原発を真面目に終りにする方法

北電薄氷の電力供給 電力なき地方創生はありえない

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北電が苫東厚真火力発電所1号機を前倒しして再稼働するそうです。 

「18日にも苫東厚真火力発電所1号機(北海道厚真町)が再稼働すれば、北海道電力の供給力が需要を下回りかねない異常事態はひとまず解消される。
ただ、寒くなるにつれて
暖房需要が大幅に増える一方、当初の危機感の薄れに伴い、道内の節電ムードは緩み気味。40年の耐用年数を超えて稼働させる老朽化火力も半数を超えており、綱渡りの状況は続く。 北電が同1号機を当初予定より半月近く前倒しして復旧させるのは、供給力が地震前日の5日に記録したピーク需要の383万キロワットに満たず、水力発電などをフル稼働させても安定供給を期待できないためだ」(毎日9月17日)
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12159-0918m040098/

この毎日の記事でも触れていますが、これから急速に冬に向かう北海道において薄氷の電力供給体制が続くのは目に見えています。 

現在、北電が目標としているのは地震前日の9月8日のピーク需要の383万キロワットですので、ブラックアウト直前時にまで復旧するにすぎません。 

それすら現状ではままならないのが現状です。

 

Photo北電HP 本日の電力使用状況http://denkiyoho.hepco.co.jp/area_forecast.html 

問題はその先です。秋から冬にかけての北電管内の最大需要電力量(2017年10月〜12月)を見てみます。 

北電H P北海道エリアの需給実績http://www.hepco.co.jp/energy/recyclable_energy/fixedprice_purchase/supply_demand_results.html 
・400万キロワット超が発生した期間・・・10月6日間
                                                     11月14日間
                                                     12月4日間
・450万キロワット超                      ・・・11月5日間
                                                     12月25日間
・500万キロワット超                           12月2日間

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10月から12月にかけて、一気に北海道は寒冷期に突入するわけですが、去年実績では10月に連日300万キロワット超を推移し、6日間は400万kキロワットを超える需要がありました。 

本格的冬季の11月、12月を待たずして10月で既に供給力はパンクしています。 

つまり、「復旧した」というのは、あくまでも地震前の状態にかろうじて戻したにすぎないわけです。 

その需給ギャップを毎日新聞(9月15日)がグラフにまとめていますので、引用させていただきます。 

2毎日新聞9月15日https://mainichi.jp/articles/20180915/ddm/002/040/119000c 

ではどうするのかといえば、苫東厚真火力の復旧を急がせながら、老朽化した火力をフル稼働するしかありません。

ところが、この老朽火力があてにならないのです。いままで止めていたのを再稼働させていたために、電力マンの必死の努力にかかわらず稼働が不安定です。

先日の9月11日に、音別火力2号機が緊急停止しました。それ以前に1号機も故障して、修理して再稼働しています。 

ひとつを直しながら、ひとつを動かしているわけで、まさに綱渡りです。

Photo_2

「北海道電力は11日、音別火力発電所2号機(釧路市、出力7.4万キロワット)で、ガスタービンが激しく振動するトラブルがあり、緊急停止したと明らかにした。不具合で停止していた同発電所1号機(7.4万キロワット)が修理を終えて同日に再稼働しており、節電目標や検討中の計画停電への影響はないという」(毎日9月11日)
https://mainichi.jp/articles/20180912/k00/00m/020/054000c

熱中症で多くの人が亡くなった夏期と並んで、厳冬期における電気はライフラインの中で最重要に位置づけられます。

説明はいらないでしょうが、厳冬期の電力喪失は即凍死につながりかねないからです。 

失礼ながら、凍死の危険性を押してまで北海道観光をする人はいないでしょうし、たびたひ停電するような土地に進出する企業も稀だと思われます。 

ところが北海道はニセコなどが典型的ですが、冬季こそがかき入れ時で、外国人のスキー客があふれかえる時期なのです。 

すでに日本旅館協会北海道支部連合会によると、50万人の宿泊キャンセルによる影響額は100億円に達しているそうです。 

このまま電力供給が薄氷状態ならば、考えたくもない経済損失、いや生命の損失すら招きかねません。 

よくメディアは、今こそ北海道観光に行こうと正論を吐いていますが、ならばなぜこのような深刻な構造的電力不足が生じたのか、その原因にまで遡って考えるべきです。 

今たけなわの総裁選において、地方創生を安倍氏が熱心でないと石破氏が批判していましたが、一面当たっています。 

安倍氏は、北海道の電力供給の主力であった泊原発を停止させたまま、電力自由化を進めるという愚作を進めてしまいました。 

よく安倍氏を原発推進派と言う人がいますが、まったくの間違いです。

彼は原発について明確な意志を表明したことはありません。規制委員会に丸投げしたきりです。

したがって、安倍氏はこと原発問題においては、臆病すぎるほど臆病に民主党が作ったムード的反原発路線の上を走っていただけのことなのです。 

結果、「規制委員会による判断」を優先させ、全原発停止後7年もたってもわずかの再稼働しか許されない状況を作ってしまいました。 

その上に、構造改革しなくてもいい電力分野に手を入れ、発送電分離を進めました。 

規制緩和のメニューには、やって当然の獣医学部新設などがある一方で、しなくていい電力改革も同居しています。

北電においては、原子力の依存率が関西電力に次いで高い44%だったために、この泊原発停止の影響をまともに受けました。

何回か書いてきているように、今回の大停電の原因は、泊が停止して苫東厚真火力の一本足打法になっていたところに、地震で苫東厚真がダウンしたために発生しました。

泊がいつ動くか分かりませんが、この構造的電力不足が解決されないまま、2020年には北電などの大手電力会社は発送電分離を開始します。

電力は常に、発電所の停止や需要の急増に備えて予備率を充分に持っていなければなりません。 

そのことを「冗長性」と呼びますが、電力自由化以前にはそれは電力会社の義務でした。 

冗長性とは、システムの一部に何らかの障害が発生した場合に備えて、障害発生後でもシステム全体の機能を維持し続けられるように、予備装置を平常時からバックアップしておくことです。
※参考資料 千田卓二など「電力システムのレジリエンスに関する一考察」https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsjc/2013/0/2013_175/_pdf

ところが電力会社は発送電分離によって、従来の厳しい供給義務から自由になります。

よく電力会社が独占企業だという人がいますが、それは発送電を単一企業に委託する代わりに、電力の安定供給義務を負わしたためです。

そのために電力会社は、通常の企業ならとっくに廃棄するような老朽火力も、いざという時のための予備電力としてキープし続けてきたわけですが、そのいざという時がほんとうに来てしまったのが、今回の事態でした。

このように電力供給の冗長性は安定供給のために必ず必要でしたが、今後ただの経営判断の問題にすり替わってしまうのかどうか、不透明です。 

となると冗長性の維持は厳しい経営を続けている北電にとって、経営負担を増すだけの存在となりかねません。 

たとえば、北電は電力供給の冗長性確保のために巨費を投じて石狩湾新港LNG 火力1号機を建設していますが、1号機だけは予定どおり2019年操業開始するとしても、2号機、3号機は企業の自由選択の対象となります。

音別火力などの老朽発電所はとっくに操業するだけで赤字なのですから、整理廃止の対象となるでしょう。 

北電がどのように判断するのかわかりませんが、それ以前に政府が地域の電力供給に全面的な支援を与えるべきです。

電力なき地域は滅びます。

企業が去り、人が散り、村が潰れ、街が寂れ、そのような地域には企業も観光客もやってきません。

地域の滅びのスパイラルの開始です。北海道はその負のらせん階段の淵に立っています。

北海道において、地方創生は単なる街興しではなく、すぐれて電力供給の問題なのです。

 

 

 

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ブラックアウトとステーション・ブラックアウトの本質的違いについて

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土曜日のコメント欄に、山形さんと九州Mさんが、「ブラックアウト」について的確なコメントを出されていました。 

私からも補足しておきます。 

ただの「ブラックアウト」と「ステーション・ブラックアウト」は別の概念です。ここをきちんと整理しないで論じるから、わけのわからない主張をすることになります。 

まず「ブラックアウト」を押えておきます。
ブラックアウト - Wikipedia 

"black out"は、人間の失神のような時にも使いますが、電力の場合

停電。特に、発送電システム(発電送電変電配電を併せた電力の供給システム)の全系崩壊を指す」

あくまでも発電-送電-小売りまで含めて全系統が停電する大規模事故ことです。今回の北海道大停電はこのケースです。 

ですから、落雷が送電線に落ちて停電したような部分的事故はブラックアウトとはいいません。 

原子力発電の場合は、外部電源喪失を指します。

一方、似た表現なのでゴッチャにしている人が往々にいますが、まったく次元が異なるのが「ステーション・ブラックアウト」(station blackout・SBO)です。 

これは火力や水力では用いられず、原子力にだけに用いられる用語です。 

「原子力施設における全電源喪失状態」
SBO - Wikipedia - ウィキペディア 

多重防護されているはずの外部電源はもちろん、非常用ディーゼル発電機に至る全交流電源すべてがオシャカになった状態です。福島第1事故がこのケースでした。 

具体的には、福島第1事故でこのように使われています。 

「東京都千代田区内幸町1丁目にある東京電力本店の2階の大部屋にあるテレビ会議システムのモニター画面にはそのとき、福島第一原発の「免震重要棟」の中にある緊急時対策室の様子が映し出されている。そのテレビ会議システムを通じて、たしか、福島第一原発の運転管理部長が「ステーション・ブラックアウト」とコールするのをその場のみんなで聞いた――。小林課長はそんなふうに記憶している」
http://judiciary.asahi.com/articles/2011051100015.html

おととい取り上げた、「外部電源を喪失するも非常用電源で問題なし」という北電の発表に噛みついた蓮舫氏などは、ブラックアウトとステーション・ブラックアウトの区別ができていません。 

非常用ディーゼル発電が起動していれば、電力は平常どおり供給されているのですから、使用済み燃料も冷却され続けていますのでなんの問題もないのです。 

外部電源が切れたからといって、非常用電源が確保されているならどうなるわけでもないのですから、ギャーギャー騒がないでいただきたい。 

2https://this.kiji.is/410223450683638881

一方、もっと手がこんでいるのが、九州Mさんからご紹介があった朝日のアエラ(9月6日)の記事です。 

こちらはタイトルからして、『震度2で電源喪失寸前だった北海道・泊原発「経産省と北電の災害対策はお粗末』ですから、朝日がどのような印象に読者を誘導したいのか初めから察しがついてしまいます。 

登場するのは電力や原子力とはなんの関係もない地震地質学者の岡村真・高知大名誉教授ですが、アエラはこの畑違いの地震学者にこんなことを言わしています。 

「2011年の東京電力福島第一原発事故による大きな教訓は、大規模災害が起きても「絶対に電源を切らさないこと」だったはずだ。それがなぜ、わずか震度2で電源喪失寸前まで追い込まれたのか。
「泊原発には3系統から外部電源が供給されていますが、北電の中で3つの変電所を分けていただけと思われる。北電全体がダウンしてしまえばバックアップにならないことがわかった。今回の地震で、揺れが小さくても外部電源の喪失が起きることを実証してしまった。『お粗末』と言うしかありません」
(アエラ前掲)

https://this.kiji.is/410223450683638881

 なにが「お粗末」ですか。お粗末なのはあなた方です。

岡村氏が言う 「電源喪失」はブラックアウトのことですか、それともステーション・ブラックアウトのことですか。

「電源喪失」を言うならば、きちんと概念規定してから言って下さい。

この人が悪質だと思うのは、たぶん岡村氏は知って言っています。それは後段で「外部電源」と言っているからです。

だったら「電源喪失寸前」などという、どちらにでもとれる表現は使うべきではありません。

その「寸前」という中に、ブラックアウトとステーション・ブラックアウトの大きな落差があるからです。

そこにこそ決定的な福島第1事故と泊との違いがあるにもかかわらず、肝心のそれを意識的にボカして、まるで福島事故のようなことが起きる寸前だったかのような印象を与えてしまっています。

岡村氏は、ブラックアウトとステーション・ブラックアウトを意識的か、無知なる故か知りませんが、積極的に混同して危機を叫び、アエラはこれを意識的に増幅しています

いうまでもなく、3系統あった外部電源が失われた原因は、(多重防護の観点からそれはそれで追及されるべきですが)それはただのブラックアウトにすぎません。

大停電は道民にとっては大変な災害でしたが 、原発は外部電源がゼロになることを想定して作られています。

それを岡村氏はわざわざ「福島第1の教訓」とやらを持ち出して、「絶対に電源をきらさないことだ」などと言っているようですが、これは正確ではありません。 

正しくは「ステーション・ブラックアウト(全交流電源停止)とならないようにする」ことが福島第1の教訓です。

いかに非常用電源の確保が重要かは、規制委員会が出した原発安全対策で上げられた項目を見ていただければ理解出来ると思います。  

①大津波の被害が及ばぬ高台に非常用原子炉冷却施設
②同じく高台に非常用電源
③放射性物質フィルター付き排気施設
④放水砲をもった車両を配置
⑤防波堤の嵩上げ
⑥防水扉の設置
⑨原子炉施設本体の耐震性の強化
⑩テロ対策

 ご覧のとおり、規制委員会の原発についての新安全対策は徹底して津波対策、特に「非常用原子炉冷却施設」に絞られ、特に福島事故の原因であった非常用ディーゼル電源の確保に重きが置かれています。 

東日本大震災時のように、大規模地震において外部電源の送電鉄塔が倒壊したり、切断されたりすることは大いにありえます。 

極端にいえば、外部電源の鉄塔が倒壊しようと、津波によって防波堤を超えて海水が原発施設に流れ込もうと、原発の安全性は確保されるのです。

要は、非常用電源がある高台に設置されている発電機が無事なら安全なのです。

下の図は規制委員会の安全対策に従って立てられた中国電力島根原発のものですが、防波堤が高く改善され、非常用電源が高台に移されているのが分かります。

Img_3818

島根原子力発電所の安全対策について - 中国電力

なんども述べているように、原発は外部電源がブラックアウトしたとしても、非常用電源のいずれか(多くは3系統)が起動しさえすれば電源は確保されて、燃料棒や使用済み燃料プールは冷却され続けるからです。 

今回の泊原発は午前3時25分に外部電源が喪失しましたが、直ちに非常用電源が起動しています。また外部電源も当日の午後1時までに復旧しました。

運転していなかったからだと言う人もいますが、仮に燃料棒が入っていて運転していたとしても確実に自動緊急停止(スクラム)されます。
原子炉スクラム - Wikipedia

大地震があってもそれが起動することは、福島第1でも実証済みです。

そして外部電源が切断されると同時に、発電所内の非常用電源が起動します。これが非常時における「正常」な流れです。

そういえば今回、こんな元TBS記者の松原耕二氏の発言がありました。

「泊原発が動いていたら停電起きなかったじゃないか、再稼働すべきじゃないかって声が上がったりしてる。泊原発は震度2、それでも全電源喪失。もし震源地の上にあったらどうなったんだろう。泊が動いていたら停電にならなかったという人がいるからおかしい。震源地にあったらどうなっていたか」(サンモニ9月9日)

泊が「全電源喪失になった」ですか。はぁ~、松原さんとやら、いつなったの(苦笑)?

この人も福島事故報告書をゼンゼン読んでいませんね。

泊が震度2だから、どうなんでしょうか。

松原氏は知らないようですが、下の規制委員会報告書にあるように福島第1事故時の震度も2ですよ(苦笑)。
追記注・本震は50分前です。この震度2は電源喪失時の震度です。

それでも非常停止しましたし、このていどの地震の揺れでは全電源喪失に至りませんでした。

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波高計による記録によれば、15 時27分に第1波襲来、15時35分に第2波が襲来し、電源が失われました。

下図は報告書にある電圧計記録です。15時36分59秒に電夏がゼロになり、電源が喪失してその後は電力供給ができなくなり冷却不能になったのです。

これでお分かりのように、津波が全電源喪失させたのです。

もし地震発生時に冷却細管が破断していたならば、その時点で全電源喪失したはずです。

「非常用交流電源系統は、本震が発生してから約50分間は正常に機能しており、これが震度1~2 の揺れの影響により損傷したとは考え難い」(規制委員会報告書)

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もし泊で東日本大震災クラスの地震が起きたとしても、松原氏が言うような「全電源喪失」、すなわちステーション・ブラックアウトが起きる可能性はかぎりなく低いといえます。

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福島第1は津波で非常用電源がダメになったから、ステーション・ブラックアウトになったのです。

それにしても、アエラとこの学者のレベルは、共産党の小池書記局長と同じ水準です。 

原子力を恐れるのはけっこうです。恐れるべきです。ただし、原発の仕組みを知ってから正しく恐れなさい。

イデオロギーの眼で曇らされて、自分の無知を拡散しないように。

いわゆる反原発派の皆さんは、福島第1事故の原因を、政府事故調の報告書や規制委員会の報告書の、せめてダイジェストのひとつでも読んで理解しているのでしょうか。

たぶんまるっきり読んでいませんね。

反原発運動のパンフていどか、耳学問のレベルでしょう。失礼ながら、今回みるかぎり原発のイロハがわかっていません。

立民の蓮舫氏や共産党の小池氏のレベルの人たちが、原発ゼロなんて言っているのですから、困ったものです。

福島第1事故の原因をちゃんと押さえないで、反対もゼロもあったもんじゃありませんから。

 

 

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今回の北海道大停電は北電の特殊事情だ

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皆様から色々な情報を頂いております。 

まずは当事者である「北海」(旧北海道)様、ご無事なようで安心しました。氏は私が遭遇した東日本大震災で、ひとかたならぬご支援をいただいた大恩がある方です。 

氏から、私が心配していた酪農家の状況が伝わってまいりました。 

大型農家は自家発電で凌いでいるようですが、小規模農家が心配です。 

農家は井戸が多いため、停電となると家畜に水さえやれないという非常事態になりますので、心配しております。 

メディアは都市部の被害ばかり報じないで、広大な原野で苦闘する多くの農家も少しは取り上げなさい。北海道は日本一の大農業県ですよ。 

さて、こういう大災害時にはかならずデマが飛び出します。東日本・福島第1事故の時のすさまじさはいまでも語り種になるほどで、間違いなく復興を数年遅らせせました。 

ですから、早めにデマは潰しておく必要があります。 

今回も誰かトンチキがやるだろうなと思っていたら、案の定蓮舫氏がやらかしたようです。 

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こういう蓮舫氏の書き方は災害時だけに大変に悪質です。

まるで北海道電力が地震以後、なにか泊原発について不都合なことを隠蔽しているように聞こえるからです。 

蓮舫氏は、泊原発の今回の措置の何が問題だというのでしょうか。 

「非常用電源に切り替わった」のが心配だというなら、この人は原発のことなど一回もまじめに考えていなかったことの証明になり,ます。 

「原子力規制委員会などによると、北海道電力泊原発(北海道泊村)では地震による停電で外部電源を喪失した。非常用ディーゼル発電機6台を起動して電気を供給し、燃料プール内の核燃料の冷却を維持しているという。原発周辺の放射線測定で異常値は確認されていない」(毎日9月7日)
https://mainichi.jp/articles/20180906/k00/00e/040/217000c

蓮舫氏は福島第1事故の原因が分かっていませんね。 

福島第1は、地震そのものには耐えたのですが、17mもの津波によって全交流電源がすべてブラックアウトしました。 

外部電源は3系統ありましたが、これがすべて断たれたうえに、 数系統あった非常用電源もその設置場所が低い場所であっために配電盤が津波をモロに被ってしまいました。

ですから、この非常用電源を屋上におけば、あの忌まわしい事故は起きなかったはずです。 

泊原発の場合は、7日間非常用電源で凌げます。 

「泊原発1~3号機は運転を停止しており、原子炉内に核燃料は入っていない。非常用発電機は最低でも7日間稼働を続けることが可能という。」(毎日前掲)

 7日間もあれば停電は最悪でも部分的復旧しますし、電源車も配備できるでしょうから、余裕をもった非常用措置だといえます。 

強調しておきたいのは、今回の全域停電の原因は、あくまでも苫小東厚真火力にあまりにも偏った電力供給依存をしていたために起きました。 

誤解している人もいるようですが、福島第1事故のように送電網や変電所がダメージを受けたわけではありません。 

 北海道新聞より引用 

苫小東厚真火力の送電量が一瞬で消滅したために、他の発電所で支えきず周波数が一定にならなくなりました。 

電気は常に「同時同量」で運転されています。簡単に言えば、電気を送る量と使った量がピタッと一致せねばならないのです。 

これを放置すると、まず発電所の発電タービンの制御ができなくなり、異常回転を起こして破壊され、中継施設も破壊されてしまいます。 

発電タービンは中枢部分ですから、ここが破壊された場合、復旧の見通しはまったくたたなくなります。 

それを回避するために発電所を緊急停止しました。まったく正常な判断です。 

私は昨日「発電所が損壊」と書きましたが間違いで、発電施設の損壊はわずかでした。
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●苫東厚真1・2号機の被害状況
ボイラ損傷、4号機:タービン付近鎮火(6日10時15分)

 泊原発もそうですが、苫小東厚真火力も震度2ていどでは損壊することはありえません。事実、発電施設は9時間半後に復旧しました。 

今回の事故原因はこの緊急停止が行われたために、瞬時で北電の発電量の約半分が失われました。 

そのために送電網を部分切断して保護することができなくなって、バタバタと全域停電という事態にまで及んだのです。 

また北電のプレスリリースによれば、送電施設の被害も限定的でした。
http://www.hepco.co.jp/pdf/18090704.pdf

●被害状況
南早来線1号線(275kV):電線(引込用リード線)断線
岩知志線(66kV):鉄塔2基倒壊
狩勝幹線(275kV):送電線周辺地崩れ
石北線(66kV):電線断線
 

このように極めて珍しい事故で、日本最初のケースですし、他の電力会社ならば周波数管理を分散させているために、そもそも起きないでしょう。 

部分切断が出来なかった原因については事態が落ち着いてからの、国と電力会社の技術的検証が必要となるでしょうが、電力会社の責任というより、政治的問題です。 

というのは北電にかぎらず、電力会社はベース電源を原発に置いていました。 

昨日と同じグラフばかりで恐縮ですが、事故1年前の電源構成比率です。 

2_2

 電力会社は黄色の原子力をベース電源にして恒常的に同じ出力で発電させ、細かい出力調整は火力にまかせていました。 

再エネは数%のうちは色物ですから、火力が調節していたわけです。今は例の悪法であるFITによって肥大し、北電では20%近くの水準に達しようとしています。

今後、この気まぐれ自然エネさんによって、電力会社は振り回されることになることでしょうが、とりあえずそのことは置きます。

このベース電源が、政治的理由によって喪失したことが、今回の事故の遠因となりました。

よく安倍政権を「再稼働強行派」とか、「原発推進派」とかいう人がいますが、まったくトンチンカンな非難で、安倍氏は前政権のレールの上をのろのろと走っているだけにすぎません。

このテーマについても、長くなりましたからまた別の機会とします。

■参考資料
電気工学会http://www2.iee.or.jp/ver2/honbu/16-committee/epress/index11.html

 

 

 

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北海道全域停電はどうして起きたのか

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北海道地震にあわれた道民のみなさまに、心からお見舞い申し上げます。 

今回の北海道地震において特徴的なことは、約300万戸に近い広域停電が発生したことです。 

経済産業省は6日、北海道内のほぼ全世帯にあたる295万戸で起きた停電について、午後9時時点で、7日朝までに約120万戸分に相当する150万キロ・ワット規模の電力供給を確保できるとの見通しを明らかにした。
北海道電力が発電所の再稼働を進め、6日午後4時時点で、札幌市や旭川市など28市町村で約33万戸の停電が解消したとしており、その後、さらに復旧が進んでいる」(読売9月7日)

https://news.nifty.com/article/economy/stock/12213-20180906-50097/

2共同より引用 

上の写真は地震の影響で停電した6日午前の札幌市内です。中央がさっぽろテレビ塔です。 

大地震が来たから停電はあたりまえだと思わないで下さい。 

私も経験した2011年3月の東日本大震災においてすら、東電エリア全域の停電は起きませんでしたから、いかに異常なものか分かると思います。 

「電力各社でつくる電気事業連合会も「エリア全域での停電は近年では聞いたことがない」としている」(日経9月6日)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35045160W8A900C1000000/

 やや専門的な説明になりますが、北海道は北電管内すべてでブラックアウト(停電)していますが、これは道内を一括して周波数管理をしている構造があるからです。 

電力は「生もの」なために備蓄できません。そのために常に供給と需要を合致させておかねばならないのですが、北電は道内をワンセットでやっています。 

そのために主力の発電所がやられると、地震とは関係のない地域まで一気に停電してしまうことになります。 

今回は165万キロワットを発電していた苫東厚真火力発電所が、こともあろうに震源地の近くにあったために大きく損壊し、道内全域停電にまで発展しました。

この苫東厚真火力発電所の3基が停止したことで道内の半分の電力供給が奪われてしまい、一気に需給バランスが釣り合わなくなりました。
 

すると発生するのが周波数の乱れです。その結果、他の無事だった発電所まで停止に追い込まれてしまいました。 

Photo_4北海道新聞

これを放置すると周波数の狂った電気を送電してしまい、発電用タービンが故障し、需要用側の電子機器なども破壊する恐れがあるからです。
 

さらに悪いことには、他の電力会社から電力融通しようにも、北海道と本州各社と結ぶ送電線が停電でダウンしてしまい、救援すら受けられない状況になってしまいました。 

さて以上が直接の原因ですが、遠因は火力に強依存する体質にあります。 

北海道電力の電源構成は、発電量ベースで石炭52%、石油23%の計75%を火力でおぎなうという、極端な偏重構造となっています。 

再エネは19%ていどありますが、再エネは自然条件によって発電量がバラつくために、火力が常にバックアップしています。

さもないと、強風が来ると大量に電気が出来てしまう反面、凪だと発電ゼロとなってしまい、周波数が安定しないからです。

そのデコボコを埋めていたのが火力だったのですが、その火力が止まったために、再エネも止まらざるをえなかったわけです。

再エネだけにしろという人がたまにいますが、そんなことは火力あっての再エネという舞台裏を知らない人です。Photo_2


北海道電力HP

原発の場合、そんなことは心配ありませんから、今回泊原発が動いていたら、泊だけで苫東を凌ぐ北電最大の207万キロワットの発電能力がありますから、停電は起こらなかったでしょう。

では、北海道電力のエネルギー構成をみてみましょう。

黄色が原子力ですが、北電は全国でも関西電力に並ぶ44%と高い依存率を持っていました。

2_2
これが一気にゼロとなったのですから、北電は4割もの電力供給源を失ったことになります。

下のグラフが、震災前と後を比較したエネルギー構成比率です。日本全体でいかに大きな電源が失われたままだというのがわかるでしょう。

Photo_5

しかも、再エネは文字度りの風頼りの風来坊で頼りにならず、結局のところ日本の社会と経済の屋台骨は火力が一手に引き受けることになってしまっています。

そして北電の場合、その火力発電所も、今回被害を受けた苫東厚真など新品なほうで、北電の他の火力発電所は中古品に等しいものでした。 

いちばん古い苫小牧など1973年建設ですから、あと5年で齢半世紀です。

北電に限らず、全国の火力は老朽化が激しく、電力マンの現場力でやっと維持できているような状況が続いています。

Photo_3北海道電力HP 

このような現状の薄氷の危うさが明らかになったのが、今回の北海道地震に伴う全域停電だったのです。

改めて思いましたが、反原発や再稼働阻止を叫ぶのはけっこうですが、このような大災害時に起きる停電リスクについて言及しないのはおかしいのではありませんか。

今回の北海道地震が真冬に起きたなら、石油を運ぶインフラも同時に破壊されてしまっていますから、電気もつかず、ストーブも炊けずに多くの凍死者を出した可能性があるからです。

ゾッとします。

今までなんとかなったからいいやではなく、数十年に一度どころか、100年に一度の大災害が日常的に来るのが今のわが日本なのです。

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鳥越氏 知事になったら250㎞範囲の原発は止める

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鳥越氏が都知事になったら、東京250㎞圏内の原発停止を申し込むそうです。
https://mobile.twitter.com/shuntorigoe/status/757514429940596737/photo/1

なぜ唐突に250㎞という距離がでてきたかというと、2014年5月21日の福井地裁における、あの樋口英明裁判長による、以下の判決文が根拠のようです。 

「10 結論
 以上の次第であり、原告らのうち、大飯原発から250キロメートル圏内に居住する者(別紙原告目録1記載の各原告)は、本件原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められるから、これらの原告らの請求を認容すべきである。」

大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文 - リンク

樋口判決に対しては何本か批判記事を書いています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c2ac.html

いかに杜撰な内容であろうと、この判決一本で大飯発電所3号機及び4号機の原子炉の運転の差し止め判決がでました。

この樋口裁判官がやったことは、再稼働について唯一権限を与えられた行政機関の規制委員会の決定を、地裁が簡単に覆したことです。

規制委員会の決定は、政府はおろか、国会ですら取り消せません。それをただの地裁が、短期の審理で覆したわけです。

規制委員会ができたゆえんは、福島事故の時の、素人政治家の事故処理介入による混乱を反省して、政府は任命権者であっても、指導することはできない独立した機関を作らねばならなかったのです。

それを素人にすぎない下級審の一裁判官が、この「福島事故の 正の遺産」とでもいうべき仕組みを、いとも簡単に破壊してしまいました。

このような行為を、越権行為、または「法の名の下の無法」、あるいは「法匪」と呼びます。

百歩譲って、この樋口判決を正当なものだとしても、あくまでもそれは大飯原発3,4号機に対しての民事命令にすぎませんから、当該の大飯以外には一般化できません。

それ以外の原発には無効ですから、鳥越発言の法的根拠たりえません。

さて、東京都で250㎞範囲を適用すると、こんな感じです。

Photo
250㎞圏に含まれる原発は、茨城県の日本原電東海第2、高速増殖炉「常陽」、中部電力浜岡、そして東京の端からなら、かろうじてエリアに入る柏崎刈羽です。 

都内からは入りませんが、都下の端からならギリギリ入ります。

東海第2、「常陽」はともかくとして柏崎刈羽は、東京に電力を送る主力のひとつですから、この人物が都知事になって本気でやると大変なことになります。

かつて鳥越氏とまったく同じ公約を掲げた酔狂人がいたのを覚えていますか。細川護熙氏です。

小泉候補だと勘違いされた都民も多かったと思いますが、この人や宇都宮候補も似たようなことを言っていました。 

失礼ながら、なにを勘違いしているのです、この御仁たちは。

そもそも、広瀬隆氏が「提唱」しているように「お台場第1原発」でもあって、今、再稼働問題が持ち上がっているなら、都知事には一定の「意見を言う権利」はあります。  

しかし、それさえも地元自治体としての「意見」の開陳にすぎず、再稼働の認可権は都知事にはありません。

政府にすら審査する権限はありません。

もちろん国会にもありません。原発の安全性審査は、多数決で決めることではないからです。

審査する権限は、あくまでも専門家による原子力規制委員会のみが握っており、政府には人事権はあっても命令権はありません。

その根拠法は:原子炉等規制法第43条の3の23です。

「●原子炉等規制法第43条の3の23 (施設の使用の停止等)

原子力規制委員会は、(中略)発電用原子炉施設の発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。」

このように原子炉の「運転の指定その他保安のために必要な措置を命じる」ことができるのは、唯一、原子力規制委員会だけです。

あくまでも、審査するのは規制委員会で、国がそれを受けて再稼働を決定します。

これが大原則です。

原発再稼働は、国政上の政策実施上の問題だからです。

国のエネルギー政策は自治体の恣意にはならないのは、国家のエネルギー・インフラの保全は、国の根幹を成す仕事だからです。

ちょうど、安全保障や外交が、自治体にクチバシをいれられないのと同じで、自治体は「地元としていかがでしょうか」と意見を聞かれているだけで、決定権はまったくありません。

一方知事は、仮に設置の地元であろうと、地元として県民の安全の観点から意見を述べることがあっても、権限はいっさい与えられていません 。 

それでもとりあえず泉田新潟県知事が頑強に再稼働に反対しているのは、法的根拠があってのことではなく、柏崎原発の「地元」だということを最大限使っているだけのことです。

なるほど、県知事は住民の護民官として安全と財産を保全するために、原発や基地について「県民の意見」を代弁することはできますが、地元ですら言えるのはただの「意見」です。

それ以上の国の専管事項にたいしての容喙は、自治体の行き過ぎた越権行為です。  

鳥越さん、東京都に原発がありましたか?作る予定でもあるのですか?  

ないですね。ない理由を知っていますか?

東京都は人口稠密な首都ということで、原発の立地候補から初めからはずされているからです。  

ですから、「危ない原発」はすべてわが茨城県や福島県、新潟県にあって、長大な送電線を敷いて東京に運んでいるのです。  

それは初めから原発の設置場所は、首都東京から100キロ以上離れていることが、立地条件に入っていたからです。

つまり東京都は、首都という特権的地位にあぐらをかくことが出来る、極めて特殊な自治体なのです。 

少しどぎつい表現をお許し下さい。

私の住む地域は、東海第2の広域避難区域のやや外側に位置しています。

万が一原発がシビア・アクシデントを起こした場合、被爆する可能性があるのは私たちの地域です。

私たち地元住民が「捨て石」になっている間に、首都住民は脱出するわけです。  

そのリスクを地方に一方的に押しつけて、札束で頬を叩いて立地しておきながら、その自覚もないままにザブザブと電気を大量消費してきた東京都に、なにが「再稼働は認めない」ですか。

そして一端事故が起きようものなら、「東日本は終わった」「東日本の農家はテロリスト」と言って風評被害を振りまき、瓦礫の灰すら受け取り拒否運動をしたのは、千葉県から西の人々に多かったのです。

今でも思い出すと、腹わたが煮えくり返ります。

ふざけるのもいいかげんにして下さい。わがままも大概にしなさい。

東京都知事には権限はおろか、再稼働に関して一片の発言権もありません。

都知事に出来るのはせいぜいのところ、猪瀬前知事がやったような東京電力の1.2%の株主として株主総会で意見を言うことくらいです。

「脱原発」で東京都という自治体にできることは、しょせんその程度なのです。

東京だからなんでも言えると思うのは、中央意識の裏返しです。

東京に一基の原発も存在せず、その建設計画もない以上、原発問題は争点たりえません。

東京都知事選挙はあくまでも地方自治体の首長選挙です。

地方自治体首長の権限が及ぶ範囲が争点です。

東京都知事には、できることと、できないことがあります。そのわきまえもなく、最大争点が原発問題というのは勘違いも甚だしいとしかいいようがありません。

国政案件と地方行政案件を切りわけないで、自治体首長選挙を政治プロパガンダの場にする野党の悪癖は、これで終わりにしてほしいものです。

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「ドイツ帝国」前史

065
日本ではメルケルが、世界最初に脱原発政策を始めたように思われていますが、もちろん違います。 

メルケルは東独の物理学畑出身であるだけに、原子力については肯定的でした。むしろ、脱原発政策を進めていた社民党政権には批判的だったほどです。 

この社民党(SPD)の党首にして、後に首相となり、さらに、メルケルに破れたのが、下の写真でいかにもドイツ人ドイツ人した風貌のゲアハルト・シュレーダーという人物です。

Photo2005年の政権交代で、アンゲラに4議席足らずに首相の座を譲った当時のシュレーダー
http://www.newsdigest.de/newsde/features/7649-angela-merkel.html

なかなか興味深い人物で、マルクス主義的革命観が残る党内左派を押さえるために、環境左派である「同盟90/緑の党」との連立を決めて、1998年に政権党の党首となります。 

シュレーダーがとった政策が、ロシアと中国への接近政策と労働市場改革、そして脱原発路線でした。 

政権ナンバー2となったのが、連立相手の「緑の党」出身のヨシュカ・フィッシャーで、外相を勤めることになります。

Photo_21998年、シュレーダー率いるSPD・緑の党の連立政権が誕生。 中央のフィッシャーは外相に就任した。 左はシュレーダー首相、右はラフォンテーヌ財務相(フランス系ドイツ人)http://www.newsdigest.de/newsde/column/jidai/3119-eintritt-der-gruenen-in-die-hessische-landesregierung.html 

上の写真ではワイン片手にワ、ハハと笑っていますが、それぞれ党内事情は深刻でした。 

緑の党の綱領は、「反戦・反核・反原発」です。日本の野党と酷似していますね。

フィッシャーは政権に入るために、こういう「反戦・反核」という左翼反体制的方針をバサバサと切り飛ばし、「脱原発」一本に絞り込んでいきます。 

と同時に、初めてのNATO域外出兵となるコソボ紛争にドイツ連邦軍を出します。

ヨーロッパ最強と言われていたドイツ軍が、再び目を覚ましたのです。

Photo_4http://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B3%E3%82%B...

私は、フィッシャーのような現実主義的左翼政治家がいたら、日本も多少違ったのではなかろうかと思って、リスペクト記事を進呈したことがありました。少し褒めすぎたか(笑)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-ddfa.html 

まぁ、日本じゃシュレーダーやフィッシャーみたいなタイプの政治家は、生まれませんでしょうな。 

日本の左翼政党は「脱原発元祖」と自称していますが、原発反対は、その多くの反対メニューのうちの一品でしかありませんでした。 

だから、ひとつひとつ真面目に政策立案するのではなく、自民の言うことにはまとめて全部反対です。 

これでは何一つ解決しません。というか、そもそも解決など初めから望んでおらず、政治と社会を混乱させてそのどさくさに政権を取るのが基本方針だからです。 

それはさておき、シュレーダーとフィッシャーは、脱原発で共闘することになりました。 

このシュレーダーを川口マーン恵美氏は、「大国にすり寄ることによって、自分を大きく見せようとする姑息なところがある」と評しています。 

シュレーダーが「脱原発」政策の裏でとったのが、ロシアへの異常接近でした。

全任期中に、徹底してロシアの気に入らないことは言わない、という親露的態度を取り続けます。

シュレーダーがかつて左翼運動家あったために、日本の親中派のように「労働者の祖国」への郷愁があったためではありません。

その目的は、ロシアの天然ガスでした。

シュレーダーがやったエネルギー路線は、ひとつは先程から述べている脱原発政策ですが、同時にこれはエネルギー源の転換を意味しました。

2000年6月に「アトムコンセンサス」と呼ばれる原子力漸減政策が、政府と大手電力会社の間で結ばれます。

続いて2001年12月には脱原発法が通過し翌年の4月から施行されます。これがメルケルに先立つこと14年前の第1次脱原発政策です。

シュレーダーとシュミットは、日本の管センセと違ってリアリストでしたので、当時、17基ある原発が33%のエネルギーをドイツの経済と社会に供給していることをよく知っていました。Photo_7http://www.de-info.net/kiso/atomdata01.html

これをなくすという意味は、3割のエネルギー源を失うことです。

ふたりが考えたことは、ロシアから天然ガスパイプラインを、ドイツに引っ張ってくることでした。

現在、ロシアからの天然ガスは、ベラルーシ⇒ポーランドか、あるいはウクライナ⇒スロバキア⇒チェコ経由のいずれかでドイツに到達する仕組みです。

下図の中央の黒線がそれです。

シュレーダーがことのほか力を入れたのが、バルト海の海底パイプライン(ノースストリーム)でした。

これが完成されれば、天然ガスが、東欧・中欧地域を経ずにドイツに直輸入されることになります。

下図のトッドが作った地図の中央上に見えるオーーブ色の線が、それです。

Photo_5エマニュエル・トッド「ドイツ帝国が世界を破滅させる」より 

つまり、シュレーダーは、2010年の第1期完成(完工は2020年)を見越して、脱原発に舵を切ったわけです。

ただし、その副作用として、ドイツのエネルギー源の極端なロシア依存体質が生まれました。

原油に占めるロシアからの全輸入は33%、天然ガスで35%(2009年現在)で、支配的です。

一方ロシアにとっては、国内価格の実に8倍もの高値でドイツに輸出できるので、国内向けは原発にしてしまおうということで、ここにドイツとロシアの共通の利害、ハッキリ言えば、強依存関係が生まれたのです。

ドイツの脱原発への転換で、もっとも潤ったのがロシアでした。

結果、ロシアはエネルギーの飢餓輸出によって外貨を稼ぎ、再びソ連帝国の再興を視野に入れました。

いわばドイツの脱原発政策で、プーチン・ロシアは帝国再興の手がかりをつかんだと言えます。

の独露の強依存しながら、反発し合う矛盾した構図は、後のメルケル政権時のウクライナ紛争で火を吹くことになります。

と同時に、ロシアは国内向けのエネルギーに原発を当てました。皮肉にも、ドイツの原発分のエネルギーの落ち込み分を他国の原発が補填したことになります。

よく、フランスばかりいわれますが、これだけ大きな工業国のエネルギーシフトは、かくも大きく周辺国の状況を塗り替えるのです。

一方、しばらくしてドイツ人は、ロシアとのパイフラインが新たな戦略的価値を持つことに気がつきました。

フランス人のエマニュエル・トッドは、こうシニカルに評しています。

「存在するガスパイプラインのすべてをみてほしい。ウクライナを通っていることだけが共通点ではないよね。ドイツに通じているというのも共通点だ。
したがって、ロシアにとってのほんとうの問題は、ウクライナだけではなく、ガスパイプラインの到着点がドイツによってコントロールされているということなのだ。それは同時に南ヨーロッパ諸国の問題でもある」(前掲)

メルケルは、サウスストリームと呼ばれる(緑色点線)に対して賛成していません。

その理由をトッドは、こう述べています。

「サウスストリームが建設されないことがドイツの利益でもあるということが分かる。それが建設されと、ドイツが支配しているヨーロッパの大部分のエネルギー供給が、ドイツのコントロールからはずれてしまうだろう。」(前掲)

つまり、ドイツは自らの国に直行するノースストリームの建設は急ぐ反面、ドイツのコントロールから外れるサウスストリームには反対だということです。

このようにドイツの脱原発政策は表向きの理想主義とは違って、シュレーダーの衣鉢を継いだメルケルによって、ヨーロッパ諸国のエネルギーの首根っこを押さえる武器に転じていくことになります。

メルケルの前任者だったシュレーダーが残したものは、二つあります。

ひとつはNATO域外出兵によって、ドイツはNATO、すなわち「ヨーロッパ統合軍」の盟主として軍事的に関与すること。

二つ目は、脱原発政策と一体となったロシアからの天然ガスパイプラインによって、ヨーロッパ諸国のエネルギー源をコントロールすることでした。

東西両ドイツを再統一したコールが、安価な国内労働者を旧西ドイツの企業に提供することになるとは思っていなかったように、シュレーダーもまた、ロシアからの天然ガスパイプラインをドイツがコントロールすることになるとは意図しなかったことでしょう。

NATO域外派兵もまた、渋々せざるをえなくなるていどのスタンスだったはずです。

ところが、メルケルはこれらの前任者たちの残した遺産を巧妙に、きわめて意識的に「ドイツ帝国」の版図拡大に利用していきます。

そしてそれは同時に、「ロシア帝国」の復活と、確執の始まりでした。

ひとつひとつ説明が必要ですが、とりあえず箇条書きにしておきます。

①安価な旧東側労働力の獲得
②ユーロ・共通貨幣による恒常的マルク安を利用したどしゃぶり的輸出
③EUの関税なき内国化を利用した近隣窮乏化政策
④ロシアからのパイプラインよるエネルギーコントロール
⑤NATOの旧ソ連圏への膨張・拡大
⑥米国の没落と、ヨーロッパの米国圏からの離脱の動き
⑦復活した「ロシア帝国」との確執の開始

かくして延々と数世紀に渡って続く、伝統的<ゲルマン帝国vsスラブ帝国>の争闘の構図が、21世紀の今また再現したわけです。

では、一句。

コールがつき、シュレーダーがこねしドイツ帝国。座りしままに食うはメルケル。

■トッドの地図から下を大幅に加筆しました。 

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福岡高裁宮崎支部判決 政府は原子力規制のルールを確立しろ

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川内原発の仮処分についての福岡高裁宮崎支部の判決がでました。

「九州電力川内(せんだい)原発の運転を容認した6日の福岡高裁宮崎支部(西川知一郎裁判長)決定は、原発運転に伴う事故の可能性について、社会では「ゼロリスク」を求めていないと認定し、関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁決定(今年3月)などとは異なる判断を出した。
 東京電力福島第1原発事故以降、各地の裁判所であった原発の運転差し止めを巡る判決や決定は今回で9件目。うち3件は運転停止を認める内容で、司法サイドの判断は揺れている。」(毎日新聞4月6日)

いちおう、ドミノ倒し的に大津地裁現象が進むことは、止まったわけです。 

Photo(西日本新聞4月6日より引用 川内原発の運転差し止めが認められず、「不当決定」などと書かれた垂れ幕を掲げる住民側弁護士ら=6日午前10時34分、宮崎市の福岡高裁宮崎支部前)

いままで出た3本の判決を比較します。毎日新聞4月6日が、便利な一覧を作ってくれたので引用させていただきます。

Photo_2毎日新聞4月6日より参考のため引用。ありがとうございました。

注目すべきは、再稼働を容認したかしないか、ではありません。 

ここに論点を絞ること自体が間違いだと、かねてから私は主張してきました。 

あくまでも司法は、「判断をする権限を持たない」のであって、その結果は別次元のことにすぎません。 

なぜなら、福島事故以前と以後における原子力行政が明確に異なるのは、原子力規制委員会が誕生したことです。 

これは委員長の任命権こそ政府にあれ、その指揮下にはない完全に独立した政府機関です。 

つまり政治には左右されない、さらには田中委員長が常日頃いうように「経済性は配慮しない」機関です。

「経済は考慮しない」というのは、いくらなんでも無理筋で、これではリスクの大きさと社会的ベネフィット(利益)を天秤にかけるリスク評価ができなくなります。

規制委員会の委員には中西準子先生(産総研フェロー)のようなリスク評価の専門家がいないので、どうしてもこういう極端な方向に行ってしまいがちです。 

それはさておき、とりあえず「オレたちの判断には政治や経済にクチバシをいれさせないんだ」、という心意気のようなものは伝わってきます。 

では、一体誰がこの再稼働を決定する権限を持つのでしょうか? 

政府です。え、なんだ~と脱力される方も多いでしょうが、規制委員会が今やっているのはあくまでも、再稼働に関する「設置許可」を審査しているだけです。

言い換えれば、規制委員会は「設置許可」まではするが、再稼働そのものについての許認可は政府が判断するということです。 

「設置許可」の審査の法的根拠は、原子炉等規制法43条の3の14です。http://www.houko.com/00/01/S32/166.HTM

「発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない」

法律文なので分かりにくいですが、要は、すべての原子炉も常に最新の技術基準に対応しないとダメですよ、その審査は規制委員会の専管事項ですよ、と書いてあるわけです。 

これがバックフィト制度です。
バックフィット制度とは - 日本原子力文化財団 

「政府は、今回の事故の教訓を踏まえて法律を改正し、世界最高水準の規制を導入するとしています。そのひとつが「バックフィット制度」といわれるもので、発電所の電源の多重、多様化や原子炉格納容器の排気システムの改善など、最新の技術的知見を技術基準に取り入れて、すでに運転をしている原子力発電所にも、この最新基準への適合を義務づけます。最新基準を満たさない場合には、運転停止(廃炉)を命じることができるとしています。」 

これは原子力施設が老朽化したりして、新たな科学的知見にあわない場合、昔の基準には適合していても遡及して(バック)適合(フィット)させるという仕組みです。

適合していなければ規制委員会は、先の原子炉等規制法43条の3の14を根拠にして廃炉にすることも可能です。

国際的にもバックフィト制度はありますが、努力義務であって、「適合しなければ廃炉」という強い指導方針を持つのはわが国だけです。

このように司法が仮処分というサラ金が追い込みに使ったような法律を武器にして、安全基準が「不合理であるか否か」などを審理する権限自体がないのです。

もし司法にそんな権限があるなら、二重審査になってしまいます。しかも2回目の「審査」ははズブの素人の裁判官ときています(苦笑)。

百歩譲って司法が裁く余地が残されているとすれば、それは規制委員会での審査が正当になされなかった場合です。

たとえば安全基準に誰の眼にも明らかな瑕疵があるのに、それを規制委員会が故意に無視した場合などです。

現状は、何を、どのように、どこまで司法が裁けるのかのルールなどない、恣意的な「正義」が横行している状況です。

今回の福岡高裁宮崎支部の判決を、ひとつの節目にしませんか。

今後も脱原発弁護団は、際限なくすべての原発の再稼働に仮処分をぶつけるつもりのようです。
脱原発弁護団全国連絡会 - 脱原発法制定全国ネットワーク

彼らがやっているのは、法の名を借りた「実力闘争」だということは、先日、大津地裁判決の時に指摘しました。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-3595.html

彼らは法の下の「正義」をはき違えています。

一般的なデモ、集会という言論の自由の枠内での行動ではなく、実社会の経済をマヒさせ、多大な社会的損失を招く行為です。

こういう行動を左翼の業界用語では、「実力闘争」と呼びます。かつてのゲバ棒の代わりに、六法全書をふりかざしているだけの違いです。ちょっと言い過ぎかな(笑い)。

あくまでも「設置基準」が安全基準に則っているかどうかの合否を判断するのは規制委員会の専管事項であって、それを受けて判断するのは政府です。

規制委員会がノーと言えば再稼働は見送りになる、あるいは最悪の場合廃炉にする、これがルールです。

そして再稼働のルールを明確にすべき責任は、あげて政府にあります。

毎日新聞は「揺れる司法判断」などと書いていますが、何を言っているのか。司法が揺れようとどうしようと関係ありません。

そもそもおかど違いの司法を引っ張りだす弁護団や原告団のほうが異常なので、判断権者の規制委員会と政府がしっかりしていればいいだけです。

一部住民と過激な脱原発弁護団によって引き起こされるモグラ叩きみたいなことを、いつまで続けるつもりなのでしょうか。

さもないと、規制委員会の判断は空洞化し、その権威は失墜するでしょう。

いったんこうなってしまえば、原子力規制に対する「政治」の支配が復活することになります。

安倍政権は、こと原子力政策において腰が引けすぎています。

私は再稼働に邁進しろ、といっているのではありません。原子力規制のルールをしっかり確認しろ、と言っているだけです。

今この時期は、エネルギーの過渡期です。私は原子力自体は、やがて消滅に向かうべきエネルギーだと考えています。

残るにしても、今のような形ではないはずです。

しかし、今、完全に消滅したら社会的ダメージが大きすぎます。電気料金の高騰と高止まりは既に現実になり、日本社会を苦しめています。

30%のエネルギー源が消滅するというのが、いかに巨大か、です。

従来型の原発がふるいにかけられて、危険度が高いダメなものから順次廃炉に追い込まれていく時期です。

短期のスパンの原子力の廃絶はありえません。おおよそ50年ほどかけて、この選別と廃炉の過程は進行するでしょう。

その間に様々な代替エネルギーが登場し、試練にかけられて、あるものは消え、あるものは残って次世代の主流の一角となっていくでしょう。

その過渡期のつなぎとして、残していい原発もあれば、残してはいけない原発もあります。

それを選別するのは、ただひとり、規制委員会だけの仕事です。政府でもなく、ましてや素人同然の裁判官ではありません。

この原則を打ち立てないと、大変な社会的混乱を招きます。いや、既に招いています。

政府がしっかりしないならば、電力会社はあらかじめ損害賠償の積み立て担保を要求して自衛するしかないでしょう。

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大津地裁運転差し止め判決 その4 法衣を着た放射脳オバさんと化した山本裁判官

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「安易な再稼働」という人が、マスコミを中心にしてよくいます。 

再稼働というと、対語のように「安易」をかぶせないと気が済まないようです。

東京新聞(2015年9月20日)は世論調査の形を借りて、この3ツを「安易な再稼働」の原因だとしています。

①原発の安全対策、とくに事故時の原発の安全対策、事故時の住民避難などの防災対策が不十分
②原発から出る核のごみの処分方法が決まっていない
③福島第一原発事故が収束していない

さて問題は、①の原発の安全対策ですが、山本判事がもっとも力点を置いたのは地震対策でした。 

山本裁判官は判決の「争点3」でこう述べています。
※http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/b6c5742c4f89061d95ceb8a0675877e2.pdf 

「基準地震動Ss-1の水平加速度700ガルをもって十分な基準地震動としてよいのか、十分な説明及び疎明がされたとは認められない」(50頁) 

Ssと書いてあるのが基準地震動のことです。

まずは、用語から押えておきましょう。基準地震動の定義は以下です。

「原発の設計の前提となる地震の揺れで、原発ごとに異なる。周辺の活断層などで起こりうる大地震を想定して、地盤の状態を加味し、原発直下の最大の揺れを見積もる。
これをもとに原子炉、建屋、配管などの構造や強度を決める。単位はガルで、1ガルは1秒ごとに1
センチずつ加速すること。地球上で物が落ちる時の加速度(重力加速度)は980ガルで1Gともいう」  (2011年6月14日  朝日新聞)    

つまり、原発施設によって異なる地盤を考慮して、起こりうる大地震の最大の揺れの基準値のことです。

え、全国一律ではないのって。はい、そりゃそうでしょう。原発建屋が立っている場所の地層は、場所により異なっています。  

地層が軟弱な場所では、地震の揺れは大きいでしょうし、岩盤の上に立てられれば地震には強いでしょう。  

ですから、個別の原発によって想定される最大震度は違っています。  

この基準地震動は、2006年の耐震設計審査指針改定から適用されており、原発の耐震性能を評価する揺れの大きさを加速度で表現したものです。

Photo入倉孝次郎京都大学名誉教授http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/taisaku/katsudo.html

原子炉の耐震工学が専門の入倉孝次郎京都大学名誉教授は、『原子力発電所の耐震設計の中でこう述べています。
原子力発電所の耐震設計のための基準地震動 - 入倉孝次郎研究所

「地震動の策定については、「『施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動』を適切に策定し、地震動を前提とした耐震設計を行うことにより、地震に起因する外乱によって周辺公衆に対し、著しい放射線被爆のリスクを与えないようにすることを基本とするべきである」としている。
さらに、「残余のリスク」の存在について、「地震学的見地からは、上記のように策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。このことは、耐震設計用の地震動策定において、『残余のリスク』が存在することを意味する」と記されている」 (1頁)
 

例によって、専門家の技術論文は、私たち一般ピープルには暗号ですが、この部分は明解です。 

ここで、入倉教授が言っていることはこうです。 

「仮に基準地震動を策定しても、それを上回る強さの限界的地震動が来る可能性は否定できない。だから、そのような『残余のリスク』を想定して耐震設計している。」 

つまり、基準値地震動=耐震限界値ではありません。かならず倍数の安全率をかけて耐震設計されています。  

これを知らない山本裁判官や樋口裁判官などは、「基準地震動にあってはならない地震が来たらどうするんだ。だから、新安全基準は緩すぎる」と言い出しています。 

まったくの素人考えにすぎません。入倉氏はこう答えています。

「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」
「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」
(福井新聞2015年4月15日)

事実、4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が、2005年以後10年足らずの間に到来しています。  

福島第1原発においても、基準地震動を越える揺れが襲いました。 

001 図 宮野廣法政大学教授による 単位ガル クリックすると大きくなりますhttp://www.gepr.org/ja/contents/20140630-02/

上図は、宮野廣法政大学教授『福島原発は地震で壊れたのか』から引用したものですが、最大の加速度は、いずれも基準値地震動の平均460ガルを超えています。 

最大に超えたものは、2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。

さらに震源域に近かった女川では基準値580に対して636ガルで、ここも実測値が基準地震動を上回っています。

実は東日本大震災以上の大きな振動が発電所を襲ったケースに、2007年の中越沖地震動があります。

東電は地層の褶曲構造によって、施設内に大きな影響が出たと説明しています。

Photo_2 地質調査と基準地震動|柏崎刈羽原子力発電所|東京電力

実際に柏崎刈羽原発を襲った実測震度です。カッコ内が基準地震動です。比較してみてください。

002_3 宮野教授による 前掲

 

Photo_3 東電資料 前掲

いずれの原子炉も基準地震動に対して約50%、最大の2号炉では273ガルの基準値に対して、実に3倍の680ガルが襲っています。

この激震に対して、各原子炉は正常にスクラム(緊急運転停止)しています。後の配管の調査でも破断は認められていません。

しかし公平にみれば、東電はこの柏崎刈羽の教訓にもっと学ぶべきでした。

柏崎刈羽では、2700カ所以上の機器類の破損があり、3号機の起動変圧器は炎上し、外部電源も一時的に失われています。

ただし、非常用ディーゼル発電機が正常に起動したために、事なきを得ています。 

しかし起動後も電力不足状態が続き、タービン駆動給水ポンプを動かすために補助ボイラーが起動しましたが、1から5号機と6,7号機でそれぞれ一台しか使用できないようなシビアな状況でした。

そのため4号機の冷温停止には、丸2日かかっています。

東電はこの柏崎刈羽で経験した地震による全交流電源の停止(ステーション・ブラックアウト) という事態を、もっとシビアに総括して、今後に生かすべきでした。

そうしていれば、福島第1で簡単に水没する場所に予備電源エンジンを置くなどという失態をせずに済み、福島事故は起きなかったことでしょう。

このように、柏崎刈羽の例をみればわかるように、原発施設自体は基準地震動の3倍の振動にも耐える能力で設計されているのです。

原因はひとえに、外部電源の停止と、予備電源の水没による全交流電源喪失です。

福島第1原発の調査報告はこう記しています。

① 政府事故調報告書では、原子炉圧力容器、格納容器、非常用復水器(IC)、原子炉隔離時冷却系、高圧注入系等の主要設備被害状況を検討している。津波到達前には停止機能は動作し、主要設備の閉じ込め機能、冷却機能を損なうような損傷はなかったとしている。

② 民間事故調報告書では、津波来襲前に関して、地震により自動停止し未臨界を維持したこと、外部電源を喪失したが非常用ディーゼル発電機(EDG)により電源は回復したこと、その間にフェールセーフ(安全装置)が働きMSIV(非常用炉心冷却装置)が閉止したこと等、正常であったことが述べられている。

③東電最終報告書では、1号機~3号機について地震による自動停止と、自動停止から津波来襲までの動きに分けて評価している。前者は各プラントとも地震により正常にスクラムしたこと、外部電源喪失したがEDGにより電圧を回復したこと、EDG起動までの間に原子炉保護系電源喪失しMSIVが自動閉したこと等の結論を得ている。(宮野論文前掲)

 唯一、反原発派が主導権を握った国会事故調のみが、「配管の損傷に起因すると考えられる直接的なデータは認められないものの、可能性はないとはいえない」という文学的なことを言っています。

「可能性はないとはいえない」ですか、笑っては悪いが、工学系の論文が書くこっちゃないね(笑)。まるで不可知論だ。

そりゃ確かに、リスク評価において0はありえないから「可能性はないとはいえない」ですが、それ以上に大きな原因があったでしょう。

そう、デーゼル予備電源の水没です。とくに配電盤がやられて、全交流電源がオシャカになったのです。

この反原発志向の人たちはどうしていつまでも、未練がましく地震説をとるつもりなのでしょうか。

そもそもこの基準地震動など、しょせんは人間が定めたひとつの「数字」にすぎません。

斑目さんが安全委員会の委員長だった時に、国会で「いちおうの目安で決めた」といっているくらいに腰だめな数字です。

しかし、これがないと設計ができないので、とりあえず設定しているていどのニュアンスの基準値です。

ですから当然のこととして、人間の知見という狭い幅で決めたのですから、山本判事がいうように「超える場合もある」でしょう。そんなことは、あたりまえです。

超えるから、安全率をかけて設計されているのです。  

だからこそ、原子炉の格納容器、配管などが現に基準地震動を超える地震に耐えたのか、耐えなかったのか、という事実認定のほうが重いのです。

何度言っても、反原発原理主義者の硬化した頭脳には分からないようですが、福島事故の原因はあくまでも津波による予備電源の水没です。  

それは4つある事故調報告書が、国会事故調を除くすべてで一致して出した結論です。

なにが「原因究明は道半ば」だってーの。読んでから言え。  

この山本裁判官は、法衣を着た放射脳オバさんにすぎません。

けっきょく、彼が仰々しく書いている判決文など、こんなていどのものでしかないからです。

「うわー、また地震か来るゾォ!700ガルなんかぬるい。いや1250ガル超が来るかもしれないんだ。それに耐えるゲンパツなんかありっこない。だから全部止めろ。いや、このオレが止めてみせるゾ!」  

リスクは常にあります。すべての事象には、何事につけ「想定外」はつきものです。

入倉さんが「残余のリスク」といっているのがそれで、耐震設計などはまさに、この「残余のリスク」をいかに管理するかの設計哲学によって作られているといって過言ではありません。

だからこそその「残余のリスク」をいかにして減らしていくか、「想定外」が来た場合それをどのようにして極小化できるのか、というリスク管理が大事なのです。

これが工学系の考える万が一事故が起きても、さまざまな方法でシビアアクシデントにならないようにブロックする深層防御です。

この方法は今回の安全基準に盛り込まれています。 

一方、山本判事のような「ゼロリスク論」は、津波だろうと、地震だろうと、はたまた人為的ミスであろうと、初めから「危険性が万が一でもある」からダメだ、ダメだからダメだ、という循環論法的な考え方をします。 

「ダメだからダメ」という全否定の考え方に立つ限り、現実に原子炉を運営する立場の専門家や、電力会社とは「会話」そのものが成立しないでしょう。

だからいくら電力会社が何万ページもの文書で説明しようとも、「説明及び疎明は不十分」で終わってしまうのです。

そもそも、山本さんは、聞く耳をがないんですから無駄です。

こんな判決によっては、日本の原発の安全性は一歩も進化しません。

それは、かつてあった「原発は絶対に事故を起さない」という原発安全神話の、単純な裏返しとしての「原発絶対危険神話」でしかないからです。

 

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大津地裁運転差し止め判決 その3 日仏原子力規制を比較してみると

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大津地裁山本判決を、「規制委員会の独立性」に対しての侵害行為という視点で見ています。 

どうもよく分からないのですが、反原発派の皆さんは原子力規制委員会なんて、しょせんは政府の犬だから、こんなもの要らないと思っているようです。

だから、この山本判事のように「700ガルは低い」みたいなことを平気で言い出します。

こういう規制委員会の独立性を、ひんぱんに司法の名の下で犯すことが常態化すれば、規制委員会もその安全基準も空洞化していくことになります。

だって、仮に2年3カ月の審査を経て、4万頁におよぶ膨大な資料を積み上げ、巨額な安全対策をして運転が認められても、一瞬で運転停止できちゃうわけですからね。

それもサラ金が債務者を追い込む武器にしていた「仮処分」なんてもので、止められてしまうことができるのですから、もう規制委員会も安全基準もいらない、ということになっていきます。

このような反原発運動からの規制委員会の独立性への侵害行為が続けば、当然、推進派のカウンターが生じます。

今の田中委員長体制はそれでなくても、審査期間が長すぎる、地震について思い入れが強すぎる、ひょっとして隠れ脱原発派の巣窟じゃないのか、というブツブツ言う声が、経産省資源エネルギー課あたりから聞こえてきそうな存在なのです。

経産省の「長い手」が伸びてきても少しも不思議でない時期に、こんな判決が続けばどうなるかは目に見えています。

あのね、反原発派の皆さん、あんたらのやっていることは、逆に原子力の安全性監視・規制体制を揺るがしているのですよ。分かってやっているのかな。

まず、そのためには、規制委員会-規制庁の仕組みを知らねばなりません。

私は、かねてから原子力監視規制機関は、徹底的な独立性を担保されなけれダメだと思っていました。

原子力エネルギー推進機関と、規制機関は完全に分離され、いかなる支配も受けてはいけません。

さもないと、審査に手心が加わるからです。

結論からいえば、現在の原子力規制委員会-規制庁は、福島事故前の経産省の外局でしかなかった安全・保安院よりはるかに独立性は高いとはいえ、まだまだ完全独立を果たしたとは言い難い過渡期にあります。

原子力大国のフランスの「原子力の番人」であるフランス原子力安全機関「原子力安全機関ASN)と、比較してみましょう。

フランスASNは、どの省庁の下にも属さない完全に独立した国家機関で、院長以下4名のコレージュ(委員)による官房があります。

いわばASN自体一種の、「政府内政府」のような組織構造になっています。

政府にはASN長官と委員の任命権すらなく、唯一それを持つのは元首の大統領のみです。

ASNは国会への報告義務を負う完全に独立した国家機関なのです。

ASNは外部に「放射線防護原子力安全研究所」(IRSN)という専門家による補佐機関をもっています。 

ASNの職員数の77%、IRSNで85%が博士号を持つ専門家集団で、どこぞの国の規制庁のようにボスが警官出身で、その部下の警官たちを引き連れてやって来ました、というようなことはありません。

Dsc_1665(BSフジ「プライムニュース」より)

ちなみに、規制庁発足時の出身官庁をみます。 

●原子力規制庁の官僚出身内訳
・経済産業省・・・312名
・文科省   ・・・ 84
・警察庁   ・・・ 16
・環境省   ・・・ 10
 

7割を超える圧倒的人数を送り込んで来た経済産業省からの出向組は、原子力安全・保安院、資源エネルギー庁出身者です。

なんのことはない資源エネルギー庁とは、政-財-官-学にまたがる「原子力村」の司令塔のような所ではないですか。  

他は、文科省、環境省、内閣府原子力安全委員会の出身ですが、とくに環境省は原子力規制庁を組織系列下にした上で、ナンバー2の次長ポストを押し込んでいます。  

出向者数こそ地味ですが、原子力規制庁を組織系列化においた環境省はCO2削減を旗印にして、「地球にやさしいクリーン電源・原子力」(笑)をエネルギー比率50%まで増やすという今思えばトンデモの政策を作った役所です。 

福島事故に際してもその動きは鈍く、空間線量や土壌放射線量などの測定も文科省に遅れをとり続けてきました。

当時私は、環境省に無作為の悪を感じたほどです。経済産業省が「原子力村」の村長なら、環境省は助役です。  

つまり原子力規制庁は、原子力安全対策を風当たりが強い経済産業省から、環境省という裏の司令塔の下に系統をすげ替えただけの問題を多く含んだ組織だといえるでしょう。  

どうして完全にすべての省庁から独立させなかったのでしょうか。

モデルにすべきは、あの鬼の会計検査院です。

会計検査院は、徹底的な独立性が保証されています。

「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。(日本国憲法第90条)。また、内閣に対し独立の地位を有する。」(会計検査院法1条)」

 この会計検査院法の、「国の収入収支」の部分を原子力発電に読み替えて下さい。

「国の原子力発電の安全監視・規制・再稼働は、すべて原子力規制委員会がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。また、内閣と政府諸機関に対し独立の地位を有する。」

原子力の規制・監視も、この「内閣からの独立の地位」、言い換えれば政治からの独立性こそが肝だったはずです。 

しかし発足当時、反原発派の人たちは、規制委員会の委員長が原子力村出身だからドータラなどにどうでもいいことに目を奪われて、肝心の原子力規制庁の「独立性」の部分が骨抜きになったことを見逃してしまいました。

つくづくどうして反原発派の皆さんは、こうも近視眼なのかと思いますよ。

たぶんこの人たちは、規制委員会のトップに坂本龍一氏のような音楽家になってほしかったのでしょうね。

Photo
さて、日本の原子力規制庁とあらゆる意味で対照的なのがフランスです。  

フランス原子力委員院長はラコスト氏ですが、彼は「フランスでもっとも怖い男」と言われているそうです。上の写真のいかにもガンコそうな親父が、アンドレ・ラコスト委員長です。

首相に対してもまったく物おじせずに正論を吐くので、脱原発派からも一目置かれている人物です。  

Photo_2http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-05-02-03

ラコスト氏はフランスの理系の最高学府である国立理工科学院(ポリテクニック)を卒業後一貫して原子力畑を歩み、原子力安全施設(DSIN)や独立機関になる前のASNの責任者をつとめました。  

ラコスト氏は原子力の専門家としてフランス原子力庁や、原発所有者のフランス電力公社からの独立を訴え続け、2006年に法令によって独立を勝ち得た後は初代院委員長に就任しました。  

ASNは福島事故直後の3月12日に仏政府より早く声明を出し、同月23日には早くも「仏全土の全原発の安全性に対する監査」を実施しています。  

同時期に日本の原子力安全委員会の斑目春樹委員長が、菅首相から連日子供のように叱り飛ばされてうろたえていたのとは対照的です。

安全委員会が内閣の顧問組織だからしかたがなかったというのが斑目氏の言い訳ですが、それにしてもこの人のダメぶりはひどかった。 
※斑目さんの爆笑漫画はこちらから。この人妙な才能があったんだとびっくり。特に事故マンガは抱腹絶倒。http://ponpo.jp/madarame/lec5/list.html

おそらくフランスで福島事故と同様の事故が起きた場合、ASNは政府とはまったく独立した判断をしたうえで、即時に事故対策を「命令」したことでしょう。  

もちろん政府にです。ASNは政府からあごで使われる組織ではなく、政府に命令できる権限を持つ独立機関だからです。  

ですから、菅首相のように外部者からの意見に左右されて、事故現場の指揮に直接介入するなどという国を滅ぼしかねない蛮行は、フランスではやりたくてもできません。 

もし首相がそのようなまねをしたら、ラコスト委員長から、「閣下、原子力事故において、素人に出番はありません。閣下ができるのは、現場への弁当の差し入れと責任をとること程度です。誰か閣下を部屋の外にお連れ申せ」と一喝されたことでしょう。

ましてや、一介の地裁が、「仮処分」命令で運転停止などしようものなら、 ラコスト氏の「大バカヤロー」という雷が落ちることは必定です。

というか、そんなことが出来る余地など、フランスにはそもそもありません。

わが国の福島事故の悲劇は、ASNのような独立した原子力規制機関がなかったこともさることながら、ひとりのラコスト委員長もいなかったことでしょう。  

このように「監視規制機関の独立性」ということをキイワードにしてフランスと日本の原子力規制行政を比較すると、わが国は福島事故を学んでおらず、おざなりの改革でお茶を濁してしまったことがはっきりと分かります。

山本裁判官、あなたのやったことは、原子力行政の安全に寄与したのではなく、規制委員会の独立性を侵犯したことで、かえって安全性を揺るがしたのです。

罪深いことだと思いませんか。  

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大津地裁運転差し止め判決 その2 電力会社は今後の抑止のために損害賠償訴訟をすべきだ

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一昨日の記事に対して、名無し氏からもらったコメントは、このようなものでした。

「立法も行政もあまりにもめちゃくちゃだから仕方なく司法がとりあえずなんとかしてやった、というが正確です。」  

まぁ、こういうコメントが来るだろうとは思っていました。たぶん反原発派の方でしょうが、私の言ったことが、この人たちの祝杯に墨汁を垂らしてしまったようです。 

ならば大津地裁は「とりあえずなんとかして」くれたわけですが、それはあくまで「とりあえず」なんで、次の審理で覆えるまでの一時の「意趣返し」ってわけですか。

しかしその代償は大きいですよ。関西電力の原発停止による1日5億5千万円(九電)といわれる損害と、それによる管内の電気料金値下げの中止です。

私は、このような「基準外的圧力」による原発停止に対しては、電力会社はその失われた損失の対価を原告団に請求すべきだと思っています。

これはたんなるシッペ返しではありません。「仮処分」は本来、このような時に使用されるべき民法上の概念ではないからです。

「仮処分とは、債権者からの申立てにより、民事保全法に基づいて裁判所 が決定する暫定的処置である。」(Wikipedia)

つまり、「仮処分」とは、民法上の権利に関する紛争のことで、金銭債権者が倒産しそうな債務者の財産を、急いで差し押さえる時になど使われる法律です。

なんだ仮処分というから仰々しいですが、なんのことはない、倒産、夜逃げ、ローン破産などで使ってきた法律なのですよ。

しかも正式な判決による強制執行(差し押さえ)が行われるまでの、緊急、かつ暫定的なもので、正式なものが出たら消滅します。

だから「仮」という字が被っているわけですね。これが一義的な仮処分です。

かつてサラ金などが乱発していた法律です。こんなものを公共エネルギーの運転の中止に使おうという根性がまちがっています。

もうひとつ二義的意味に、「紛争によって債権者に生じる現在の危険や不安を取り除くための、仮の地位を定める仮処分」(知恵蔵)があります。

どうやら、今回の市民団体は後者の「債権者に生じる危険や不安の除去」を使ったようです。

Photo福井から原発を止める裁判の会サイトより  http://adieunpp.com/

いずれにしても、仮処分の法の本旨から大きくはずれた拡大解釈です。

もし、このような恣意的な拡大解釈による仮処分で、政府、あるいは行政機関の行政判断や執行に横やりを入れられるなら、なんでもできちゃいます。

たとえば、辺野古移設工事停止仮処分なんかやればできそうですし、なんなら沖縄米軍基地使用差し止め仮処分、安倍首相執務執行差し止め仮処分なんかも可能かもしれません。

もっとも、カウンターで政府から、翁長知事執務停止仮処分とか、共産党活動差し止め仮処分なんかでてくるかもしれませんが(冗談)。

沖縄地裁に、山本氏や樋口氏みたいな法匪判事がいさえすれば、案外、仮処分がもらえるかもしれませんからやってみたらいかがでしょか。

誰が地裁の人事権者かしりませんが、お願いですから、こういうトンデモ裁判官を、原発や米軍基地がある県に派遣しないで下さい。

なにせ原告らが、自分の脳内地獄によって「生じる危険や不安の除去せよ」って言い出せば、人権保護を理由に差し止めが可能かもしれないのですから、ある意味、超法規的です。

「オレがコワイから人格権を認めろ。差し止めだ」では、なんのために膨大な時間をかけた安全基準審査があったのか、そもそもなんで規制委員会が存在し、安全基準ができたのか、まったく無意味になります。

こういう人たちが、今回の大津地裁判決で味をしめてしまったのですから、ひじょうにコワイ。

ですから、ぜひ関西電力はこの原告団に対して、断固として損害賠償請求をするべきなのです。

この「市民」グループは、十数人らしいですから、ひとりほんの数千万ていど払えばいいだけですよ。

これは、今後同じ「法の名の下の無法」を封じる抑止として有効になります。

全国の原発訴訟をまとめた脱原発弁護団全国連絡会という組織がありますが、それによれば、福島事故の後に39の訴訟が提訴されています。

内容的には大同小異で、以下の3点です。

①基準地震動を超える振動はあってはならないが、東日本大震災ではあったから安全性に疑問があるという基準地震動論。
②冷却装置の破損の可能性。壊れないとはいえないというゼロロリスク論。
③「原発は危険だから怖い」という感情論。個人利益の保護の観点から裁判所は直接的に危険性の有無を判断できるという「人格権」。

以上ですが、どれもこれもうりふたつ。まるで金太郎飴のようにどこを切っても同じ論理がでてきます。

それもそのはず。出所はメディアにひんぱんに登場する左翼文化人、マスコミ左翼、自称研究者、脱原発弁護団の弁護士などで、彼らはどこの裁判にも登場します。

この人たちがいわばイデオロギー装置で、同じことを発信して各地に原告団を作っているようです。

だから異様に同じ内容の原告の訴訟内容と、これまたそれに対応したかのような異様に同じ判決文が出てくることになります。

また、共産党は表立って出てきませんが、これらの人の多くはその支持者です。

こうした反原発訴訟に対して、九州電力は去年4月に結果が出た川内原発をめぐる訴訟において、申立人23人に本訴で原告の市民団体側が敗訴した場合に、再稼働が遅れたことで「1日5億5400万円の損害を被る」として、地裁に申立人に賠償に備えた「妥当な金額」の担保金を積み立てることを求めました。

それを警戒し、訴訟から下りる人が10名出ました。この人たちは、「意趣返し」はタダではないことに、やっと気がついたようです。

個人の安全・安心を言い立てるのは自由ですが、政府や規制委員会のような行政、あるいは電力会社のような公共事業体の役割は、社会の最大限利益を守ることであって、個々人の安全・安心ではありません。

経済的に巨大な損害を被る電力会社にとって、規制委員会の安全基準に合格していた原発を動かすのは、公共事業体として当然の社会的責務であり、通常の経済行為です。

しかも扱うものが公共エネルギーであるために、今回のように停止させられた場合の損害は、管内の電力消費者すべてが被ってしまいます。

この春に予定されていた関西電力の電気料金値下げも、中止に追い込まれました。管内の事業者や市民は、この原告団に対して損害賠償請求したらいかがですか。

ですから、個人の安全・安心を対置して妨害する勢力からの救済を求めて、電力会社が裁判制度を利用するのもまた、あたりまえなのです。

裁判制度を使って「実力阻止」を試みる以上、電力会社が同じく裁判制度を使ってそれを阻止するのは、当然のカウンターなのです。 

関西電力は、今回も多くの不手際を残して裁判所の心証を悪くしています。少しは罪滅ぼしとして、今後同じ手口を使われないような法的措置を取るべきです。

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