公共インフラの危機

村の小学校の崩壊は誰の責任なのか?

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これが東日本大震災の時の私の村の小学校の惨状です。校舎に亀裂が入り、崩落の危険があり、学童は避難しました。幸いにも、学童に死者が出なかったのが奇跡のようです。 

この小学校は廃校となり、立入禁止のまま取り壊しを待っています。我が村ではもう一校も、震災て破壊されて廃校になりました。 

原因はなんでしょうか?耐震化が遅れに遅れたからです。どうせ地震などは来やしまい、とたかをくくっていたからです。。 そしてなすべき耐震補強工事を手抜きしました。

そして誰一人も責任をとらないまま1年半が立ちました。改めて問いたい。この責任は誰にあるのか?もし、不幸にも学童に死者が出ていたら、誰が責任をとったのですか。 

一義的には文科省です。教育においてもっとも守られるべき学童の生命と安全を守れないような官庁に存在理由はありません。 

次に、その予算を削った犯罪的人間たちがいます。それは民主党が目玉政策として始めた「事業仕分け」に関わる一群の政治家たちです。 

彼らは、この時に耐震化は「無駄」だと判断しました。理由はあれこれ挙げていましたが、要はマニュフェストのくだらないナントカ手当の財源を捻出するために、子供の命を「無駄」にするつもりだったのです。 

それでなくとも、わが茨城県の学校施設は耐震化が遅れていました。県内の公立小  中学校の耐震化率は震災時点で64·1%にすぎませんでした。

特に統廃合対象となったこの小学校などは耐震工事に見向きもされなかったというわけです。

そして、我が県においては3割5分の校舎が、なんの耐震補修も受けないまま放置されて、あの運命の日2012年3月11日を迎えたのです。

ぞっとしませんか。 実に3割5分の児童が無防備で大震災にさらされたのです。

それは、大人が子供に対してせねばならない最大の義務である「子供の生命を守る」ことを放擲したのと同じことです。 

恥ずかしくないのかでしょうか、そのようなことをした政治屋たちは!

それを恥じるどころか、驚くべきことに我が国の首相は、笹子トンネル崩落事故を受けた党首討論でも、「公共事業」を強い言葉で罵っていました。 

首相は「公共業費」の中に、維持・管理予算が含まれていたことを知らないのでしょうか。 

その真っ先に削られた「公共事業費」とは、まさに笹子トンネル崩落事故の原因である維持・管理・補修・補強費用の削減だったことを。 

かつて、東北の三陸沖地震の30年確率は90%であり、宮城県沖地震の30年確率に至っては99%という危険ゾーンであったにもかかわらず、民主党政府はこれを看視しました。 

「コンクリートから人へ」というスローガン政治の下に、削減された「無駄な公共事業」は実に32%、確かに前原氏が言うように「自民党ではできなかった」ことです。 

ところで、伊豆半島から四国沖にかけの700キロにおよぶ南海トラフ(プレートの裂け目)は破断する可能性が非常に高いと言われています。 

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                       (図 産経新聞4月1日より・下図同じ) 

このプレート境界に面する東海、東南海、南海地震は確実に起きます。その規模は東日本の比ではありません。(資料1参照)
※南海トラフの巨大地震モデル検討会 巨大地震モデル検討会
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/nankai_trough/nankai_trough_top.html 

下図の震度6強のオレンジ色の部分は、静岡から愛知、和歌山、兵庫、高知、香川、宮崎などの10県153市町村となります。 

震度6強は今回の3.11大震災時の東北を襲った地震よりやや小規模ですが、茨城地方を襲った震度と同程度です。 

都市部では電柱が倒壊し、道路や水道、電気などの生活インフラが寸断されます。これが震度6強です。 

そしてむしろ問題は、その後に必ず沿岸部に襲来する大津波です。それが下図に示されています。 

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 襲来されると予想される津波高は、四国の太平洋側で20m以上、最大は高知県黒潮町で34.4mに達し、九州東部は約15m、関東の神奈川鎌倉市で9.2mとなります。 

他の地域で想定される津波高に関しては欄外資料2をごらんください。 いずれも背筋が凍るものです。

災害は起きてからでは取り返しがつきません。多くの人命と財産、そして生活を押し流していきます。

野田首相、 この予想を前にしてまだ「コンクリートから人へ」などと寝ぼけたことを言えるのですか。

この最悪の事態を考えて、それが起きる前に手を打つ、これが私には良識だと思いますが、この考え方のどこがおかしいのか、野田首相、ぜひお教え下さい。

■追記 脱稿後に、敦賀原発2号機直下で活断層が確認されました。当然即時に廃炉するべきです。すべての原発で直ちに地層調査をしなければなりません。
活断層があることが確実な大飯原発の再稼働をしてしまった責任は、あげて野田首相と政府にあります。こんな政党が「脱原発」などとは片腹痛い。
この責任は来週の日曜日にきっちり取らせましょう。この件については明日取り上げます。(資料3参照)
 

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-fe48.html 

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■資料1 南海トラフ地震:内閣府検討会報告 津波高、従来の1.1~2.6倍 県内20市町で最大震度7 /和歌山
毎日新聞4月1日
 

西日本の太平洋沖に延びる「南海トラフ」で起きる巨大地震に関し、内閣府の検討会が31日公表した報告で、県内各市町での最大の津波高が従来想定の約1・1倍~2・6倍となった。最大震度7が想定される市町数も6から20に増加。県は東日本大震災を受け既に避難対策などの点検を始めているが、仁坂吉伸知事は「県南部の沿岸地域は将来的な高台移転が望ましい」としている。 

 ◇県南部沿岸、知事「高台移転望ましい」
 検討会は、高い津波を引き起こす領域を11パターン設定して、最大値(満潮時)を試算。県内市町別でみると、最大はすさみ町の18・3メートルで、従来想定の最大7メートルから2・61倍になった。続く美浜町、御坊市は17メートル強で、ほとんどで10メートルを超えている。一部地域では地震発生から最短2分で最大津波高が到達すると予測された。
 

 揺れの強さは5パターン設定。従来は震度6弱だった和歌山市、有田市、6強だった新宮市、湯浅町など14市町が7に上がった。ただ、最大クラスの震度や津波高は複数のパターンを重ね合わせた結果で、内閣府は「実現象として同時に発生しない」としている。 

 県は東日本大震災後の昨年4月から、避難場所の見直しなど緊急点検を実施している。県総合防災課の高瀬一郎課長は「大震災クラスの津波を想定してすでに見直しを行ったため、この検討結果を受けて緊急的に何かをやるというわけではない」としている。津波浸水区域や被害想定の見直しを12年度内にも実施する予定だ。 

 県が06年3月に公表した地震被害想定は、東海・東南海・南海3連動地震での揺れと津波による建物の全壊・焼失は最大で10万4595棟(冬の午後6時の場合)、死者数は5008人(冬の午前5時の場合)、負傷者数は8348人(同)とされており、見直しによって上方修正される可能性が高い。仁坂知事は「国の検討結果を基に、専門家の意見も聞きながら、より詳細な被害想定、浸水予測に取り組んでいきたい」とコメントした。 

■資料2 最大津波高
(満潮時、カッコは従来想定、単位はメートル)
和歌山市   7.7 (6.6)
海南市    8.1 (6.8)
有田市   10.2 (5.1)
御坊市   17.4 (7.6)
田辺市   12.0 (7.4)
新宮市   12.2 (5.6)
湯浅町   10.2 (5.8)
広川町    9.1 (5.9)
美浜町   17.9 (7.4)
日高町   12.5 (5.7)
由良町   10.4 (6.6)
印南町   16.4 (6.6)
みなべ町  14.8 (6.3)
白浜町   15.2 (6.3)
すさみ町  18.3 (7.0)
那智勝浦町 15.6 (8.0)
太地町   12.1 (5.5)
串本町   16.0 (9.5)

■資料3 敦賀原発2号機は廃炉の公算、「直下に活断層の可能性」と規制委

 [東京 10日 ロイター] 原子力規制委員会は10日、日本原子力発電敦賀原子力発電所(福井県敦賀市)の断層問題に関する現地調査の評価会合を開き、2号機の真下を通る破砕帯(断層)は活断層の可能性が高いとの見解で一致した。

規制委の田中俊一委員長は会合を受け、「個人の感想だが、今のままでは(敦賀2号機の)再稼動の安全審査はとてもできないなという判断をした」と発言。2号機の再稼動は絶望的な状況で、廃炉の可能性が高まってきた。

規制委は今月1日と2日に専門家による現地調査を実施。2号機直下にある「D─1」と呼ばれる破砕帯が活断層であるかどうかが焦点となった。10日の会合では調査結果について協議。調査に参加した鈴木康弘・名古屋大教授は「総合的な判断としてD─1の一部は活断層ではないかと思う」と指摘した。島崎邦彦・規制委員長代理は会合後の記者会見で、D─1破砕帯のそばにある断層が「活断層と言って差し支えない」との見方を示したうえで、これが「分岐の一部なのか本体なのかいろいろ解釈はあるが、D─1破砕帯である可能性がある」などと説明した。

国は活断層の真上に原子炉など重要施設の設置を認めていない。会合に呼ばれた日本原電関係者は追加調査を行う意向を示したが、島崎氏は会見で「いまの時点での結論は出せた」と述べ、今回の判断が覆る可能性がないことを示唆した。

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「コンクリート」と「人」は対立する概念ではない

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2011年3月11日、あの東日本大震災において崩落した私の村の鹿行大橋が上の写真です。(崩落直後に撮影)

渡っていた人は湖に自動車ごと転落して死亡しました。隣町の方でしたが、むごいことてす。ご冥福をお祈りします。

鹿行大橋は1968年に開通しましたが、橋幅が狭く交互通行せねばならないようなものでしたが、旧大洋村と旧北浦村を結ぶ貴重な生活道でした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B9%BF%E8%A1%8C%E5%A4%A7%E6%A9%8B

この橋は築43年たち、痛みがひどいことは前々から指摘されていましたが、まともな改修工事もないままに震災を迎えてしまいました。

この橋が作られた1960年代から70年代にかけての高度成長末期に、多くの公共インフラが整備されました。(下図参照)今回崩落した笹子トンネルも1976年、ほぼ同時期です。

Photo_3  (図 独立行政法人土木研究所http://www.pwri.go.jp/caesar/overview/02-01.html

日本において公共インフラの維持管理はおろそかにされていました。この鹿行大橋も例外ではなく、国道354の一部でありながら、住民が崩落した時に格別驚かなかったというようにな悲惨な状況でした。

日本の高速道路、橋、トンネル、港、堤防などの公共インフラは2010年代に一斉に老朽化時期に突入しました。

笹子トンネルが崩落したのも、鹿行大橋が崩落したのも、偶然ではありません。落ちるべくして落ちたのです。すなわち人災です。

さてかつての米国では、70年代から80年代に「橋の老朽化」事故が頻発しました。有名な事例としては、コネチカット州マイアナス橋の崩落事故かあり、78年にはマンハッタンにかかるウエストサイドハイウエイの崩落、81年にはブルックリン側が崩落しました。http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CA0000461.html

Photo_4           (写真 アメリカ  マイアナス橋(鋼桁橋)の落橋 1983年)http://www.pwri.go.jp/caesar/overview/02-01.html

検査の結果、マンハッタン橋、クイーンズボロ橋、ウイリアムズバーグ橋に次々と大きな損傷が発見されて、改修工事を受けています。

これは全米規模で起きた一部にすぎず、ピッツバーグ橋は通行不能となり、USスチールは迂回道を通るために年間100万ドルの損失を被ったそうです。

82年には、スクールバスが通行できない橋が増えたために、全米で約50万人の学童が橋の手前でバスから降りて通学する事態までになりました。

この80年代に起きた「荒廃するアメリカ」現象により、米国では経済、交通、社会生活が頻繁に支障をきたし、社会的な混乱の引き金になっていきます。

これは米国における公共インフラが1930年から40年代にかけてのニューディール時代に多く建設されたために、一斉に老朽化を迎えた80年代に荒廃現象が生じたのです。

原因としては、1960年代に米国で7兆円ほどあった公共インフラの補修予算が、70年代に減少し、80年代には5兆円規模までになったためです。

このために真っ先にメンテナンス予算が削られ、検査が行き届かず、よしんば欠陥が見つかっても放置されるか、簡単な補修で済ましてしまうといいった事が日常化しました。

そして老朽化が限界を迎える30年から50年後にかけて、事故が頻発したというわけです。

我が国の公共インフラが作られた時期が60年代から70年代のため、このような「荒廃するアメリカ」現象が、30年遅れて襲ってきました。

Photo                  (図 独立行政法人土木研究所

我が国では橋本政権から小泉改革に続いた公共事業費削減の流れ、そして「コンクリートから人へ」という確信犯的スローガンで、公然と公共インフラ放棄をうたった民主党政権によって、みるも無残に補修予算が削られていきました

下図をみれば、2011年はもっとも公共投資があった1998年の半分以下にまで減額されていることがわかります。

これだけ削れば、真っ先に影響が出たのは裏方である検査・維持管理コストでした。地方の現場を回ればわかりますが、公共インフラの維持管理はボロボロです。

2012070211_2 

          (図 内閣府 日本の公共事業費の推移 単位:兆円)

政府が管轄している橋1万8千箇所のうち「緊急対応の要あり」と認められたのが106カ所、0.6%に達します。これらの橋は国交省によれば「いつ落ちてもおかしくない」状態にしります。

そして、財源が乏しく補修費用がほとんどない地方自治体は、全国1800箇所のうちの実に8割以上の1500市町村に達します。

これらの市町村では財政難のため定期点検すらできず、「通行止め」や、「通行規制」でお茶を濁している現状です。(資料2参照 茨城新聞2012年8月18日)

その数は政令指定都市で91カ所(平成19年)、政令指定都市以外では593箇所にものぼります

そしてこの合計684の橋は定期点検をしたからわかったので、8割の市町村ではそれすらしていないのですから、潜在的に「緊急対応の要あり」の橋は膨大な数に昇ると考えられています。

先ほどの国交省管轄の橋の「緊急対応の要あり」率が0.6%ですから、全国67万8千箇所にそれをかければ、実に4000カ所が「いつ落ちてもおかしくない」状態のまま放置されていることになります。

「国交省によると、全国にある15メートル以上の橋約15万7千カ所のうち11年時点で改築の目安となる築50年以上の割合は9%だが、10年後(21年)には28%、20年後(31年)には53%になる見通し。老朽化などに伴い、通行規制する橋は本県の45カ所を含む全国計1378カ所に上る。」(同上)

特に、東日本大震災によって公共インフラは大きな打撃を受けました。地震による亀裂や金属疲労などが、建築構造に影響を与えていることは十分考えられます。

しかし、それはまだ事故を起こしていないというだけで、修繕されることもなく放置されたままです。特にそれは市町村レベルでは顕著です。

「修繕が済んだのは、県管理分のうち6%の54カ所だけで、市町村管理分で修繕に着手した箇所はなかった。」(同上)

このような公共インフラの荒廃時代は、いままさにに始まったばかりです。

笹子トンネル崩落事故によって「コンクリートから人へ」政策は完全に破綻しました。そもそも「コンクリート」と「人」は対立する概念ではありません。

あたかも公共インフラの「コンクリート」に政府投資することが「悪」であるかのように言ってきた論理自体が、為にする議論だったのです。

いまでもそれを言い募る者は、人の命などとどうでもいいと言うことと同じだと自覚すべきです。

私たちは「人を守るコンクリート」が、崩壊の危機の時代に突入したことを知ってしまったのですから。

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資料2 橋「長寿命化」に遅れ 県内市町村、点検実施全国ワースト
茨城新聞
2012年8月18日(土)
全国的に橋の老朽化が進む中、県内市町村で橋の耐用年数を延ばす「長寿命化」の取り組みが遅れている。国交省のまとめでは、県と市町村が管理する橋2641カ所のうち、4月1日時点の長寿命化修繕計画の策定率は48・4%と都道府県別で2番目に低く、計画策定に向けた点検実施率は76・2%で全国ワースト。計画に基づく修繕実施率も4・9%で、全国平均11%を下回った。東日本大震災で旧鹿行大橋が崩落するなど県内多くの橋が被災しており、対策が急がれる。

長寿命化に向け、県は2009年度に修繕計画を策定し、県管理の854カ所の本年度当初の点検実施率、計画策定率はともに97・9%(未実施18カ所)とほぼ順調。一方、県内市町村が管理する1787カ所の点検実施率は65・8%(全国平均89%)、計画策定率は24・7%(同51%)で、ともに全国下位と大きく出遅れた。

修繕が済んだのは、県管理分のうち6%の54カ所だけで、市町村管理分で修繕に着手した箇所はなかった。
国交省によると、全国にある15メートル以上の橋約15万7千カ所のうち11年時点で改築の目安となる築50年以上の割合は9%だが、10年後(21年)には28%、20年後(31年)には53%になる見通し。老朽化などに伴い、通行規制する橋は本県の45カ所を含む全国計1378カ所に上る。

1950〜70年代の高度経済成長期に建設された橋を中心に今後一斉に老朽化対策を迫られるのを見越し、国は従来の対症療法から予防保全による長寿命化へ方針を転換し、関係自治体に計画策定を促していた。

財政難などを理由に多くの市町村で取り組みが遅れているのを受け、同省は財政的・技術的支援を強め、取り組みを支援する方針。

同省本年度予算の社会資本整備総合交付金では、橋の補修に特化した整備計画が前年度比19件増の27件に上り、申請額も約5倍の75億円に増加。県も30市町村とともに総額1億3600万円の整備計画を申請した。

同交付金などを受けて、県内では本年度末までに24市町村が点検を済ませ、13市町村で計画策定が完了する計画で、点検実施率は83・9%、計画策定率は58・5%に上昇する見通しという。

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第2、第3の笹子トンネル崩落事故を起こさないために

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笹子トンネル天井崩落事件について。いくつか新たな情報が入ってきています。

事故当初から、崩落の原因は天井を支えていた吊り金具を留めるボルトが脱落したことだと推測されていました。

このアンカーボルト(留めボルト)がなぜ抜け落ちたかについて中日本高速道路は、いち早く「36年目に起きたことから老朽化だと思う」と発表しました。

同時に、「打音検査をしなかったことを反省している」とも述べています。

昨日書きましたように当然老朽化もしていたでしょうし、目視検査で済まして打音検査もしなかったのでしょう。ことによると業務上過失致死に問われるかもしれませんから、後に大いに問題としてください。

技術的な問題で私が問題としたいのは、この吊り天井とアンカーボルトの接着剤による接合というケミカル・アンカー方式です。要するに、接着剤でアンカーボルトを留めていたようです。

もちろん私は専門外ですが、老朽化に加えて手抜き工事の疑いを感じています。(欄外参照)

いずれにせよ、このアンカーボルトの接合方式、点検の怠り、そして他の会社のトンネルでは同じ吊り下げ式天井でもボルト自体を適時交換整備していることなどから見ても、中日本高速道路会社の問題点はゆくゆく明らかにされていかねばなりません。

さてそれはいったん横に置いて、このような問題とは別次元に「政治」の問題があります。

通行する市民を殺してうれしい会社はありません。なぜ中日本高速道路が点検を怠ってきたのか、なぜ危険を察知できなかったのでしょうか。

その理由は予算の配分にあります。我が国は、公共インフラの検査や営繕、補修に予算配分してきませんでした

関係者はそれを「メンテはすずめの涙」と自嘲します。作る時は華々しくブチ上げても、作ってしまえばただのインフラの裏方、というわけです。

大阪大学・谷本親伯名誉教授(土木施工学)によれば、ドイツではトンネルを百年間メンテナンス・フリー仕様で作るために、工事費用をわが国の数倍かけるそうです。そのコンクリート壁の厚さはわが国の3倍だそうです。

わが国はそれをケチって急ぎました。それには時代的背景がありました。高度成長期から安定期に向かうわが国には経済成長のために多種多様なインフラ整備が急いで必要だったからです。

当時のぐんぐん伸びていく経済を支えるための高速道路網、新幹線網、それに伴う多くのトンネル、橋梁、港湾、堤防、広がる都市のための道路、上下水道、公共施設、そして増える子供のための教育施設など、星の数ほどの公共インフラが必要だったのです。

そしてもうひとつ忘れてはならない、エネルギー源としての原子力の本格導入が始まったのも、この前後の時期です。

このように我が国が今から40年前から60年前にかけて、徹底的に様々なインフラを整備しました。

しかし急速に拡大した公共インフラを、政治は予算で支えませんでした。作った後は「すずめの涙」ほどのメンテナンス予算しか出さなかったのです。

それは「財政再建」を唱える新自由主義者が政権の舵を握った自民党政権時からその傾向は特にひどくなり、民主党政権において完成しました。

それが「コンクリートから人へ」という、公共インフラ保全放棄宣言です。

公共インフラ営繕などは票にならない、票のためには票田に金をバラまく、なんでも無料化、それに限る、そう考えた政治屋があまりにも多かったのです。

こうして、我が国の公共インフラは30年から40年目の今をひと区切りとしてボロボロになり、現在わが国の公共インフラは骨粗鬆症状態にあります。

今日本は、即刻建て替えるか、点検・補修する予算を出すか、という分岐点の時期に立っています。

その判断を間違えば、人の命が多く奪われる第2、第3の笹子トンネル事故のような公共インフラ重大事故がまた起きるでしょう。

■写真 ひさしぶりに我が村の湖に行ってきました。小雨の中でそれは美しかった。

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■[私のアンカーボルト接合方法への疑問]

新聞報道によると、天井部分のトンネル本体にドリルで穴を開けて、そこに接着剤を流し込みと留めたとしてます。アンカーボルトの長さは23センチで、うち13センチが埋め込まれていたと、中日本高速道路は説明しています。

なぜこのような接着剤によって1トンもある天井板を吊り下げようとしたのか分かりません。このような接合工法は確かにあり、ケミカル・アンカー方式というそうです。

このケミカル・アンカー方式は、工事が簡単である反面大きな欠陥をもっています。

なによりも接着力が弱いことです。下図を見ていただくとお分かりになると思いますが、このアンカーボルトは実は6メートルの鋼材を貫通し、鋼材ごとコンクリートに埋め込まれています。

常識的に考えて、鋼材の裏でアンカーボルトをナットで留めるのが普通ではないでしょうか。

ナットで固定してしまえば、私も学生時代にビルの天井張りのバイトをしたので経験がありますが、脱落することは考えにくいのです。

仮にアンカー・ボルトが漏水によって腐食することがあったとしても、錆によってむしろボルトとナット、鋼材が一体化してしまい、そうそう簡単に全体が脱落するはずがありません。

鋼材があるならなぜナット留めしなかったのでしょう。それを安直なボンドでつける工法をとったのか、私には納得がいきません。

仮によく使われるエポキシ系接着剤を使った場合、水に弱くとうてい数十年も持つはずがありません。 

特にこの笹子トンネルは工事中から大変な湧水で困難を極めていた場所であり、おそらくは完成後もコンクリートの経年劣化から浸透してくる水がかなりあったと思われます。

すると劣化した接着剤がスポッと抜けて脱落し、近くのアンカーボルトもそれを支えきらずに将棋倒し的に脱落した可能性があります。もしそうだとすると、これは人災側面が強くなります。

以上、素人考えです。

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                           (TBS「ひるおび」より引用)

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笹子トンネル崩落事故 破断界に差しかかった70年代製造の公共インフラと原発

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痛ましい大事故が起きました。

「2日午前8時ごろ、山梨県大月市笹子(ささご)町の中央自動車道・笹子トンネル(全長約4.7キロ)内で、コンクリート製の天井板が110メートルにわたり崩落し、少なくとも車3台が巻き込まれた。県警や消防によると、現場で複数の遺体を確認。3台には少なくとも6人が取り残されていたとみられ、救出作業を急いでいる。もあり、県警は業務上過失傷害容疑などで調べる。」(毎日新聞12月2日 資料1参照) 

上の写真にあるように、笹子トンネルで110メートルにわたり、天井部分の重さ1トン超の天井板が200数十枚崩落し、3台の車を押しつぶし 多数の死者を出しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。 

この事故の全容はいまだ詳細がわかっていませんが、私は福島第1原発事故と並ぶような「時代の曲がり角」を示す事故のように感じられます。 

さて現時点で原因と考えられているのは、天井金具の何らかの原因による破損です。(下図参照 毎日新聞より引用) 

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写真でも見られるように、V字型に天井板は崩落しており、吊り金具が天井から一列に垂れていないことから、根元から脱落したと見られます。(上図右側・吊り金具最上部) 

この吊り金具は長さが5メートルあり、この9月に実施された定期点検の際には、下部の天井板との部分は打音検査といってハンマーで叩いて音で確認していたものが、この上部取り付け部分は目視点検で済まされていました。 

この吊り天井型式は換気ダクトのためにあり、現在はジェットファン方式に全面的に切り替わっています。(ただし新東名富士川トンネルの一部を除く。) 

現在これと同じ旧式な取り付け方のトンネルは全国で49カ所あります。いずれも大部分は完成から20年から40年たったものです。(下図参照)

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          (TBS「ひるおび」より参考のために引用いたしました。)

この吊り天井方式はこの笹子トンネルが完成した77年当時には、優秀な大型ジェットファンがなかったために、このような複雑なダクトの取り付け方になっています。  

現在はトンネル全体を大きなダクトに見立てて、自動車の侵入方向からジェットファンで空気を送り込んで強制換気する方式となっています。 

吊り金具式の問題点は、金具が振動や金属疲労、漏水によって腐食しやすいことです。この笹子トンネルは、日本土木史に残る難工事で、膨大な湧水と破砕帯との戦いでした。 

ですから、デリケートな破砕帯は35年間常に交通の振動を受け続け、恒常的にトンネル本体に対して圧力やねじれを与えて多くのヒビを作っていたことは想像に難くありません。 

そこから湧水が漏れ出し、常に吊り金具を侵食していた可能性が高いと思われます。そしてそれが遂に完成から35年後の今、破断界を迎えて重大事故につながりました。

ひとことで言うなら、高速道路インフラの老朽化です。(資料3参照)

先月11月7日に行われたNEXCO東日本・中日本・西日本各社による「高速道路資産の長期保全、及び更新のあり方に関する技術検討委員会」という長たらしい名前の検討会でもこの老朽化問題は検討されており、1年後に答申をまとめる予定を出したばかりのことでした。

現在我が国の高速道路網は建設後30年以上経過するものが4割にも登り、同検討会資料によれば、2019年にはとうとう5割を超えるとされています。

つまり、いつ何時このような天井崩落のような今まで「あり得ない」とされてきた重大事故が起きるかわからないということです。

日本の公共インフラは高度成長期とその後の時期に多くが作られました。当時の技術水準は、この吊り天井方式にも伺えるように、いくつもの技術的限界を持っています。

そしてそれは常にメンテナンスし続けたとしても、50年間たてば大規模な改修工事が必要だと言われています。

特に山間部を通るトンネルや、首都高のような非常に交通量が多い道路、そして大震災にさらされた地域の高速道路などがそうです。

首都高は、東京オリンピックに合わせて作られたために30年以上経過する老朽化した部分が46%も占め、2009年の調査で補修が必要な箇所は実に9万6600カ所に達しました。

もし、予想される首都直下型地震が起きた場合、首都高は巨大な墓場と化すことでしょう。

対策としては鉄環を回すなどが上げられていますが、国が改修工事に対して十分な予算措置をとらないまま多くが放置されています。

この公共インフラの整備・改修事業を「土建国家への逆戻り」として切り捨て続け、「コンクリートから人へ」というバラ撒き政策に固執し続けた民主党政府は強く批判されるべきです。

前原氏などは、「公共事業を32%減らした。自民党政権ではできなかったことだ」と、公共インフラをボロボロにしたことを手柄顔して語っているありさまです。

今後高度成長期に建設した公共インフラは続々と耐久限界を迎えていきます。振動、腐食、金金属疲労などで今後50年で190兆円の老朽化対策費が必要だと言われています。

原発事故と同じく、「起きるはずがない」という安全神話に浸って、着実な整備・改修を怠ったツケが回ってきました。

もはや言い訳はききません。早急に全国の公共インフラを点検し、その補修強化のための予算を大規模に組むべきです。

なお、国交省はNEXCO中日本と共同調査をすると発表しました。規制する側とされる側の共同調査ということになります。

このような重大事故を引き起しながら、茶番を堂々してみせる霞が関官僚はいい度胸です。

この笹子トンネル崩落事故は、福島第1原発同様に時代の深部でなにか大きなことが起きていることを予感させるものでした。

私たちは、今まで「安全であたりまえだ」と思っていた原発のようなエネルギー・インフラや公共インフラが、実は破断界に差しかかっていたことを自覚的せねばなりません。

70年代に多く作られた福島第1原発型BWRは、その耐久年限の30年間を過ぎて今や危険水域の中にあることが分かりました。

また、同じ時期に作られた多くの公共インフラも今、大改修をしないと重大事故を引き起こすことが分かりました。このことを真正面から見つめる時です。

これは新たな総選挙の争点となすべきです。

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■資料1 中央道トンネル崩落:複数遺体確認 少なくとも6人現場に
毎日新聞 2012年12月02日
 

 2日午前8時ごろ、山梨県大月市笹子(ささご)町の中央自動車道・笹子トンネル(全長約4.7キロ)内で、コンクリート製の天井板が約110メートルにわたり崩落し、車3台が巻き込まれた。県警などによると、1台から複数の遺体を確認。もう1台から1人を救出したが死亡が確認された。3台には少なくとも計6人が取り残されていたとみられ、救出作業を急いでいる。中日本高速道路は設備の老朽化で事故が起きた可能性を認めており、県警は業務上過失致死傷容疑などで調べる。 

 県警や東山梨消防本部によると、3台は多摩ナンバーのレンタカーのワゴン車、トラック、乗用車。天井板の下敷きになり、火災も一時発生した。複数の遺体が見つかったワゴン車から自力で脱出した銀行員の女性(28)=神奈川県三浦市=は「6人で乗っていた」と話したという。死亡した男性はトラックから見つかり、山梨県甲斐市の食品卸売会社の男性運転手(50)とみられる。脱出した女性と甲府市の無職女性(37)がやけどなどで重軽傷。 

 中日本高速によると、現場は上り線の大月市側出入り口から1.7キロ地点。天井板(幅5メートル、奥行き1.2メートル、厚さ8〜9センチ、重さ約1.2〜1.4トン)の上の空間は換気のためのダクトになっており、ダクトを仕切る隔壁と合わせ計約270枚が崩落した。 

 天井板は左右1枚ずつが中央にある鉄板で支えられ、この鉄板はトンネル中央の最上部から伸びるつり金具(長さ5.3メートル)で1.2メートル間隔で固定されていた。同社は調査委員会を設置予定で、名古屋市の本社で記者会見した同社幹部は設備の老朽化について「今後原因を調査するが、そうした可能性もあるかもしれない」と述べた。

 点検は年1回の定期点検と5〜10年ごとの詳細点検があり、最近では今年9月に詳細点検をしたが「異常なし」だったという。だがこれまでの点検で、天井板についてはハンマーでたたいて調べる打音検査をしてきたが、トンネル最上部にボルトで固定してあるつり金具の上部は作業員による目視しかしてこなかった。同社幹部は「高さがあり双眼鏡による目視で十分だと思った」と説明した。 

 同社の金子剛一(たけかず)社長は会見で「大事故を起こし、大変申し訳ない」と陳謝した。 

 笹子トンネルは1977年開通で、大月市と甲州市にまたがる。上下線が別々のトンネルで片側2車線。 

■資料2 トンネル天井のボルト脱落 類似トンネル緊急点検
朝日新聞デジタル 12月3日 

中央自動車道上り線の笹子トンネル(山梨県)の天井崩落事故で、中日本高速道路は3日、崩落した天井板をつる金具をトンネル上部のコンクリートに固定するボルトが崩落現場付近で抜け落ちていたと公表した。また、現場を視察した羽田雄一郎・国土交通相は、同様の構造になっている全国のトンネル49本を緊急点検するよう、高速道路会社などに求める考えを示した。

 国交省によると、笹子トンネルと同様のつり天井は高速道路で40本、国道で9本あるという。緊急点検では、金づちなどでたたいた音で異常を確認する「打音検査」を行う。また、国と中日本高速で調査委員会も近く立ち上げる。
 中日本高速はこれまで、ボルト部分について、腐食などがないかを目視で確認してきた。3日から始めた緊急点検では打音検査に切り替えた。


 笹子トンネルは、長さ約5.3メートルのつり金具で天井板をつり下げていた。金具には鋼材が取り付けられ、ボルト(長さ230ミリ、直径16ミリ)でトンネル最上部のコンクリートに打ち込まれており、接着剤で固定してあるという。崩落現場では、複数のボルトがコンクリートから抜け落ちていたという。

■資料3 中央道トンネル崩落 後手に回った対応
◇老朽化対策、先月から 「経年劣化」の指摘も−−高速3社

毎日新聞 2012年12月03日 東京朝刊

天井板の崩落事故が発生した山梨県の中央自動車道・笹子トンネルは、供用開始から35年が経過しており、中日本高速道路など高速3社は先月、道路全般の老朽化対策について検討を始めたばかりだった。専門家からは経年劣化の可能性が指摘されるとともに、点検方法の見直しや早期の原因究明を求める声が上がった。

 中日本高速道路によると、笹子トンネルは中央道の起点・高井戸インターチェンジ(東京都杉並区)から82・7キロの地点にあり、全長4784メートルで77年12月20日開通。崩落した天井板はプレキャストコンクリート(PC)板と呼ばれ、板1枚は幅5メートル、奥行き1・2メートル、厚さ8〜9センチ、重さ約1・2〜1・4トン。これを左右に1枚ずつ並べ、両端はトンネルの壁に固定し、中央部分はトンネル最上部からつり金具で固定していた。

 つり金具は板の奥行きと同じ1・2メートル間隔で設けられ、金具と金具の間には隔壁がある。隔壁は天井の上の空間を左右に分け、片方はトンネル内の車の排ガスを換気機を使って排出する排気用、もう片方は外部の新鮮な空気を取り入れる送気用として利用しており、これは「横流(おうりゅう)換気方式」と呼ばれる。

 このトンネルの天井が約130メートルにわたり崩壊。つり金具部分も落ちる一方、天井板の両端はトンネルに固定されたままで、V字形になった。施工は76年8月から77年9月に大成建設と大林組の共同企業体が行い、点検は中日本高速グループの中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京(東京都新宿区)が担当していた。

 同社によると、天井の点検は技術者の目視と専用のハンマーを使った打音で行われ、水門直仁・経営企画課長は「技術者はたたいた時の反発や音で劣化の有無についてある程度目安はつく。一番信頼性が高い方法で、他のトンネルや業者でも同様だ」と説明した。

 一方、近年は天井がなく、ジェットファンや車の流れでトンネルの出入り口で換気する「縦流(じゅうりゅう)換気方式」が主流とされる。横流方式には構造物が多くコストがかかる一方、縦流方式は安価なため普及したという。

 中日本高速は「トンネルの更新計画はなかったが、経済性や、天井板があると圧迫感があるので縦流方式の方が好ましいと考えていた。でも工事には長期間の通行止めが必要なので、簡単ではない」と説明した。

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