中国問題

中国が軍縮に向うだって?

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中国の抗日70周年軍事パレードについて朝日新聞(2015年9月3日)は、「中国、兵力30万人削減表明 戦勝70年「覇権唱えず」と題して、こう報道しています。 

中国共産党と軍、政府は3日、「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念式典を北京・天安門広場で開いた。兵士1万2千人による大規模な軍事パレードも行われ、最新兵器を披露した。習近平(シーチンピン)国家主席は演説で、列強の侵略を受けた歴史からの決別と、平和的な台頭を目指すという中国の立場を強調し、中国軍の兵力30万人削減を表明した」 

この時期に朝日は本音としては、中国の大規模な軍事的示威など絶対に止めてほしかったことでしょう。 

というのは、日本では、朝日が煽りに煽った反「戦争法案」示威のほうが、宴もたけなわだったからです。
※「デモ・抗議開催情報まとめ(戦争法・アベ政治等) 

Photo_7(写真 シールズのデモ風景。奥田クンに脅迫状を送るなどというバカなことは絶対に止めてほしいもんだ。共産党が喜ぶだけじゃないか)

7月から8月にかけて大規模なデモが連日行なわれ、9月には全国の憲法学者や文化人たちの反対声明が出揃ろおうか、という時期に当たっていました。 

朝日としては、「安倍の強権主義が平和憲法を破壊する」という内向きの視点でキレイにまとめたかったわけです。

「今回問われている問題の本質は、実は、集団的自衛権の解禁の是非というよりも、憲法は守れ!という立憲主義の擁護です」(小林節慶大名誉教授)

このように安全保障問題を次元の異なった、「立憲主義か改釈改憲」か、「平和主義か戦争主義」かという問題にすり替えることによって、朝日は半ばその意図を成功しかかっていました。

朝日からすれば、仮に法案は通っても、安倍政権を崩壊させ、衆院選に持ちこんで反安倍政権を作れれば万々歳、と読んでいました。

これに対して政府は、衆院の失敗に懲りて、衆院審議では外交上の理由で触れなかった中国の覇権主義について、一転して厳しい批判に転じました。 

まぁ、衆院では、民主党がホルムズ海峡や徴兵制復活といった派手な場外ファールを連発していましたからね(笑)。我慢できなかったんでしょうね。 

これでグっと、国民には分かりやすくなったのは確かですが、中国はこの政府の説明方針の変化に敏感に反応しています。

「中国の程永華(チョン・ヨンホア)駐日大使は23日の記者会見で、安倍政権が進めている安保法案をめぐり「日本が専守防衛・平和的発展の道を変えるのではないか」との疑念を表明した。
日本問題の専門家からは「日本はこのところ、中国に的を絞って攻撃を仕掛けてくる。これは歴史問題で深く反省しようとしない安倍政府に対する国際社会の目をそらし、その視線を『中国の脅威』に持ってこさせようとするもの」との見方が出ている。(略)
(スイスの学者の言葉を借りて)日本の軍国主義が復活しつつある。安倍首相の選択がアジアを戦争にいっそう近づける。安倍内閣の半数以上が、米国による戦後の占領と平和憲法で日本が骨抜きにされたと考えている。一切を顧みない排外主義が日本の政治体制の中にはびこっている」(レコードチャイナ7月26日)

例によって、あんたにゃ言われたくないよという内容です。日本が軍国主義だって?わ、はは、よー言うよ。

しかしこには中国がぜひこの法案を潰してほしい、切ないまでの気持ちがよく現れています。

こんな中国にとっては、これほど嬉しいことはないという反対デモが盛り上がっている真っ最中に、中国は「では景気づけに、我々からも連帯の挨拶を」とばかりにイチびってしまいました。

それが抗日70周年ナンジャラ軍事パレードです。 

Photo(写真 日本を射程に納める東風21弾道ミサイルの行進)

これではさすがに平和ボケのわれらが同胞も、「やっぱりアベさんがいうように、中国の覇権を目指しているのか」と思ってしまいます。

困った朝日が焦って出したのが、冒頭の習の演説垂れ流しの記事です。

では、ほんとうに朝日が言うように、この抗日70周年なんじゃらは、ほんとうに「中国の平和な台頭を目指すための軍事パレード」なのでしょうか。

Photo_6(写真 パレードする女性部隊。ファッションモデルを大量に入れたことがわかって恥をかいた)

まず、今回中国が初めて「軍縮」をするわけではないことは知っておいたほうかいいでしょう。 

今まで中国は、1985年に10万人、1997年に50万人、2003年に20万人、そして今回30万人と、4回削減されてきています。 

一貫して削減されたのは、陸軍だけだったことに注意してください。 

この30万人削減について、記者会見に臨んだ中国国防部の楊宇軍報道官は、削減理由を問われるとこう答えています。
(以下、北京週報 人民日報、新華社などによる。訳文が晦渋なので、適時分かりやすく書き改め) 

「兵員削減を通じ、中国軍は、規模をさらに調整、最適化し、より能力を高め、軍の構造がより科学的になり、中国的特徴を持った近代的な軍事システムを構築することになろう」
削減されるのは、時代遅れの武器を装備した部隊、事務職員、非戦闘部局の人員である
「兵員削減は、リソースのプール、軍の情報化のスピードアップと改善に資するであろう。中国軍の縮小が中国の国益を守る能力を低下させない」(太字引用者)

つまり、中国が削減するのは旧式装備の陸軍の一部と、非戦闘員の事務職などにすぎないわけです。 

新華社は軍事パレードについての論評について、習の政治的意図をこう解説しています。

「改革のプロセスに抵抗する『特殊利益集団』である軍の構造に揺さぶりを与え、利益を調整する処置が既に動き出している。軍のオーバーホールは後戻りできない段階に入った」
中国海軍は役割拡大を求めているが、『陸を海より重視する』との伝統的な考え方を変更することについて、海空に対して優位を享受してきた陸軍の軍人からの厳しい抵抗に直面している
 

ね、わかってきましたね。

習がしようとしているのは、楊宇軍報道官が言うような、「国際的な武器管理と軍縮を進展させようとする」ようなキレイゴトではなく、陸軍をスリム化して、その余剰になった予算を「中国海軍の役割拡大」に回すことなのです。

海洋膨張とアジア全域の海の覇権を目指す中国が、海軍と弾道ミサイルに予算を回すために、今、使い道がなくなった巨大陸軍を削減して、覇権拡大の尖兵になっている海軍と空軍に予算を回すということです。

そしてもうひとつの習の政治的意図も絡んでいます。それは目障りな反習一派を軍から追放することです。

そのために、「特殊利権集団」と化した人民解放軍の反腐敗摘発をさらに進め、反習派を一掃し、習の権力を軍内部まで浸透させることです。

Photo_5(写真 元党中央軍事委員会(軍委)副主席郭伯雄将軍)

この習の政治的意図を裏付けるように、軍事パレード前夜、党中央軍事委員会副主席郭伯雄将軍が検査対象として拘束された、との報道がありました。

このポストは、人民解放軍制服組の最高のポストです。

共産党軍事委というポスト自体が、自由主義国には存在しないので、比較がむずかしいのですが、軍人による国防大臣のようなものだと思えば、そう遠くないかもしれません。

このポストは既に同じ軍委副主席であった徐才厚が逮捕され、病死したと伝えられています。

000037(写真 逮捕された徐才厚。薄熙来、周永康とも関係があった)

また習は、軍に対して贅沢禁止、規律強化の名目で、2015年2月には、「全軍財務工作大清査」を指示しています。

これは、軍を対象とした全面監査、会計検査で、2013年度と2014年度の2年度分の領収書を全部出させて、会計検査をするというものです。

自衛隊なら、別に驚くことではありませんが、人民解放軍はホテルや貿易会社まで経営するような巨大企業集団な上に、階級を金で買うという習慣が定着していました。

そんな腐敗の温床である軍に、まともな帳簿なんかあるわけがないのを知り尽くした上で、習は出せと命令したわけです。

こんな「不正なプール金の有無」「内部接待の状況把握」「予算外慶すの管理状況」を調べ上げれば、一体どうなる結果になるかは、中坊でもわかります。

かくて習は、反習派を腐敗分子として逮捕追放し、自分の息のかかった幹部と大量に入れ換えて、軍の粛清を完了するのです。

このような中国の海洋へと向う覇権主義と、醜悪な軍の内部事情にひとこともふれずに朝日は、「中国、軍縮。覇権唱えず」と報じたわけです。

「覇権を唱えず」ですか、こリゃおもしろい冗談です。ただし、笑えないのがちょっと残念ですが。

 

 

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尖閣海域 中国海軍射撃管制レーダー照射事件詳細

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中国海軍射撃用レーダー照射事件について、昨日発売の「週刊文春」2月21日号に麻生幾氏の記事「中国からの宣戦布告」に詳細な事実関係が載っておりましたので、参考のため事実関係のみ要約して転載させていただきます。

麻生氏は作家ですが、取材力には定評かあり、情報の確度は高いと思われます。公式の発表か未だなされていない段階では最良のものと思われます。

いうまでもなく、このような二国間武力紛争に発展しかねない事件においては、事実関係の客観的確認が重要であり、中国側は我が国の対応に対して「捏造」とまで言う以上、それにふさわしい客観的な事実と証拠を開示する必要があります。

なお記事中にはない資料もつけ加えてあります。私のコメントは後日とさせていただきます。

■[1月19日自衛艦「おおなみ」搭載SH-60Kに対する射撃用レーダー照射事件 

時間  2013年1月19日午後5時頃
場所  日本と中国の排他的経済水域中間線付近・尖閣諸島から北へ約百数十キロ地点の公海
 

・概要 中国海軍ジャンカイ1級フリゲート「温州(ウェンジョウ」(艦番号526)から、警戒監視を続けていた自衛艦「おおなみ」(横須賀)から発進した対潜ヘリSH-60Kに対して射撃管制レーダーが照射された。

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事実関係時系列

①中国フリゲートは、主に東シナ海を担当海域とする東海艦隊(浙江省寧波※1)の所属。 

②照射時間は約10分というきわめて長い連続照射。(※旧ソ連艦のケースでは数秒) 

③射撃管制レーダーの照射は、「ロックオン」(※2)と呼ばれる戦闘行為と国際ルールでは見なされる。

④SH-60Kは急降下して、海面すれすれに飛行してロックオンを外そうと回避飛行した。
 

⑤SH-60Kから「おおなみ」を経由して、横須賀自衛艦隊司令部に至急報。艦隊司令部から市ヶ谷海上幕僚監部へ第一報。 

⑥海幕から「おおなみ」に、「本当に射撃管制レーダーなのか、証拠は保全されているか」などと問い返し。 

⑦ヘリなためレーダー照射のデジタルデータは採れていなかった 

⑧午後8時。小野寺防衛大臣に防衛省から報告。証拠保全がなされていないために「調査中」として提出した。 

⑨小野寺大臣は公表を考慮したが、調査中とあったため「事柄の性質上、重大な影響を与えることなので、精査して慎重な分析して下さい」と返答した。 

■[1月30日自衛艦「ゆうだち」に対する射撃管制用レーダー照射事件 

時間  2013年1月30日早朝から10時頃
場所  日中中間線日本側公海上海域
 

・概要 中国海軍ジャンウェイⅡ級「連雲港」から、自衛艦「ゆうだち」が主砲用射撃管制レーダーの照射を受けた。

事実関係時系列

①公海上を東方向に航行中の自衛艦「ゆうだち」に対して、左斜め前方100数十キロから相対する態勢(※)で中国海軍ジャンウェイⅡ級(東海艦隊所属・艦番号522)フリゲートの「連雲港」が接近した。(※反航態勢と呼ぶ)

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            (写真週刊オブイェクトより転載いたしました。ありがとうございます。)

反航態勢のまま中国艦は、自衛艦から1.8マイル(約3㎞弱)まで接近

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  (図 週刊新潮2月21日号より転載しました。ありがとうございます。) 

③「ゆうだち」ブリッジ(艦橋)幹部と航海科員たちは双眼鏡で「射撃管制方位盤」を監視。 

④午前10時頃。中国艦の各種レーダー類(※3)のうち343GA型火器管制レーダー(速射砲、対艦ミサイル用 上写真2にあたる・)が旋回し、「ゆうだち」に指向。 

⑤「ゆうだち」CIC(戦闘指揮情報センター)に、「プゥープゥープゥー」という強烈に耳障りな警報音が鳴り響く。 

⑥CICのESM員(電波探知分析装置オペレーター)が、近距離から照射される高周波の強力な射撃管制レーダー波を探知し、「ESM探知!フリゲート艦の射撃管制レーダーらしい、距離近い!」と哨戒長へ報告。 

⑦ESM員によって、この射撃管制レーダーの探知方位、周波数、パルス繰り返し周波数などがハードディスクに保存される。 

⑧データーベースから、中国フリゲート艦の主砲(ロシア製100㎜)管制レーダーI(アイ)バンドと判明。ちなみに、ジャンウェイⅡ級の武器システムはロシア、イタリア、フランスからの調達品のため、識別は容易だそう。) 

⑨CICから横須賀自衛艦司令部運用総括幕僚へ「速報第一報」を衛星通信で発信。 

⑩艦長、艦内放送で「我、中国海軍フリゲートの射撃管制レーダーに補足された。艦内、情報収集態勢を強化せよ」と放送。 

⑪航海科員、船務科員が双眼鏡やスケッチ、ビデオ撮影、カメラ撮影などで証拠保全 

⑫艦長から「100㎜主砲の旋回位置は定位置にあるのか、確認せよ」の指示。 

⑬艦橋見張り員から、「フリゲートの主砲と機関砲用方位盤はストーポジション(定位置)であり、本艦に指向していない」との報告。中国艦がレーダーと主砲を自動にしておらず、レーダーのみで自動追尾していることが判明。 

⑭中国艦の射撃管制レーダーの照射は約3分間継続。強力な指向性エネルギー波のために自衛艦側に健康被害の可能性すら出る。

⑮艦長「両舷停止、面舵一杯」を命じて回避行動に移る。

⑯精密なデーター分析の結果、小野寺大臣に報告書が上がったのが6日後の2月5日。小野寺大臣公表。

以上、事実関係のみ要約いたしました。

ジャンカイⅠ型 
http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/054%b7%bf%a5%d5%a5%ea%a5%b2%a5%a4%a5%c8%a1%ca%a5%b8%a5%e3%a5%f3%a5%ab%a5%a4I%b7%bf/%b9%be%b3%aeI%b7%bf%a1%cb                                            

ジャンウェイⅡ型
http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/053H3%b7%bf%a5%d5%a5%ea%a5%b2%a5%a4%a5%c8%a1%ca%a5%b8%a5%e3%a5%f3%a5%a6%a5%a7%a5%a4II%b7%bf/%b9%be%b1%d2II%b7%bf%a1%cb

※1東海艦隊(とうかいかんたい)は、1949年4月23日に結成された中華人民共和国初の海軍部隊で、中国人民解放軍海軍3大艦隊の一つ。司令部を浙江省寧波に移した。旗艦は潜水艦救難艦302祟明島。主な任務は台湾海峡連雲港より南の東シナ海黄海の防衛。
東海艦隊東シナ海方面)基地:寧波基地(司令部)、上海基地、舟山基地、福州基地
旗艦:J302崇明島

wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E8%89%A6%E9%9A%8A

※2 ロックオン・追尾状態。射撃統制装置やミサイルに内蔵する目標追尾機構が目標をセットし、射距離・方位角・高低角を自動的に追跡する状態にすること。

※3 中国海軍ジャンウェイⅡ級レーダー類
1.345型火器管制レーダー(対空ミサイル用)
2.343GA型火器管制レーダー(速射砲、対艦ミサイル用)
3.360型警戒捜索レーダー(対水上、低空用)
4.517型警戒捜索レーダー(長距離対空用)
5.341型火器管制レーダー(機関砲用)

尖閣:中国艦隊が実戦訓練=中国紙日米の離島奪還訓練に対抗か
朝鮮日報2月14日

中国共産党中央軍事委員会の機関紙「解放軍報」は13日、中国・東海艦隊所属の揚陸艦部隊が12日未明、敵機出現を仮想した実戦訓練をしたと報道した。東海艦隊は日本と領有権問題を抱えている東シナ海の尖閣諸島(中国名:釣魚島)を管轄する部隊だ。香港の日刊紙「明報」も同日「中国軍の第2砲兵部隊(核・弾道ミサイル部隊)は東シナ海を目標にミサイル発射訓練を行った」と報じた。中国軍のこうした動きは、米海兵隊と日本の自衛隊が9日、米国カリフォルニア州で合同で離島奪還訓練を実施したことへの対抗措置とみられる。日米は、今回の訓練は「第三国」(中国)を狙ったものではないとしているが、中国は尖閣諸島を想定しているものと考えている。

 同日の解放軍報によると、東海艦隊所属の揚陸艦が有事に備え監視任務に当たっている際、敵機2機が突然現れたことを想定、これらに向かって艦砲で対応するという実戦訓練を行ったという。軍の機関紙が揚陸艦訓練をしたと公表したのは、有事の際に尖閣諸島に上陸する可能性を示唆するためとみられる。 

 また、明報は解放軍報を引用「『江南群山の奥深く』で第2砲兵部隊がミサイルの迅速発射訓練を行った。部隊の隊員は命令に迅速に対応するため服を着て寝ており、組に分かれ24時間当直をした」と報じた。明報は同部隊が江西省にあるものと推定、東シナ海を目標とした巡航ミサイル部隊だとの見方を示している。この部隊は「空母キラー」と呼ばれる新型巡航ミサイル「長剣」を保有しているとのことだ。

■写真 厚い雲間から漏れる朝日の中を飛翔する。

■明日は週末写真館です

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中国軍レーダー照射事件 政府はなぜ今公表に踏み切ったか

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中国軍の戦争誘発行為について続けます。

中国の言い分の変化を追ってみましょう。 外交部の会見です。

6日会見・・・「(質問から5秒の沈黙の後に)レーダー照射は報道で知った」(資料1参照)

7日会見・・・「日本側が危機をあおり、中国のイメージを落としめている」

8日会見・・・「日本の言い分はねつ造」、「日本側は危機を故意に騒ぎ立て、緊張状態を作り出し、中国のイメージに泥を塗るようなことをしている。中国側が強硬姿勢を示しているのではなく、日本側が挑発している。」
「日本側は中国の脅威を誇張して緊張を作り出し、国際世論を間違った方向に導いている」「中国側は対話と協議を通じて問題を解決しようと努力してきたが、日本は多くの船や航空機を出動させる行動をエスカレートさせている」
「最近、日本は危機を煽り、緊張を作り出し、中国のイメージの貶めを図ろうとしている。このやり方は日中関係改善の努力に反する」(資料2参照)

8日国防部談話・・・「中国側に事実の確認をしないで、一方的に虚偽の状況を発表し、日本政府の高官が無責任な発言で『中国の脅威』を誇張し、緊張した雰囲気を作り出し、国際世論を誤った方向に導いている。」(資料3参照)

中国政府準機関紙 環球時報・・・「レーダー照射は日本の自作自演で茶番だ、右傾化したヤクザの政治に中国は警戒せよ」(資料5参照)

まず外交部が知らなかったのは、驚くに値しません。外交部は中国で格下官庁でしかないからで、事前に軍部からなにか相談にあずかることはあまりないようです。

「捏造」だの「緊張を煽る」だのと、我が国を批判していますが、ロシアがどのように見ているのか紹介しておきます。

ちなみにロシアは北方領土の日にも戦闘機2機で領空侵犯していますが、ミサイル類を搭載しない状態で飛行するていどの自制心は兼ね備えています。

もちろん、今までさんざん領空侵犯してきましたが、射撃照準レーダーの照射などという、一歩間違えば戦争になるような行為は謹んできています。

「もし2隻の船を2人の兵士になぞらえるなら、レーダーによる標的の捕捉とそれに付随する行為は、弾丸の入ったライフル銃を敵に向け照準を合わせるに等しい。そうした条件においては、挑発者自身により偶然引き金が弾かれる可能性もないわけではないし、標的とされた側の船の乗組員が、生命の危険を感じて衝動的に危険な行為に出る事もあり得る。」

「以前も中国人民解放軍が威嚇のため、そうした行為をしてきたことはよく知られている。」

「はっきりしているのは、中国が、領土問題における行動方針を変え、相手の強さを試す事にしたということだ。」(ボイス・オブ・ロシア・資料9参照)

さて、8日に中国国防部は、あれは「艦載レーダーで通常の警戒に当たった」としています。 外交部ではなく、当事者の国防部ですから、これがほんとうの中国政府のコメントだと思えます。

子供だましです。艦船や軍用機にはレーダー警戒装置(ESM)が搭載されています。自衛艦ならばもっともよく受信てきるマストの頂上に設置してあります。

相手の艦船や航空機が射撃のために火器管制レーダー波を発信すると、それを受信し、警告を発して、自動的に記録するようになっています。

この装置により、相手が発したレーダーの種類、照射方向、信号源からの距離、敵が捜索中か、ロックオン(照準)しているかという状態が判別ができます。

通常の航海用レーダーは、漁船や商船の上でクルクルと旋回しているのですが、射撃管制用レーダーは、射撃対象に指向して追尾しますので一目で分かります。

もちろん自衛艦を指向している中国側フリゲートの射撃管制レーダーの映像は、海自に撮影されていますから、小野寺大臣が言うように近く国際社会に提出されるでしょう。(資料6参照)

当然ですが、照準用レーダーは、気象用レーダーや、航海用レーダーとはまったく違った周波数帯で照射されています。これも記録されていますが、探知能力がわかるので、全面公開されるかどうか不明です。

さらに、この行為は「西大西洋海軍シンポジウム」が作った「紳士協定」(CUES・Code for Unalerted  Encounters at Sea)にも違反しています。

これは日本、中国、米国、韓国のほか、ロシアやASEANの海洋国家が参加するもので、CUESは、平時において、不測の事態を避けるための行動基準を定めています。

この中で、レーダー照射は以下のように禁止されています。
[PDF]  Code for Unalerted Encounters at Sea (CUES) | Western Pacific Naval Symposium 2012
Assurance Measures for Ships

3.14.1 Simulation of attacks by aiming guns, missiles, fire control radars, torpedo tubes or other weapons in the direction of vessels or aircraft encountered..

残念ながら、「一部の国の反対で」採択には至っていませんでした。

この「一部の国」がどこかは不明ですが、今回の行為をみれば自ずと明らかでしょう。 しかし、西太平洋のほぼすべての海軍で偶発的戦争に到らないような認識が共有されていることに注目すべきです。

人民日報下にある「環球時報」は、韓国が北朝鮮に対して威嚇行為をしたことで今回の中国側の行動を合理化しようとしています。

つまり、「艦の行動を妨害する相手に対して、砲塔を向けて狙いをつけたり、射撃管制用レーダーを照射して警告するのは国際的な慣例だ」と言いたいわけですが、北朝鮮と韓国は未だ朝鮮戦争が終結していない休戦状態の準交戦国関係にあります。

果たして我が国と中国は現在「準交戦国」関係なのでしょうか?

環球時報の言う通りなら、中国は我が国と準交戦国関係だと認識して、あるいはそのような関係にするべく軍事的威嚇を行ったことになります。語るに落ちたとはこのことです。

我が国が着々と証拠を整え、国際社会に対して働きかけているにもかかわらず、このような理屈にもならないことを言うこと自体が、中国の混乱を物語っています。

さて、続々と追加情報が上がってきていますので、わかっているものだけでも整理しておきます。

2005年・海自P3Cに対するレーダー照射。政府衆院安保委での答弁。
「航空機に対して当然中国艦艇は対空レーダーを用いて照準を合わせる。それに対して自動的に探知するESMという装置があって、これで照準が合わされたかどうかということについてはわかるようなっている。」
※第3次小泉内閣時 官房長官・安陪現首相

2010年4月・民主党政権時代・海自P3Cに艦載砲の照準を合わせた。同時にレーダー照射もあったと思われる。
※民主党鳩山首相 仙谷氏官房長官
コメントなし。

・BSフジ6日、元海幕長古庄幸一氏、「中国は、レーダー照射しても日本政府が公表すると思わなかった。なぜかと言えば、いままで3年間は公表してなかったからだ」
※ただし古庄氏退任後の事件であって未確認情報だが、ほんとうならば民主党政権は一貫して隠蔽したことになる。

2012年9月以前・レーダー照射事件
※野田前首相は否定。未確認。

2013年1月19日・海自「おおなみ」搭載ヘリにレーダー照射・

同年1月30日・海自「ゆうだち」にレーダー照射。
※この射撃用レーダーは搭載砲のものであるが、砲自体は動いていない。

このようにほとんど日常的に中国艦艇は日本側にレーダー照射をしており、「気軽に」攻撃の意志があるとなしに関わらず、戦争挑発行為を行っていたのです。

安倍-石破両氏は、常態化した尖閣周辺空海域の緊迫した状況を、政権奪還前から知り得ていたはずです。

なにせ、安陪首相は2005年の小泉内閣時代のレーダー照射事件時の官房長官だったのですから。

第2次安倍政権以前、特に民主党政権期に中国海軍、海監(中国海保)の艦艇は自由に領海侵犯し、気ままに射撃管制レーダーを照射しては威嚇を続けていても日本側は耐え忍ぶしかないという状態が既成事実化しかけていました。

目的のためには、執拗に軍事威嚇を積み上げていき、我が国に「領土問題」を認めさせて、交渉テーブルに追い込むか、あるいは、「最初の一発」を耐えかねた日本側に発射させることで一気に軍事的結着を図るということが、中国側のシナリオでした。

中国側はこの長期間(おそらくは3年以上)の侵犯行為を蓄積していき、日本側が慣れっこになって諦めるか、激昂して先に手を出してくる事態を狙っていました。

そしてそれは8分通り目論見が完成し、あとは昭和12年7月7日の「盧溝橋」を再現すれば中国側の大手でした。

我が国はそれに乗らず、言い訳の聞かない証拠を固めていき、武力を使うことなく一気に攻勢に転じました。

安倍首相が、今回5日に公表に踏み切ったのは、国際世論を味方につけるためです。

そして、今月末に予定されているオバマ大統領との会談に、この中国の横暴を議題に乗せることで日米同盟関係を固めて、中国と対抗することでした。

この時期を選んだのは、衆院予算委員会が7日から始まる時期にあたって、もっとも政府から情報発信がしやすい時期だったからでしょう。

その意図は見事に当たり、パネッタ米国防長官の強い中国批判を引き出しました。(資料7参照)

米国にはレーダー照射という戦闘行為を中国から挑まれたのにも関わらず、よく日本側は自制したという世論が生まれています。

中国軍部にしてみればいままでやりたい放題にしてきた武力威嚇が、いきなり国際社会の批判を浴びてしまったことに対する混乱が生まれています。(資料8参照)

中国は最大の年中行事の春節に入りました。この期間、対外的な動きは停止します。(※昨日複数の中国海監艦艇が接続海域を航行した。また航空機も複数が飛行した。)

そして以後中国軍が同じことを繰り返せば、それは確信犯的な武力行為であると知ってのことになります。

今後の中国の動きを冷静に注視せねばなりません。

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 中国外務省“レーダー照射は報道で知った”
NHK 2月6日

中国海軍のフリゲート艦が先月、東シナ海で海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射したことについて、中国外務省の報道官は「報道によって初めて知った」と述べ、外務省としては、事実関係について直接、知らなかったという立場を示しました。

中国外務省の華春瑩報道官は6日の定例記者会見で、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射したことについて「自分も報道を見たが、具体的には分からない。中国の関係部門に聞いてほしい」と述べました。

さらに、「中国外務省は、日本側が抗議するまで事実関係を知らなかったという意味なのか」という質問に対しては「そう理解してもらっていい。われわれも報道を通して、初めて関連の情報を知った」と述べました。

今回のレーダーの照射は、中国の政府や軍のどのレベルでの判断によるものなのか分かっていませんが、6日の華報道官の発言で中国政府全体としての行動ではなかったことは明らかになりました。

今後は、軍のトップでもある習近平総書記など指導者の指示によるものだったのかどうかなどが焦点になるとみられます。

■資料2 中国外務省“日本の言い分はねつ造”
NHK 2月8日

中国海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射した問題について、中国外務省の華春瑩報道官は8日の定例の記者会見で、「中国の関係部門がすでに事の真相を公表している。日本側の言い分は完全なねつ造だ」と述べ、強く反論しました。

さらに、「中国側は対話と協議を通じて両国が直面する問題を解決しようと努力してきたが、日本は過ちを正すどころか、多くの船や航空機を出動させ、中国の主権を損なう行動をますますエスカレートさせている」と主張しました。

そのうえで、華報道官は、「日本がこのようなことをするのはいったい何のためなのか問わずにはいられない。われわれも強い警戒を続けざるをえない」と述べました。中国外務省は、問題が発表された翌日、6日の会見では、事実関係について知らなかったという立場を示していました。

しかし、7日、「日本側が危機をあおり、中国のイメージを落としめている」と述べるなど、日本への反発を次第に強めています。

また、先月19日は、中国海軍の艦艇が通常の訓練を実施していたところ、自衛隊のヘリコプターが接近してきたため、艦載レーダーで警戒を行ったとしています。

そのうえで、いずれについても、「射撃管制レーダーは使用していない」として、「日本側の言っていることは事実と異なる」としています。

さらに、国防省の談話は、「中国側に事実の確認をしないで、一方的に虚偽の状況を発表し、日本政府の高官が無責任な発言で『中国の脅威』を誇張し、緊張した雰囲気を作り出し、国際世論を誤った方向に導いている」として、強く反発しています。

この問題を巡り、中国政府が正式な談話を発表するのは初めてです。
中国政府は、問題が発表された翌日の6日には、事実関係については知らないとしていましたが、7日、外務省の報道官が「日本側が危機をあおり、中国のイメージを落としめている」と述べ、日本への反発を強めています。

■資料3 中国国防部ウェッブサイト中国版 2013年2月7日Photo

日本艦、機の近距離追跡、監視こそが日中の海空安全問題の根源である

日本防衛相が中国海軍艦艇が射撃管制用レーダーをで日本自衛隊艦艇、機に照準をつけたと指摘したという日本メディアの報道に対して、中国国防部ニュース事務局は以下のとおり説明する。

1月19日午後4時頃、中国海軍の護衛艦1隻が東シナ海関連海域で定期訓練を実施していたところ、日本自衛隊の艦載ヘリによる中国側艦艇への接近を発見した。中国側の艦載レーダーは正常な観察、警戒を続けたが、射撃管制用レーダーは使用していない。

1月30日9時頃、中国海軍艦艇が東シナ海の関連海域で定期訓練任務を実施していたところ、日本駆逐艦・ゆうだちが中国側艦艇の付近で近距離の追跡、監視を続けていることを発見した。

中国側艦載レーダーは正常な観察、警戒を続けたが、射撃管制用レーダーは使用していない。日本側の、いわゆる中国海軍艦艇が射撃管制用レーダーで日本側の艦艇・機体に照準を合わせたという主張は事実に合致しない。

指摘する必要があるのは、近年、日本側の艦艇、機体はしばしば中国海軍の艦艇、機体に対して長時間の近距離からの追跡、監視を続けていることである。これこそが日中の海空安全問題の根源である。中国側は何度も日本側に交渉を申し入れた。

先日来、日本側は事実を歪曲し、中国軍の正常な戦闘訓練活動をあしざまに描く、事実に合致しない言論を流布している。今回もまた中国側に事実を確認しない状況で、一方的にメディアに虚偽の状況を公表した。日本政府高官の無責任な言論、“中国脅威”論の喧伝、緊張ムードの造成、国際世論のミスリード。

これらの動向は警戒、熟考に値するものである。中国側は日本側は真摯に有効な措置を取り、東シナ海の緊張ムードを作り出す行為をやめ、無責任な言論を二度と発表することのないよう希望するものである。
http://news.mod.gov.cn/headlines/2013-02/08/content_4432510.htm

■資料4 レーダー照射は日本の自作自演で茶番だ、右傾化したヤクザの政治に中国は警戒せよ
環球時報 2月7日

敵対的な尾行および航行妨害を行う相手側の艦艇に対して、海軍艦艇が警告を行うことは国際的な慣例である。

一般的に、A側の艦艇がB側の艦艇の航行に実質的な脅威を与えた場合、もしくはその安全に深刻な影響を及した場合、
B側の艦艇は無線連絡により相手国に対して間違った行動をとらないよう口頭の警告を行う。口頭の警告に効果がなかった場合、 B側の艦艇は艦砲を向けることにより、A側の艦艇の措置に対して警告を行う。当然ながら、火器管制レーダー照射により、 A側の艦艇の措置に対して警告を行うことも可能だ。最後に、B側の艦艇は艦砲による威嚇射撃により、警告を行うことが可能だ。

このような事件には先例がある。2002年11月、朝鮮の海軍巡視船が白?島の北3.5海里の海面で、北方警戒線を1.5海里越境した。
韓国海軍の5隻の海軍艦艇が出動し、そのうち1隻の韓国艦艇が2度に渡り威嚇射撃を行った。朝鮮の巡視船は反撃せず、Uターンし撤退した。

中日の今回の事件において、日本側は双方の艦艇の距離がわずか3キロに接近したと称した。これは対艦ミサイルの近距離射撃を行うため限界とされる距離を大きく下回っており、
対艦ミサイルの発射は想像しがたい。日本側は、中国側が対艦ミサイルの火器管制レーダーにより照射を行なったとしたが、これは日本側に良からぬ了見があるのではないかと疑わざるをえない。
これはまた、中国艦のレーダー信号に関する日本側のデータ不足を反映している可能性がある。これにより、中国艦の行動に対する日本側の判断ミス、もしくは判断の遅れが生じる可能性がある。

海上自衛隊の「盗人が他人を盗人呼ばわりする」茶番は、これが初めてのことではない。2010年4月、日本側は中国海軍の駆逐艦の速射砲が、 中国の艦隊を尾行していた日本のP-3C哨戒機に照準を合わせたと称した。しかし実際には、日本のP-3Cはいわゆる「防空識別圏」を目標確認の口実とし、中国艦に対して超低空尾行および挑発を行なっている。中国側も必要な措置を講じ、これに対して警告を行わざるをえない。

日本側は今回の「レーダー照射」事件の中で、当時の中日間に摩擦が生じていたという背景を発表せず、 また当時の双方の艦艇の航行に関する情報を提供しなかった。これはあたかも、当時の日本の理不尽さを故意に隠しているかのようだ。
しかしながら、日本側は断固否定するか、理非曲直をわざと曖昧にし、逆に中国を非難し、中国海軍の艦艇が「極めて珍しい行動」をとったと称した。

これは完全に日本の自作自演の茶番であり、その裏側には釣魚島(日本名:尖閣諸島)問題をヒートアップさせ、 安倍首相の訪米前の下準備をしようとする日本の意図が隠されている。日本はまた国際社会において、「いじめられている」ふりをしようとしている。

このような「理不尽でも三分の理を求める」という外交戦術は、まさに典型的な「日本の右傾化したヤクザの政治」であり、 日本の中国に対する欺瞞に満ちた外交的常套手段である。これに対して中国は警戒心を高め続ける必要がある。
■資料5 政府、レーダー情報の開示検討=防衛相「証拠持っている」―中国公船の動きは沈静化
時事通信 2月9日
中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダーの照射に関し、日本政府は護衛艦が捕捉した電波データや撮影した画像などの一部開示に向け、検討に入った。中国政府が日本側の発表を「完全な捏造(ねつぞう)」と全面否定したことを受け、レーダー照射の事実を裏付ける証拠を国際社会に示す必要があると判断した。
 小野寺五典防衛相は9日午前、都内で記者団に「証拠はしっかり持っている。政府内で今(どこまで開示できるか)検討している」と表明。「防衛上の秘密にも当たる内容なので慎重に考えていきたい」とも語った。
 防衛省内には「自衛隊の解析能力を相手に教えることになる」として、開示に否定的な意見が強い。このため日本政府は、中国側の今後の出方も見極めながら、外務・防衛両省を中心に、公開できる情報の範囲を慎重に検討する方針だ。
 中国側は、軍艦が照射したのは通常の監視レーダーで、射撃用の火器管制レーダーではないと主張している。これに関し、防衛相は「通常のレーダーはくるくる回って警戒監視をするが、火器管制レーダーはその(目標の)方向に向けてずっと追いかける」と指摘。
その上で「私どもは相手の船のどのレーダーが火器管制レーダーか分かっている。それが一定期間ずっとわが方の船を追いかけていた証拠がある」と語った。
 さらに、火器管制レーダーについて「電波を発する機械で、しかも(周波数などが)特殊なレーダーだ。それもしっかり記録しており、証拠として間違いない」と強調した。
 一方、防衛相は9日午前の読売テレビ番組で、東シナ海での中国の動向に関し、「(レーダー照射を)公表した5日以降、尖閣(諸島)周辺の中国公船の動きは収まっている」と述べ、中国軍などの日本に対する挑発行為が沈静化していることを明らかにした。
■資料7 読売新聞2月7日
パネッタ長官の講演はワシントンのジョージタウン大で行われ、長官は尖閣問題に関し、
「他国を脅かし、領土を追い求め、紛争を生み出す中国にはなるべきではない」と述べ、
中国を名指しで批判した。

レーダー照射などの挑発行為については、「領有権の主張が制御不能となり、 より大きな危機を招く可能性がある」として強い懸念を表明した。

こうした米政府の懸念を日中両政府に伝えたことも明らかにした。

長官はまた、北朝鮮の核・ミサイル開発など北東アジアの課題に対応するため、 同盟国である日本、韓国との連携が重要だと指摘。

中国に対し、「日米韓3国に対抗するのではなく、共に地域の繁栄のために 努力するべきだ」と訴えた。
■資料8 中国軍の挑発沈静化 日本政府、「軍独断」の見方
産経新聞 .2月.9日

政府が5日に中国海軍艦艇の射撃管制用レーダー照射を発表して以降東シナ海での中国軍の挑発が沈静化していることが8日、分かった。フリゲート艦は沖縄県・尖閣諸島の北方海域に展開しているものの動きは小さく、連日続いていた戦闘機などの領空接近は途絶えた。

中国共産党指導部が挑発を自粛するよう指示したためとみられ、政府は照射が「軍の独断」だったとの見方を強めている。

東シナ海上空では昨年9月以降、中国海軍のY8哨戒機とY8情報収集機が日本領空に連日接近。12月からはY8を護衛する形で空軍戦闘機J10も近づき始めた。緊急発進(スクランブル)する航空自衛隊のF15戦闘機や警戒監視中の海上自衛隊P3C哨戒機などが入り乱れ、偶発的な衝突が懸念されていた。

政府高官は「年末から一触即発の状態が続いていたが、6日以降は驚くほど静かになった」と指摘。別の高官も「フリゲート艦を尖閣北方から後退させることはないが、この3日間の領空接近は皆無だ」と語る。

レーダー照射では、党指導部の指示か、軍の現場の独断だったかが焦点。防衛省幹部は「指導部の指示であれば照射を即座に正当化した上で、反発のメッセージとして別の形で挑発に出る準備をしていたはずだ」と分析する。

逆に、挑発が沈静化したことで、国際社会の批判を恐れた指導部が慌てて挑発の自粛を軍に命じたとの指摘が多い。パネッタ米国防長官も中国に自制を求めており、政府の積極的な公表が中国軍の挑発を封じる上で奏功したといえる。

中国では今月10日に春節(旧正月)を迎え、政府は祝賀ムードの中で軍が挑発を再開させるかにも注目している。仮に挑発に出てくれば、今度は指導部の指示であることは明白だ。
資料9 ザ・ボイス・オブ・ロシア
http://japanese.ruvr.ru/2013_02_08/104048660/

ロシアの国防問題専門家に聞く「レーダー照射は外交政策の手段となる

中国政府は、中国海軍の艦船が、東シナ海で日本の海上自衛隊の護衛艦に対し火器管制レーダーを照射したとの日本側の非難を斥けた。これについては、中国国防省の声明の中で述べられている。一方、分析専門家らは「そうした事はやはりあった」と見ている。VOR記者は国防問題のエキスパートであるワシーリイ・カーシン氏に、意見を聞いた。以下、氏の見解をまとめて御紹介したい。

中国の053H3型フリゲート艦が日本の海自の護衛艦を標的としてレーダー照射したのは1月30日の事だったが、この行為は、尖閣諸島をめぐる係争海域での中国の行動モデルが取って替わるというテーゼを最終的に確認するものと見なす事ができる。

比較的最近まで、中国は、自国の軍事力を尖閣諸島沖や南シナ海といった係争地区で誇示する事をそもそも避けていた。こうした場所で中国が存在を誇示していたのは、国家海洋局海洋モニタリング部の艦船や航空機、魚類保護や税関の船上の中国旗によってだった。これらの船や飛行機を操縦しているのは軍人ではなく、搭載している武器も原則として偶発的な出来事に備えるためのもので本格的なものではない。

このように中国は、領土的利益を断固主張しながらも、その一方で、軍事力で隣国を威嚇する気持ちがなく、あらゆる努力を傾けて軍事紛争を避けようとしている姿勢を示してきた。

   ところが状況は変化した。まず1月10日、中国は係争地区に北海艦隊の偵察機Y-8を派遣、その後、自分達のパトロール・ゾーンに日本のF-15J戦闘機2機が現れたことに対抗して、同じく2機のJ-10戦闘機をそこに送った。翌日この示威行動に、日本側の情報では「武器を搭載した」ほぼ完全な編隊を組んだ形での爆撃機JH-7/7Aによる尖閣諸島周囲での飛行が加わった

   そして、こうした行動がエスカレートしてゆく次の段階として行われたのが、今回問題になった日本の護衛艦へのレーダー照射だった。火器管制レーダーの照射は、武器を使用する前の最後の措置である。これは、火器管制システムが、標的を攻撃するためのデータを連続して作成している事を意味する。

もし2隻の船を2人の兵士になぞらえるなら、レーダーによる標的の捕捉とそれに付随する行為は、弾丸の入ったライフル銃を敵に向け照準を合わせるに等しい。そうした条件においては、挑発者自身により偶然引き金が弾かれる可能性もないわけではないし、標的とされた側の船の乗組員が、生命の危険を感じて衝動的に危険な行為に出る事もあり得る。

   なお日本側へのレーダー照射は、1月30日が最初ではなかった。1月19日にも中国側は、日本の艦船から飛び立ったパトロール用ヘリコプターにレーダー照射を行った。尖閣諸島海域において日本と中国の艦船は、互いに大変近い距離でパトロール活動を展開している。

   日本の艦船にレーダー照射した053H3型フリゲート艦は、その後「ツャンフー」タイプのフリゲート艦に発展しているもので、1990年代から2000年代初めにかけて建造された。053H3型は、短距離高射ミサイルHQ-7、巡航ミサイルYJ-83、100ミリ砲などのシステムを搭載している。全体的に旧式ではあるが、このタイプのフリゲート艦は、近距離での戦闘ではかなり危険な存在と言える。今回のレーダー照射では、中国と日本の艦船の間の距離は、およそ3千メートルに過ぎなかった。

   中国側は、自国の艦船が日本の護衛艦をレーダー照射した事を否定し、これは中傷であるとし、中国船のすぐ近くで日本が危険な策略をめぐらしていると非難している。しかし、以前も中国人民解放軍が威嚇のため、そうした行為をしてきたことはよく知られている。例えば2001年、中国空軍のスホイ27型機は、台湾海峡上空で台湾のミラージュ戦闘機に対しレーダー照射を行った。また今回の事件の直前、中国の軍事専門家の一部には、レーダー照射をすべきだとの声があったのも事実である。

   はっきりしているのは、中国が、領土問題における行動方針を変え、相手の強さを試す事にしたということだ。近く我々は、中国指導部の目論見が正しかったかどうか、この目で見る事になるだろう。

    以上、ロシアの国防問題のエキスパートであるワシーリイ・カーシン氏の意見を御紹介した。

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19世紀的帝国主義国が燐国にあるという憂鬱

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昨日の記事に追加情報が出ましたので記しておきます。 

情報の出所は朝日新聞ですが、現在なぜかサイト上からは削除されており、魚拓の形で見ることができます。 

これはまちがいなくスクープ記事なのに、朝日新聞はもったいないことをします。 

尖閣国有化前から射撃照準レーダー照射 政府関係者明かす 
朝日新聞2月4日
 

 東シナ海での中国軍による自衛隊への射撃用レーダー照射が、野田政権が昨年9月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化する前にもあったことがわかった。 政府関係者が明らかにした。安倍政権が5日に公表した今年1月下旬の事案以前にも、同じ海域で複数回、照射があったとしている。

 政府関係者によると、1月30日に中国軍艦が海上自衛隊護衛艦に火器管制用レーダーを照射したのは尖閣諸島の北西百数十キロの公海上。同月19日に海自ヘリコプターへの照射があったとみられるのも同じ海域。防衛省は今回公表したケース以前にも周辺海域で複数回、自衛隊への中国軍のレーダー照射を把握

 今回の「数分間」(防衛省)より長く照射したケースもあるという。日本政府は「日中関係を悪化させる懸念がある」(政府高官)とこれまで公表を避けてきたが、今回は立て続けにレーダー照射されたため、安倍政権が事態を重く見て公表に踏み切った。(後略)」

さて、このニュースの意味することは明解です。 

まず第1に、2012年9月11日の日本政府の国有化以前から、中国軍の戦争誘発行為があったということです。 

したがって、中国政府がなにかにつけて問題とし、反日デモの引き金となった尖閣国有化は、本当はなにも関係がなかったということになります。 

海上保安庁と中国海洋監視機関同士の衝突なら、引き返し可能です。海保はいわば戦争を回避する「知恵」なわけです。

だから、海軍同士の衝突だけは避けようというのが、今までの日中間の最低限の了解事項だったはずです。

ところが、中国は習政権となって、武力による威嚇と恫喝により、日本を交渉テーブルに日本を引きずり出す方針に転換したと思われます。 

これに我が国が屈すれば、外堀は埋められたことになります。意味のない交渉をしつつ、時をうかがって我が国の実行支配を崩せばよいだけです。 

また、中国側から再び「棚上げ論」も出たようですが、これも同類の論理です。

一見日本側にとって飲み込み易いような糖衣が被っていますが、いったん同意したら最後、事実上尖閣に領土問題が存在する、だから係争地であると認めたも同然となってしまいます。

この論理は日本国内でも支持者が多く、現に、丹羽前駐中国大使などは、「外交上の係争はある。ないというのは理解不能だ。」(2012年12月20日)と述べています。

係争地でないものを係争地にして、戦争を誘致しているのですから、とんでもない人を民主党は中国大使に任命したものです。

一方、経団連米倉弘昌会長は、「中国がこれほど問題視しているのに、日本側が問題ないというのは理解しがたい」(2012年9月27日)と,これまた中国政府の代理人のようなことを言っています。この人にとってTPPもそうですが、自社の利益が国益なようです。 

第2に、民主党政府は、「日中関係を悪化させる懸念がある」(朝日新聞同上)として、この公表を握り潰していました。 

一説、親中派の岡田氏が関与したと言われていますが、未確認です。いずれにせよ、この国有化前にレーダー照射が常態化していたという重大情報を、国民にはまったく知らせていなかったことことは言い逃れできないでしょう。 

もっとも、民主党内でも海江田、細野各氏も知らなかったようなので、民主党政権中枢の数人だけで情報は止まっていたようです。

まぁ唯一、野田首相が「領土問題は存在しない」という原則を保ってくれたことだけで、首の皮一枚で救われましたが。

このような政権引き継ぎを受けた自民党政権も、さぞかしびっくりしたことだと思います。そこで、公表の機会を考えているうちに立て続けに再び三度の照射事件が起きてしまったようです。

別の未確認情報によれば、安陪政権は19日、30日の事件における中国艦と自衛艦の速度と位置、射撃管制レーダーの周波数などを、当時近くを飛行中だったP3Cの情報も含めて徹底的に分析して、国際社会にいつでも提出できるまでに精査していたそうです。そのめどが出て公表に踏み切ったと言われています。 

ところで現在の日中関係は、日中戦争の前夜に似ている指摘する人もいます。中央の意志を背景にして、現場が暴走を繰り返し、それを制止する仕組みが内在的に中国にないために、偶発的に戦争が開始される危険があります。 

現在中国のゴールデンタイムのテレビ番組の多くは抗日戦争ドラマです。

「中国紙、重慶晩報によると昨年、中国全土のテレビ局でゴールデンタイムに放送されたテレビドラマは200本余りで、うち70本以上は日本軍との戦争や日本人スパイとの暗闘がテーマだった。浙江省東陽市には当時の町並みを再現した抗日ドラマの撮影基地があり、13年1月末現在、9本が撮影中だという。」(産経新聞2月4日)

中国の子供たちは、「小東洋鬼」がバタバタと殺されるのを見て喝采を叫んでいるようで、まったく憂鬱になります。このように中国政府は意識的に戦争の機運を煽っています。

昨年の反日デモなど、中国人が清王朝末期の義和団の乱から一歩も進化していないことを見せつけられました。

政権は、国内矛盾を逸らすために阿Qたちを煽って外国にけしかけて暴動を起こす・・・。

1月26日付ワシントン・ポスト紙はこう述べています。

「中国の国家管理下にあるメディアは、戦争にかられた熱病のような状況をかき立ててきている。その一紙は、軍事衝突は「可能性が高い」とし、「最悪の事態に備える必要がある」とうたいあげた。不穏なことに、この挑発的かつ危険なキャンペーンは、習近平指導下の新しい共産党指導者によって、国内問題から関心をそらすという十分な動機をもって、監督されているのである。」(finalvent氏訳による。ありがとうございました。) 

戦争の始まりというのはこのような熱病じみた憎悪から芽生えるのでしょうか。その狂気を政府が意図的に煽っているのですからなんとも救いがありません。

昨年の11月29日のことですが、クリントン国務長官(当時)が、ワシントン市内で講演された際の質疑応答の中で、「過去に南シナ海の領有権問題を中国と協議した際、中国側が「我々はハワイの領有権を主張することもできる」と発言したそうです。

彼女は即座に、「やってみてください。われわれは仲裁機関で領有権を証明する。これこそあなた方に求める対応だ」と応じたという事です。
そういえば、ハワイをめぐっては、太平洋軍のキーティング司令官(当時)が2007年5月に訪中した際、中国海軍幹部からハワイより東を米軍、西を中国海軍が管理しようと持ちかけられたと議会で証言したこともありました。
長官はジョークと受け流したそうですが、「冗談めかした本音」だったようです。 
白髪三千丈の国の言うことだからと気をとりなおしてみるのですが、ここは自分の領土、あそこも自分の領土と言う19世紀的帝国主義国家と「領有権争い」をしている不気味さはたまらないものがあります。

ただ気休めは、かつてと違って我が国がいったって冷静なことです。

私たちは、石破幹事長が言うとおり、「いかなる挑発的な行為が行われても、我々はそれに乗ることはない」(2月4日)決意が必要です。

あの黙っていれば、際限なく膨張しようとする中華帝国の毒消しにはそれしかないようです。

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中国海軍、戦争誘発事件を解く

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今回の中国海軍による射撃管制レーダー(FC)の照射は攻撃を前提としたもので、通常の国際ルールにおいては単なる威嚇や挑発ではなく「戦争行為」そのものとみなされます。 

いわば喉頸にナイフをあてがって「切るぞ」とすごむようなものです。

まさに最大級の戦争誘発行為です。中国はこの危険な火遊びに対して、国際社会から最大限の批判を受けるべきです。 

さて私が当初解せなかったのは、その発表の遅れです。 

事実関係を整理します。中国海軍からの射撃管制レーダー照射は2度発生しています。5日の小野寺防衛大臣の発表によれば以下です。(資料1、2参照) 

①「先月19日午後5時ごろにも、東シナ海で、中国海軍のジャンカイ1級フリゲート艦から護衛艦『おおなみ』に搭載されているヘリコプターに射撃管制用のレーダーの照射が疑われる事案があった。」 

②「先月30日午前10時ごろ、東シナ海で、中国海軍のジャンウェイ2級フリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対し、射撃管制用のレーダーを照射した。」

実に、最初の「おおなみ」搭載ヘリに対する照射から18日も経過しています。どうしてこのように発表が遅れたのでしょうか。 

小野寺大臣は、「慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので発表した」と述べましたが、これは信用できません。 

なぜなら、同じ会見で「(照射を受けて)現場に緊張感が走る事態だったと」述べているからです。 

そして「おおなみ」はこの照射を避けるために回避行動をしています。自衛艦の艦長はいつ対艦ミサイルが飛来するかに意識を集中していたはずです。

もし発射されたならば、「おおなみ」は瞬時で大破し、百数十名の隊員が死傷したかもしれません。

この射撃管制レーダーの照射により、「おおなみ」艦内には警報音が響きわたったはずであり、その分析に5日間もかかることはありえません 

この中国艦の照射は数秒ではなく、数分間にも及ぶ長い時間のものといわれていますから、これが射撃管制レーダーであるかどうか「わからなかった」ということになれば、海自の能力さえ疑われることになります。 

ちなみに一秒の何分の1で済むレーダー照射を、延々と数分間続ける所に、中国の「悪意」を感じます。まさに足を踏みつけて、グリグリと擦りつけてなぶるような行為です。

同じことを米海軍にすれば、どのようなことになるか、彼らはわかった上で海自にだけにやっているのです。 まさに卑劣の一語に尽きます。

それはさておき、第1回目の「おおなみ」搭載へりに対しての照射前日18日に、米国でクリントン国務長官が尖閣での中国の挑発に反対するという談話を発表しています。

これは中国を怒らせ、即座に中国は反発する声明を出しています。この翌日19日に起きたのが第1回目のヘリ照射事件です。 

この時期、日本政府は中国との関係改善に向けた対話を模索しており、公明党代表・山口那津男氏を特使として派遣する準備中でした。 

加えて、中国は親中派といわれる村山富市元首相や、加藤紘一元自民党幹事長などの日中友好協会の人士を招待しており、村山氏は28日に北京で中日友好協会会長の唐家セン氏と会談しています。 

山口氏は、共産党総書記・習近平との会談希望を中国側に打診しており、現に25日にはそれが実現し、一瞬でしたが日中雪解けムードがかいま見られた時期でした。 

この第1回目レーダー照射は、この中国の「微笑」外交と前後して行われており、我が国への外交的メッセージとしてとらえねばなりません。 

それは「友好を取って尖閣を譲るか、戦争を取るか」という揺さぶりです。それに対して安陪首相はあえて「友好」のカードを切ってみせたわけです。

そして第2回目の自衛艦への照射です。この報告はただちに官邸に上げられたものだと思われます。

ここに至って首相は、中国に対する「友好」カードは通用しないと悟ったはずです。

そして、その2日後の2月1日の本会議答弁で、安陪首相は尖閣への公務員常駐について「選択肢の一つ」と、首相就任以来初めて踏み込んだ発言をすることになります。 

この発言は、明らかに30日の中国の戦争誘発行為に対しての日本政府の回答です。

よく誤解されていますが、安陪、石破両氏はバランスのとれた政治家であり、単純な軍事冒険主義者ではありません。 

この段階で、なぜ政府が2回にわたる中国の軍事挑発を国民に伝えなかったのかについては疑問が残りますが、それは様々なパイプで中国の真の意図を探ろうとしていたためではないかと思われます。 

ところで、レーダー照射が中国海軍、あるいは、艦長の暴走によるものなのか、はたまた、政府や共産党首脳レベルの意志なのかといった問題はどう考えたらいいのでしょうか。 

私は習近平総書記自らの意志だと思います。 

習総書記は、党軍事委主席就任後、軍、特に海軍の掌握に全力を上げています。

わかる限りの習総書記の動向を上げてみます。 

・12月5日、北京・第二砲兵部隊(巡航ミサイル部隊)本部を訪問し、「核ミサイルこそは国家安全の基幹であり中国の国際地位を高める中枢の部隊である」と訓話。
・12月8日から10日。広東省陸軍第42軍と傘下の124機甲師団を視察し戦車に試乗。
・同時期、広東省・海軍南海艦隊基地を視察し、軍艦に試乗。
・同時期、西北第二砲兵部隊(戦略ミサイル軍)の某基地を視察。
・同時期、甘粛省酒泉にある宇宙ロケット発射基地を視察。

これらすべての視察には軍事委員会副主席ふたり、陸海空三軍のトップ、参謀総長などを従えています。

そしてこの流れの中で1月14日には、軍機関紙・解放軍報が一面トップで「中国人民解放軍総参謀部は2013年の軍事訓練に関して、戦争にしっかり備えよと指示した」と報じました。
 

この言辞など、素直に読めばまさに宣戦布告前夜の様相であり、その発言の主が人民解放軍機関紙だというのもぞっとします。

また、今年2月に、習総書記の側近である氾長龍・党中央軍事委員会副主席は、北京軍区空軍基地、東海艦隊潜水艦基地、山東省ミサイル部隊、大連特殊部隊基地などを視察し、これら「釣魚島」戦闘部隊前衛基地に対して、「習近平思想に忠実であり、戦争に備えて実戦訓練を怠るな」と演説したとされています。 

「習思想」なるものがいかなるものか分かりませんが、習総書記が軍部を急速に掌握していることは間違いありません。

1月19日、1月30日2回の中国海軍による軍事挑発の背景には、このような習総書記の軍掌握の流れがありました。(資料3、4参照)

「習思想に忠実で戦争に備えた」軍隊によるレーダー照射という交戦一歩手前の行動、果たしてこれを偶然と呼んでいいのでしょうか。

仮に習政権が戦争の意志をもってるとした場合、「開戦」のタイミングは極めて重要な要素です。

それを、出先の現場指揮官が勝手に戦争になりかねない暴走を独断で行ったなどということは、絶対にありえないことです。

憂鬱な予想ですが、中国政府中枢が考え方を改めないかぎり、次は空になります。

      ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 防衛相会見要旨
2013.2.5 22:52

 【事案概要】1月30日午前10時ごろ、中国海軍ジャンウェイII級フリゲート艦1隻から、東シナ海で警戒監視中の海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」に火器管制用レーダーのようなものの照射があった。防衛省で精査し、本日、火器管制用レーダー、いわゆる射撃用レーダーの照射と確認した。 

 1月19日午後5時ごろにも、東シナ海において中国海軍ジャンカイI級フリゲート艦から海自護衛艦「おおなみ」登載のSH60哨戒ヘリコプターに対して、同じような火器管制用レーダーの照射が疑われる事案が発生している。このような射撃用レーダーの発出は大変異常なことで、一歩間違うと大変危険な状況に陥る。中国側に外交ルートで申し入れを行った。 

 【政府対応】慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので2月5日午後4時ごろ、安倍晋三首相に報告した。首相からは「しっかりと対応し、外交ルートでこのような事態が発生しないよう抗議するように」と指示があった。 

 5日午後5時半ごろ、外務省中国・モンゴル1課長から在日中国大使館参事官に、午後6時20分ごろには北京の日本大使館次席公使が中国外務省アジア局長にそれぞれ抗議を行った。 

よほどのことがない限り、このような事態にはならない。このような危険な行為については厳しく中国側に自制を求める。場所は東シナ海ということでご了解いただきたい。公海上ではある。

■資料2 レーダー照射は尖閣沖100キロの公海上
NHK
2月6日

先月、海上自衛隊の護衛艦やヘリコプターが、中国海軍の艦艇からレーダーを照射されたのは、いずれも尖閣諸島から北の方向に100キロ以上離れた東シナ海の公海上だったことが関係者への取材で分かりました。
防衛省によりますと、先月30日、東シナ海で、海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」が、中国海軍のフリゲート艦からおよそ3キロの距離で射撃管制レーダーを照射されました。さらに、先月19日にも、同じ東シナ海で海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」から飛び立ったヘリコプターが、中国海軍の別のフリゲート艦から数キロの距離で射撃管制用とみられるレーダーを照射されました。

沖縄県・尖閣諸島周辺で中国海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したことについて、マカオの軍事評論家、黄東氏は「非常に厳重な警告の方法で、上層部の同意を得て行われた可能性がある」との見方を示した。6日付の香港紙、明報が伝えた。

黄氏は、射撃管制用レーダーの照射が武器使用に至る前の「最も戦争行為に近い」危険な事態だと指摘。その上で「日本側が警告を無視して長時間(中国艦船の)周囲を航行したり威嚇したりしたため、中国側がやむなく行った可能性がある」との見解を示した。

■資料3 在米華僑の有力紙 「多維新聞網」(2月4日) 

 習近平は軍事方面の掌握に熱意と心血を注ぎ、党中央軍事委員会主席に就任以来、僅か百日をおかずしてほぼ軍権を掌握した。
胡錦涛のような、緩慢な軍権掌握ぶりに比べると迅速かつ強力であり、日本と、その同盟者アメリカとの戦争準備は整った。

■資料4 中国艦レーダー照射 「臨戦態勢」譲歩引き出す狙い
 産経新聞 2013.2.6 07:09

北京=川越一】中国海軍のフリゲート艦が、海上自衛隊護衛艦に向けて火器管制レーダーを照射した。習近平・共産党中央軍事委員会主席(総書記)の重要指示に基づき、臨戦態勢を強化していることをちらつかせることで、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる問題で安倍政権から譲歩を引き出す狙いがうかがえる。

 軍機関紙、解放軍報は1月14日、総参謀部が全軍に対し「戦争の準備をせよ」と指示したと報じた。同じ日、軍事科学学会副秘書長の羅援少将は国営中央テレビで、「日本が曳光(えいこう)弾を使用するならば、中国はさらに一歩進めてレーダー照射を行え」という趣旨の発言をしていた。 

 羅氏は過激な発言で知られるが、昨年8月、同諸島に関する白書を発表するよう主張。中国政府は約1カ月後に「釣魚島は中国固有の領土」と題する白書を発表した。太子党(高級幹部子弟)に属する羅氏は習氏に近い存在とされる。

今回も習氏が事前に“挑発”を容認していたと推測される。中国が国家海洋局監視船による領海侵犯を繰り返しても、膠着(こうちゃく)状態に変化は見られない。中国側に有利な状況を作ろうと習氏が軍強硬派の意見に耳を傾け始めたとすれば、危険な兆候だ。

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中国環境汚染・弱すぎる環境行政、強すぎる国営石油企業

065

今回の中国の大気汚染は、中国環境保護省によれば、17の省、自治区、直轄市の及び、中国全土の4分の1の約240万平方キロ、日本の国土面積の約 6・5倍に相当する範囲にまで拡がりました。 

人口の半分にあたる6億人がこの分厚い大気汚染の雲の下にいます。まさに「人類史上空前」という表現をしても、あながち大げさではない規模にまで達してしまいました。 

「中国環境保護省は4日、1月24日に開かれた全国会議での周生賢環境保護相の発言全文をウェブサイト上で公表した。それによると、1月の大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人に影響が出たという。」
(毎日新聞2月4日資料1、2参照)
 

今回の大気汚染の原因は、2.5μmという超微粒子の「PM20」と、それよりさらに微小な10μm以下のSPM遊粒子状物質)の汚染物質が原因です。(※μm=ミクロン・ミリの1000分の1)

失礼ながら笑えることには、中国政府はこれだけ壮大な汚染を垂れ流しておきながSPMはおろか、PM20についても満足な計測をしていなかったことが発覚しました。 

中国がとりあえず計測していたのは、なんとPM10で、こんな粗い単位で計っているものだから、市民は「たいしたことないや」とタカをくくっていたようです。 

しかし、このPM20を測定していた所が一カ所ありました。それはこともあろうに、中国にとっての仮想敵国・米国大使館だったのです。 

北京の米国大使館は中国政府の環境政策などまるで信じていませんでしたから、独自にPM2・5の観測を続けており、「危険な状態」とネットで公表してしまいました。

中国市民の方は米国大使館のサイトを見て初めてとんでもない状況になっていることに気がついて仰天したわけです。 

批判の高まりを受けて慌てて、昨年1月からデータの公表に踏み切ったところ、既に大気汚染の状況はもはや待ったなしの最悪の状況になっていました。

周環境保護相は、この爆発的大気汚染になってようやく、「社会の関心が高い環境データの公表を進め、環境問題をめぐる対応の重要な指標としてもらう必要があると述べ、PM2.5の観測網の拡充と情報公開に努める考えを示した」(2月3日ロイター」そうです。
 

我が国のお役所仕事も相当なもんですが、ここのような「人類史的」な状況になるまで公害を放置し、なおかつ観測体制すらなかったというのですから、お粗末というより近代国家の態をなしていません。

中国のメディアによれば、このメガ大気汚染を受けて先週ようやく、中国政府はディーゼル燃料に含まれる硫黄分をEUの規制値と同じ50ppm以下とする基準強化を適用する見通しだと報じました。 

移行期間が与えられるため、新基準が中国全土で義務付けられるのは2014年末以降になるといいます。 

残念ながら、私は無理だと思っています。 

その理由は追々書いていきますが、環境保護省(前身)の初代局長である曲格平氏が指摘するとおり中国は「人治」の国であり、すべてが「法」によらず、政治的な駆け引きと人脈で決定されているからです。 

環境保護省は存在しますが、権限が与えられていません。なぜなら、国是である経済成長至上主義に水を差し、国営企業の既得権益に揺さぶりをかける目の上のタンコブ的存在だからです。 

「中国では環境に関する政策の策定に、国家発展改革委員会(NDRC)や工業情報化省(MIIT)など10以上の組織が関与する。」(ロイター同上)

米国の環境保護庁とは異なって、中国の環境保護省には独自に排出の基準を定める権限はありません。

他の省庁とすり合わせるということは、我が国の環境省もよくやっていることですが、あくまでも主体は環境省です。 

中国の環境保護省は重要な環境に関する決定が下される場合にすら、相談に与らないことすらあります。 

「自動車排ガスコントロールセンターのDing Yan氏によると、NDRCとMIITが環境対応車への補助金政策を検討する会議を開いた際、環境保護省には連絡さえなかった。」(ロイター同上)

中国は2008年に、環境問題に取り組む姿勢をアッピールするために、従来の国家環境保護総局を環境保護省に格上げしました。しかしそれに伴う権限はあたえませんでした。
 

公害の最大の発生源である巨大国営企業や地方政府を従わせる「力」は初めからなかったのです。それは環境保護省を政治的に支える党幹部がいなかったからです。

「環境保護省の役割を本当に機能させたいのなら、習近平氏や李克強氏のような最高指導者が(バックに)必要だ(ロイター同上)
 

しかし、それは無理な相談です。党最高幹部はむしろ巨大国営企業とのつながりが強いからです。 

大気汚染の元凶は自動車用ディーゼル燃料ですが、中国では地域ごとに基準が違い、平均して硫黄分がEU基準の15倍含まれた燃料を使っています。

そのため環境基準の統一と強化は、環境保護省が何度か国営石油企業2社に申し入れていたことでした。 

この2社とは、国営企業である中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油(シノペック)です。いずれも今や欧米のセブンシスターズに並らぼうとするまで肥大した超巨大企業集団です。

彼らがクリーンなディーゼル燃料を供給するためには、石油企業は硫黄分の除去費用として数十億ドルを投じる必要があります。 

「この環境基準の強化が何度も遅れていることに業を煮やした環境保護省の張力軍次官は、2011年後半にCNPCとシノペックの幹部らとの会議を開き、これ以上は基準の強化を遅らせるつもりはないと明言した。」(ロイター同上) 

しかしこの環境保護省の要請はあっさりとホゴにされました。 

「2社の幹部はこれに対し、2012年の旧正月以降にクリーンな燃料を供給することを誓約したが、湯氏によれば、数カ月後に同省が検査を実施したところ、2社は依然として通常のディーゼル燃料を供給していた。」(ロイター同上) 

これが中国の現実です。今回のメガ大気汚染を受けて中国政府も重い腰を上げて、環境基準の強化を打ち出すでしょう。 

しかしCNPCとシノペックは、原油価格がイラン問題で高止まりしているために:これ以上のコスト負担は飲めないはずです。しかも、ガソリン価格は政府公定価格なために、石油会社の思うに任せません。 

また石油価格は、中国政府の方針て安く設定されています。国営石油会社の言い分では、多くの精油所は赤字だと主張しています。

エネルギー専門家によれば、クリーンなディーゼル燃料を供給するためには、石油企業は硫黄分の除去費用として数十億ドルを投じる必要があります。 

彼らは、共産党中央に圧力をかけるでしょう。現にクリーン燃料を受け入れるとしても、優遇税制の見返りをもらうなどの条件を出しています。 

「エネルギー価格が大幅に上昇するということは世間に発信しなければならない。安い燃料費ときれいな空気の両方を同時に手に入れる方法はない」。(NDRC能源研究所・Jiang Kejun・ロイター同上)

結局、中国国民の悲劇は、自らの利害を代表する政党を持たないことです。どんなに生活環境が劣悪になろうと、その声をすくい上げて政権に伝える回路が中国には存在しないのです。

国民が政党の形で政権と合法的に交渉することがあらかじめ禁じられている以上、いつものように暴動でも起こして車でも燃やすしかないということになります。

ただし、車を燃やせば、いっそう大気汚染がひどくなるので止めたほうがいいと思いますが。

■写真 霞ヶ浦の出島水位観測所の標識です。 

   
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■資料1 中国全土の4分の1でスモッグ、6億人に影響
毎日新聞 2月4日(月)20時51分配信

【北京・成沢健一】中国環境保護省は4日、1月24日に開かれた全国会議での周生賢(しゅう・せいけん)環境保護相の発言全文をウェブサイト上で公表した。それによると、1月の大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人に影響が出たという。

有害物質を含んだスモッグは1月10日ごろから中国の華北地方を中心に広がった。環境保護相は公表された発言で「最近の長時間、広範囲のスモッグ」としか言及しておらず、1月中旬から会議直前までの状況を説明した模様だ。

スモッグは17の省や自治区、直轄市に及んだとしている。中国全土の4分の1だと約240万平方キロで日本の国土面積の約 6・5倍に相当する。

「4分の1」は影響を受けた地域の累計の可能性もある。環境保護省は情報公開を求める声に押されるように1月下旬から大気汚染の影響範囲を公表している。特に汚染が深刻だった1月29日は約143万平方キロがスモッグに覆われた。この日を約100万平方キロも上回る日が全国会議の前にあったのか、あるいは面積の算出基準が異なるのかは不明
だ。

環境保護相はまた、1年間に車が約1500万台増える状況が続く中で汚染物質の排出量も増え、7割前後の都市で大気が環境基準を満たしていないことも明らかにした。

さらに、呼吸器や循環器の疾患を引き起こす微小粒子状物質「PM2・5」に対する国民の関心が高まっていることを認め、2015年までに濃度を5%下げる目標の達成に取り組む姿勢を強調した。

PM2・5をめぐっては、北京の米国大使館が独自に観測して「危険な状態」などと公表し、中国でも関心が高まった。中国の環境当局はより粒子の大きなPM10の観測データに基づいて汚染状況を発表していたが、実態と異なるとの批判が強まり、昨年1月からデータの公表に踏み切った経緯がある。

周環境保護相は「社会の関心が高い環境データの公表を進め、環境問題をめぐる対応の重要な指標としてもらう必要がある」と述べ、PM2.5の観測網の拡充と情報公開に努める考えを示した。

 ◇福岡でも基準値のPM2・5測定

日本では、福岡市で、1月24、30、31日の3日間、環境基本法で定められた基準値(1日平均で1立方メートルあたり35マイクログラム)を超える数値のPM2・5を測定した。中でも31日は、市内6カ所の観測所すべてで基準値を超え、最高で同53マイクログラムを記録した。
 

■資料2 中国“大気汚染で6億人に影響”
NHK 2月5日 4時34分 

中国の環境保護省は、深刻な大気汚染の状況について、有害物質を含む濃霧が国土の4分の1に広がり、全人口の半数近い6億人が影響を受けたとする報告を公表し、強い危機感を示しました。 

これは、中国の周生賢環境保護相が先月24日、環境問題について話し合う会議で報告したものとして、4日、公表されました。
このなかで、周環境保護相は「毎年1500万台ずつ自動車が増え続けるなか、70%前後の都市の大気が環境基準を満たしていない」と指摘しました。
さらに、車の排気ガスなどに含まれるPM2.5というきわめて小さな粒子を含む濃霧について、国土の4分の1に広がり、全人口の半数近い6億人が影響を受けたとして、大気汚染が深刻な状態だと強い危機感を示しました。

一方で、周環境保護相は、大気中のPM2.5の濃度を再来年までに5%下げるという政府の目標を打ち出しました。
また、中国メディアも4日、政府系のシンクタンクがまとめた先月の大気汚染の状況について、首都北京ではPM2.5の大気中の濃度が、国の基準を上回った日は合わせて27日に上ったほか、大気汚染の影響は全国で8億人以上に及ぶなど厳しい状況にあると伝え、対策を急ぐ必要があると警告しています。
 

■北京 大気汚染: リアルタイムの大気質指標(AQI)
http://www.aqicn.info/?lang=jp 

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震災瓦礫の放射能より、中国からの有害黄砂を心配しなさい

040

大阪で震災瓦礫の焼却試験が行われた時も、北九州市ほどの混乱はなかったものの反対運動が起きました。

その人たちは、「北九州市では周辺の子供9人に鼻血が出た」、などということをネットで流していますhttp://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/3dcd62d9d68708795887451af6fe00d6

別な大阪の瓦礫反対運動のサイトでは、「結核,ウィルス性肝炎,急性呼吸器病等の感染病の増加につながっている」としています。
http://mimislifestyle.blog.fc2.com/blog-entry-42.html

また別なサイトでは、「瓦礫を受け入れた焼却場を中心とする地域で、肺がんやさまざまな呼吸器系の病気が増えていくだろうと予想」されると述べています。(※このサイトは具体的数値や防波堤型瓦礫処理も紹介していますので、好感が持てました。防波堤型瓦礫処理は良案です。)
http://radiationexposure.blog.fc2.com/blog-entry-17.html

ではこの原因はなんでしょう。この人たちが言うように瓦礫焼却から出た放射性物質でしょうか?

素直に考えれば、肺ガン、急性呼吸器病と言うくらいですから、呼吸器病と密接な関係のある空気汚染物質と関連づけるべきでしょう。

現時点でもっとも疑われる最大の空気汚染物質はいうまでもなく黄砂です。これには瓦礫反対運動の方も同意していただけると思います。

昨日のブログでもしっかり書きましたが、中国からの黄砂には硫酸塩エアロゾルや病原菌など有害物質が大量に付着しているのが知られています。単なる砂ではないのです。

この大気汚染物質は別名「PM2.5」(※)といわれ2・5μmという超微粒子ですが、浮遊粒子状物質(SPM)と呼ばれる10μm以下のさらに微細な粒子もあり、肺胞に沈着していきます。

すると肺の機能が落ちて、気管支系疾患や呼吸器疾患や心臓病での死亡率が高くなることが知られています。また、肺がんリスクも高まります。

年平均100mg/m³になると呼吸器への影響、全死亡率の上昇などがみられることなどが知られています。

使用を禁じられた猛毒のアスベストも同じ超微粒子で、気管支や呼吸器、肺に侵入して多数の死亡者を出しました。

この黄砂には、工場の煤煙、車の排ガスが大量に付着しており、それには一酸化炭素、二酸化硫黄、窒素酸化物などの有害物質が含まれています。

これらは気道粘膜を刺激して、喘息などの急性呼吸器病を引き起こし、肺奥まで侵入して沈着し肺ガンを引き起こす原因物質です。

北京大学では、北京、上海、広州、西安の4都市だけで昨年、約8600人が死亡したとされています。Photo_6       図 「アジアの大気汚染:リアルタイム気質指数ビジュアルマップ」より
http://www.aqicn.info/?map&lang=jp

広東省の「南方週末」紙は、「中国の主要都市部では年間30万人前後が死亡。約60万人が呼吸器系疾患で入院、25万人以上が慢性気管支炎になっている」と報じました。

もちろんこれらの死者数は正式の統計ではありませんが、中国という情報統制国家においてはいたしかたがないでしょう。

とまれ、少なめに見積もっても1万人超の死者が毎年出ているというのは疑う余地がありません。

さて北九州市で瓦礫搬入が行われたのは2012年5月22日からでしたが、5月以降にこの黄砂が観測された日は以下です。

2012年5月・・・01,02,03,04,05,06,07,08,09,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31 

  • 6月・・・01,02,03,04,05,06,07,08,09  
  • 7月・・・少ない 
  • 8月・・・少ない 
  • 9月・・・少ない 
  • 10月・・・14,15,20,21,23,25,26,27,28  
  • 11月・・・05,06,07,08,09,10,19,22,23,24,28,29  
  • 12月・・・04,05,06,07,08,09  
  • ご覧のように北九州市で焼却が開始された5月23日からずっと黄砂は到来しているのがお分かりになると思います。

    黄砂は春にだけのように思われていますが、先に見たように夏期を除いてほぼ通年現れます。

    日本の気象庁の黄砂情報は、予報による見通しに基づく観測を中心にしてプレスリリースしているため、黄砂が出た後に「出ました」ということをしないからです。 

    結果として誤情報なわけですが、医療関係者も予報が出ていないのだからと、PM2.5との因果関係を疑わなかったというのが実態です。

    そういえば、これから盛りとなる花粉症も、黄砂とは無縁ではありません。黄砂・硫酸エアロロルを吸い込んだ場合、粘膜や呼吸器系が傷めつけられているために、花粉の飛散と重複して症状が重くなります。

    「子供が鼻血を出す」というのもアレルギー性鼻炎などによく見られる症状で、空気汚染によって鼻粘膜が刺激されて、鼻血が出た可能性もあります。http://kodomo.kmayct.com/77_1.html

    残念ながら寡聞にして、セシウム134、137と鼻血との因果関係があるとした学説は聞いたことがありません。

    あの「有名」なパンダジェフスキー氏も、心臓、肝臓、腎臓などへの影響は述べていますが、「鼻血」はあったっけ。伝聞で恐怖を煽るのは褒められた作法ではありませんよ。

    では、この人たちが反対している大阪ではどうなのでしょうか。

    大阪の瓦礫焼却試験初日の硫酸塩エアロゾルと黄砂の分布状況 
    国立環境研究所
    http://kobe-haricure.net/health/so4-gazou.htm
    2012年11月29日(木)12時

    Photo_52012年11月29日(木)18時

    Photo_4

    焼却試験初日の硫酸塩エアロゾルの飛散状況は、中国からの黄砂の影響で、全国的に高い数値を示しています。

    特にひどいのはオレンジ色の北陸から三陸にかけてで、関西のPM2.5濃度も上昇しています。 

    環境省の観測データをみると(※基準値35マイクログラム)
    ・大阪大正区   ・・・63マイクログラム
    ・堺市東区     ・・・60マイクログラム
    ・神戸市中央区  ・・・41マイクログラム

    もう一枚分布図を見てみましょう。これは今年2月現在のものですが、あいかわらず関西、特に大阪に比較的高い数値がでているのがわかりますね。
    http://www.aqicn.info/?map&lang=jp

    Photo_2

    ところで2枚目のマップのように、なぜ大阪が空気汚染度が高いのでしょうか。それは大阪の地形は、中国から近畿にかけての大気汚染物質を集めやすい地形となっているからです。 

    大阪の場合、空気汚染物質は日本海側から山越えして来る風よりも、壇ノ浦沖あたりで発生した上昇気流に乗って飛んで来て、大阪めがけて吹き下ろします。その時に中国大陸からのPM2.5を運んでしまうのです。 

    その上、大阪平野は奈良や滋賀、兵庫などの山に阻まれているためにいっそう濃度が上昇することになります。

    というわけで、もしこの大阪市の瓦礫焼却で、なんらかの呼吸器病が生じた場合、真っ先に疑われるべきなのはなんなのか改めて書く必要もないでしょう。震災瓦礫か、黄砂か常識で判断してください。

    震災瓦礫の放射能を騒ぐのは自由ですが、親としては現実に今あなたの子供の頭上に毎日降っている桁違いの量の黄砂に乗った有害物質や病原菌に対して、守りを固めたほうがいいと思うのですが。

    私は瓦礫反対運動が、このように呼吸器病との因果関係が明確に黄砂と判明しているのに、まだ瓦礫焼却と結びつけようというのが理解できません。

    仮に焼却場から放射性物質が漏れ出ているとしても、この凄まじい黄砂という大気汚染物質の前にはノイズ程度の意味しか持たないでしょう。

    反対運動をなさっているのは環境意識が高い方々なのですから、もう少し多方面からバランスよく眺められたらいいのに老婆心ながら思った次第です。

    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-943f.html
            http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/
    ■写真 冬の筑波山を見る。そろそろ春の田おこしが始まりました。

    ※PM2.5(ピーエムニーテンゴ)
    http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2234

    直径が2.5μm以下の超微粒子。微小粒子状物質という呼び方もある。大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準として「大気中に浮遊する粒子状物質であってその粒径が 10μm以下のものをいう」と定められているが、それよりもはるかに小さい粒子。
    PM2.5はぜんそくや気管支炎を引き起こす。それは大きな粒子より小さな粒子の方が気管を通過しやすく、肺胞など気道より奥に付着するため、人体への影響が大きいと考えられている。
    代表的な微小粒子状物質であるディーゼル排気微粒子は、大部分が粒径0.1~0.3μmの範囲内にあり、発ガン性や気管支ぜんそく花粉症などの健康影響との関連が懸念されている。

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    中国の大気汚染 WHO基準値の20倍、広さは日本の国土の3倍に拡がる

    093
    中国の環境汚染が、史上空前の規模になっています。
    (資料3・4・5・6参照)

    下の衛星写真は、NASAが撮ったものですが、画面中央右の白いスモッグ帯に小さな白字でBeijingとあるのが北京です。スモッグの海底に完全に沈んでいるのが分かります。

    Photo_6
    「環境省によると、10日夜から北京市を中心に中国東部で大気汚染が発生、14日まで主要都市で汚染が確認された。同市内の濃度は多い時には大気1立方メートルあたり約500マイクロ・グラムで日本国内の基準(1日平均35マイクロ・グラム以下)の十数倍にあたる。」(読売新聞1月30日) 

    「専門家によると、霧には多くの有害物質のほか病原菌も付着。気管支炎やのどの炎症、結膜炎などのほか、お年寄りや疾患を抱えた人だと高血圧や脳疾患を誘発する危険があると指摘した。」(ロイター) 

    私も何回か中国に行きましたが、北京に入るとまず気づかされるのは、空気の妙な「味」です。 

    コークスを焼くような匂いに、排気ガスを加えたような臭いとでもいうのでしょうか。これが硫酸塩エアロゾルの「味」です。 (※エアロゾル・大気中浮遊物質)

    そして晴れているのにもやがかかったようになっているのですから、実に奇妙な感じでした。自慢ではありませんが、高度成長期のスモッグの下で育った私にも、あそこまですごいものは経験したことがありません。

    下の中国の写真が撮影されたのは夕暮れではなく昼間ですが、自動車の姿が霞んでしまっています。特派員は十数メートル先も見えないと書いています。(写真2枚 共同)

    Photo_2

    現在、この有害ガスの「濃霧」は、北は長春、瀋陽、珠江デルタ、東は済南、西は西安まで、中国の広域に広がっています。 

    北京の米国大使館の発表によれば、肺がんやぜんそくを引き起こす微小粒子物質の世界保健機関(WHO)の基準値20倍のPM2.5に達することが分かりました。 

    この汚染地域は、中国の7分の1に相当する130万平方キロ日本の3倍という途方もない面積に達します。大げさな表現ではなく、まさに空前絶後の汚染規模だと言えます。 

    Photo                      

    中国各紙によると、14日、全国67都市が汚染された「濃霧」に覆われ、北京市は58の企業の操業を止め、41の企業については汚染物質の流出を30%削減するよう指示しました。

    公務車両の稼働も30%減らし、病院には急性の喘息や気管支炎を起こした子供を抱えた母親が殺到しました。

    この「濃霧」の正体は、硫酸塩エアロゾルですが、主成分の酸化硫黄は、硫黄を含む質の悪い石炭などの燃焼によって発生します。

    気体の二酸化硫黄は、眼と気道と肺に障害を与え、重度の場合は肺ガンの原因にもなります。

    特に抵抗力の弱い乳児や子供には強烈な刺激で呼吸器系を蝕みます。

    この発生源は、中国のエネルギー源が石炭に81%も依存していることによります。しかもこの石炭は、国内産の硫黄分を多く含んだ低品位炭です。

    中国は世界最大の石炭生産国(2011年度)であり、同年の石炭 生産量は35億トンを越えました。これは世界総生産量の46%あたり、輸入量も世界一ですから世界総消費量のほぼ半分は中国が消費していることになります。

    また中国の工場や火力発電所は、甘い環境基準の上に排ガス対策装置が不十分です。我が国ならば稼働すら許可されない施設ばかりです。

    共産党機関紙・人民日報ですら、「不純物を多く含む石炭を燃やしている。この時に煙を浄化する装置の稼働率が低い。この煙には毒性がある」と書いているほどです。

    中国では、障害児の出生率が2001年以来40%も上昇しています。明らかに開放改革路線による急激な工業化が背景にあるのは明らかです。

    汚染はあらゆるものに拡がっており、大気汚染、水質汚染、食物汚染などに市民は取り囲まれています。

    それが原因で、1年間に出生する2千万人の乳児のうち、百万人もが何らかの先天性障害児だと言われています。そしてそのうち、3分の1は生まれてすぐに死亡してしまいます。

    WHOの統計(WHO, World Health Statistics 2012)によれば、中国の新生児・乳児死亡率は、1000人あたり11人です。ちなみに我が国は1人です。http://memorva.jp/ranking/unfpa/who_2012_neonatal_infant_mortality_rate.php

    中国政府は、出生前診断で障害児と判明すれば、中絶するように命令しています。この優生政策のために、出生前に葬られてしまった胎児の数はWHOの統計には現れません。

    なりふりかまわぬ経済成長至上主義こそが、中国の国是です。人権、環境などあらゆるものを切り捨ててそれに邁進してきました。

    政府批判は許さない、集会結社言論の自由などもってのほか、普通選挙はしたことがない、政府の腐敗、貧富の格差は天文学的、そして工業排水で河川がどす黒く染まろうと、スモッグに街が沈もうと、そのために赤子が大勢死のうと、銭さえ儲かっていれば文句はないのだろう、と傲然と言ってのけたのが中国政府でした。

    そしてそれを放置してきたツケが今になって回ってきたわけです。Google中国汚染マップを見るとその凄まじい環境汚染に背筋が冷たくなります。
    http://maps.google.co.jp/maps/ms?ie=UTF8&oe=UTF8&msa=0&msid=117240148292975184990.0004484bc61e243e4e6b8

    そしてこの銭ゲバのツケが回ってきた時には、世界史上でもっとも大規模かつ深刻に環境汚染が進行して、住むことすらできない土地になりつつあるというわけです。 

    「このはね返りを回避するチャンスはあった」と、中国国家環保局(環保部の前身)の初代局長・曲格平氏はこう述べます。 

    「中国の今の深刻な環境汚染はこの40年間、すべてを犠牲にし、経済発展のみを追及してきた結果だと言い切り、先進国の教訓や、1987年にはすでに存在した持続可能な発展の概念を無視したツケだ。問題の根本は、中国は「人治」社会で、政策決定者の権利はいかなる制約も受けないことにある。」
    (香港 サウスチャイナ・モーニング・ポスト)
     

    北京市長代行は2020年までに解決すると言っていますが、この83歳の初代環境局長の言う通り、巨大独裁国家が構造的に抱え込んだ汚染構造は、政体が変わらない限り解決することは不可能でしょう。 

    環境汚染と政治-社会の汚染構造とが一体である以上、その解決は公害除去装置をつければいい、操業を減らせばいいという対処療法では済まないのです。

    中国の環境保護活動家の戴晴氏が言うとおり、「中国社会に暴動が起きるとすれば、それは貧富の格差や腐敗によるものではなく、環境によるもの」になるかもしれません。

    一方、我が国に対する影響は既に近畿地方で現れており、国立環境研究所の大気汚染予測システムでは1月28日午後以降、大陸から九州地方に汚染物質が流れ込んでいることが観測されています。(資料1参照) 

    「30日夜から31日早朝には、大阪府や奈良県などで微小粒子状物質「PM2.5」が、環境基準(1立方メートル当たり1日平均値35マイクログラム以下)を超すレベルになったことが示された。30日午後6時の地上観測点の実測速報値も阪神地区などで基準を超え、予測結果をほぼ裏付けた。」
    (毎日新聞1月31日 欄外参照)

    環境省の観測データをみると(※基準値35マイクログラム)
    ・大阪大正区   ・・・63マイクログラム
    ・堺市東区     ・・・60マイクログラム
    ・神戸市中央区  ・・・41マイクログラム

    「富山県・立山で約10年前から、積雪や雨、霧の成分を調査している富山県立大の渡辺幸一准教授は、汚染物質粒子のデータと気象データをあわせて判定することで、有害物質が中国から運ばれてきたことを確認。「特に黄海沿岸の工業地帯から運ばれてきた可能性は高い。シミュレーションでは九州、山陰の日本海側を中心に、近畿から太平洋側にも及んでいる」と話す。」
    (産経新聞2月2日)

    この中国発「毒ガス」は、この春には黄砂に乗って大量に我が国に吹いてきます。(資料2、9参照)http://www-cfors.nies.go.jp/~cfors/index-j.html        

    日本人は、海を隔てて世界史上まれに見る汚染大国と接していることを自覚したほうがいいようです。

    この問題は次回も続けます。

    ■写真 神郡(かんごおり)筑波山神社の参道に前に拡がる古い家並みの街です。ここを撮りに行くと時間が古い昔に遡っていきます。 

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    ■資料1  国立環境研究所・大気汚染予測システムによる31日午前0時時点のシミュレーション。汚染濃度が高い黄色とオレンジ色、赤色がでているのが分かる。http://envgis5.nies.go.jp/osenyosoku/

    ■資料2 九州大学竹村俊彦准教授のデータによる中国からの大気汚染粒子の拡散予想図
    (産経新聞2月3日)

    Photo_5
    ■資料3 <中国大気汚染>流入の西日本「物質濃度が急上昇」
    毎日新聞1月31日

    中国で深刻化する大気汚染が「越境汚染」として西日本に流入した影響で、30〜31日にかけて近畿地方で大気汚染物質「硫酸塩エアロゾル」の濃度が急上昇したとみられることが、国立環境研究所の分析で分かった。地上の実測速報値も、環境基準を超す地点があった。  

    資料4中国の大気汚染深刻 濃霧、日本の面積の3倍
    (日経新聞1月31日 )

     大気汚染が最も深刻なのは北京市、天津市、河北省、山東省など中国北部。北京の米大使館の観測によると、ぜんそくや気管支炎を引き起こす微粒子状物質「PM2.5」の大気中濃度は29日に一時、世界保健機関(WHO)の安全基準の20倍に達した。

    中央気象台はスモッグに関する新たな警戒レベルを導入。PM2.5の濃度などから黄色(軽度のスモッグ)、オレンジ(深刻なスモッグ)、赤(極めて深刻なスモッグ)の3段階で情報を発信し、市民に警戒を呼び掛ける。  

     PM2.5は車の排出ガスや暖房用の石炭燃焼が原因。北京では30日夜に雨と雪が降る見通しで、濃霧はやや解消される見通しだ。
    硫酸塩エアロゾルは、石炭などの燃焼で発生し、濃度が高くなると、ぜんそくなどの呼吸器疾患を起こす恐れもある。 

     国環研のシミュレーションでは28日午後以降、大陸から九州地方に流入し、30日夜から31日早朝には、大阪府や奈良県などで微小粒子状物質「PM2.5」が、環境基準(1立方メートル当たり1日平均値35マイクログラム以下)を超すレベルになったことが示された。30日午後6時の地上観測点の実測速報値も阪神地区などで基準を超え、予測結果をほぼ裏付けた。ただ、基準は1日平均値を基に判断するため、基準を超えたとはみなされない。 

     中国では近年、石炭など化石燃料の大量消費が原因の大気汚染が社会問題化している。国環研は、東アジア地域で大気汚染物質の濃度を推定。風向や風速などの気象データを加えて移動状況をシミュレーションし、公表している。ただ汚染の全てが中国由来ではなく、国内の暖房使用や自動車の排ガスなども影響しているとみられる。 

     国環研は「濃度上昇の予測結果は、大陸の大気汚染物質が流れ込んだためと解釈できるが、国内の濃度は中国の汚染レベルに比べると格段に低く、健康な大人が気にするレベルではない」と説明している。
    中国の環境保護省は、ここ数日にわたり中国の空を覆っている有害な濃霧の総面積が130万平方キロメートルに及ぶと発表した。日本の3倍以上の面積がスモッグに覆われている形で、市民は外出を控えたりマスクを購入したり対応に追われている。  

     
    ■資料5 中国東部で深刻化している大気汚染が、日本にも影響を及ぼすことに懸念が出ている。

    中国では今年に入り、北京市などで汚染物質を含んだスモッグに覆われる日が続き、体調を崩す住民が急増。飛来したとみられる汚染物質が日本でも確認され、西日本の一部では基準値を超える汚染物質が観測されている。

    加藤勝信官房副長官は31日の記者会見で、「ただちに日本への影響があるレベルではないが、引き続き環境省で大気汚染物質の状況を調査するなど、適切な対応を図っていく」と述べた。

    懸念されているのは、大気汚染物質の一つで、直径2・5マイクロ・メートル(1マイクロは100万分の1)以下の微粒子状物質「PM2・5」。吸い込むと肺の奥まで入り込み、肺がんなど呼吸器や循環器の疾患の原因になる可能性がある。

    環境省によると、10日夜から北京市を中心に中国東部で大気汚染が発生、14日まで主要都市で汚染が確認された。同市内の濃度は多い時には大気1立方メートルあたり約500マイクロ・グラムで日本国内の基準(1日平均35マイクロ・グラム以下)の十数倍にあたる。(読売)
     

    ■資料6 中国、連日有害物質含んだ濃霧 呼吸器系疾患が急増 

    中国各都市で連日、有害物質を含んだ霧が立ち込めている。12日付の中国紙によると、北京市の大気汚染を調べる全ての観測地点で、6段階の大気汚染指数で最悪の「深刻な汚染」を記録した。 

    病院では呼吸器系疾患の外来患者が急増、市当局は住民に外出を控えるよう呼び掛けた。北京市は12日も朝から濃霧となり、数百メートル先のビルがかすんで見えない状態。 

    中国メディアによると、河北、河南、湖北3省や天津市でも霧が立ち込め、深刻な大気汚染が続いている。専門家によると、霧には多くの有害物質のほか病原菌も付着。気管支炎やのどの炎症、結膜炎などのほか、お年寄りや疾患を抱えた人だと高血圧や脳疾患を誘発する危険があると指摘した。

    北京市の小中学校は11日に体育など戸外活動を中止。外出する際は交通機関を利用するなどした上マスクを着用するようメディアを通じて呼び掛けた。(共同) <中国・北京では大気汚染が深刻な問題となり、マスクを着用する人が多くなっている
    (1月13日、ロイター)>
     

    ■資料7 九州大学竹本俊彦准教授のデータによる硫酸塩エアロゾル拡散予想図Photo_3 

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