地下水が流入し、それを井戸を掘って施設に行かないようにバイパスさせても、その8割から9割は施設地下に流入し汚染水となりますから、ALPS(多核種除去装置)を稼働して浄化を続けねばなりません。

施設を囲む凍土壁で止めようとしていますが、私はうまくいくか疑問に思っています。

いずれにしても、原子炉の冷却は止めるわけにはいかないので、完全廃炉の日までALPSを稼働させ続けねばならないことになります。

脱線しますが、山本裁判官などは、再稼働をとめればなんか「安全」だと勘違いしているようですが、運転停止しても原子炉は休みなく冷却し続けねばなりません。

また、使用済み燃料プールもおなじように、稼働せねばなりません。

ですから、再稼働停止で、原発のリスクをなくしたことにはまったくならないのです。念のため。

それはさておき、このALPS浄化装置が除去できない唯一の核種が、トリチウムです。

したがって、汚染水問題は詰まるところ、トリチウムの問題に帰結します。

どうやら反原発派の皆さんに言わせれば、トリチウムは放射能汚染水としてドバァ~と毎日でているので、「事故は収束していない」ということのようです。

では、「反原発の巨人」・小出裕章さんにご登場ねがいましょう。
※小出裕章ジャーナル2014年12月13日http://www.rafjp.org/koidejournal/no101/

「ALPSが動いたとしても、取り除けない放射能というのはありまして、例えばトリチウムという名前の放射性物質はALPSは動こうと、他の浄化装置が動こうと、全く取り除けません。ですから、結局そのトリチウムに関しては、何の対策もとりようがありませんので、いつの時点かであれ「海に流す」と必ず彼らは言い出します。」

その通りです。ALPSでもトリチウムは除去できません。

しかし例によって、運動家的学者特有の、「嘘は言っていないが、隠していることがいっぱいある」という類の言辞です。

小出さんはトリチウムなんか、その気になれば飲めるくらい安全なことを知っているはずです。知らなければ、原子力学者の同業者からバカ扱いを受けます。

しかし、それを言えば、事故は山場をとうに乗り越えて、いまや後始末に入っていることを認めねばなりません。すると反原発運動がしぼんでしまいます。

だから運動をダラダラするためには、「汚染水が止まらない以上、福島第1はまだ危険な状態なんだぁ」と叫びつづけにゃならんのです。

無知なマスコミも同調してくれますしね。(テレビ局や新聞社には科学記者がいないのか)

では検証してみましょう。

ALPSは核種のほぼすべてを除去します。

下図は対策会議のデータです。全部ND(検出されず)です。

006

・γ核種(45核種)・・・検出限界値(ND)未満にまで除去
・β核種(8核種)・・・5核種までが検出限界値(ND)未満にまで除去
・Sr-89(ストロンチウム)、Sr-90、Y-90(イットリウム)については、告示濃度以下

しかし、唯一例外があります。それがトリチウムです。これだけはどうしても除去できないのです。

なぜなら、トリチウムは微量の放射性を帯びた「水」で、水の中の「水」はとりようがないからです。

だから小出さんか鬼の首をとったように言うとおり、汚染水浄化装置では、「対策のとりようがない」ところまではほんとうです。

もちろん、除去する以外の解決方法はあるのですが、もちろん小出さんは知っているくせ巧妙に沈黙しています。このあたりが運動家だなぁ。

その解決方法については後述しますが、その前に、トリチウムとはどんな存在なんでしょうか?

トリチウムとは、三重水素(H3)です。昔は重水と呼ばれていました。水素の同位体ですから、人体の中では水素の化学形である「水」の形をとっています。(※炭素結合形態もあります)

とくに流出した「汚染水」を飲まなくても、既に地上生物の体内の水にはトリチウムが含まれていて、およそ1ベクレル/ℓだといわれています。

2013010919362571d

図  自然放射線による日本人の平均被ばく量2.1mSv/年の内訳

トリチウムは自然界にあるものなので、人体内にもわずかですが存在します。人体内には50ベクレのトリチウムが存在しています。

そして、毎日オシッコで10日間ほどで、体外に排出されています。

このようにトリチウムは、水や大気に取り込まれて存在します。

ただし「存在」していても、セシウムやストロンチウムのように特定の食物や内臓諸器官に残留せずに、水や大気に混ざって存在しているところが、他の放射性物質と大きく異なる点です。

これは大気圏上層で、一次宇宙線という高エネルギーによって生成されて地上に降り注ぎ、その過程で二次放射線に含まれる中性子が窒素(空気)と反応してトリチウムが生成されるからです。

この量はバカバカしく多く、127.5京といわれており、海、湖、川など以外にも水蒸気にも含まれています。

まぁ要するに、人類の生存圏のありとあらゆる「水」に含まれるといっていいでしょう。

さて、ALPS除去設備が除去できなかったのは、凶悪だったからではなく、要するに限りなくただの「水」だったからにすぎません。 

なんでこんなもんを怖がるのでしょうか。ストロンチウムならまだ分かりますが。

確かにトリチウムが「放射能汚染水」というのはウソではありませんが、正確ではありません。

除去できずに出ているのは、限りなくただの「水」ですから。

では、小出さんが批判するように「海に流す」のはまずいのでしょうか。

いや、逆です。小出さんが知らないはずがありませんが、それが正しい解決方法なのであって、むしろ海への放出する方法こそが、世界のルールなのです。

これについては、長くなりましたので、明日に続けます

| | コメント (7)

リスク管理は「事故は必ずまた起きる」が大前提だ

106
素朴な問いから始めます。 

いったい原発事故というのは、「人為的ミス」なのでしょうか、それとも「天災」なのでしょうか? 

実は、ここにはヘンなねじれが存在します。 

人為説とは、東電主犯説のことです。 

たとえば、この立場をとる人たちが口を揃えて言うは、東電は869年の貞観地震がまた来るという専門家の意見を無視して、なんの調査もせずに宮城県沿岸に原発を建てたのだからとんでもない奴らだ、というものです。

一例を上げます。毎日新聞(2011年3月26日)はこう主張しています。

「東京電力福島第1原発の深刻な事故原因となった大津波を伴う巨大地震について、09年の経済産業省の審議会で、約1100年前に起きた地震の解析から再来の可能性を指摘されていたことが分かった。
東電は「十分な情報がない」と対策を先送りし、今回の事故も「想定外の津波」と釈明している。専門家の指摘を軽んじたことが前例のない事故の引き金になった可能性があり、早期対応を促さなかった国の姿勢も問われそうだ。(略)東電の武藤栄副社長は3月25日の会見で「連動地震による津波は想定し
ていなかった」「(貞観地震に対する見解が)定まっていなかった」と釈明。東電の対応に、岡村さんは「原発であれば、どんなリスクも考慮すべきだ。あれだけ指摘したのに、新たな調査結果は出てこなかった。
『想定外』とするのは言い訳に過ぎない」と話す」

ちなみにこの記事が出た2011年3月といえば、まだ事故の真っ只中で、原因究明もなにも実態さえよく分からない時期です。 

既にこの段階でマスコミの一部は、東電が主犯だという世論誘導を始めていたことがわかります。 

ならば、事故人為説なんですから、東電のような「悪人ども」にやらせずに、「正義の人」が運転すれば、原発はいきなり安全なものになってしまうという逆説にたどり着いてしまいます。

ひと頃の反原発派の主張は、このカン氏の煽動もあって東電悪玉説一色でしたが、さすがにどこかでまずいと気がついたのでしょうね。 

事故後しばらくして、原子力規制委員会が出来、反原発派の色彩の強い田中俊一委員長が仕切るようになると、これはまずい、このまま人為説を取っていると、新安全基準をクリアした原発から再稼働始めてしまうぞ、と気がついたわけです。 

そこで出てきたのが、現行バージョンの「天災不可避論」です。 

東日本大震災規模以上の災害が起きたら、新安全基準なんかコッパミジンだぞ、というわけです。 

そうなったら、1000ガルを超える振動が来るんだから、原発なんかグチグチャに壊れて、日本は誰も住めなくなるゾ、というわけです。 

法律的にもっともらしく書いていますからだまされますが、樋口判決も山本判決も大同小異で、「ハルマゲドンが来たら、原発があったらみんな死ぬんだぁ。死にたくなかったら原発を止めろぉぉぉ!」ということにすぎません。

Photohttp://www.athome-academy.jp/archive/engineering_chemistry/0000000155_all.html

話を戻しましょう。 

では、改めてお聞きします。福島事故は人為でしょうか、天災でしょうか? 

私はどちらでもないと思います。強いて言えば、天災的要素8分、人災的要素2分といったところでしょうか。 

事故は必ず起きます。それはヒューマンエラーかもしれないし、大天災かもしれません。

いずれにせよ、各々のケースでシミュレートしていけばいいのであって、大前提として「必ず事故はある」という前提から、議論を進めないとダメです。 

さて事故から4年たった2015年4月に、朝日が畑村洋太郎・元政府事故調査委員長のインタビューをとっています。
http://webronza.asahi.com/science/articles/2015032600003.html 

ちなみにこの時期は、吉田所長証言歪曲報道に対して、政府が調書を公開してしまったために、朝日が七転八倒していた時期です。
※吉田証言歪曲報道については関連記事全4回
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-f908.html 

畑村氏はまず、議論の前提から語り始めます。

「僕は原発について、事故は必ず起こるものだと思っていました。それほど確信があったわけではないけれど、薄々思っていました。そしたら、やっぱり起こったな、という感じがするんです。
 大事なことは、どんなに考えても、考えられない部分というのが残るんだ、ということです。どんなに考えても気付かない領域が残る。これを別の言葉で言えば、事故は必ずまた起こります、と言うことです。
事故が起こるから原発がいけないとか、そんなことをいいたいんじゃない。
ものの考え方の上で、事故は起こりませんと言い切ってしまうようなあのやり方、それを国民もテレビも新聞も今も求めているけれど、それは間違いだと思っているんです。」

まさに「失敗学」の泰斗・畑村氏だけあります。そのとおりです。 

福島事故は多様な総括がありますが、私はもっとも問われなければならないのは、「原発は事故を起こさない」という偽りの原発神話です

それについて、畑村氏はこう述べています。

「みんな自分の見たいところだけを見ていて、全体として考えなくてはいけないことをすっかり忘れていた。
そういうものの見方でやっていると、1番大事なことを見損なうぞ、と僕は思っていました。そしたら、ちゃんとその通りになったんですよね。それが、福島第一原発事故なんです。
僕の結論は、原子力の人たちって、自分の見たいところだけを見ているということ。全部を見ることには全く無頓着だったと思います。」(前掲)

「原発は安全である」という思想、あるいは病は実は、当時の立地反対を叫ぶ反原発運動に悩まされていた電力会社が作り出した虚像でした。

Photo_2http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/c10e70ccb1b0d546ed7a4720072c020c

当時私は、高木仁三郎氏に強い影響を受けた反原発派サークルを主宰していました。

福島事故後の今と違って、当時の反原発運動は、政治党派の介入もなく、妙な煽りをしないでコツコツと原子炉について学ぶという「高木学校」運動をしていたわけですが、既に建設反対運動はそこここで燃え上がっていました。

皮肉にも、かつては極初期の反原発派だった私は、福島事故後に徐々に彼らから離れ、いまやご承知のとおりです(苦笑)。

今でも高木氏が事故当時ご存命なら、あんな反原発派のファナティックな暴走はなかったのに、と悔やまれます。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-98c1.html

それはともあれ、建設反対運動の中で出てきた主張が、「原発は絶対に危ないに決まっているから、断固反対」というものでした。

するとどうなるかと言えば、原発を立地したり、原子炉を動かす立場の電力会社は「絶対に安全です」と言い続けることになります。

そのあたりの雰囲気を示すエピソードがあります。

1999年9月30日の茨城県東海村JCOの臨界事故では、作業員のミスによって死亡者2名、重症者1名を出す大事故でした。

JCOは住宅地にありながら、周辺に安定ヨウ素剤を配布していないことが後日の調査でわかります。

私の住む地域にも近く、私も、近隣のモニタリングポストに走った記憶があります。

後に来日したフランスの原子力関係者が、わが国の関係者にこのことを問うと、このように答えたそうです。

「とんでもない。日本で(事故の可能性を少しでも示すような)そんなことをしたら原発は一基もできません。事故ゼロと言って周辺住民を説得し、納得してもらっているのだから」。

このフランス人原子力技術者が、激しくのけぞったのは言うまでもありません。

これで分るのは、わが国には原子力の危機管理そのものが、完全に意識もろともなかったという衝撃的事実です。

日本原子力技術協会の前最高顧問だった石川迪夫氏が、こんな話を述べています。 

1992年、IAEA(国際原子力機関)で原子力事故に備えて指針を改定し避難経路を策定すべきという提案があった時、それを持ち帰った石川氏に対して日本の原子力関係者の反応はこうでした。

「そんな弱気でどうする。原子力屋なら絶対に放射能が出ない原子炉を作れ。」

とりようによっては強い安全への決意と取れないではありませんが、石川氏自身も認めるように、日本において「安全」という言葉の影に隠れて「万が一に備える」という視点がすっぽりと抜け落ちていたのです。

これが日本の原子力村の支配的「空気」でした。

これは「事故を言葉にしただけでも事故になる」、という言霊信仰である「原発安全神話」へとつながっていきます。

畑村氏はこう言います。

「原子力をやろうと思う時に、原子力は反対ですということだけを言う人たちがいたら、その人たちを黙らせるのには何がいいのか。安全ですというのしかない。だから、原子力は安全ですっていうのを言い出したのでしょう。
 でも、面白いよ。原子力は安全でしたって、誰が言い出したかって、ふた開けてみると、らっきょうの皮のようなもので、芯がない。俺が言い出したって言う人は誰もいない。安全だから事故はないのかと言うと、事故はありませんとは誰も答えていないんだよ。
 でも結局、事故はありますと言った専門家のところには、チャンスとかお金が行かない。干されちゃう、という格好で、安全神話が作られていったという気がしますね。」(前掲)

原子力事故が起きたらどうするか綿密に積み重ねて初めてその先に「安全」があるのであって、あらかじめ「原発は事故を起こすはずがない」では、個別具体の安全性対策が改良・進化していくはずもありません。 

そしてこの「原発安全神話」を後押ししたのが、先程述べた逆な立場から「絶対安全」を掲げる反対運動でした。

反対運動は、この樋口裁判官や山本裁判官のように、完全なゼロリスクを求めて運動したために、それを受ける側もまた「安全です」と言わざるを得なくなるというバラドックスを生む結果になってしまいました。

つまり、原発推進派と、反原発派は共犯関係にあるのです。

この奇妙な相互依存関係について畑村氏はこう述べています。

「-推進側だけでなく、社会の共同作業としてつくったと。
そうに決まっているよ。だから、推進派だけが言い出したことだと片付ける人は、自分は加担していなかったと言いたいから、推進派がやっていたことのように言っているだけ。どちらも原発の危なさを自分の問題として捉えようとしなかったという意味では、推進派も反対派も僕には同じように見える。
事故はこれからも必ずあります。今まで起こったものと同じものを繰り返すような愚かなことはしないという、決意をしなくてはいけない。だからといって事故がないというのは言い過ぎです。」(前掲)

 福井地裁判決と、今回の大津地裁判決は、また新たな「ゼロリスク神話」を作りだすことによって、福島事故後にようやく芽生え始めた「原子力のリスク管理」そのものを全否定しようとしています。

この人たちは、「いかなる安全対策も無効」という絶対的「天災不可避説」を取る以上、原子力規制や、対策などは考慮する余地なく、「説明・疎明が足りておらず、信じるに値しない」のです。

このような「ゼロリスク論」は、いまや「原発安全神話」が自滅した後の現在、きわめて危険な考え方なのです。

■追記 保全審理も山本裁判官のようです。うひゃー。最高裁事務総局、なんとかしろよ。司法の信頼が吹き飛ぶぞ。

「関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定で、関電が決定の取り消しを求めて申し立てた保全異議の審理を、決定を出した山本善彦裁判長が引き続き担当することがわかった。
 仮処分を求めた住民側の弁護団が16日、明らかにした。
 大津地裁によると、裁判官は3人で、山本裁判長ら2人が継続して担当する。同地裁には民事部が一つしかなく、一般的に裁判長を務める部総括判事は山本裁判長のみという。山本裁判長は、関電が申し立てている仮処分決定の執行停止も判断する。
 民事保全法によると、仮処分は、暫定的な措置を決める民事上の手続き。保全異議審は、当事者双方が立ち会うことができる審尋などを経なければならず、より厳格な立証によって審理されることになっている。
 ただ、裁判官の人選については同法にも規定がない。過去には裁判所の事情によって同じ裁判長が担当した例もあるが、裁判所関係者によると、別の裁判長に代えるのが通例という。」(読売3月16日)

| | コメント (3)

より以前の記事一覧