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2015年12月19日 (土)

中国大気汚染黙示録 その5 石油派vs環境派 最強・最弱対決

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PM2.5問題は、ただの大気汚染ではなく、現在、中国社会が抱えている諸問題の縮図のようになってしまっています。 

PM2.5の原因は、北京市環境局の発表によれば、3分の2は石炭燃焼と自動車の排気ガスからです。 

北京市は、セントラルヒーティングが供給されています。戸別の暖房が大半を占める日本と違って、中国はかなり初期からソ連式の地域セントラルヒーティング方式を取り入れてきました。 

大げさに言えば、国が供給するセントラルヒーティングは、「国の威信」そのもので、毎年、習近平はセントラルヒーティングの国有企業を視察しては、「諸君らのおかげで冬を乗り切れるのだぁ。諸君は英雄だ」くらいのことは言っているようです。

北京を始め中国の大都市近郊には、1990年代以来の高度成長で続々とベッドタウンが出現していますが、そこにも家庭にはストーブがなく、一括して地域ボイラーセンターがスチームを供給しています。

中国に来たばかりの日本人は、「うわー、なんて進歩しているの」と思う人も多いようです。いかにも「美しく誤解する」のが得意の、日本人らしい誤解です。

「進歩している」というより、都市部ですら安定的に温源を確保できない人が多かったために、国が提供しただけの話が始まりです。

当時、中国はバリバリの社会主義国だったせいもあって、ソ連とか東独をまねたようです。

元祖のソ連では、革命初期に、指導者は「電化と温水供給が社会主義だ」と叫んでいた時期もあるくらいです。

元々、マルクス学説は剰余価値学説に立つために、労働がすべての価値の源泉だと考えますから、半面その労働の廃棄物としての「環境」という概念はどこにも位置づけしようがありませんでした。

それもあってか、マルクス主義の体系には「環境」というが概念そのものが欠落しており、中国のみならずすべての社会主義国は環境問題自体について、「考えたこはもなかった」というのが本音だったのです。

ですから、自由主義に復活したあとの東欧諸国は、社会主義時代の環境汚物の処分に今も祟られています。

それはさておき、こういうボイラーセンターで使用する石炭が問題です。ご想像どおり、質の悪い硫黄分の多い褐炭か、さらには泥炭が大量に使用されています。 

これらは、多くの汚染物質を排出しますが、多くはそのまま無処理で排気しています。 

北京市人口は2012年末現在で2000万人を突破していますから、そこで使用される石炭量はハンパではなく、周辺地域の工場の使用量と並ぶほどだといわれています。

大気汚染を問題視した北京市は、2012年に、市内の2か所のボイラー・センターを天然ガスに切り換えする工事を行いました。 

しかし、その数わずかに1年で20万戸。このペースで言っても100年かかる計算です。しかも天然ガスは料金的に高くなるので、市民に必ずしも好評ではありません。

国としては2018年にロシアとの天然ガスパイプラインが結ばれるので、そこをメドにしたい考えですが、なかなか進まないようです。 

首都でもこの調子ですから、地方都市などは想像するまでもありません。

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というのは、地域ボイラーセンター以外に、北京市3分の1にセントラルヒーティングを供給している企業があります。 

北京市熱力集団といって中国でももっとも古い企業に属し、1958年創業の巨大な国有企業グループです。

当然、言うのもヤボですが、共産党権力との強固なつながりをもっています。 

この北京市熱力集団の供給エリアには、習近平や李克強がのたくっている中南海が含まれていて、軍や各国大使館も、すべて熱力集団から暖房を引いているそうです。

習が激励に来たのも、この熱力集団で、ナンのことはない、自分を温めてくれていたわけです。 

暖房を供給している総面積は2億2300万㎡、送熱管の長さにして1400kmにも及ぶそうです。

東京ガスが総延長約6万㎞ですから、さすがにそれより小さいですが、規模の大きさはお分かりになると思います。 

実はこの熱力集団が、市の天然ガス化の方針に反対し続けています。 

さきほど述べたように2012年に北京市政府は、石炭の燃焼量を当時の年間2300万トンから、5年後の2017年に1000万トンまで減らすと決めました。 

熱力集団も、エネルギー源を安い国産の低品位炭から、高いロシア産天然ガスに替えていかないといけなくなっていました。

当然、コストがグンとアップします。プラントも大幅に変更せねばなりません。料金も高くする必要があるし、いいことはなにひとつありません。 

現実には、政策的に安くされている市民向け料金を値上げできない以上、熱力集団が被ってしまうことになります。 

とんでもない!と熱力集団が叫んだのは言うまでもありません。 

彼らからすれば、国家のエネルギー政策そのものにに関わるような大変革を、いち国有企業のオレたちに押しつけられてたまるもんか、という怒りがあります。

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しかも、そもそもこの背景には、北京市熱力集団と石油国有企業との宿縁の権力闘争があるときていますから、ややっこしい。 

このロシア産天然ガスを導入するという天然ガス化推進政策を作ったのは、もうひとつの汚染源であるはずのシノペックやペトロチャイナなどの石油業界なのです。 

現在中国のガソリン基準は、「国4」、「国5」化という硫黄分の少ない先進国レベルのガソリンを目指していますが、遅々として進んでいません。

それもそのはず。環境基準の改正プロセスに、石油業界や自動車関連業界などの利益団体が大きく関与しているからです。 

事実、「国5」ガソリン規制基準の原案づくりをリードしたのは、石油大手「中国石油化工有限会社」(シノペック)に属するシンクタンクでした。

また、中国『科学日報』(2014年1月3日)によれば、硫黄規制値の厳格化を求める環境系委員の提案も、コスト上昇や燃費性の低下を懸念する石油・自動車業界からの強い意見で握り潰されるか、あらかじめ逃げ場を作ったものに変えられてしまっています。 

環境派は、今回のPM2.5の直接の原因となった発揮性有機物削減のために、より低いリード蒸気圧を主張しましたが、揮発性の低下による着火性への影響を懸念する石油・自動車派に押し切られてしまったようです。

また、原案審査に関わる専門家委員会は、いちおう環境分野の専門家もパラパラと彩りていどに紛れ込んでいますが、頑として主体は石油国有企業と、自動車国有企業のふたつから出されています。

ちなみに中国の官庁に就職する大学卒業生は、いちばん成績のいいものから順にエネギー部門から配置されて、ドンケツが環境部だそうです。

環境部は賄賂もあまり取れず、共産党権力との結びつきもないという、うま味のない職種とされています。

一方、石油エネルギー部門は、チャイナ・セブンに人を送り込むようなエリート中のエリート。

環境部vs石油・自動車業界の戦い、最弱と最強の闘争というわけで、やる前から勝敗は分かりきっていますね。 

このように、環境基準の改正などは、いくら国が決めてもザル。絵に描いた餅というわけです。

 

2015年12月18日 (金)

中国大気汚染黙示録 その4 越境汚染

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越境してくる中国からのPM2.5は、地球の自転が逆にならない限り、防ぐ術はないから困ります。川下国民の哀しさです。

川上でどんちゃん騒ぎをして、その祭のあとのゴミや汚物が流れてくる水を飲み、空気を吸って暮らすのが、私たちです。

おまけに他人様の敷地にまで車を乗り入れて、オレのもんだといってくる。なんともかとも迷惑この上ない・・・。

今回の大気汚染の影響は既にでています。直ちに影響がでるのは、沖縄、奄美、北九州、山陰、北陸地方などです。

下の写真は、沖縄県那覇首里崎山町の情景16日の情景です。うっすらとかすんでいるのがPM2.5です。

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(写真 環境基準値を超えるPM2・5が観測され、もやがかかったようにかすむ那覇市内=16日午前9時50分ごろ、那覇市首里崎山町から県庁方面をのぞむ。沖タイ2015年12月16日)

沖縄県では、既に日本の基準値35マイクロ/㎡を上回っています。

●沖縄県大気汚染常時監視テレメーターシステム・12月16日午後9時~10時
・沖縄市・・・37
・宮古市・・・36
・石垣市・・・39

同日の中国からの拡散状況をリアルタイムマップで見てみましょう。
※http://pm25.jp/
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沖縄県から奄美にかけて「影響が多い」に分類されているのが分かります。

次に詳細な日時は明らかになっていませんが、NASAの気象衛星が撮影した写真です。

大陸から沖縄方向に向けて、汚染された大気が流れているのが分かります。シミュレーションマップではなく、実際のものを見るとなんとも言えぬ不愉快な気分になります。

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次に、環境省の注意喚起のための暫定的な指針の判断方法の改善について(第2次)[500KB]によれば、現在の沖縄県の観測値は基準値35を少し上回った程度なので、特別な制約がかかる状況ではありませんので、ご安心下さい。

ただし、専門家は外出時のマスク着用や、屋外での激しい運動を控えるように呼びかけています。

マスクは、N95と書いてあるもののほうが有効です。

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ちなみに、中国の基準値は75超で、日本ではレベルⅡに相当し、屋外活動に制限がかかる状況ですが、そこが中国の基準値のボトムです。 

まぁ、200、300ていどであたり前、500、600がザラの国ですから、75程度だと「おお、なんてキレイな空気」と思うんでしょうかね。 

ちなみに、訪日中国人旅行者が、東京に来ていちばんタマゲルのは、「首都で深呼吸できるなんて・・・!」ということのようです。 

ハフィントンポスト(2015年08月18日)にはこう報じています。 

「中国の人口約14億人の3分の1以上が、定期的に「健康を害する」大気で呼吸している。新しい研究によると、中国では大気汚染で毎日約4400人が死んでいる。
カリフォルニアを拠点とする気候調査団体「
バークレイ・アース」によると、中国では毎年約160万人死んでいると推定した。死因は地方の大気汚染による健康被害だ。
研究によれば、中国の人口のうち3分の1以上の人が、日常的にアメリカの基準で「健康を害する」と考えられる大気の環境で呼吸しているという。
『これは大きな数値です』と研究グループのリーダー、ロバート・ローデ氏はAP通信の取材に答えた。『ちょっと理解しがたい数字ですね』」

まさにこの研究者の言うように「理解しがたい数値」です。 

グリーンピースが4月に報告したデータによれば、2015年第1四半期で中国が定める環境大気質基準に達した都市は360都市、全国土の10%だけだったといいます。 

またWHOは2014年に、年間700万人が大気汚染にさらされて死んでいると報告しています。 

さて去年5月、米国やスペイン、日本が参加する国際研究チームは、日本の代表的な呼吸器病である川崎病が、中国との関係があると『米国科学アカデミー紀要』に発表しました。 

日本で研究に当たった自治医科大学公衆衛生学教室・中村好一教授らの研究チームは、1970~2010年の日本の川崎病調査のデータにおける、発症日と気流との関係を調べた結果、過去3回の流行期では、中国北東部からの風が強く吹き込んでいたことがわかりました。

「日本で川崎病が大流行した1979年以降、発症者が多かった日の気流を調べたところ、いずれも中国北東部の穀倉地帯付近から流れだしてきたと推測されたという。風の到達から6時間から2.5日以内に発症者がでていたことも判明した。」(産経2014年10月11日)

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《川崎病全国調査からみた川崎病疫学の特徴とその変遷》より)

この流行期の風が運んで きた微粒子を分析したところ、マウスの実験で川崎病との関連が指摘されているカビの一種のカンジダ菌などが含まれていました。

上図の川崎病罹患推移グラフを見ると全国規模の川崎病のピークが3回出ています。1979年、1982年、1986年です。

そこで同年に中国でなにがあったのかを調べてみましょう。いずれも、このカンジタ菌を含む風の震源地である中国穀倉地帯に大きな変化が現れた年です。

●中国農業の変化
・1979年・・・中国政府生産刺激策、農産物買付価格を18年ぶりに大幅に引き上げ
・1982年・・・1月より個別農家への請負制を認める。集団営農だった人民公社制度急速に解体される
・1986年・・・生産の自由化。農産物と副産物の統一買付けと割当買付け制度廃止

このような、中国農業の自由化⇒生産量飛躍的増加の節目節目に、日本の川崎病の全国的ピークが合致することが分かりました。

この後、このような顕著なピークはなくなった代わりに、ご覧のように右肩上がりで小児人口10万人当たり罹患率は上がって行く一方で、1982年のピーク時を凌いで、まだ上がり続けています。

というのは、中国共産党は2004年から2008年にかけて、再び農業刺激策を毎年打ち出すようになったためだと考えられます。

中国環境科学研究院のGao Jixi生態学研究所長はこう述べています。
China's agriculture causing environmental deterioration,xinhua
.net,7.5

「化学肥料と農薬の大量使用は厳しい土壌・水・大気汚染をもたらしてきた。中国農民は毎年、4124万トンの化学肥料を使っており、これは農地1ha当たりでは400kgになる。これは先進国の1ha当たり225kgという安全限界をはるかに上回る。
中国で大量に使われる化学肥料である窒素肥料は、40%が有効に利用されているにすぎない。ほとんど半分が作物に吸収される前に蒸発するか、流れ出し、水・土壌・大気汚染を引き起こしている。」
(2006年7月5日新華報英語版)

化学肥料は土を豊かにしません。単に作物に成長栄養を与えるだけです。

むしろ過剰な窒素は、作物をひ弱にし、植物が利用しきれなかった窒素は硝酸態窒素として、土壌に沈下し、そして水系に流れ込みます。

1985年から2000年の間に、1億4100万トン、1年当たりにして900万トンの窒素肥料が流出し、土壌や水系を汚染しました。

病虫害を抑え、見てくれをよくして商品価値を高める化学肥料を過剰に使用すれば、作物を化学汚染させていくばかりか、天敵生物を滅亡に追い込み生態系を破壊し、畑の外にまで汚染を拡げます。

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また中国の農薬使用量は年間120万トンにのぼり、年々増加する一方です。

これは、日本も経験したことですが、害虫には農薬に対して耐性を持つようになるからです。

仮に100匹の害虫がいたとして、それに農薬散布して、仮に百回に一度農薬耐性を持つ個体が発生した場合、以後農薬の効果は急速に衰えていき、やがてまるで効かなくなります。

農薬耐性を持つ害虫は繁殖力も強いからです。人間は毎年より濃度を上げた農薬を散布するしかなくなり、その無限地獄が始まります。

現在の中国は、農業外からの工場排水に冒される前に、内在的に大きな問題を抱えていたのです。それは化学肥料と化学農薬の過剰投入という問題です。

結果、中国の湖沼の75%、地下水の50%が汚染されています。その原因の一部に農業であることは疑い得ないでしょう。

そして、今や、中国農業は、越境する大気汚染の原因にまでなってしまったようです。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-f114.html

2015年12月17日 (木)

中国大気汚染黙示録 その3 驀進する巨大複合汚染体

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コメントでいくつか、「中国に、かつての日本の公害が激甚だった頃を学んでほしい」というご意見を頂きました。お気持ちはよく分かりますが、正確ではありません。 

今回の中国のPM2.5などがあると、よく年配の日本人は、40年ほど前の日本を思い出して、「ああ、昔はうちの国もこうだったよ」などと言いますが、そんな生やさしいものではありません。

現在中国で発生している公害は、かつて日本人が段階的に約120年間かけて経験した様々なタイプの公害が、一挙に絡まり合って数十年のスパンで凝縮して、一挙に大爆発しているのです。

青年期の頃、私は宇井純先生の「公害原論」の講座の聴講生でした。 

ちょうど重慶の視察から帰られた先生の第一声を,今でもはっきり覚えています。 

「君たち、中国で今後、膨大な数の水俣病が生まれるかもしれない。いや、もう多数の患者がいるはずだ。ありとあらゆる化学廃液がなんの処理もされないまま川に捨てられている。有機水銀、カドミウム、六価クロム、鉛・・・。
市当局に忠告したが、まったく聞いてもらえなかった。今、中国は公害を止めないと大変なことになるぞ」

 宇井氏は、中国において、すべての分野の公害が同時に発生し、複雑に絡まりながら相乗していると語りました。 

中国の公害が解決困難なのは、公害がひとつひとつのカテゴリーの中で解決されることなく、放置され続けた結果、積み重なってもつれあ合い、手がつけられなくなっているからです。 

さて公害病はその原因により、いくつかのタイプに分類されます。 

足尾鉱毒型(鉱山産廃型)日本でもっとも古いタイプに属するのは、鉱山の廃液などによる重金属汚染です。 

たとえば日本での代表例は、日本が19世紀に経験した栃木県足尾銅山で発生した鉱毒事件です。 

「精錬時の燃料による排煙や、精製時に発生する鉱毒ガス(主成分は二酸化硫黄)、排水に含まれる鉱毒(主成分はイオンなどの金属イオン)は、付近の環境に多大な被害をもたらすこととなる」(Wikipedia下写真も同じ) 

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 中国においては、たとえば広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮思的村や、広東省大宝山鉱山周辺で発生したガンの多発などは、まさに足尾鉱毒そのものです。 

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  (Google Earth 広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮思的村)

 思的村は険しい山あいの村で、流れが急な思的河が流れています。この村の水田は思的河を水源としていますが、村の上流15キロメートルに鉛・亜鉛鉱山と加工工場があり、これが汚染源です。  

同工場の規模は大きなものではないのですが、1950年代に採掘を開始した頃にはほとんど環境浄化施設がなく、カドミウムを含んだ鉱山廃水を思的河に垂れ流しました。  

それを知らずに下流の思的村が灌漑用水としたことで、土壌にカドミウムが蓄積されていきました。 

因果関係は明白です。この村では確実にイタイイタイ病が大量に発生しているはずです。 

中国内部情報紙サーチナ(2011年10月14日)はこう伝えています。 

「湖南省国土資源規画院基礎科研部の張建新主任によると、同省住民7万人の25年間にわたる健康記録を調べたところ、1965年から2005年にかけて、骨癌や骨に関係する病気の発生率が上昇傾向にあった。重金属が深刻な株洲地区住民の血液や尿に含まれるカドミウムは通常の2-5倍に達した。」(同)

水俣病型(工場排水型) 加工工場の排水や産業廃棄物からの重金属汚染です。

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わが国の1950年代から19760年代前半の4大公害病は、すべてこのタイプ゚に属します。

・熊本水俣病(1956年・水質汚染 有機水銀)
・新潟水俣病(1964年・水質汚染 有機水銀〕
・四日市ぜんそく(1960年~1972年 大気汚染 亜硫酸ガス)
・イタイイタイ病(1910年代~1970年代前半 水質汚染 カドミウム)

中国はこのタイプの公害も、現在進行形で多数発生しています。 

沙瑣頴河(さえいが)流域河南省周口市沈丘県の農村部で見られた、消化器系のガン、死産や乳幼児死亡率の急増し、先天性進退障害などは、工場排水による4大公害病の水俣病やイタイイタイ病に酷似しています。 

Photo_3Major rivers and counties with cancer villages, China, 2009 「主な河川に沿ったガン村および郡」) 

上図は、セントラル・ミズーリ大学のリー・リウ(Lee Liu)氏の2010年論文「Made in China: Cancer Villages」が作成した中国のガン村」の地図です。 

右端の凡例には、公式に政府が認めたものであり、下の紫色のグラデーションが、非公認の「ガン村」です。 

中国における7割以上の河川、湖沼などに「ガン村」が発生しているのが分かります。

確認できるだけで459箇所、重工業化が進んだ東部の河北省から湖南省までの地帯だけで396カ所存在します。

患者は行政や企業によって門前払いを受け、沈黙を余儀なくされています。村民や家族も、農産物が売れなくなるので、外部に患者が出たことすら隠蔽しています。 

おそらく中国全土の「ガン村」は、まともな調査をすれば天文学的数に登るはずてす。

化学農業型 化学農薬や化学肥料の過剰投入による土壌・水質汚染です。 

下図は、上海の揚子江河口付近の米の土壌の分析データです。 

Photo

  (「週刊文春」による。データの採取方法、場所などは不明) 

上図の右端が我が国の環境基準値(02年制定)です。我が国の基準値と比較してみます。

●揚子江河口土壌は日本の基準値の何倍か
・水銀 ・・・244倍
・鉛   ・・・3500倍
・ヒ素・・・1495倍
・カドニウム・・・4.2倍
・BHC   ・・・59倍(※DDTと並んで国際的に検出されてはならない使用禁止農薬)

とんでもないケタのDDT、BHCです。これは農業が出所です。日本では1970年代に禁止されています。

さらに農業のみならず、工場由来だと思われる水銀、鉛、カドミウムもすさまじいケタで検出されています。

典型的な工業と農業の複合タイプです。

このような地域で生活したり、農業をすれば、水銀を原因とする水俣病や、カドミウムを原因とするイタイイタイ病が、高率かつ、大量に発生しているはずです。 

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大気汚染型 今、騒がれているPM2.5のケースです。 

日本においては、四日市ぜんそくや川崎病などの形で現れました。

これはディーゼル車などの自動車排気ガス、石炭火力の煤塵が原因である四日市ぜんそくと、都市公害の複合汚染です。

中国との関連でいえばこの川崎病は現在の我が国でも小児を中心に多く発症しています。

ちなみに川崎病の名称は、地名ではなく、この呼吸器病と取り組んだ川崎医師の名です。

Photo_6http://blogs.scientificamerican.com/より)

五本木クリニックの桑満医師(※)は、川崎病についてこう述べています。
※間違って表記していたので訂正します。もうしわけありません。

「この川崎病ですが、原因物質は特定されていませんが、世界中に拡散する経路として日本からアメリカにまで広がっているために風の流れ(対流圏)などの調査をした場合、その流れと川崎病の発症数が強い関連性があることは以前から指摘されていました。
今回の論文は原因となる物質があるのなら、原因物質が発生する場所があるはずであるとう仮定から川崎病の発症データと気流のデータを分析したことによって、ついに発生源を突き止めました。それがやはり以前から噂されていた中国の北東部の穀倉地帯だったのです」

川崎病については別途記事にする予定ですので、 しばらくお待ちを。

それに加えて、近年のダム建設や道路建設による開発公害、リゾート建設公害、14億を越える人口爆発による砂漠化、草原破壊、そして地球規模の気候変動まで加わっています。

誇張でもなんでもなく、日本がこの百数十年で経験した、ありとあらゆる公害のすべてが、一国で爆発的に進行しているのです。 

これが公害専門家をして、「中国は公害のデパート」、あるいは「公害の生きた博物館」といわれるゆえんです。 

このような、足尾などの古典的公害、水俣、イタイタイ病などの工業が原因の公害に加えて、都市公害、気候変動までが同時噴出するのが、「中国の公害」です。

一口で「中国の公害」と一括りにできないことや、日本の公害経験と安直に重ね合わせられないことが、お分かりいただけたでしょうか。

日本においては、公害列島と言われながら、ひとつひとつの公害病を解決をしてきました。

不十分であるにせよ、患者を調査し、救済し、公害工場を操業停止させて、長い時間かけて破壊された環境を再生した歴史があります。 

その積み重ねによって、皮肉にも、日本は世界一の公害処理技術を有しています。

中国では、解決なきままに放置され地下に潜り、積み重なり、絡まりあって更に巨大な複合汚染体を作り出してしまったのです。 

なお、中国政府は、公式には水俣病やイタイイタイ病は「ない」ものとして扱っています。 

2015年12月16日 (水)

中国大気汚染黙示録 その2

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中国のアネクドート(政治的小話)をふたつばかりご紹介しましょう。 

習近平政権は、PM2.5の社会階層別予防策を発表した。
貧困層・大根とキクラゲを食べろ
中間層・空気清浄機を買え
富裕層・田舎に所有する別荘に逃げ込め
超富裕層・国を捨ててさっさと移民せよ
政府要人・14億の人民に「一斉に吸い込んでなくしてしまえ」と命じろ。

Photo_2こんなものもあります。 

かつて毛沢東主席は、こう唱えた。
「為人民服務、厚徳載物、自強不息、埋頭苦干、再創輝煌!」
(人民に奉仕せよ、厚い徳は万物を覆う、弛まぬ努力によってのみ自己を強くできる、苦労する仕事に没頭せよ、創造を重ね栄光を掴め!)

現在、習近平主席は、こう唱えている。
「喂人民服霧、厚徳載霧、自強不吸、霾頭苦干、再創灰黄!」
(人民に霧を喰わせろ、厚い徳は霧で覆え、自己を強くするために息を吸うな頭を塵だらけにして苦労せよ、灰や砂塵を次々に創れ!

 わ、はは。このアネクドートの紹介者の近藤大介氏によれば、このツボは、上と下の各21文字の発音が同じことだそうです。普通に発音すると一緒なんですってね。 

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北京のPM2.5は、上海にも波及していっそう深刻化していますが、なぜ減らないのでしょうか。

北京市環境保護局の発表によれば、PM2.5の原因はこのようになっています。

・自動車の排気ガス    ・・・31.1%
・暖房用石炭        ・・・22.4%
・工場煤煙          ・・・18.1%
・粉塵             ・・・14.3%
・その他(食堂の排気など)・・・14.1%

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自動車は抗日軍事パレードやオリンピックなどのハレの日には、車両ナンバーの末尾が偶数か奇数かで、入市できるとかやっているようですが、皮肉にもこの間のPM2.5騒ぎで自動車を買う人が増えてしまいました。

「2015年12月9日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、米ブルームバーグは、中国で深刻な大気汚染が、皮肉にも消費者の自動車購買意欲を刺激していると報じた。
中国乗用車協会(CPCA)が8日発表した中国国内の11月の自動車販売台数は、前年比約18%増の202万台となり、2月以来最高の伸びを見せた。
CPCAは、販売好調の理由について「11月は近年まれな寒さとなったことに加えて、大気汚染も悪化した。内気循環の自動車内の方が屋外よりも空気が良いからと、子どもがいる世帯を中心に購買意欲が高まっている」と分析している」 (レコードチャイナ2015年12月11日)

北京市民に言わせれば、「歩いて通勤?死ぬ気か。車内がいちばんキレイだ」、というわけです。

そしてまた車は増加し続けるというわけで、もはやお手上げです。

それに中国の自動車購買力こそが、国際市場にとって中国市場の最大の魅力でしたから、外資を呼び込む上でも、そうそう簡単に購買を規制できるはずもありません。

それに、相当部分を占める外車は排ガス対策が施してあります。ま、VWみたいな例外もありますが、中国製とは比較になりません。

問題は車両ではなく、燃料なのです。

中国は改革開放経済を軌道に乗せるために、石油価格を抑制する政策を取りました。

このあたりはやはり輸出依存国の韓国も、ウォン安とエネルギー安誘導という似た国家方針 を持っています。

それが出来るのも、石油企業が国営企業集団だったからです。石油精製製品は、わずか2つの企業集団によって握られている超寡占体制下に置かれています。

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中国天然ガス集団(CNPC・子会社にペトロチャイナ)と、中国石油化工集団(シノペック)のふたつです。

3大石油企業という場合、他に中国海洋石油総公司(CNOOC)もありますが、国内の販売網は上記2社が押えています。

この巨大国営企業集団は、実は政府そのものでもあります。常に、中国政府には「石油閥」と呼ばれるこの2つの国営企業出身の政治家がいます。

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産経中国特派員の矢板明夫氏によれば、石油国有企業はまさに伏魔殿です。

「石油業界は中国の国有部門の大黒柱だ。3大国有石油会社のCNPC、中国石油化工集団公司(シノペックグループ)、中国海洋石油総公司(CNOOCグループ)は、融資を受けやすいことを追い風に、世界最強の多国籍企業と競争できる国内大手の創出と対外投資を目指す中国の取り組みの先頭にいる。
市場調査会社ディールロジックの試算では、中国石油会社は02年以降、海外で約1300億ドルの投資をしている。
ペトロチャイナは07年に一事、時価総額で世界最大の企業となり、12年には米エクソンモービルを抜いて世界最大の原油会社になった。
だが、一部のアナリストによると、中国の石油業界は同国で透明性がもっとも低く、説明責任も果たしていない業界のひとつとみされている。
このために石油会社の幹部らは、大半の多国籍企業には商業的に受け入れられない条件で海外資産を取得できるほか、正体のはっきりしない代理店やサービス会社に発注した契約を通じて、私腹を肥やすことが多い」

事実、新華社報道によると、CNPCの総総理だった周永康は、巨額の汚職をしたとして逮捕されています。

「収賄は職務を利用した一連の事件で周永康は石油政策で直接蒋潔敏から73万1100元(約1千458万円)の金品を受け取る一方、呉兵、丁雪峰、温青山、周灝とそれぞれの関係と立場で便宜を図りこちらの謝礼は夫人の賈暁曄と子息周濱は4人から別々に計約1億2904万元(約25億7千万円)相当を受け取ったとされた」Wikipedia

こんなもんじゃ効かないだろうというのがおおよその見立てで、石油閥が懐に入れた賄賂は、中小国家の予算を軽く越えるといわれています。 

現在、石油閥は、チャイナ・セブンと呼ばれる党中央政治局常務委員7人の一角に、シノペック出身の張高麗氏を送り込んでいます。

ですから、硫黄分の少ない「国4」ガソリン」んてバカ高いコストがつくものを全国販売してたまるか、という石油企業の利害がまかり通ってしまうわけです。

「大気汚染の深刻化に伴い、北京市内各病院の呼吸器科を訪れた患者は20~30%増加。小児病院で内科を受診した患者の50~60%が呼吸器系の疾患によるものだった。

おいおい、国民の健康はどうでもいいのか、と私たちは思いますが、たぶんどうでもいいのでしょうね。

超富裕層は、アネクドートの言うとおり「国を捨ててさっさと移民」していますから。

北京市当局は2020年までに解決すると言っていますが、この巨大独裁国家が構造的に抱え込んだ汚染構造は、政体が変わらない限り永久に解決することは不可能でしょう。

2015年12月15日 (火)

中国大気汚染黙示録

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中国が猛烈なスピードで金星化していることは、日本で知られるようになってきました。 

共同の特派員はこう伝えています。 

「中国北京市は17日、深刻な大気汚染に見舞われた。在中国米大使館のウェブサイトによると、17日午後4時の微小粒子状物質「PM2・5」を含む汚染指数は、最悪レベルである「危険」を示す345を記録した。
 市内の上空は、もやがかかって真っ白になり、日中も薄暗く感じられた。高層ビル群もかすみ、路上ではマスクを着けて歩く人の姿も目立った。
 当局は車両の通行規制などを行っているが、なかなか効果は表れず、深刻な大気汚染がたびたび起きている」

北京のPM 2.5が、345μg/m3(マイクログラム毎立方メートル) だそうです。

法外ですね。現在の東京は、PM2.5マップによれば1日の平均値は13.89μg/m3です。日本の基準値は35μg/m3超 ですから、日本基準値の約10倍です。

いまや、中国大陸は、人が住むべき場所ではなくなったということです。

2月1日には北京で638μg/m3という中国基準の6倍、日本基準の約18倍という記録も出しています。

中国の基準値自体も、馬鹿げて高く日本の2倍以上の75μg/m3 です。

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東京都の大気環境(PM2.5)の現状と国の暫定指針に対する都の考え方(2014/1/27 池田誠 東京都大気保全課長)

ちなみに、米国の空気質指数(Air Quality Index)では、150μg/m3を超える場合に「すべての人はあらゆる屋外活動を制限するべき」としています。

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冗談か本気か、こんなトピックスもあります。これは、さすがころんでもタダ起きない中国商人と拍手すべきでしょうか。 

そういえば、嘉手納に「爆音の缶詰」なんか売っていたな(笑)。

「すでに国内の実業家がきれいな空気の缶詰を売り出している。貴州省の計画は、日本の富士山で記念品として売られた空気の缶詰がモデル。近くデザインなどを募集して開発チームを立ち上げ、6月中に第1弾を製品化する予定だ。
 習氏が今月の全国人民代表大会(全人代=国会)で同省の空気の質を称賛し貴州は『空気の缶詰』を売ればいい」と発言したことから計画が始動した。省は「特色ある観光商品にしていく」と意気込むが、インターネット上では「習氏へのごますり」といった冷ややかな声も少なくない」(西日本新聞)

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 やや古いのですが、下のNASAの衛星写真が撮った米の写真を比較すると、いかに大気汚染が広範な範囲に拡がっているか分かると思います。 

これが撮られたのが2012年ですから、今はさらに悪化しているはずです。 

Photo_3 (写真 衛星写真で観測された中国北部北京・天津付近の激しい大気汚染、2012年1月10日(上)・11日(下)Wikipedia) 

もう一枚、リアルタイム(12月15日)の日本への飛来状況を見ていただきます。Photo_4

http://pm25.jp/

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PM2.5の健康影響について2014/1/27 兵庫医科大学公衆衛生学 島正之教授)

沖縄、九州、西日本、北陸が、中国の大気汚染の恒常的影響下にあることがお分かりになると思います。

日本が最大の出資国であるアジア開発銀行(AIB)は、中国の大気汚染に3億ドル融資することにしたそうです。 

AIIBの資金は、インドネシアなどの輸出攻勢に使い、その尻ぬぐいはAIBがするという、見事な棲み分けです。

「英紙「フィナンシャル・タイムズ」の10日付記事では、アジア開発銀行は、北京の大気品質改善に3億ドルの貸付を提供する。
北京と天津の大気汚染の主要因になる河北省の石炭消費量の削減に当てられる。アジア開発銀行の専門家によると、中国が全力を尽くしているが、「汚染問題は相変わらずそこにある」。河北省の経済・産業構成が根本的な原因だ。中国で汚染が最も深刻な10都市のうち、7都市は河北省にある。
「フィナンシャル・タイムズ」によると、中国が海外からの融資を環境関連政策策定に盛り込んだあり方は異例だ。大気汚染というこの複雑な議題に対し、中国は政策対話に開放的だ」(新華ニュース12月13日)
 

他国にまで影響の出る大気汚染を出しながら、なにが「大気汚染の政策対話には開放的だ」ですか。傲慢さに、呆れてものが言えない。

中国には、自国民のみならず、地域全体に多大な迷惑をかけ続けている自覚がないのです。

さて、中国の大気汚染の主原因は、硫酸塩エアロゾルですが、その主成分の酸化硫黄は、硫黄を含む質の悪い石炭や自動車の排気ガスなどの燃焼によって発生します。  

自動車の生産台数を見てみましょう。図の黒線が中国です。 

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このような奇妙な線を描く国は他にありません。主要国は半世紀近い時間をかけて増大し、社会もそのモータリゼーションに応じて大気汚染対策を施してきました。 

しかし、中国は1990年頃までゼロ。2000年頃からまさに垂直上昇のように90度の角度で駆け上がり、今や国別生産台数では世界一です。

ただし、無計画に乱造したために、今や滞貨の山ですが。

このような自動車生産台数の伸びをした国は、世界に類例がありません。  

中国はあまりに急速、かつ無計画に工業化しすぎました。 その結果のしわ寄せは、国民が自らの健康で代償を払うことになりますが、製造した富裕層はとうに国外に逃げています。 

気体の二酸化硫黄は、眼と気道と肺に障害を与え、重度の場合は肺ガンの原因にもなります。特に抵抗力の弱い乳児や子供には強烈な刺激で呼吸器系を蝕みます。 

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建前上は、自動車の燃料は硫黄分が50ppm以下の「国4ガソリン」になったはずでした。  

ならばなぜ、今になってこんな「壮大な人体実験」(日本大使館医師)のような状況になるのでしょうか。 

理由はこの「国4ガソリン」が、実は北京や上海などの一部大都市部でしか使用されていないからです。

国営中国網(2012年1月12日)はこう述べています。

「中国環境保護部は10日、自動車に対する「国4」基準を段階的に実施すると発表した。「国4」基準を満たす自動車用ディーゼルオイルの供給体制がまだ整っていないため、順序だてて実施される。また、実施効果を上げるため、自動車用燃料の供給状況に基き、車種・地域別に「国4」基準を設定する」 

つまり、9割の地域ではあいもかわらず、旧来の硫黄分たっぷりのガソリンを使っているわけです。

ガソリンなのはましな方で、安く出回っている「ガソリン」の場合、偽造ガソリンが主流を占めているといわれています。

たとえば、殺虫剤原料のホルマールや、炭酸ジメチルなど有害物質を主原料に使ったもので、こんなものを吸ったら、あの世行きです。  

とりあえずホンモノのガソリンの硫黄分が、日本のガソリンのなんと15倍! 

その上、大気汚染の大きな原因であるディーゼル排気ガスについては、まったく改善がされた様子がありません。

中国環境当局は、「国4」、さらには「国5」にしていくと計画を発表しています。

下図は、2011年5月1日に改訂された自動車排ガス「国5」基準に対応する新基準です。

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しかしこれについて、科学技術振興機構中国総合研究交流センター フェロー金振(JIN Zhen)氏はこのように述べています。

「この基準は、ガソリン生産や販売事業者を拘束するものではなく、指導基準としての性格が強いため、事実上、ガソリン規制基準として役割を果たすには限界がある。(略)
言い換えると、本基準に強制力があったとしてもガソリンの環境品質の向上にどれだけ貢献できるかは疑問が残る
」(「中国の大気汚染防止の法制度および関連政策18)
http://www.spc.jst.go.jp/experiences/chinese_law/14025.html

現実問題として、大都市だけで排ガス規制しても、車は勝手に外部と出入りするのが習性です。

というか、その為に作られたわけで、北京という大消費地には大量のトラックが入ってきます。 

ではなぜ、こんなハンパな規制をしたのでしょうか。そこには、いわゆる産業派と呼ばれる巨大な国営石油会社の意図があります。

それについては次回にします。

2015年12月10日 (木)

中国大気汚染は、根深い構造上の問題だ

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毎年恒例の中国の大気汚染について、NHKニュース(12月9日)はこう伝えています。

「国営メディアは、3億人以上が影響を受けていると伝えているほか、「大気汚染の主な原因は、冬の暖房のために石炭が各地の農村で燃やされているためだ」と指摘し、根本的な解決には時間がかかるという見通しを示しています」

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では、どうしてこの初冬という時期になると、かならず極度の大気汚染が始まるのでしょうか。 

日本で冬になると、特に大気汚染がひどくなることはありません。しかし、中国の場合、季節の便りよろしく大気汚染が到来するわけです。 

原因は、たぶん、お考えになっているとおりです。寒くなって、家庭がガンガンとストーブを燃やすからです。 

それが、通年ある自動車の排気ガス、工場の煤煙の上にオンされるわけです。 

それを13億だか、14億だか知らないが、政府が自分の国の正確な人口数さえ把握できていない数の国民が吐き出すのですから、たまったものじゃありません。 

しかも北京は、緯度が日本の東北と同じくらいにある上に、冬は乾燥しきった天気が続きます。さぞかし身体に悪いでしょうね。 

実際に、中国では障害児の出生率が2001年以来40%も上昇しています。明らかに開放改革路線による無計画な工業化が背景にあるのは明らかです。

Photo_2http://tekuteku-beijing.seesaa.net/article/409982078.html

 上の写真は、中国の家庭で使っている石炭です。粉にして丸く巣型にすると練炭になります。 

これをボイラーで燃やして、煙突で室内に引き込んで温めるのですが、工事がいいかげんで、よく一酸化炭素中毒を起こすそうです。 

ただし、庶民の家は穴だらけなので、そう簡単に死なないそうでよかってですね。 

価格は粗悪な代わりに安価だから、ガンガン燃やします。

石炭は、中国の主エネルギー源です。理由は簡単。国内で大量に採れるからです。 

石炭は中国にとって、自給可能な貴重なエネルギー源なのです。 

石油は世界の原油をガブ飲みしていますし、今、南シナ海を要塞化しているのも、彼らのオイルレーンがここを通過しているためでもあります。

こんな苦労をしてまで手に入れている原油に較べ、石炭ははるかに容易に入手できるエネルギー源です。

ですから、中国の石炭に対しての強依存体質は半永久的に治癒することはないでしょう。

Photo_6http://www.garbagenews.net/archives/1967000.html

数字を押えておくと、上のグラフの緑色が石炭です。

おわかりのように、各国の中で群を抜いて高い依存度です。中国は石炭に、エネルギー源の66%(2014年現在)を依存しています。

これでもずいぶんと発電や製造業は、石油や天然ガスシフトが進んでいるので、2年前までは石炭の依存度は8割を越えていました。

Photo_5http://www.garbagenews.net/archives/1872203.html 

中国は世界最大の石炭生産国(2011年度)であり、同年の石炭  生産量は35億トンを越えました。

これは世界総生産量の46%あたり、輸入量も世界一ですから世界総消費量のほぼ半分は中国が消費していることになります。 と

はいえ、現在中国は資源枯渇の悩みと、さらなる採掘の深度化という難問に直面しており、輸入を増大させています。

Photo_12http://www.brain-c-jcoal.info/worldcoalreport/S01-01-03.html
「2004年以降輸出抑制策が取られ、輸出量は2003年をピークに減少する一方、輸入はベトナム炭を中心に増加している。輸出石炭の品質については、輸出管理制度問題と共に異物混入などの問題も指摘されている」
(ワールドコールレポートvol11)

Photo_13(ワールドコールレポート)

また中国の工場や火力発電所は、甘い環境基準の上に排ガス対策装置が不十分です。我が国ならば稼働すら許可されない施設ばかりだと言われています。

Photo_10http://www.recordchina.co.jp/a69371.html

その上、仮に装置がついていても経済効率優先で、浄化装置を止めて操業するケースが多く共産党機関紙・人民日報ですらこう書かざるを得ないようです。

「不純物を多く含む石炭を燃やしている。この時に煙を浄化する装置の稼働率が低い。この煙には毒性がある」

また中国国内の主な産地は陝西省、山西省、内蒙古自治区などで、この地域の名物は炭鉱のガス爆発と、石炭成金だといわれているそうです。

あ、もうひとつ大事なものを忘れていました。炭鉱暴動です。 

これは日本のメディアはほとんど伝えないのですが、劣悪な労働環境に怒った炭鉱労働者が暴動を起こすもので、毎日のように国のどこかで起きているとさえいわれています。

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上の写真は2015年4月6日に起きた、黒竜江省鶴崗市七台河市の炭鉱企業・龍煤集団の数千人のストライキです。 

デモ行進で市政府を取り囲み、未払い賃金の支払いなどを要求しました。 

武装警察の激しい弾圧にあって多くが逮捕されましたが、翌7日にも再びデモに立ち、市政府を包囲して周辺の交通を遮断する暴動にまで発展しました。 

同じような炭鉱暴動は 同時期の4月8日に、やはり黒龍江省鶴崗市で同じ龍煤集団の1万を超えるクビになった炭鉱労働者が、正規の退職金の支払いなどを求めてデモを行い、これも暴動にまで発展したようです。 

この労働争議の数字は中国は公表していませんが、表面に出ただけで下図のように激増しています。 

もちろん、これは氷山の一角にすぎず、地方人民政府が争議として認定するのはごくわずかでしかありません。

西側マスメディアの無関心によって、世界に報じられることもほとんどありません。中国政府にとって、自由主義諸国に知られさえしなければ「なかった」ことなのです。

Photo_9http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2006/2006honbun/html/i2318000.html

さてここで掘り出された石炭は、良質なものは輸出に、悪いものは国内向けになります。 

中国国内で使われる質の悪い石炭には硫黄分が多く、PM2.5が国産か中国から飛来した物質には、分析すると石炭由来の硫黄分が多く含まれています。

庶民に回って来るのは、この中国でも最低ランクの低品位炭だと思われます。 

この粗悪石炭を、中国東北部の黒竜江省、吉林省、遼寧省、華北の北京や天津などまで一斉に、10月の国慶節前後から使い始めるのですから、どうなるのかはご想像どおりです。

国民は、働きに出ないわけにはいきませんから、防衛方法としてはN95マスクを着ける以外身を守る方法がありません。

しかし、例によって例の如く、中国の乳児用粉ミルクのような品切れと偽造品騒ぎが起きているようです。

日本に爆買いにやって来る中国人観光客は、今頃N95マスクを大量に買い占めていることでしょう。

もちろん転売して儲けるためにですが。

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このように中国の大気汚染は、極めて根深い構造上の問題です。したがって、解決することは、相当に難しいというしかありません。

北京で大気汚染に対する赤色警報が出て、外出が規制され、車での移動も禁止される事態になっています。

大都市周辺の工場などは操業の短縮に入っています。この方法でしか、抗日70周年軍事パレードを挙行することすらできませんでした。

もちろん、こんな対処療法とも言えぬ、供騙しの方法が、長続きするはずがありません。

そうこうしている間に空気のみならず、北京郊外数十キロまでゴビ砂漠の端が迫っています。砂漠化もすさまじい勢いで進展しているのです。

この解決には、抜本的な公害対策が必要です。

そのためには、まずは現状の公害排出工場を操業停止にすることです。そして、厳重な罰則規定つきの環境規制法を実施し、過去に環境汚染をした当該企業に浄化を命じることです。

しかし、中国にはできません。

理由は、金にならないからです。そうでなくても、ダブついた供給能力を持て余し、在庫の山を作っている中国経済に、この抜本策は不可能です。

共産党の唯一の存在理由であった、「経済成長」神話が根底から崩壊してしまうからです。

もし、そのような環境政策をしたら、企業は軒並み倒産し、大量の失業者を吐き出し、流民が巷に溢れ、彼らは政府に牙をむくことでしょう。

かくして、中国の役人たちは、今日もはげ山に緑色のペンキを吹きかけて、それを環境政策と呼ぶのです。

 

2015年12月 8日 (火)

「中国ルール」を許すCOP21で、なにも決まるはずがない

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時もあろうに、COP21の真っ最中に、北京がまた「核の冬」状況になってしまったようです。
※北京のリアルタイム大気汚染情報はこちらからhttp://aqicn.org/city/beijing/jp/

「【北京時事】中国・北京市政府は7日午後、深刻な大気汚染が続くと予想される際に出す4段階の警報のうち、最高レベルの「赤色警報」を発令した。8日朝から10日昼まで交通規制の強化で車両の通行量を半減させるなど緊急対策措置を実施する。北京市で赤色警報の発令は初めて。
 北京市政府は2013年10月、深刻な汚染が続く予測日数に応じて「青色」「黄色」「オレンジ色」「赤色」の4段階に分け、72時間以上続くと予想される際、赤色警報を発令すると定めた。車のナンバープレート末尾が奇数か偶数かによって1日置きに通行禁止にするほか、工事現場の作業も停止させる。小中学校や幼稚園に対して休校・休園などを求める。
 北京市では7日夜、微小粒子状物質PM2.5の濃度は1立方メートル当たり270マイクログラムを超え、深刻な汚染となっている。7日午前0時に発令した「オレンジ色警報」を7日午後6時半(日本時間同7時半)に赤色警報に引き上げた」(時事2015年11月7日)
 

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これについて中国のCOP21代表団は、こう述べています。 

「【パリ時事】パリ郊外で開催中の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、中国政府代表団の蘇偉副団長が5日、時事通信などの取材に応じた。2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組みに関し、途上国グループに所属する立場から「歴史的責任に基づき、(各国が取り組む対策に)差をつけることが必要だ」と強調。過去に温室効果ガスを大量に排出してきた先進国が、より重い責任を負うべきだと改めて主張した。
 気候変動枠組み条約には、先進国の責任をより重くみる「共通だが差異ある責任」原則が明記されている。
これについて、蘇氏は「根本的な原則だ」と指摘。温室ガス削減や資金支援といった新枠組みの重要な論点で、この原則を反映させる必要があるとの認識を示した」(時事2015年12月5日 太字引用者)
 

わ、はは!いつもながら、中国は痛快なまでの悪い冗談をかましています。

中国が世界最大の大気汚染国、すなわちCO2にとどまらず、ありとあらゆる公害物質の排出国であることは明白です。

「温暖化の最大の原因とされている二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体で2012年は317億トンだった。最も多い中国が26%、2位アメリカ16%、3位インド6・2%だ。この3か国がダントツに多く、京都議定書にもとづき削減が義務づけたれていたEU(15か国)8・9%、ロシア5・2%、日本3・9%、その他4・6%となっている」(J-CAST2015年11月27日)

しかし中国はCOP21を前にして、もうひとつの排出大国米国と個別に交渉を進めて「合意」してしまいます。

「昨年11月には、世界1、2位の経済大国である米国と中国が、新たな目標で合意した。オバマ米大統領と習近平国家主席が首脳会談を行い、米国は「2025年までに2005年比で26~28%削減」。中国は「2030年ごろまでに排出量がピークを迎えるようにし、その後は排出量を減少させる」という内容であった。現時点におけるCO2排出量は米中2か国で世界の4割を占める「排出量大国」であり、両国の目標は大いに注目を集めたが、他の諸国からは「不十分ではないか」との指摘が浮上していた」(日本エネルギー会議3月2日)
※http://enercon.jp/topics/8615/?list=focal

常日頃は世界第2位の経済大国を鼓吹し、南シナ海で覇を唱え、途上国に金と武器をバラ撒き、米国と太平洋を2分割しようという「超大国」中国が、こと環境問題となるといきなり、「オレはいたいけな発展途上国だかんね。悪いのは全部先進国だかんね。日米欧は、金、出せや」、というわけです。 

見事なまでのダブスタぶりで、ある時は世界を二分割する超大国、ある時は可哀相な発展途上国ときたもんだ、です。

まぁこんな空母艦隊など作る金ほど金がダブついているなら、国民の健康と環境に金を出しなさい。

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さて下の衛星写真は、2013年冬にNASAが撮ったものですが、画面中央右の白いスモッグ帯に小さな白字でBeijingとあるのが北京です。スモッグの海底に完全に沈んでいるのが分かります。 

これは金星の地表の衛星写真だと言われても、信じちゃいそうです。 

中国国民にとっては、もはや温暖化うんぬんという50年、100年先の話ではなく、ただ今現在をどう生き抜くのかという類の話になっています。 

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「世界保健機関(WHO)が2014年に発表した報告書では、世界中の大気汚染に関連する死者は年間約700万人。そのうち約23%を中国が占めている計算になる。
 研究チームによると、13億人を超える中国の人口の38%が、米環境保護局(EPA)の基準で「不健康」とされる大気レベルの地域に居住している。状況が最も深刻なのは北京の南西部という。頻繁に基準値を大幅に超える汚染が報告される河北省石家荘市などが該当するとみられる」(産経2015年.8月.14日)

この大気汚染は、昨日今日に始まったものではなく、2013年ころから隠しきれないものとなっていました。

「環境省によると、10日夜から北京市を中心に中国東部で大気汚染が発生、14日まで主要都市で汚染が確認された。同市内の濃度は多い時には大気1立方メートルあたり約500マイクロ・グラムで日本国内の基準(1日平均35マイクロ・グラム以下)の十数倍にあたる。」(読売新聞2013年1月30日)  

この分厚い雲の下はこうなっています。 

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 この写真は2013年冬の真昼に撮影されたものです。もう一回繰り返しますが、夕暮れではなく昼間です。 

撮影した共同の特派員は、10数メートル先も見えないと書いています。 

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この分厚いスモッグが晴れるのは、オリンピックと、抗日70周年なんじゃら軍事パレードの時だけです。北京周辺の工場を止めたり、車の乗り入れ規制をするからです。

私も何回か中国に行きましたが、北京に入るとまず気づかされるのは、空気の妙な匂いです。  

コークスを焼く匂いに、排気ガスを加えたような臭いとでもいうのでしょうか。これが大気汚染の主原因である硫酸塩エアロゾルです。 

エアロゾルとは大気中浮遊物質のことで、工場や自動車などから排出される二酸化硫黄が、大気中で化合・吸着した微小粉塵(エアロゾル)のことです。 

粒子の大きさはPM2.5ですから、粒径25μm以下という超微細なものです。 

おお、放射能問題の時にさんざん登場したμ(マイクロ)という単位が出ました。これは100万分の1を表す単位のことです。 

この硫酸塩エアロゾルは、普通の風邪引きマスクていどは簡単に透過して、気管支、肺にまで達しあらゆる気管支系の病気の原因となります。

「専門家によると、霧には多くの有害物質のほか病原菌も付着。気管支炎やのどの炎症、結膜炎などのほか、お年寄りや疾患を抱えた人だと高血圧や脳疾患を誘発する危険があると指摘した。」(ロイター)

マスクでブロックする気なら、N95仕様のマスクが必要です。 

Photo_3この有害ガスの「濃霧」は、北は長春、瀋陽、珠江デルタ、東は済南、西は西安まで、中国の広域に広がっています。  

この汚染地域は、中国の7分の1に相当する130万平方キロ日本の3倍という途方もない面積に達します。大げさな表現ではなく、まさに空前絶後の汚染規模だと言えます。  

この中国からの硫酸塩エアロゾルは、日本に偏西風で到達しています。 

これは国立環境研究所の環境展望台というサイトで、簡単に見ることができます。
※http://www-gis5.nies.go.jp/eastasia/ConcentrationMap1.php 

最新の2015年12月7日の分布図です。 

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この中国からの硫酸塩エアロゾルの到達は、既に10月頃から観測されています。 

下の分布図は10月4日のものですが、沖縄、九州、四国、東北を除く本州のほぼ全域が入っています。 

このセシウムなどよりはるかに危険な硫酸塩エアロゾルは、沖縄まで包んでいますから、自主避難者の皆さん、今度は北海道に逃げなくてよろしいのでしょうか。

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もう一枚、濃度の予測分布図も掲載しておきましょう。同じく国立環境研究所です。
※http://www-cfors.nies.go.jp/~cfors/index-j.htmlPhoto_9
私はCOP21などで何も決まらないと思います。

その理由は簡単です。世界最大のCO2排出国、公害のデパートのような国を、国際社会が何ひとつ規制できないからです。

他のほんとうの途上国が、この「中国ルール」を手本とするのは言うまでもないことです。

かくて、こんな会議では何ひとつ決まりません。

そしてかの国が、内部から変わっていく可能性が限りなくゼロな以上、手つかずのまま「核の冬」が続き、世界は中国の汚染物質によって金星化していくのでしょうか。

※改題しました。どーしてオレって、こう改題か好きなんだろう。反省しています。

 

2014年1月24日 (金)

再燃した中国トリインフルその3 中国の患者数が信用されないほんとうの理由

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中国で再び新型インフルエンザが、爆発的流行の兆しをみせています。しかし実態は厚い情報統制の中にあって、真になにが起きているのかわかっていません。

中国当局の公式患者数は誰も信じない
多くの日本の医療・防疫関係者が、去年からの中国新型トリインフルの感染者数や死亡者数が、当局発表の10倍以上だと秘かに考えるのには理由があります。
それは中国の悲惨極まる医療制度のためです。
中国に病院がないわけではありません。むしろ、富裕階級用や共産党、人民解放軍のための専用病院などは先進国並の先端医療施設を持っています。
しかしこの高級病院は、一般人は使えず、利用できる人間たちはほんの一握りです。

民工の賃金は月収1万円以下
農村から上海などの大都市に出稼ぎに来て底辺労働に従事している民工(農民工)は、国家人口計画生育委員会の「中国流動人口発展報告2012」によれば2011年末に中国全国の流動人口が史上最高の2億3千万人に達しており、その8割は農村戸籍を持つ者で、平均年齢は28歳です。
実にわが国の人口を優に上回る人口が、職を求めて全国をさまよっていることになります。
一般に中国の農村は都市部と収入で3倍以上の大きな格差があります。
たとえば上海や蘇州の3Kの底辺労働を担う人たちは、湖南や四川など農村部出身者が大半を占めています。
これら農村部から来る外部労働者数は、蘇州市などでは地元の人口をはるかに越えているそうですからその規模がわかります。ざっと計算すると、蘇州市区は人口約538万人ですから、600万人から700万人もの大量の民工が流入していることになります。
20歳くらいの民工の平均月収は、日本円で1万円にも届きません。約600元(約8000円)ていどです。(※ただし、賃金は職種、技能によって10倍ていどの差があります)
彼らが帰郷するための費用は3000元から4000元(4万円から5万円)なので、2年に1回くらい帰れたらいいという所のようです。
帰郷シーズンは年に2回で、2月の春節と、5月初めの労働節です。
この時期にSARSは爆発的に感染拡大しました。まさに今ですが、今年もそうなるのではないかと心配です。

Photo_3            (写真 民工が集まる広州駅周辺、南都週刊より)

民工の医療は闇診療所だけ
この膨大な統計に出てこない闇労働者たちには、国家による医療が与えられていません。民工は、農村籍しかないので出身の農村で医療を受けるしかありませんが、そもそも農村部は医療が大幅に都市より遅れている上に、帰るキップ゚代が半年分の収入なので、もぐりの医院に診てもらうしかないのです。
ロイター(2013年3月27日)はこう書いています。
「中国政府が医療制度の改革を掲げる中、闇診療所は相変わらず繁盛している。
北京の街の片隅、裸電球一つの粗末な「部屋」は出稼ぎ労働者である張雪方(ジャン・シュエファン)さんからすれば「一番いい病院」である。環球時報(電子版)が伝えた。
北京市民ではない張さんは市内の公立病院でもっと安い治療も受けることができず、遠く離れた故郷の医療補助金を受け取ることもかなわない。
病気になった時には、北京に暮らす数百万人の出稼ぎ労働者同様、不衛生で無秩序な「闇診療所」に頼るしかないのだ。 」

原因は差別的な農村戸籍制度
中国には、江戸時代のような農村戸籍と都市戸籍があります。農村戸籍が10億人、都市戸籍が3億人、特権階級の共産党員戸籍が7000万人といったところのようです。
農村籍は農村に住んでる人達を、一生農村にしか住めなくする隔離政策の為にあります。
農村では一人っ子政策の適用外で子供を沢山作れますが、働ける所が制限されているために、都市で働くには闇の民工になるしかありません。
あまりの前近代的制度のために批判が多く、政府も改革を約束していますが、具体的には変化はみられません。
また、今、感染の危険性が一番高いのは養鶏や畜産に従事する農民ですが、農村にはまともな病院が少ないためにしっかりとした治療を受けることは不可能に等しいと言われています。
この農村部に住む農民と、都市に出稼ぎに出ている民工階層が最大の感染の闇の部分、つまり温床です。

■感染の火薬庫となっている農民と民工階層を見ないで、中国の新型インフルエンザを語るべきではない
「北京の首都経済貿易大学の教授は「闇診療所は中国の医療制度の暗部である。
出稼ぎ労働者が闇診療所の常連客となるのは、医療制度に欠陥があるからだ」と指摘する。
北京市政府の公式データによると、2010年以降、約1000カ所に上る闇診療所を閉鎖してきたが、多くは閉鎖から数日後には営業を再開しているという」(ロイター同)
この2億3千万人の医療を受けられない底辺労働者層こそが、新型トリインフルの火薬庫なのです。
この階層を調査することなく、病院に入ることができる裕福な特権階層だけを調べて「ヒト・ヒト感染が確認できない」と言っているのが、今の中国当局とWHOです。
真に恐ろしいのは、この地下に潜っている悲惨な農民と民工階層なのです。この当局が公表しない彼らを切り捨てて、中国新型インフルエンザを語るべきではありません。

※参考文献 小室友香「民工の師弟教育について」

 

2014年1月23日 (木)

再燃した中国トリインフルその2 新型トリインフルが中国でなくならないわけ

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中国は、新型インフルエンザになる可能性のある(というか、私は既になっていると思ってますが)トリインフルをまた再燃させています。
不潔な家禽市場、防疫体制の不備、薬剤の備蓄の不足など多くありますが、最大の原因は医療そのものから見捨てられた人々が、今や固着した下層階級となってしまっていることにあります。
このような社会構造と感染症が一体化した場合、その根絶は社会を変革しないかぎり難しいことになります。

具体例を見てみましょう。

患者は病院にも行けなかったために、兄弟で感染死亡した
比中国では農民戸籍と歳戸籍が分かれていて、農民戸籍は差別的扱いを受けています。しかし、比較的、農民や民工と違って「優遇」されているといわれる都市戸籍の人たちですら病院に行けない人が多いのが中国の実態です。
感染初期に死亡した上海の老人は、病院に行く金がないために薬局で漢方薬を買い、まるで効かないのでもぐりの闇医院にかかりましたが、手遅れで亡くなってしまいました。
同じ症状で子供の兄弟が発症していますから、こちらも同じ感染をしていたと考えられます。

入院費用が払えず家と家財道具を売ろうとした女性患者
2003年のSARSではヒトからヒトに感染が確定したために医療費は無料でした。
しかし、今回の新型トリインフルでは、ヒト・ヒト感染がいつまでも確定しないたために、「個人の衛生観念の問題」で処理されています。(上海など一部では無料化されています。)
南京市で重体になった45歳女性は、集中治療室での費用が1日1万元(約16万円)請求され、10日間の入院しただけで160万円にも達したために支払い不能となってしまっいました。
切羽詰まった家族は貯蓄をとり崩しただけでは足りず、自宅も売却しようとしましたが、「伝染病の家の家など買えるか」と言われて、売れる見通しはたっていません。
この患者女性は、病院には経済的にいられない、かといって自宅にも近隣からいやがられて戻れなくなったわけです。一体今どうしているのでしょうか。
このような病院にかかれない人の数はおそらく統計数字にも現れないような膨大な数(おそらく数億人)に登ると推測されます。

医療保険制度はなきに等しい
中国は型新型は統制経済から、開放改革経済に移行する際に、医療福祉制度を置き忘れてきてしまいました。

というのは、開放改革経済は、安い賃金で外資を呼び込むことを前提にしてでぎあがっていたために、賃金だけではなく、福利厚生などまで一切切り捨てて出来上がっているからです。
かつての統制経済下では、医療、教育、年金は、国家が提供するものでした。
都市部では国営企業が、農村部では人民公社がそれを提供してきました。
しかし、市場経済への移行と共に、人民公社は解体され、国有企業は民営化が進みました。
そしてその後に新たな医療・福祉制度が出来上がらないうちに、患者負担のシステムだけがのさばっていくようになります。

実際には使えない保険制度
「医療保険は2003年から農村にも導入が始まり、11年末までに国民の95%が加入した。ただ、いったん自費で前払いする必要があり、補償範囲も狭く、かさむ医療費をまかなえない。10年のある調査では、過去1年間で保険を使った高齢者は、都市で3・2%、農村で4・3%しかいなかった。」(朝日新聞2月27日」)
前回でも触れたように農村部では医療機関が普及していない上に、農村戸籍にしはられて都市部に出稼ぎに行った農民工には医療サービスは受けられません。そのような民工層だけで2億3千万人もいると言われています。
一方、都市部でも認知度も低く、ほとんどない状態だと言われています。
中国において充実した医療を受けられるのは、専用の病院がある共産党員と、軍病院が付属している軍隊だけのようです。

医療機関も政府支援がない
医療機関にとっても政府の資金援助がないため、中国の病院はその収入源の大半を薬代と検査代で得ています。
それは日本のような医療保険による薬価制度がないために、薬が一番儲かる安定した収入源だからです。医療保険のない薬価をご想像ください。
中国で盲腸になった邦人の話では、入院費用だけで百数十万円請求され、手術代と薬代、検査費用などで、結局数百万円に登ったという話を聞きます。

地方政府、「貧乏人は漢方薬を飲め」
治療費自体が高い上に、下手してトリインフルで隔離病棟に入れられようものなら破産してしまう庶民は、しかたなく市販の「板藍根 (ばんらんこん)」という怪しげな漢方薬にすがる有り様です。
12袋入りの箱が5元(約80円)程度で購入できてお得だとのことです。ただし、新型インフルエンザにはオロナミンCていどの効果しかありませんが。
「上海市中心部の薬局では板藍根の特別コーナーが設置され、40袋入りの箱が山積みに。女性店員は「普段の倍ぐらい売れている」と話した。」(共同通信)
この漢方薬が爆発的に売れだしたきっかけは、「多数の感染者が確認されている江蘇省の衛生当局が4日、地元メディアに対し予防効果があると板藍根を紹介したことだった。上海や南京、広州など全国で購入の動きが広がった」(同)そうです。
地方政府がこんなことを言っているようでは、いかに手に負えない数の患者が各地に潜在しているのかお分かりになるだろうと思います。

運良く病院に入院できても、インフルエンザ検査キットがない
その上この貧弱な医療体制の上に、問題を難しくさせているのが初期診断の難しさです。関西福祉大学・勝田吉彰教授によれば、日本の病院にはどこにでもある簡易インフルエンザ検査キットがないために、新型インフルエンザだと認識されないケースも多かったようです。
結局、運良く前金を払って病院に入院できても、生理的食塩水の点滴や抗生剤の投与をされているうちに亡くなってしまったというケースも多いようです。
※日経メディカルオンライン

http://bylines.news.yahoo.co.jp/dandoyasuharu/20130420-00024492/

中国政府がヒト、ヒト感染を認めない理由は、新型トリインフルが社会矛盾の縮図だからだ
実は中国政府が感染患者を支援しない理由は、このヒト・ヒト感染の確定と絡んでいると私は考えます。
「ヒト・ヒト感染が確認されていない。SARSほど危険な病気ではない」というWHOお墨付きの公式見解がある限り、政府はフェーズ3対応の検査、監視と消毒ていどでお茶を濁すことができます。
しかしいったんヒト・ヒト感染を認めてしまえば、パンドラの箱を開けることになります。

ヒト・ヒト感染を公認すると数十万の人が無償治療を要求することになる
この無償治療には、当然、数十万の人が押し寄せることになるでしょう。
ことに農民戸籍の人たちで発症している人たちは、農村で養鶏や養豚に従事している人たちの中に大勢いて、未だ医療の手が差し伸べられていませんから、一斉に医療支援を要求するでしょう。
そうなった場合、人には金をかけないのが主義の中国において、数千万、いや数億人のワクチンやタミフル要求暴動が起きるでしょう。
それは広範な農民暴動に引火していきます。そして脆弱な習政権を根底から揺るがすでしょう。だから、当局はヒト・ヒト感染を絶対に認めないのです。
 

ひと昔前、日本の社民党は憲法9条を世界に拡める運動をしていました。
賛成です。ぜひ毎年軍事費を11.2%増加させている世界一の軍拡国家・中国に憲法9条を輸出してください。
一緒に、真に貧民の為に戦う「共産党」も。

2014年1月22日 (水)

再燃した中国トリインフルその1 新型H10N8型鳥インフルエンザで初の死者

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中国でH7N9型トリインフルが再燃しているようです。こんどの震源地は広東省の深圳市(しんせん)のようで、既に香港にまで拡大しています。 

昨年10月以降から今年1月14日までに39人の患者があり、さらに15日に浙江省で12人目が発症しています。 

「上海の日本総領事館の12日の集計によると、香港を除いた中国本土での感染確認者はこれで164人、死者は50人となった。」(産経新聞1月12日) 

このおそらくはこの10倍以上の患者が潜伏しているのが中国の常識ですので、再流行入りは確実だとみられます。なお、昨年7月までの流行では患者135人死者45人でした。 

去年前半の流行と同じで、発症時にタイムリーに抗ウイルス薬で制圧できていません。おそらく、タミフルの治療薬の絶対的備蓄量の少なさと、基礎的医療体制の不備が原因でしょう。

その上に、中国メディアの写真を見ると、未だ生きたままの鶏が家禽市場でなんの規制もなく取引されており、これでは処置なしです。 

トリインフルは家禽と人間との濃厚接触、つまり生体に触ったり、その糞便がついたりすることで感染を拡げていきます。 

ですから、家禽市場という感染ハブ(※)を徹底してウイルス制圧し、家禽を生きたまま市場に入れないことが第一です。それすら出来ない以上、もうお手上げです。 

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         (写真 中国の家禽市場 写真は去年の大流行時のものです。レコードチャイナ)

また、中国特有のなきに等しい医療保険制度でこぼれ落ちる民工や、農民籍の人々は投薬どころか診察すら受けられずが出来ておらず、一気に重篤な症状になっていきます

広東省衛生計画生育委員会の陳元勝主任はこう述べています。 

「高熱といったいわゆるインフルエンザ様症状が出た者及び感染家禽に接触した者が発症から48時間以内にタミフルといったノイラミニダーゼ阻害薬を服用しなければならない。
もし、タイムリーに抗ウイルス薬を服用せず、症状が重症化したら、病院の指導者及び当事者(医師)の責任を追及する」。
 

一体中国防疫当局は、去年の大流行をどう総括したのでしょうか。中国という国には学習能力がないのかと叫びたくなります。 

去年根絶できていない以上、この冬に再流行するのはわかりきったことであり、いまさら基盤的医療体制の整備や医療保険の拡充などは不可能だとしても、最低タミフルの備蓄量だけでも充実させるべきでした。 

それをいまになってなにが「抗ウイルス薬を服用せずに、重症化したら責任を追究する」ですか。 

やくたいもない空母を作ったり、月に探査衛星を着陸させるほど金がダブついているなら、国民ひとりひとりに配るくらいのタミフルは買えるだろうに!

国民を守らない国はもはや国家という名に値しません。 

また、H10N8型鳥インフルエンザの、鳥から人への初の感染者となった73歳の女性が、6日、中国江西省で死亡しました。 

今のところH7N9より弱いようですが、変異しています。今後、より複雑な変異を繰り返して、より強力なウイルスになっていくことが容易に想像できます。 

私の予想どおりトリインフルは排除されたのではなく、ただ中国社会の隅々に潜伏しているだけで、ウイルスは春節で人の移動が激しくてなるこの時期を待っていたのです。 

「中国国内では今月31日の春節(旧正月)を控え、帰省や旅行など国民の移動増に伴い、感染が拡大する懸念も出ている。上海市では、春節から4月30日まで、生きた鳥の売買を禁止する措置を取る。」(読売新聞1月12日) 

おそらく複数の新型ウイルスが潜伏して、猛烈に繁殖を続けているものと思われます。その原因をさぐっていきます。

※感染ハブ ウイルス感染が拡大し、様々な場所に飛び火する感染ネットワークの中心のこと。

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中国、H10N8型鳥インフルで初の死者 45人犠牲の別型こそ危険との指摘も
newsphere.jp 2013年12月19日
 

H10N8型鳥インフルエンザの、鳥から人への初の感染者となった73歳の女性が、6日、中国江西省で死亡した。 

 台湾の疾病管制署(CDC)によると、直接の死因となったのは呼吸不全と血圧低下による急性循環不全だ。女性には重い肺炎、高血圧症、心臓病、筋無力症などの持病があり、11月30日より同地の病院に入院していた。 

 世界保健機関(WHO)の調査によると、女性は生きた家禽などを扱う市場をたびたび利用し、発症の4日前にも訪れていたという。 

【人への感染リスクは低いと専門家の見解一致】
 今後、人への感染が続くことが懸念されるH10N8型だが、もともと、人への感染力はそれほど高くない、というのがCDCの周志浩副署長の見解である。台湾のチャイナポスト紙の記事によれば、同ウィルスはこれまでに日本、韓国、アメリカを含む各国の渡り鳥、家禽からも見つかっており、病原性は低いが、人間が感染した場合、重い症状を引き起こすことがあるという。
 

 とりわけ、人から人への感染力は高くないというのが、現段階での専門家のおおむね一致した見方である。CNNは、中国国家衛生・計画生育委員会が「今回の死亡事例は個別的な症例であり、現時点での分析によれば人への感染の危険性は低い」と発表したことを取り上げている。 

 香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、中国国有の製薬会社・上海生物製品研究所の研究部門の陳則教授が、2007年にH10N8型ウィルスの分離に成功し、マウスを使った動物実験で哺乳類への感染性があることを証明したと報じる。同教授によれば、ウィルスが人への感染性と哺乳動物間の感染性をもつことは確かだが、人から人へ感染するかは現時点では不明であるという。 

【H7N9型はH10N8型より怖い?】
 専門家らは、H10N8型以上に、中国ですでに拡大の兆しを見せているH7N9型により一層注意することを呼びかけている。
 

 香港大学で公衆衛生学を担当する潘烈文・准教授は、H10N8型による感染が今後拡大していく懸念は少ない、とCNNに語った。一方で、今年3月に中国で最初に報告されたH7N9型は、すでに中国で100人以上、香港で2人の感染者を出している、と警告。H7N9型は重症化しやすく、すでに45人が死亡していることを付け加えた。 

 ウィルスの温床となっている、生きた家禽を扱う市場を閉鎖するべき、と専門家らは口をそろえる。香港の同種の市場では、すでに生きた家畜や家禽が取り扱われなくなってきているが、中国江西省ではいまだに取り扱いが続いている、と香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は報じる。 

 なお台湾のCDCは18日付で中国への渡航情報を「警戒」レベルに引き上げた。 

中国・広東省、H7N9対策会議を開催 関係当事者の責任を追及   

日本新華夏(株)2013年12月18日

 中国・広東省衛生計画生育委員会は17日、人感染性H7N9鳥インフルエンザ対策に関するテレビ電話会議を開き、高熱といったいわゆるインフルエンザ様症状が出た者及び感染家禽に接触した者が発症から48時間以内にオセルタミビル(商品名:タミフル)といったノイラミニダーゼ阻害薬を服用しなければならない。さもなければ、当事者は責任を追及すると明らかにした。中国新聞社が伝えた。

 15日に入って以来、広東省は2日間連続してH7N9鳥インフルエンザウイルスの人への感染例2例が確認された。広東省疾患予防制御センターの張永慧主任は会議で広東省のH7N9型鳥インフルエンザウイルスの拡散情況を報告し、予防対策を打ち出した。

 広東省衛生計画生育委員会の陳元勝主任は、「高熱といったいわゆるインフルエンザ様症状が出た者及び感染家禽に接触した者が発症から48時間以内にタミフルといったノイラミニダーゼ阻害薬を服用しなければならない。もし、タイムリーに抗ウイルス薬を服用せず、症状が重症化したら、病院の指導者及び当事者(医師)の責任を追及する」と強調した。

 タミフルは抗インフルエンザ薬だ。中国工程院の鐘南山氏は先ごろ、「人感染性H7N9鳥インフルエンザへの臨床研究では、発症後5日以内にタミフルといったノイラミニダーゼ阻害薬を服用したら、重症化するリスクを明らかに下げることができる。早急に診断し、早急に治療し、早急に抗ウイルス薬を服用するのは重症例数を減少し、死亡率を下げる最も重要な手段となった。 

 専門家グループは、広東省ではH7N9型鳥インフルエンザの散発的な人への感染確率が高く、特に珠江デルタ地域だと指摘した。

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