TPP

マーボウさんにお答えして TPPに「絶対賛成」も「絶対反対」もない

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マーボウさん。私は情勢次第では、TPPなどやらぬほうがいいと、今でも思っていますよ。 

ひとことで言えば、情勢が変わったのです。 

今は、かつて私が反対論を唱えていた当時のように、参加の是非が問われた時期ではなく、一定の結果が出た時代なのです。 

覚えていますか、TPP参加反対論でよくあったのは、「交渉したら米国の言うことを丸飲みにすることになる」、あるいは「例外なき関税撤廃を押しつけられる」というものでしたね。 

そうなりましたか? 

私は日本のコメ作りは国家主導の生産カルテルで、21世紀ずっとこのようなカルテルをはめているわけには行かないと思っていました。 

JAはいまでも自由化すればコメ作がダメにになるように言っていますが、本格的に大規模米作に取り組んでいる農家はそうは思っていません。 

いきなり自由化は困るが、時間をかけて段階を踏めば、むしろ大規模集約が可能だと考えています。 

今のように、生産制限をかけられて、せっかくのコシヒカリを米粉にしたり、飼料米に転換するなんて馬鹿なことはしたくないのです。

豚肉も同じです。結局は、今でなくてもいつかは来ると思っていたのが、TPPで現実化しそうなので、震え上がったわけです。 

かつて私が心配したのは、コメよりもむしろサトウキビでした。 

サトウキビが自由化されたら、沖縄農業の柱は崩壊するでしょう。特に離島はひどい打撃です。 

すぐに代替作物は見当たりません。 

すると台湾まで無人の畑が続き、島によっては人口減少すら生じるかもしれません。 

これは、文字通り国の安全保障上の問題でもあると考えました。 

しかし、ご承知のようにTPP交渉の結果、コメもサトウキビも、そんなことはなかったわけです。 

GMO(遺伝子組み替え農産物)にしても同じです。別に米国の言うがままになる必要もなかったし、実際、そういう結果になりました。 

交渉開始時には、最大限のリスクを想定しておきます。 

甘い見通しで交渉に臨んで、その結果、国がボロボロになるより、これだけのリスクがあるからしっかり交渉せよ、と国に主張したほうがよいのです。 

それがリスク管理の原則です。

だから、私は最悪シナリオをいく通りも考えました。それが、数年前の私のTPPに対する考え方です。 

いまでも左翼の人は大反対で、反原発・反基地に並んで反TPPをスローガンにしていますが、私からみれば硬直した政治的反対論です。

Photohttp://hatarogu.blogspot.com/2016/10/blog-post_32....

TPPもオスプレイと一緒で、機体の安全性が問題なのではなく、オスプレイやTPPを政争の具にしたいだけなのです。

あくまでもTPPは交渉事であって、そのつど変化するのです。 

変化は交渉主体が、自民党に替わったということです。 

こう書くと「安倍信者」といわれそうですが、彼が任命した甘利氏は相手方のUSTRのフロマンからも激賞されるようなタフネゴシエーターでした。 

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民主党に甘利氏のような人材がいますか?

2011年1月に、TPPをやると言いだしたのは菅直人首相でしたが、彼の内閣のメンツを見るとゾッとします。

2014年4月にオバマが日本に来ましたが、当時のオバマは米議会の圧力に抗しきれず、自ら日本に出向いてサシで呑ませようとしました。

内容的には、とうてい日本が呑めないような、無茶ぶりの「高い玉」だったと言われています。

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ここでオバマは、尖閣は日米安保条約第5条の適用範囲だという声明を出す手土産の代わりに、貿易上の米国の利害を呑ませようとしたわけです。

私は危機感を感じて、ここで安倍氏が屈したらたいへんな事になると思って記事を書いた記憶があります。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/m-91c3.html

ここで安倍氏がみせた外交手腕はすごかったですね。

尖閣を第5条の適用範囲とするという言質をとった上で、シラっとして「わが国も国会決議があって譲れないのです」と言い放ったのです。

オバマが使った論理を逆手にとったわけです。

さて、このように安全保障上のこととTPPが絡むのは当然のことです。

このことに関して、私は数年前まで安全保障とTPPは連動しないと思って、そう書いて来ました。

しかし、これも情勢が変化したのです。 

TPP交渉開始後になって、TPPに危機感を覚えた中国がAIIBを仕掛けてきました。 

中国主導の貿易ルールでアジア・太平洋圏の貿易を支配しようとしようというのが、その思惑です。 

今の南シナ海の人工島建設や、尖閣海域の緊張に見られるような、新冷戦が開始されたのです。

Photo_3ベトナム領を埋め立てて作られた中国軍基地

ここで日米が主軸となったアジア・太平洋地域の広範な貿易ルール作りをすることは、端的に中国と対抗する自由貿易圏作りを意味します。

これが軍事的政治的意味がないはずがありません。いわば経済上の集団的自衛権と言ってもよいでしょう。

これが、交渉参加した後に生まれた新たなTPPの性格です。 

このような経緯を踏んで私はTPPに対して容認に変化しました。その時もキチンと変化した理由を書きました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-092e.html

トランプが今になって脱退といっているのは、米国はTPP交渉が不調に終わったと認識し始めているからです。 

逆に、今、日本政府が米国の大統領選の動向を無視して批准を進めているのは、米国に「TPP交渉のやり直しはありえないですよ」という外交メッセージです。

おそらくこのあたりの機微は、オバマとの呼吸もあるような気もします。

民進党蓮舫代表のように、「新大統領に対して失礼にあたるのではないかとも思い、懸念しているからTPP批准反対」では、米国従属もいいところですね。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161111-00000591-san-pol

旧民主党もそうでした。

ハトさんが日米同盟に打撃を与えたために米国の怒りを買うと、次の菅氏は一転して「平成の開国」とTPPをぶち上げて、揉み手路線に転向してしまいました。

しかも菅氏の「鎖国」の代表的なものを、農業だと考えていました。

事実は、高関税農産物はコメ、コンニャク、落花生、麦、バター、砂糖ていどときわめて限られていて、農業の中核である野菜、果樹、鶏卵などは、ほぼゼロ関税でした。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-6b58-1.html

こんな知的レベルで「開国」なんかやられたら、たまったもんじゃありません。

確固とした外交・経済政策がないために、こういう反米と従属を繰り返すのがあの人たちです。

Maxresdefaulthttps://www.youtube.com/watch?v=jO4a6s7oRj4

まぁそれはともかく、トランプがなれば、当然チャラにされる可能性が出ていますが、かならずしもそうとだけは言えない可能性もあります。 

思い出してほしいのですが、そもそもTPPを提案したのは米国ですね。

外交案件は、政権が替わってしまえば白紙になるという性格ではありません。

それが出来るのは革命国家だけで、そんな国は国際社会で相手にされません。

トランプもTPPで交渉妥結した事実に制約を受けるのです。

そんなもんは前の大統領が勝手にやったんだ、などと言えば、米国の威信は崩壊します。

実際、世界最大の貿易国の米国にとって、TPPによるメリットは計り知れないのです。

トランプが憂慮する米国の製造業にとっても、大きなチャンスとなり得ます。

トランプがその辺が分からないような愚か者だとも思えません。

まぁ当分は、ありとあらゆるチャンネルを使って、TPPのメリットを分からせねばなりません。

それでもトランプが頑迷にノーなら、いっそう米国ぬきのTPP貿易圏を作ってしまって、そこから排除されることのデメリットをしっかりと味わってもらうのもひとつの手でしょう。

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TPP交渉大筋合意 新冷戦の視野で見ないとTPPは分からない

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TPP交渉が大筋合意しました。(※) 

「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する12か国は5日朝(日本時間5日夜)、共同記者会見を開き、交渉が大筋合意に達したとする声明を発表した。
 2010年3月に始まったTPP交渉は5年半を経て終結し、世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める巨大な経済圏が誕生することになった。
 記者会見に先立ち、甘利TPP相は記者団に「TPPは21世紀型のルール、貿易のあり方を示す大きな基本になる。この基本は世界のスタンダードになっていく」と意義を強調した。議長役のフロマン・米通商代表部(USTR)代表は記者会見で、「成功裏に妥結したと発表できることをうれしく思う」と述べた」(読売新聞 10月5日)

とうとうというか、やっとというか、私自身複雑な心境です。  

さて、このブログにおつきあい頂いている方はご存じのように、私は数年前までかなり強硬な反対派でした。 

現在の私は、慎重論的容認派に変化しています。 

思えば、実際に日本が参加したのは2013年からですが、その参加をぶち上げたのは、あのクレージー・カンでした。

今、再び反原発運動家に戻って、山本太郎氏などからいじめられて、さぞかし肩身が狭かったことでしょう(苦笑)。 

彼の吐いた、「日本市場は鎖国している。第3の開国だ」という浅薄な理解によるミスリードによってTPP議論が始まってしまったことは損失でした。

以後、マスコミによる「バスに乗り遅れるな」論と、「農業は遅れている」論が吹き荒れました。 

これによってTPP=農業バッシングという構図が出来上がってしまい、まるでTPPとはイコール農業問題であって、農業の利権構造を潰せば解決するという安易な空気が生れてしまいました。

農業団体がこぞって反対になったのは、既得権防衛というより、むしろこの農業バッシングに対する抵抗という側面もあったのです。

私が反TPPの論陣を微力ながら張ったのは、この時期でした。 

また、当時の民主党政権は円高とデフレ容認、増税という恐るべき経済政策の持ち主でしたから、もしあのまま民主党政権が続いていた場合、ちょうどこの10月から三党合意で第2次消費増税が始まっていたことになります。 

中国経済崩壊とシンクロして、素晴らしいタイミングで我が国経済をさらなるデフレの凍土の下へと封印してしまったことでしょう。 

それはさておき、TPPの推進は民主党から安倍政権に移ったわけですが、当初の日米首脳会談で、TPPがなんの為にあるのかという目的が示されました。

これはTPP交渉を大きく性格づけたという意味で、大変に重要です。

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安倍首相は、日米会談後の会見で、こう述べています。
2013年(平成25年)年2月23日内外記者会見、安倍普三内閣総理大臣内外記者会見

「TPPの意義は、我が国への経済効果だけにとどまりません。日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります。そして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わります。
こうした国々と共に、アジア太平洋地域における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益となるだけではなくて、必ずや世界に繁栄をもたらすものと確信をしております。
さらに、共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません」

ここで安倍氏はTPPは、経済だけに止まらない、新たな環太平洋圏の共通ルール作りが、大きな意味での安全保障へとつながっていくのだ、という認識を示しました。

当時の私は、尖閣などの狭い意味での安全保障問題でしか、この意味をとらえられていませんでした。不明を恥じます。

しかし、世界は急速に新たな冷戦構造へと、シフトを開始し始めていたのです。

旧ソ連の崩壊、中国の開放改革路線によって、冷戦は終了したと思われていました。冷戦は過去のもの、もう東西のにらみ合いは起きないと、誰しも考えていたのです。

仮に、紛争が起きるとすれば、東西の冷戦構造で押さえ込まれていた宗教対立や部族対立で、局地的に対処するしかないと思われていました。

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ところが違ったのです。この認識は翌年2014年に発生したロシアのウクライナ侵攻によって破られることになります。

次いで、ロシアと示し合わせたかのように、中国の大規模な南シナ海への海洋軍拡が開始されます。

Photo_6(写真 ベトナム領を埋め立てて作られた中国軍基地)

かつての冷戦は「自由主義vs共産主義」でしたが、そのメンバーは同じながら、新冷戦においては「独裁型管理国家vs自由主義国家」、経済的に見れば、「独裁型資本主義国家vs普通の資本主義国」という対立構造が生れました。

ロシアはかつての共産主義建設に失敗して亡国の苦渋を嘗めた後に、民主主義にも失敗し、結局はプーチンを戴く民族主義的帝政国家へと回帰していきました。

一方中国は、「金持ちたちによる、金持ちたちのための、金持たちの共産党」が支配するイビツな資本主義もどきを作り出し、中華帝国の再興を公然と口にするほどの台頭を示しました。

この中露二ヶ国の「遅れてやってきた帝国主義」によって、「21世紀の新冷戦」が始まることになります。

オバマにとってTPP交渉は、当初、国内向けの経済実績作りていどしか考えていなかったはずですが、新冷戦が開始されたことによって、その位置づけを大きく変えざるをえなくなりました。

AIIBのような中国のオレ様ルールで作る中華経済圏作りを阻止し、日米が主体となったTPP経済圏を作らねばならない必要が生れたのです。

この背景には、中国に対抗する米国のアジアを重視政策であるリバランス(再均衡)政策があります。

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ちょうどこの時期の2014年4月に訪日したオバマは、安倍氏との共同声明「アジア太平洋及びこれを超えた地域の未来を形作る日本と米国」で、明瞭にこのアジア回帰を謳っています。
※外務省HPhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page3_000756.html

共同声明にはこう述べられています。

「日米両国は,開かれた海を依り所とするグローバルな貿易網を有する海洋国家として,航行及び上空飛行の自由を含む国際法の尊重に基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調する。
日米両国は,事前に調整することなく東シナ海における防空識別区の設定を表明するといった,東シナ海及び南シナ海において緊張を高めている最近の行動に対する強い懸念を共有する。日米両国は,威嚇,強制又は力による領土又は海洋に関する権利を主張しようとするいかなる試みにも反対する」

日本のマスコミは尖閣が日米安保の範疇内だと大統領に言わせるどうかばかりに注目しましたが、ここで、共同声明として、さらに尖閣の先まで見通した「海洋秩序」に言及しているのは興味深いことです。

この「共同の海洋秩序防衛」は、さらに今年4月の日米防衛ガイドラインを経て、安保法制の整備へと具体化することになります。

Photo_2(写真 甘利大臣とフロマンUSTR代表。これほどやり合った仲も珍しいだろうが、いまや冗談を飛ばし合う関係に。今回の交渉で甘利氏は、驚くべきタフネゴシエーターぶりを発揮した)

また、経済連携に関してはこう述べています。

「日米両国はまた,貿易自由化を前進させ,経済成長を促進するため,多国間の金融及び経済フォーラムにおいて緊密に連携する。
両国の共同の取組は,自由で,開かれ,透明であり,技術革新を推進する国際的な経済システムを支持することに基づいている。
経済成長を更に増進し,域内の貿易及び投資を拡大し,並びにルールに基づいた貿易システムを強化するため,日米両国は,高い水準で,野心的で,包括的な環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を達成するために必要な大胆な措置をとることにコミットしている」

この日米共同声明は、焦点となっている尖閣にとどまらず、アジアの海洋秩序の自由を守り、米国の中国との領土紛争を抱える諸国への支援にも日本が関わっていく、と言っているわけです。

そしてそれの貿易・通商の共同のルール作りとして、TPPが存在するのだとしました。

TPP交渉は、日米双方とも、当初は自国の貿易上の利害にのみ拘泥すればよかったのです。

しかし、その時代は終わりました。いまや大きな機軸の転換が行なわようとしています。

三橋貴明氏や中野剛志氏などは口を極めて安倍氏を罵るでしょうが、この外部情勢の変化を見ないで、TPPを語るのは無意味です。 

※追記 「成立」と書きましたが、正確に言えば「大筋合意」です。成立するには、国会批准の手続きが必要ですので修正しました。

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鮨と晩餐会の裏での攻防事情

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どうも諸情報を総合すると、米首脳会議の裏でTPP交渉の息詰まる押し合いがあったようですね。

23日夜、鮨をつまみながら、オバマは米国の落し所をかなり細かい数字を出して安倍に言ったようです。

そうか、あのにこやかに見えた夕飯の席上で、そんな仕事をオバマはしていたというわけです。

一方安倍は、それをただちに「この線で交渉しろ」と甘利担当相に命じます。おそらく下のような漏れ伝わる数字に近いものが示されたと思われます。(※この数字は新聞情報を総合したものですが、未確認です。念のため)

・牛肉  ・・・関税は現行38.5%を豪並か、ギリギリ譲っても10%以上。
・豚肉  ・・・現行4.3%をやや下げるが、安い豚肉にかけられている差額関税は維持。
・乳製品・・・現行脱脂粉乳218%、バター360%は維持。ただし低関税輸入枠を増やす。
・コメ  ・・・死守。せいぜいが低関税枠の増加。
・麦  ・・・現行小麦252%、大麦256%は死守。ただし米国からの無関税枠は増やす。
・砂糖 ・・・現行砂糖328%、サトウキビ583%を死守。

ここで再び甘利-フロマン交渉が再開しますが、不調。

この報告を受けたオバマは、なんと翌日の宮中晩餐会の席で、安倍に近づき、「今夜中に結論を出させよう。コーヒーがいるかもな」とささやき、再びの甘利-フロマン会議。

フロマンはほんとうにスタバのコーヒーを持って現れたそうです。甘利さん、生涯で一番うまくないコーヒーだったことでしょう(笑)。

またもや徹夜の甘利-フロマン交渉があるわけですが、ところがフロマンはどのような指示をオバマから受けているのかわかりませんが、まったく頑として譲らない。

フロマンは、「このていどの譲歩しかでないなら、日米共同声明は出ないな」と、共同声明をカタに居丈高に攻めて来たようです。

フロマンは焦点を、豚肉の基準価格と自動車の安全規格に絞ったようです。

日本の自動車市場は開かれている」と主張する甘利に対して、フロマンは「米車が売れないのはお前らのこの規格のせいだ」とも言ったそうです。

おそらく甘利も、米国の自動車と自動車部品の関税撤廃くらいは言ったと思われます。もしそれすら言わないなら、単なる「本土決戦」でしかありません。

最後にはフロマンは今まで基本合意した別の事項まで蒸し返して暴れたそうです。とうぜのこととしてまたまた決裂。

日本側の公式発表では「大筋合意の道筋が見えた」とのことですが、それは何がデッドロックなのかはっきりしたていどのことです。

日本側から見れば、最大のデッドロックはフロマン自身でしょうに。

まぁこれで、なんとかまとめたいという日本側と、まったく一歩も譲れない米国という図式がはっきりしました。

自動車の安全基準などは、菅官房長官が言うように譲りようがないので、もうひとつの豚肉の基準価格を廃止すれば、かなり歩み寄れるでしょうが、ほんとうにこれでいいのかということを国民が議論せねばおかしいのです。

ところが、TPPは今までなんどとなく指摘してきているように、外交交渉のためにブラックボックスです。

今出ている「情報」も、甘利担当相がいっさいの取材を拒んでいるために、TPPを進めたい経済産業省と止めたい農水省が流すリーク情報を、賛成反対の立場で憶測する様相を呈しています。

そのうちUSTRの広報誌インサイドUSトレードが都合いい情報を流すことでしょうから、もはや藪の中です。

いずれにせよ、二国間交渉が妥結して初めて国会批准の段取りとなって国民に内容が分かるようなことに、国と国民の生活を託していいものでしょうか。

そう考えると、フロマンの頑迷さに感謝せねばならないのかもしれません(苦笑)。

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豚の差額関税制度は国内畜産を守っていない

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今回の日米交渉でひときわ目立ったのが豚肉です。宮中晩餐会で羊肉が供されたので、これもTPPへの配慮か、などと言われてましたね。わけないでしょう(苦笑)。

あのフロマンは、今回のマラソン交渉でもしつこくこの豚肉差額関税を叩いたそうです。さすが、敵ながら着眼点はいいですね。こちらの矛盾点を狙っています。

輸入豚肉は「差額関税」制度を農水省は1971年から作っています。

これをマスコミが「安い豚肉に対しての制度」という実にイイカゲンな解説をしていますが、違います。どうしてあの人達はこうも不勉強なんだろう。

たぶん農水省の説明を鵜呑みにしたんでしょうかね。

この豚肉差額関税制度は、まず「基準輸入価格」というものを農水省が設定します。

仮に546円/㎏(2012年現在)だとすれば、それより安い輸入豚肉はこの差額を関税として徴収する仕組みです。

一方基準輸入価格より高い輸入豚肉は一律4.3%の関税をかける仕組みです。

この差額を関税で徴収するというやり方なんですが、裏があります。

豚肉には価格が高いヒレやロースなどの部位と、ももや肩肉などの安い部位がありますが、安いモモなどはハムやソーセージにするために食品会社が輸入しています。

食品会社は安い加工用肉をそのまま輸入してしまえば、差額関税をがっぽりかけられまてしまいますから、なんとか基準価格まで持ち上げて関税を減らそうとして高い部位であるヒレ、ロース肉も一緒に輸入しています

この方法をコンビネーション(組み合わせ)輸入と呼び、どの食品会社もやっている方法です。

すると、どうなるのでしょう?このコンビネーション輸入で一緒にセットで買いこんだ高い部位のヒレやロース肉は、ハムにするのはもったいないので、一般市場に流します。

しかも往々にして、元値が安いので食品会社はダンピングまがいのことをしています。

これが一般のスーパーに並ぶ安い米国産などの豚肉の出所です。これてはかえって国産豚肉の競合相手を量産しているようなものじゃないですか。

なんの国内豚肉の保護にもなっていないことがお分かりになると思います。まったく馬鹿な制度を作ったものです。

長くなりますから、またの機会にしますが、バターの高関税も農水省傘下の特殊法人である「農業産業振興機構」がバター輸入を独占していることから発生しています。

といってもこの振興機構が実際に輸入業務をしているわけてはありません。するのはあくまでも一般輸入業者です。

輸入業者は、2次関税を払った上に、いったん機構に輸入バターを伝票上買い上げてもらい、農水省の定めた806円/㎏の輸入差益を支払わねばなりません。

機構はこのトンネル差益だけで年間11億ももうけています。この一部が補助金として畜産農家に行くのですが、その権限は農水省の天下り省益です。

日本の農産品高関税には必ずといってよいほど、農水省の利権がからまっています。私たち農家にはなんの関係もないことです。

日本の農産物はその高品質と新鮮さで支持されています。関税などによって守られてはいません。

数少ない高関税は、必要があってそうしていることに、農水省が自分の省益を乗せているにすぎません。

私はこのような複雑な仕組みを止めて、従価課税のスッキリした関税方式にしないと、相手国に攻撃材料を与えることなると思っています。

甘利さん、次回の閣僚級交渉では、フロマンに「豚肉差額関税はやめた。全部従価課税だ。文句あっか」と言ってやりなさい。

※お断り 安保第5条について初めにアップしましたか、いいかげんなマスコミ報道が続いているようなので、急遽、豚肉関税と差し替えました。第5条は今週末にアップする予定です。

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どうにか押し返した日米首脳会談

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最悪の場合は腹を括らねばという思いで正午の日米首脳会談の会見中継をにらんでいた農業者は多かったのではないでしょうか。私もそのひとりでした。

NHK6時のニュースによれば、フロマンUSTR代表は閣僚級会議で、「そんな程度の妥協しかできないのなら、共同声明は出せないな」とまで言ったそうです。

やれやれ、毎度のことながらこの人ときたら・・・。

私は最悪の場合、日本側は「大きな視点に立って」という政治的な妥協が図られる可能性が高いと見ていました。その意味で安倍首相と甘利大臣は、よく踏ん張ったと評価します。

甘利さんも体調不良のところをフラフラになりながら、このマラソン交渉を乗り切ったのだと思います。夕方の顔色など黒ずんでいました。少しお休みください。

一方、オバマ大統領にとっては、日本で天皇から首相までの蕩けるような「おもてなし」をしてもらい、リニアのライセンス料無料のお土産までもらって、日本に実を取られたという気分でしょう。

Imp14042422490003p1     (写真 宮中晩餐会で日本の最強外交兵器の「攻撃」を受けるオバマ大統領 産経より)

今回、首脳会談の裏で戦われていた甘利-フロマン交渉において、最終的には日米交渉の焦点は日本側が死守したい農業5品目関税と、米国の自動車安全基準の2点に絞り込まれていたと思われます。

日本が出したオファーはたぶんこのようなものだったと思われます。

牛肉  ・・・関税は現行38.5%を豪並か、ギリギリ譲っても10%以上。
・豚肉  ・・・現行4.3%をやや下げるが、安い豚肉にかけられている差額関税は維持。
・乳製品・・・現行脱脂粉乳218%、バター360%は維持。ただし低関税輸入枠を増やす。
・コメ  ・・・死守。せいぜいが低関税枠の増加。
・麦  ・・・現行小麦252%、大麦256%は死守。ただし米国からの無関税枠は増やす。
・砂糖 ・・・現行砂糖328%、サトウキビ583%を死守。

おそらく、日本側はフロマンの「すべてノー」に屈したら、4月増税も加わって政権が潰れるという危機感を持っていたはずです。

たとえば焦点になったはずの牛肉では、20年ていどの最大幅の猶予期間を設けた上で、輸入量が増加した場合の安全装置であるセーフガードをつけて、少しでもオージー水準前後で妥結したかったと思われます。

ちなみにオージーとのEPA妥結内容は
・牛肉関税・・冷凍品35%から18年かけて19.5%に引き下げ
・      ・・冷蔵品15年かけて23.5%に引き下げ
・過去5年間の輸入量水準を超えた時に38.5%に戻すセーフガード

一方、米国側は、これ以上交渉が停滞するなら日本市場でオージービーフに先行されてしまうという危機感と、秋の中間選挙を前に安易な妥協もできないというアンビバレンツな立場を、日本側に読まれたという焦りがあったのは確かでしょう。

またもうひとつの焦点になっている自動車ですが、菅官房長官の会見では日本側は安全基準を楯に取っているようです。

自動車問題は、つまるところ米車が右ハンドル仕様を改めないために起きています。

欧州も含めて今や右ハンドル一色になっている国際環境を無視して、一部の郵便車を除いて左ハンドルしか作らないという米国の唯我独尊ぶりが祟っています。

失礼ながら、今や左ハンドルが好きな日本人は、所ジョージくらいなもんです(笑)。

一部のアメ車マニアしか喜ばない車しか作れなくて、非関税障壁もないもんです。

あとは左側通行用になっているヘッドライトの変更や、バックミラーの曲率(アメリカは望遠レンズ)、キーレスエントリーの周波数の変更を行なえばいいだけです。

もし日本側が譲るとすれば、登録時の排ガス再テストでしょうか。現行だと高い料金が必要なので、これの簡素化はあり得るかもしれません。譲ってもそのていどです。

日本車が米国市場でどれだけの血と汗の苦労をしたかに較べれば、バカみたい簡単なことばかりです。もうそれだけの力がデトロイトに残っていないということなのでしょうか。

そんなに日本に売りたければ、日本国内に工場作りなさいと言いたいですね。

というかお願い、世界でも最も目の肥えた日本の消費者に買いたい車作って。

というわけで、オバマは宮中晩餐会に見送られて複雑な心境で、パククネが待つ韓国に今日発ちます。

というわけで、わが国は、辛勝しました。

         ~~~~~~~~~~~~~~

日米、大筋合意至らず=TPP2国間協議
時事通信 4月25日(金)7時57分配信

 甘利明TPP担当相は25日朝、東京都内で記者会見し、環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米2国間協議の現状について「進捗(しんちょく)はあるが、大筋合意というわけでない」と述べた。

日米、声明保留し神経戦=TPP大筋合意へ難航 
時事通信 4月24日(木)21時36分配信 

 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米の2国間協議は難航し、安倍晋三首相とオバマ米大統領による首脳会談後も共同声明を発表できない異例の展開となった。日本の政府・与党内には、TPPで米国が納得する成果がなければ声明の発表凍結もあり得るとの警戒感さえ浮上。双方は大筋合意に向けて神経戦を続け、日本側関係者からは「共同声明を人質に取られた」との声も上がった。

 両首脳は会談後の共同記者会見で、中国へのけん制を念頭に、TPP交渉の妥結がアジア太平洋地域に占める「戦略的な重要性」を強調した。安倍首相はそれを踏まえて「大きな観点から判断していきたい」と述べ、米国との2国間協議を重視する考えを示した。

 ただ、同時に「国会決議をしっかりと受け止め、国益にかなう最善の道を求めていく」とも指摘。コメや牛肉・豚肉など農産物重要5項目の関税維持は容易に譲らない姿勢もにじませた。これに対しオバマ大統領は「日本は農産品、自動車分野で市場の開放度が制限されている。今こそ解決すべきだ」と、日本の歩み寄りを強く促した。

 交渉の早期妥結を目指す点で、日米は一致する。ただ、個別の内容に踏み込むと、安易な妥協が許されない国内事情を共に抱え、柔軟な構えで交渉に臨むのは難しい。首脳会談や閣僚による再協議でも着地点に達することができず、交渉の出口を探る折衝が行われた。 

【TPP】米国仕様車の認証要求 ブレーキなどの安全・環境基準 日本慎重、障害に

産経4月18日

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の日米協議で、米国産自動車の日本輸出に関し米国内で使っているメーターや制御性能などの仕様を日本でも認めるよう米側が要求していることが17日、分かった。24日の日米首脳会談で目指す日米協議の大筋合意に向けた障害となりつつあり、豚肉や牛肉の関税とともに閣僚交渉で対立している。

 米側は、日本の自動車に関する安全基準や環境基準を「参入障壁」とし、規制緩和を要求。米国内で生産した自動車で使っている安全基準に関わる数値や名称を、日本でも認めるよう主張している。ブレーキなど自動車の制御に関する基準も認証するよう求めていて、基準変更に慎重な日本と対立している。

 米側は、国内仕様の安全基準を日本に認めさせることで、輸出に際して日本の安全基準に合わせる手間や改造コストを圧縮できるため、より安い価格での販売が可能になる。

 一方、政府は交通事故防止のために設けた国内の安全基準を緩和した結果、事故が増える事態を懸念し、反対姿勢をとっている。

 政府関係者は「農産品関税よりも妥協点を見いだすことが難しく、最後まで協議は難航する」と指摘。自民党の石破茂幹事長は17日のBS朝日の番組収録で、日米協議について「まとまらなければいけないが、国益を損ねて重要産業を壊滅させてまでまとめる意味はない」と強調した。

オバマ大統領、「尖閣の安保適用を明言」 
CNN4月24日

東京(CNN) 日本と中国が領有権を主張している尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡り、読売新聞は23日、オバマ米大統領が同紙の書面インタビューで、尖閣諸島は「日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」と明言したと伝えた。

オバマ大統領は読売新聞が提出した中国が領有権を主張する尖閣諸島についての質問に答え、「我々は、これらの島々の日本の施政を阻害するいかなる一方的な試みにも反対する」と述べた。

尖閣諸島を巡っては、クリントン前国務長官から2010年と13年の日米外相会談で同様の発言があったものの、現職の米大統領が日米安全保障条約の適用を明言したのは初めて。同領土を巡る衝突が起きれば米国が軍事介入する姿勢を示唆した発言といえる。

オバマ大統領はまた、中国と「直接かつ率直に取り組んでいく」との方針を示した。さらに「紛争は脅しや威圧ではなく、対話と外交で解決する必要がある」と強調した。
これに対して中国外務省の秦剛報道局長は、「米国は真実を尊重し、一方の側に立つことなく、言動に注意を払い、平和と安定を保たなければならない」と強調した。

日本政府が12年に尖閣諸島を国有化したことをきっかけに中国では激しい反日運動が起き、両国間の緊張は一気に高まった。中国の船舶や航空機が尖閣諸島への接近を繰り返し、日本が戦闘機を緊急発進させる事態も起きている。米国は同諸島の領有権に関して中立の立場を維持する。
一方、米マサチューセッツ工科大学の国際関係学者、テイラー・フラベル博士は、尖閣諸島に対する米国の政策に変化はなく、それを伝える人物が新しくなったにすぎないと指摘している。

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オバマ来日 安倍首相、愛国者なら日和るな!

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オバマ大統領が明日来日します。正直、なんだかなぁという感じです。なにしにくるんでしょうかね。

オバマは日米友好一般で来るのではありません。それは彼がミシェル・オバマ夫人を同行しなかったことからも分かります。

国賓待遇の大統領に夫人が同行した場合、外務当局は「夫人用プログラム」を作って、やれ古都散歩だとか、お茶のお点前などというものを用意します。ブッシュ・シニアが来た時がそうでした。

そのために訪日プログラム全体がスイートになってしまいます。

もし日本の友好関係を取り付けるのが目的ならば、オバマは中国でやったような夫人と娘を1週間でも「人質」に差し出すことを厭わない男です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-6fdb.html

夫人と娘を同行しないということはオバマの訪日目的が極めて事務的ということを物語っています。

目的は間違いなくひとつ。膠着しているTPP交渉の突破口を、日本でこじ開けることです。

そのためにオバマは、今フロマンUSTR代表に粘れるだけ粘らせて一杯にまで上げている交渉ハードルを、首脳会談でちょっとだけ「譲って」みせて、首脳間の「高度な政治的判断」で妥結に持ち込む考えです。

残念ながら、今の流れでは、安倍首相はこれに抗すことが出来るか、極めて微妙な状況です。

安倍首相は先日こう述べています。

「日本と米国という大きな経済が、そして自由と民主主義、市場主義経済の価値を理解している2つの国がリードして新しいルールを作ることに大きな意味がある。もっと大きな視点でTPPをみる必要がある」(ロイター4月17日 欄外参照)

なんですか?この「(数字にこだわらない)もっと大きな観点とは」?

政治家がこういう政治的言い回しを使い始めると、「政治的判断」で妥協される可能性があります。極めて危険な徴候です。

政治家は、TPPについて明確な具体論を示すべきです。国民にとって、なにがTPPをやれば得か、損かを明示すべきなのです。

それを今更、交渉のどん詰まりに来て、「大きな視点で」などという言い方で逃げないでほしい。

巷間伝えられるように、牛肉関税をオーストラリアを凌ぐ10%以下で妥協する可能性かありえます。これを堤の一穴にされたらたまったものではありません。

さて、読売新聞によれば、オバマは「尖閣は安保第5条の適用範囲」という発言をしたようですが、第5条には「相互の国の憲法の制限内で」という注釈つき文言が付帯しており、これによれば大統領が戦争権限を行使したとしても、60日以内の議会の承認が必要です。(欄外参照)

今の内向きの米国が、中国と軍事的に事を構えるという可能性は、ウクライナを見れば分るように、限りなくゼロと言っていいでしょう。

また東ウクライナ情勢が爆発し、NATO軍とロシア軍との軍事衝突といった事態になった場合、米国には東アジアで軍事力を行使する力量はありません。

つまり、「第5条の範囲内」と大統領か言ったことは意義あるものの、残念ですがリップサービスにすぎません。

たちは、オバマと安倍が、銀座でなにを喰ったのかではなく、TPPの安易な妥結を警戒する必要があります。

何度も書いてきていますが、米国はTPP交渉において何ひとつ身銭を切っていません。

彼らの言う「妥協」とは、自分たちの法外な要求を少し負けてやった、ありがたく思え、というふざけたものだからです。

※お断り  当初、シリーズ3回をアップしましたが、オバマ訪日とTPP問題が長くなりすぎたために、明日に回しました。

■写真 ちょっと前が盛りでした。蝋梅(ロウバイ)。まさに香水のようなかぐわしい香がします。

■[東京 17日 ロイター] -安倍晋三首相は17日に都内で講演し、交渉が佳境を迎えた米国との環太平洋経済連携協定(TPP)妥結に意欲を示した。緊張関係が続く中国については、「力による現状変更にチャレンジしている」と強くけん制。23日から訪日する米オバマ大統領と日米同盟の重要性について確認する考えを示した。

その上で、来週のオバマ大統領との会談で「アジア太平洋地域の平和と繁栄、安定に貢献する日米同盟ということを2人で強調したい」と述べた。

このほか安倍首相は法人税について、日本企業が世界で競争していることや、外国企業が対日直接投資をする際の判断要素になっていることなどを念頭に、「改革に取り組まないといけない」と語った。

関係改善の兆しが見えない中国については、経済的な結びつきの強さに言及する一方、ウクライナ問題を引き合いに出し、「東シナ海、南シナ海で力を背景とする現状変更にチャレンジしている」と発言。「中国が責任ある国家として平和的な台頭をしていくよう、多くの国々で促していく必要がある」と語った。

その上で、来週のオバマ大統領との会談で「アジア太平洋地域の平和と繁栄、安定に貢献する日米同盟ということを2人で強調したい」と述べた。

■ロイター4月17日 安倍首相TPPについて、「日本と米国という大きな経済が、そして自由と民主主義、市場主義経済の価値を理解している2つの国がリードして新しいルールを作ることに大きな意味がある」と指摘。

オバマ大統領の訪日を来週に控え、ワシントンで甘利明経済再生・経済財政政策担当相とフロマン米通商代表部(USTR)代表が大詰めの協議をしていることに触れ、「数字にこだわることも重要だが、もっと大きな意味があるという高い観点から、最終的に良い結果を得て妥結を目指していきたい」と語った。

■米大統領「尖閣に安保適用」…書面インタビュー
読売新聞2014年 04月23日

【ワシントン=井上陽子】米国のバラク・オバマ大統領は21日(日本時間22日)、国賓として23日から訪日するのを前に読売新聞の単独書面インタビューに応じた。
 オバマ氏は、中国が挑発行為を続ける沖縄県の尖閣諸島について「日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」と述べ、歴代大統領として初めて安保条約の適用を明言した。集団的自衛権の行使容認に向けた安倍内閣の取り組みを全面支持する考えも表明した。
 集団的自衛権の行使容認について、米大統領が支持を表明したのは初めて。
 オバマ氏は回答で、「国際的な安全保障に対するより大きな役割を果たしたいという日本の意欲を、我々は熱烈に歓迎している」と述べ、「安倍首相を称賛する」と語った。「国連平和維持活動(PKO)も、日本の参加拡大により恩恵を受けるだろう」とも指摘し、首相の唱える「積極的平和主義」に期待感を示した。「私の指揮の下、米国は(アジア太平洋で)日本のような同盟国と緊密に連携し、再び主導的な役割を果たしている」と述べ、アジア重視の「リバランス(再均衡)」政策を自らの主導で進めていると強調した。

■日米安全保障条約 第五条 
「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。  前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。 」

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TPP 米国がこれほどまで頑強なわけ

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バラク・オバマ大統領は、大学時代のダチだったフロマンUSTR(米国通商代表部)代表を使ってゴネまくっているようです。

オバマは、国内の経済財政問題に有効な手だてを打てず、 シリアでの赤恥、ウクライナでの火遊びの失敗と失政の連続でこのままだと11月の中間選挙では歴史的大惨敗必至と言われています。

かつての支持層だった都市リベラル層からは愛想を尽かされ、伝統的保守層からも失笑される存在にすらなってしまいました。

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合衆国海軍の原子力空母には、歴代の顕彰される大統領の命名するしきたりがあるのですが、ロナルト・レーガンは実在する巨大空母、オバマはボロボートといったありさまです。

なぜロバかって、まぁご想像どおりです。

オバマは既に立派なレームダックというかレーム・ドンキーです。

だからこそ、今のオバマは国内雇用改善のためにTPPをなんとかモノにしたいと焦っていると思われます。

3月末のオランダ核セキュリティ・サミットでは、安倍首相との会談で、他に沢山話すことがありそうなものなのに、核問題などそっちのけでTPP交渉の推進一色だったそうです。

やれやれ、もはや妄執の類ですね。だからこそ4月24日の首脳会談は「国賓で行ってやるから、お前が折れろ」というのがオバマの言い分なようです。

現在の状況は漏れ伝わるところでは、2月のシンガポール閣僚会合では、発展途上国と米国の対立で座礁

それではエライさん同士角つき合わせても仕方がないので実務者レベルでなんとか打開の糸口を、ということで開かれた3月の事務方交渉もみごとに物別れ

ならば搦手から攻めてみようということで、日豪EPAで米国も 関心を持つ牛肉関税を引き下げ、代わりにオージーの自動車関税を締結と同時にゼロとして、米国にプレッシャーをかけてみようということになりました。

いちおう日豪EPAをまとめてみると
・牛肉関税・・冷凍品35%から18年かけて19.5%に引き下げ
・      ・・冷蔵品15年かけて23.5%に引き下げ
・過去5年間の輸入量水準を超えた時に38.5%に戻すセーフガード

評価は難しいところですね。15年から18年という猶予の幅をどう読むかです。むしろ牛の畜産農家にお聞きしたいところです。

ただ交渉自体とすれば、オージーが車を作っていないことを考えると引き分けといったところでしょうか。

なぜか妥結を急ぐ日本側としてはこの日豪EPAの成果を引っさげて米国のフロマンを迎撃したかったわけですが、さすがは我らの裸のマッチョ・フロマン。

すごい「妥協案」を引っさげてきました。なんと言ったと思います。「関税撤廃にこだわらず、 一桁台ならいい」(爆笑)

もう私は笑いましたね。米国の「妥協」とは、こんなていどです。

オレは前にこっちは全部ノーだが、お前は全部イエスと言えと言った。今度はオレが折れてやる。オレはノーだが、お前はちっとくらいはノーと言っていい」。ありがたや(笑)。

すごいね。米国の「妥協」って、あいかわらず自分は全部ダメだが、相手国への要求を少し負けてやる、なんですよ。

フロマンの交渉って、相手を殴り倒すことだと思っているようです。交渉とは互いに譲りあって落し所を探ることじゃなかったのですかね。

そもそも日豪合意の冷凍牛肉19.5%ですら国会決議に反するのに、それよりもさらに低い一桁台ですって。話になりませんね。

オージーの半分以下にしろということなど論外。バッカじゃないか、頭を冷やせ、フロマン。

たとえば米国は、自動車関税で、「トラック」に分類されたSUV車になんと未だ25%という法外な関税をかけています。

SUV車というのはスポーツ多目的車のことで、ジープ・グランドチェロキー、フォード・エクスペディションといった米車が日本で競争力を持つ数少ない分野です。 

もちろん競争相手は多く、トヨタ・ランドクルーザー、英国ランドローバー・レンジローバー、独ベンツGLクラスなどの強力なライバルかひしめき合っています。

これらライバルに25%もかけているのですから、米国っていつから発展途上国になったのでしょうね。

ちなみに日本は自動車関税ゼロです。

ついでにこんな状況なのに、安倍首相はどうも24日の日米首脳会談までまとめたいという思いが強いようです。

哀れ、舌癌から退院したばかりの甘利大臣は、16日に訪米して交渉を詰めてくるといいます。なにをどう詰めるのでしょう。見物です。

自民党内は農水議員のみならず、半数以上の議員がカンカンになっています。

11日に農林水産戦略調査会、 農林部会、農林水産貿易対策委員会が緊急の合同会議を招集しました。

TPP交渉における 国益を守り抜く会を開催し、国会決議や党の公約を逸脱するものは絶対に受け入れられない、少なくとも日豪の合意がレッドライン( ぎりぎりの越えられない一線)であるとする決議」(山田としお参議院議員メルマガによる)をしたそうです。

ちなみに山田議員によれば、石破幹事長も 「日豪で決めた内容をさらに下回るものなど、豪州との信義に反し、 徹底した日本への不信を生む。国内では自民党は嘘つき政党だ とする非難を生む、とんでもないものだと怒り心頭」だそうです。

まさに石破さんの言う通りです。こんな傲慢極まる米国のヤクザまがいの要求に屈したら、今後日本は関税交渉はできなくなります。

百歩譲って日本がこの米国要求を丸呑みしても、USTRはTPPがらみの交渉で、一括承認手続きができる「大統領貿易促進権限」(TPA)がありません

ですからこの弱い権限しかないからこそ、ゼロでなければイエスと言わないというフロマンの強硬無比な姿勢か生まれているわけです。

そもそもTPP交渉に関しては、オバマの与党民主党すら全米自動車労組などの反対で敵に回っていますから、11月中間選挙まではTPAが議会から与えられる可能性はゼロです。

だからこそ、オバマにとって、議会がTPAを出すしやすく材料が必要なのです。

だから、従来のネゴシエーターではなく、クライアントの利害第一の弁護士のフロマンを送り込み、非妥協的に重要5品目に関して関税撤廃を主張し続けているのです。

にこれでわが国が折れなかった場合でも、「日本の頑強な保護主義政策のためにTPP交渉全体が挫折した」と喧伝できます

おそらく、オバマはもうTPP失敗の後の言い訳まで考えて動いているのです。

これに関しては TPP交渉に事前加盟交渉時に自動車関税で譲ったことが悔やまれます。

あれで、オバマは安倍は脅し上げれば、首脳合意の重要5品目も譲ると錯覚したのでした。

この強硬姿勢に負けると、「政治判断」ひとつで日本は牛肉関税をオージー並の10%台まで下げる可能性もなしとは言えません。

オバマ来日までが山場です。日本政府が安易な妥協をしないように、警戒しましょう。

                 ~~~~~~~~~~~~

■日米TPP協議継続…牛肉関税10%前後攻防か
読売新聞

2014年04月11日

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を巡り、甘利TPP相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表が10日、東京都内で最終日となる2日目の閣僚協議を行った。                            

 甘利氏は協議終了後、記者団に「一定の進展はあったが、まだ相当な距離感はある」と説明した。フロマン氏も「いくらかの前進はしたが、重要な点において、かなりの隔たりが残っている」と述べた。

 焦点である牛肉の関税について、米国側が現在38・5%の日本の税率を限りなくゼロに近い水準に引き下げることを求めたのに対し、日本側は20%前後に引き下げる考えを示した。

 両国の意見の隔たりは大きく、今週末まで事務レベルの交渉を続ける方針を確認し、閣僚協議を終えた。甘利氏が来週にも訪米し、フロマン氏と再協議する可能性がある。交渉関係者の間では、最終的な着地点として、両国の主張の中間となる10%前後の攻防になるとの見方が浮上している。

■【ワシントン=斉場保伸】環太平洋連携協定(TPP)交渉妥結に向け、甘利明TPP担当相は十五日、米通商代表部(USTR)のフロマン代表とワシントンで会談した。会談後の記者会見で甘利氏は「農産品分野などについて両国の立場の隔たりを狭めることの重要性で合意した」と述べ、農産物の関税の扱いなどで依然として隔たりがあることを明らかにした。

会談は予定よりも三十分オーバーし、二時間半に及んだ。甘利氏は「話し合いが膠着(こうちゃく)状態になっていたが、(対立点を)収れんさせていく手法について共通認識を持てた」と成果を強調した。

 しかし、具体的な中身についてはこの日の会談で決着しなかった。甘利氏は「個別の品目の話もした。具体的な着地点が確定したわけではない。こういう方向で今後双方が各論に踏み込んでいこう、ということにした」と説明した。二十二日から始まるシンガポールでの閣僚会合に向け、事務協議を進める方針だ。

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農業関税は世界最低クラスだ

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毎度のことですが、TPP交渉になるとマスコミはなぜか農業関税だけを取り上げます。

まるで、農業界との公約で農業重要5品目を死守しているからTPPが妥結しないのかという錯覚かうまれそうです。

いままで再三再四取り上げてきましたように、まったく違います。

米国がTPPで牛肉や豚肉の関税を言い募って来るのは、これがわが国の攻め口だと思っているからで、米国のほんとうの狙いは保険や医療分野などです。

おそらく今回も、農業外の分野についてそうとうに突っ込んだことを交渉しているはずです。

ただ、自民党が選挙公約として重要5品目という形で農業関税を死守することを誓ったために、それだけがクローズアップされているだけです。

まずは「そこからですか」という所から見ていきます。

下に、主要国の農業関税のグラフを載せておきます。資料は1999年とやや古いのですが、特定国同士のFTA・EPA関係にない限り、そう大きな変化はないはずです。

一目でわかるように日本は平均11.7%で、下から2番目の優等生です。そもそも、工業製品輸出国が保護関税国であるはずがないでしょう。

唯一米国には負けていますが、これは、米国が特異な輸入消費大国だからです。

関税はその国特有の事情があるので比較すること自体がナンセンスなのですが、どうしても比べるのなら、国の面積や生活レベル、工業化水準が近いEUでしょう。

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                       (図 鈴木宣弘氏による)

EU平均は19.5%で、ノルウエーなどは実に127%です。新興国はインドが124.3%、ブラジルの35.3%など軒並み高間税で農業をガードしているのがわかります。

これでも日本の農産物関税が突出して高いというなら、なにを見てそう言っているのか論拠のデーターを教えてほしいものです。

よく情緒的に、わが国の農産物の関税がバカ高いので、消費者は世界一高い食糧品を食べさせられているというデマを言う者が絶えませんか、冗談ではありません。

野菜、鶏卵、果樹などの主要農産物の多くは無関税か平均3%以下。ほとんど関税に関してはノーガードだといっていいでしょう。

そういえば、放射能風評時に、「高関税でヌクヌクとしていたくせに、今は放射能の農産物を出荷するのか、TPP賛成!輸入食糧を食べさせろ!」と叫んだバカがここにも押しかけてきことを思い出しました(笑)。

それはさておき、逆に高関税のほうが例外にもかかわらず、この「例外」ばかりがマスコミで取り上げられるためにこんなミスリードが生まれています。

私は、小麦などの国が買い上げて統制したり、豚肉のような差額関税を作って貿易を歪めるのには反対ですが、必要な関税はすっきりとプラスする従価制度にして残すべきだと思っています。

そうでもないとまた、あのマッチョのフロマンに叩かれますよ。

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米国をG2論に走らせてはならない

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前回オバマが「G2」(米中二大国)政策をとった場合の憂鬱な想像をしました。

その場合、日本が置かれた条件を思いつくままに上げればこのようなものです。

①人口1億2千万人、世界屈指の技術力をもつGDP世界3位規模の工業国である
②日米同盟崩壊によって、集団的防衛体制(日米安保、NATOなど)を持たない孤立した国家となる
③エネルギー自給率、食糧自給率共に低く、シーレーンによって輸入されている
④防衛力は中規模であり優秀であるが、専守防衛のみに偏っている

⑤MD(ミサイル防衛)はすでに持ち、潜在的核兵器開発能力を持つ
⑥憲法問題など多くの防衛関係の法整備が不十分である

以上のような国が、史上かつてない軍拡膨張し続ける中国との最前線に孤立して立たされるとした場合、かつてのフランスのような核武装と軍拡の選択をとらざるをえないと想像しました。

ただフランス型といっても、フランスのように海外植民地を持たないので、もっとコンパクトなものになるでしょう。

いずれにしても、この道は修羅の道です。できる限り回避せねばなりません。

ところで、現時点でオバマは外交に自信を失い、やることなすことすべて裏目裏目、内向的な政権運営になっています。

これにつけ込むように中国は、中華帝国再興の野望をもってオバマに取り入ろうとしています。

このようなG2へ転がり落ちる危険な時期にあたっていることを、日本は自覚しておかねばなりません。

今、日本が注意せねばならないのは、このようなオバマと習につけ入る隙を与えないことです。

いくつか外交的シグナルが出ています。

ひとつがこの間かまびすしい靖国問題に対する米国の「失望」発言です。米国は反日活動を執拗に続ける韓国や中国に対してではなく、わが国に対して「失望した」と声明しました

この発端となった靖国参拝の価値観としての是非はここでは問いません。朝日新聞の世論調査でも63%が支持していますが、これは国内政治です。

外交的には今やることではないと思います。

靖国や歴史問題に触れるなということではなく、触れるなら周到に米政府内部に根回しし、かつ戦略的にしろと言っているのです。

それが出来ないままでなされている現状だと、中国を喜ばせるだけです。

この両者はまったく別次元のテーマであるにもかかわらず、米国に対して「安倍はナショナリスト政治家だ」という信号を送ってしまいました

このような日本対するジャパン・ディスカウント(日本の地位低下)の情報は、既にワシントンの中韓ロビイストによって文字通り山ほど拡散しており、それを安倍自身が追認した格好になりました。

ことに安倍がバイデン副大統領との直接の電話会談の中で靖国参拝の制止を振り切った形になってしまったことは、明らかな外交上の失敗です。

安倍はバイデンの制止を聞くという「貸し」を作っておき、その機が熟するまで気長に待つべきでした。

なぜ安倍は生き急ぐのでしょうか。靖国神社は逃げません。ここまで現実主義外交を積み重ねておきながら、なぜこのような失敗をしてしまうのか。

ついでに言うなら、安倍の側近たちにくだらない感情論を黙らせなさい。「米国に失望した」なんて言ってなんの益になりますか。そんなことは思っていても黙っていなさい。

発言の重みを知らない首相近辺の連中の舌禍にはうんざりです。

衛藤首相補佐官は、自分のカウンターパートが、G2路線のライス大統領安全保障補佐官だと自覚して発言しなさい。首相補佐官はただの代議士ではないのですよ。

歴史認識問題を政治家が発言する場合、必ずわが国メディアによって歪曲報道されて米国に伝わることを肝に命じたほうがいいと思います。

やるならやるで、徹底した米国内部の根回しと戦略性、理論武装が不可欠です。それらすべてがないままに放言しているのか、安倍周辺です。

これら一連の靖国騒動が、オバマを中心とする米国政府と米メディアに、「安倍は極右政治家だ」という誤解を与え、アジア外交のもう一方の極である中国の側にオバマを押しやってしまったことは否めません。

これは日米同盟を引き裂くことを最重要課題としている中国を大きく利しました

中国はオバマの足元を見透かすように防空識別圏という露骨な版図拡大のジャブを繰り出しましたが、副大統領が訪中するという好機がありながら対応は口先だけに止まり、民間機には中国に従うように命じてしまいました。(欄外資料2参照)

これで中国は米国の本音を見破ったことでしょう。米国は南シナ海、東シナ海を地理的名称どおり「中国の海」とすることを容認したのだ、と。

言葉を変えれば、今でこそ同盟関係にある日本に配慮しているが、尖閣において米国は介入せず、もう一押しで更なるG2関係に持ち込めるという感触を得たはずです。

更に、同時期中国は韓国と共に安倍の靖国参拝を、「戦後世界秩序への挑戦」として煽りました。

これは言うまでもなく、中国自身の膨張政策を歴史認識にすり替えようとする詭弁ですが、この中国発の反日キャンペーンに、ものの見事に米国大手紙のワシントン・ポストニューヨーク・タイムズは乗りました。

続いて習は、既に13年10月のAPECバリ会合で、ロシア大統領のプーチンに2015年開催の「反ファシスト戦勝70周年記念会議」を呼びかけて合意しています。

これに、オバマを引きずり込み米、英、中、ロなど大戦の戦勝国首脳が一堂に会して戦後の秩序を再確認し、ファシズムの台頭を共同で防ぐ声明を打ち出す予定です。

これを中国は、「ファシスト日本の復活を阻止するための国際包囲網」として世界に大きく宣伝することとでしょう。

この戦勝国会議を3月の米中首脳会談で提案され、残念ながらオバマが乗る可能性は極めて高いと思われます。

既に習はベルリン訪問時にホロコースト博物館に行き、ホロコーストと南京事件を重ね合わせたプロパガンダをしようとして、ドイツ政府に拒否されています。

戦後一発の弾も撃たなかった国が、建国以来戦争漬けの中国に軍国主義呼ばわりされたくはないと思いますが、中国が周到な情報戦を世界規模で仕掛けていることにわが国も自覚的に立ち向かわねばなりません。

このように中国は、日本を国際的に孤立させ、TPPを不発に終わらせた上で、新たに中国も含めた太平洋政治-経済圏構想を米-中二軸構想で押し出すかもしれません。

このようにオバマは中国をアバーサリー(敵)とする立場から軸足を動かし、ポテンシャル・パートナーとしての関係に変化させる兆しが見える場所に、今私たちは立っています

わが国は、このようなオバマに対して、民主主義と日米同盟の強化の原則を幾度となくオバマに熱く語りつつ、米国の変心に備えるべきです。

TPPに於いても、米国の対中包囲網に参加するなどという甘えた戯れ言から醒めて、中国に傾斜する米国が自国の利害をむき出しでわが国に向ってきていることに強い危機感を持たねばなりません。

尖閣問題はほぼ確実に米国は介入しないでしょう。したがって、わが国は独力で対処する準備が必要です。

これが出来ないようなら、わが国はG2の奴隷となるか、「フランス」になる覚悟をせねばなりません。

現時点では、オバマは、米国の世論が中国に批判的なことを反映してダライラマと会談するなどして危ういバランスをとっています。

まだオバマは「向こう側」に行く決意をしたわけではなくふたつの価値観の間でグラグラしているようです。

このような微妙な時期にわが国が舵を取り間違えてはなりません。

オバマはこの下の写真どおり夫人にもソッポを向かれる薄型最軽量の人物ですが、まだ3年も任期があるのです。

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(写真 マンデラ氏の葬儀会場で、夫人の横でデンマーク美人首相シュミット氏とたわむれるオバマ大統領。この後、夫人から離婚を宣告されたという噂が流れ、支持率はいっそう急落した)

私は政治、特に外交において左右の理想主義は信じません。有害であるとさえ思っています。

それは鳩山が行った左翼的「友愛外交」の無残な結果をみれば分かるでしょう。彼の友愛とは調和ではなく、破壊と混乱の代名詞でした。

逆にもし、安倍が復古的外交路線を考えているなら100%失敗します。外交とはそのような自己陶酔的観念の入る隙間のないパワーポリティクスだからです。

日本は、兎のように聡くなければ生き残れません。

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日米関係最悪シナリオ G2体制の悪夢

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米国外交はゆっくりと、「もっとも重要な2カ国関係」(バイデン)、すなわちG2体制に向けて舵を切りつつあります。

このまま米国がG2に走った場合の最悪シナリオを考えてみることにします。

このG2にはいくつもの段階がありますが、おそらくその最終的な形態は、在日米軍は沖縄はおろか日本全土から撤収し、グアムの線まで後退します。

このラインを中国は「第2列島線」と呼び、伊豆諸島を起点として小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアへ至る線まで中国海軍を進出させることを目標にしています

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    (図 右側の赤い線が第2列島線、左赤線が第1列島線 Wikipediaより)

同盟関係とは、ひとつの国とひとつの国(超大国)の外交路線の利害が一致した時のみ結ばれます。

日本にとって日米同盟は、米国という強大な後ろ楯を背景にして、基地を提供する代わりに他国を攻撃する能力のない軽武装(専守防衛)で独立を保つことが可能でした。

一方、米国にとっては、米国のプレゼンス(※1)の象徴である原子力空母を修理するドックは世界で4カ所しかありませんが、そのうち2カ所は米国内、そしてあとの2カ所は日本にのみに存在しています。

これは横須賀第6ドックと佐世保第4ドックですが、大和級巨大戦艦を建造したドックですので、米国外では日本にしか存在しません。

佐世保の艦船修理能力と電子関係のメンテナンス能力は、米国を凌ぐと言われ、米海軍は定期検査の時期になるとわざわざ第7艦隊に配転するほどです。

また、第7艦隊の補給を受け持つ弾薬貯蔵施設(秋月、広、川上、嘉手納)の貯蔵能力は実に12万トンを越えます。

あるいは、米国防総省が自ら「ペンタゴン最大のオイルターミナル」と呼んだのは、在日米軍燃料タンク施設(鶴見、佐世保、八戸)です。

鶴見は国防総省管内のうち米本土まで含めて第2位の備蓄量、第3位は佐世保で、八戸(航空燃料)と合わせると1107万バレルを備蓄しています。

これは米海軍最強の第7艦隊全体の10回分の満タン量に優に相当します。

米軍の唯一の国外に駐留する緊急展開部隊(第3海兵遠征軍)は沖縄にあります。

このようにわが国は米軍、なかでも米海軍の補給-修理の海外軍事インフラを一手に引き受けているのです。

このような存在を米国は日本以外に持ちません。つまり米国は日本なくしては世界戦略が遂行できないのです。

米国が日本を、「世界でもっと重要な同盟国」(米議会調査局)と呼ぶのはあながちお世辞ではありません。

よく米国人には往々「日本を守ってやってやる」という者がいますし、日本側にも「守ってもらっている」と卑下する者が多いのですが、それはこの日米の利害関係がイーブンなことを知らないからです。

しかし、あくまでもこのような関係は同盟関係があればこその話にすぎません。これがG2(米中2国支配体制)となれば安保条約は自動的に解消されることになります。

わが国にとって中国と蜜月になった米国に基地を提供する利害はありませんし、米国もまた覇権国家てあることを止めて孤立主義に回帰しているはずです。

第7艦隊は原潜部隊を除いてハワイまで撤収し、替わって南シナ海、インド洋、東シナ海、日本海、そして太平洋はグアムの線まで中国艦隊が進出します。

かくしてわが国のシーレーンは中国によって完全に押えられ、日本は「中国の海」に浮かぶ孤島となります

わが国民は中華帝国の冊封国になる気持ちはないはずですから、自由主義国として生き残りたいのであれば、単独で自主防衛の飛躍的増強に迫られることになります。

もっともそのとき日本政府が、不幸にして鳩山・管政権のような存在であったなら、わが国は主権のすべてを喜んで差し出し、すんなりと冊封国として中国に編入されるでしょうが。

日本は今までの日米安保を軸にした軽武装と専守防衛ドクトリン(※2)を捨てざるをえません。

国際社会で類例を探すと、かつての「フランス型」になると思われます。

フランスは「米国はパリが核攻撃を受けても、ワシントンが核攻撃いを受ける危険がある以上、報復はしないだろう」という考えから、NATOを脱退して独自路線を取っています。(※2003年サルコジ政権時に再加盟しました)

具体的には、他国攻撃能力の獲得、それに伴う戦力投射手段(空母、戦略原潜など)の保持、そしてもちろん国軍化とワッセットになった憲法改正がなされるはずです。

そして最終的には米国の核の傘がない以上、独自核武装も視野に入れざるをえなくなります。

フランスの軍事予算は対GDP比率で2.3%ですから、今の日本は現在の0.9%をその水準まで倍加させることになります。※http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/world_data/list_of_countries_by_military_expenditures.html

このシナリオは戦前の昭和10年代に酷似しています。私はこの道に日本が踏み込まないことを心底願います。

わが国が国際社会の健全な一員として集団的自衛権を持ち、憲法改正に臨むというのならば、議論を深めた上でという条件つきで賛成です。

しかし、国際社会、端的にいえば米中との緊張関係を伴う条件下でのそれは、まさにかつての悪夢の再来以外何者でもありません

しかしオバマがG2政策の選択をしてしまい、東シナ海のみならず、太平洋の半分を中国に分割支配させるなどという政策変更をした場合、その可能性は否定できなくなるでしょう。

いきなりそのようなことになることはまずありえないと思いますが、常に米政権内の伏流としてG2という思想は存在していて、オバマもその考え方の持ち主だということを忘れず注意しておかねばなりません。

現実のオバマは、このオバマ-習会談時でそれをいったん拒否したものの、その後の日米関係の冷却に伴い、再び中国のG2論に乗るそぶりを見せているといったグレイゾーンの段階です。

オバマは中国膨張政策を抑止する伝統的抑止政策で進み「もっとも重要な同盟国」である日本を取るのか、あるいは米国の世界秩序維持のパートナーとして「もっとも重要な二国間関係」である中国と組んだほうが得策なのか決めかねて、その間を微妙に揺れ動いているのです。

オバマが強いリーダーシップを持つ大統領ならば、私たち日本人はなんの心配もいりませんが、彼が史上まれにみる意志薄弱、有言不実行の大統領だということを忘れてはなりません。

それにしても、あの大統領就任時の世界の期待が1世紀ほど前のセピア色に見えます。これほど世界と、米国民の期待を裏切った罪な男も珍しいのではないでしょうかね。

待てよ、なんか似た人物が日本にもいましたね。そうそうL・ハトヤマといったような。

もう一回続けます。

※1プレゼンス  存在。存在感。特に、軍隊・国家などがある 地域へ駐留・進出して軍事的、経済的に影響力をもつ存在であること。(goo辞書)

※2ドクトリン、政治や外交あるいは軍事等における基本原則(Wikipedia)

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-8200.html

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第2列島線(Wikipedia)
第二列島線は、
伊豆諸島を起点に、小笠原諸島グアムサイパンパプアニューギニアに至るラインである。近年に至るまで、中華人民共和国の海洋調査は、第一列島線付近までに留まっていたが、このところは第二列島線付近でも調査を行っている。海洋調査は、他国の排他的経済水域内では行えないため、第二列島線付近にある沖ノ鳥島問題が持ち上がっている。

この第二列島線は、台湾有事の際に、中国海軍がアメリカ海軍の増援を阻止・妨害する海域と推定されている。中国海軍は、従来、沿岸海軍であったが、第二列島線まで進出することは即ち、外洋海軍への変革を目指していると考えられ、その動向が注目されている。

中国海軍は、第二列島線を2020年までに完成させ、2040-2050年までに西太平洋、インド洋で米海軍に対抗できる海軍を建設するとしている。

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